21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信! 作:Leni
「どうもー、21世紀おじさん少女だよー」
「みなさま、ごきげんよう。ノブちゃんことヨシノブです」
「助手のヒスイです。本日はコラボ配信となっております」
そんな挨拶と共に、ライブ配信が始まった。
本日はヒスイさんの宣言通り、コラボ配信だ。俺とノブちゃんの配信チャンネルで同時に配信を行なっている。
本日の俺の衣装は、振り袖。派手すぎないかとヒスイさんに言ったのだが、コラボなので派手すぎるくらいがちょうどいいと返されたので、甘んじてこの衣装を着ている。
一方、ノブちゃんはドレス姿。派手すぎないかと思うのだが、ノブちゃんが言うにはヒスイさんによるコーディネートらしい。派手と派手がぶつかりあって画面がうるさそうだ。
そんな中、ヒスイさんはいつもの行政区の制服だ。一人だけずるいと思う。
『わこつ』『わーこーつー』『うわー、コラボ配信だー』『ノブちゃん初見』『こっちは21世紀おじさん少女初見だわ』『両方知ってる。とうとうコラボかー』
「うむうむ。両方のチャンネルから人が集まっているようでなにより。21世紀おじさん少女のヨシムネだ。今日は是非とも、名前を覚えていってくれな!」
『ヨシムネ!』『ヨシムネとヨシノブでまぎらわしい』『ヨシムネはヨシちゃんだ!』『ヨシちゃん……ノブちゃん……覚えるのに時間がかかりそうだな』
ふむ、やっぱりまぎらわしいか。
「ご、ごめんなさい……私のヨシノブっていう名前は忘れて、ノブちゃんとだけ覚えてくれれば……」
ノブちゃんが弱気なコメントを言う。
「いや、今日はヨシムネとヨシノブ、セットで覚えていってくれ! 徳川将軍八代目の吉宗と、徳川将軍十五代目の慶喜。ナンバーエイトのヨシちゃんと、ナンバーフィフティーンのノブちゃんをこの配信のうちに覚えるんだ!」
俺がそう言うと、視聴者達が『徳川将軍……?』と不思議そうなコメントをしだす。
「将軍とは征夷大将軍のことで、惑星テラのニホン国区の過去に存在した役職です。国の代表を国主に任された実質的な国の最高権力者のことで、国主代行とでも言いましょうか。国王とはまた違う、複雑な存在です」
ヒスイさんがそう説明を入れる。
うーん、将軍と幕府って、言い表すのが難しい存在だよな。
「ヨシムネ様はその八代将軍徳川吉宗にあやかって、両親に名づけられたそうです。ヨシノブ様は、ヨシムネ様のフォロワー配信者なので、最後の徳川将軍の名前を取ってヨシノブと名乗っています」
「まあ、ノブちゃんがさっき言ったとおり、茶髪白人種がノブちゃん、銀髪黄色人種がヨシちゃんとだけ覚えておけばいいよ。黒髪がヒスイさんな。ヒスイさん、首の下あたりに名札的なテロップ出せる?」
「了解しました。名前のテロップを出します」
『おお、解りやすい』『これなら、最後まで見ればきっと覚えられる』『見た目は結構違うしね』『若い女の子ばかりで華やかだな』『まあ、ヒスイさんの実年齢は若くないんだけど』『よせっ』
うんうん、視聴者の反応はいいな。テロップ出して正解だった。
さて、話を進めよう。
「今日は、俺から誘いを出して、ノブちゃんとのコラボ配信を実施したぞ。俺は今のところコラボ配信はほとんどしていないし、話を聞くにノブちゃんは滅多にライブ配信をしないようだから、視聴者のみんなも新鮮な気分で配信を楽しんでくれたら嬉しい」
「うう……、ライブ配信は苦手なんですよね……」
『ノブちゃんは仕方ないよ』『ノブちゃんのスタイルでライブ配信はね』『どういうこと?』『ノブちゃんは事前の練習をがっつりやるタイプだから』
ふむふむ。ノブちゃんのスーパープレイは膨大な練習量に支えられて成立しているって事かな。
まあ、RTA走者は、
「苦手なのにライブ配信の要請を受けてくれたノブちゃんに感謝だ。それじゃあ、それぞれ初見の視聴者がいるだろうから、自己紹介していくぞー」
俺はそう言いながら、拳を握り上に向かって突き出した。振り袖なので、袖がばっさばっさと揺れる。この服、動きづらいな……!
『おー』『パチパチパチパチ』『手慣れているな、ヨシちゃん』『ノブちゃんでは考えられないトーク力』『こやつ……できる』
いや、こんだけの会話でトーク力って、普段ノブちゃんどんだけ口下手なのよ。
とりあえず、俺から自己紹介だ。ノブちゃんのハードルを上げない程度に考えて……。
「俺は、21世紀おじさん少女。21世紀から色々あってタイムスリップしてきた元おじさんだ。嘘じゃないぞ。冗談でもない。ニュースで記事にもなった、ガチの21世紀人だ。で、今年の四月からゲーム配信を生業としている。みんなよろしく!」
『マジかよ』『ガチだよ』『本当に21世紀人なんですよね』『ちょっと他には並び立てない強烈なキャラクター』『知らなかったわぁ。歴史好き大歓喜すぎない?』
「好きなゲームはRPGだけど、RPG配信は滅多にしないな。得意なゲームジャンルはアクションだ。以上! 次、ノブちゃんね」
「は、はい……! 私はヨシノブです! 本名はノエルですが……、あっ、えっと、ノブちゃんって呼んでくれると嬉しいです」
『ハンドルネームを使っているのに、本名を言っていくスタイル』『ハンドルネーム意味ねえな』『ノエルちゃん可愛い!』『スーパープレイヤーノブちゃんだ』
うむうむ。隙があるというのも、配信者としての一つの強みだな。演技でやっていると視聴者達に見透かされるが、ノブちゃんは完全に天然だ。視聴者に愛されるみんなの配信者というポジションになる。
視聴者に本名を明かすというのは、俺のいた21世紀ではいろいろ問題が起きることもあった。だが、AIに管理されたこの時代だとネットで本名を明かしても問題は起きにくい。
なにせ、管理側のAIは人類のプライバシーというものをまるっと無視しているらしいからな。
人が危険な目に遭わないよう、24時間体制で人類は監視されているのだ。
だから、本名を明かしても、配信者の住所特定からの凸だのストーカー被害だのが未然に防がれるのだ。
「ええと、好きなゲームは……乙女ゲームで、主にライブ配信の時にプレイします。でも……、動画配信している主なジャンルは……RTAやスーパープレイ向きのゲーム……です。ヨシちゃんと一緒で……好きなゲームと配信するゲームは違いますね……!」
『ほーん』『トークは苦手そうな子だな』『まあ、まだ配信開始から半年経っていませんから』『慣れればそのうちこなれていくさ』『でも配信者で一級市民なんだろう? もっとトーク力がないと』『違うんだよなぁ。こういう初心者っぽいのも、またいい味があるんだよ』
ふむ。厳しめの意見もあるが、おおよそ受け入れられている感じかな?
トーク力は、それこそ配信を続けていくうちに自然と身につくだろう。スーパープレイにトーク力も兼ねれば、いずれはトップの配信者に躍り出られる可能性がある。俺的に注目の配信者だぞ!
「スーパープレイが売りと言われていますが……私、ゲーム初心者で……そんなにゲーム得意じゃありません」
『お前がゲーム得意じゃなかったら誰が得意なんだよ!』『RTAの記録いっぱい打ち立てているんだよね?』『得意か得意じゃないかといえば得意じゃないと思う』『本気か。いったい何者なんだ、ノブちゃん……』
うーん、このあたりは謎だな。ノブちゃんの配信をいくつか見てきたが、どれもすごいプレイにしか見えなかったんだが。
「ヨシノブを名乗っていますが……これはヨシちゃんの徳川将軍の名前にちなんで名づけました……。えっと、私、実はヨシちゃんのフォロワーなんです。ヨシちゃんを見習って、いっぱいゲームを頑張りたいです……!」
フォロワーとは言っても、俺とノブちゃんでは、配信スタイルも人間性もかなり違う。
正直、視聴者層はそんなに被っていないだろう。だからこそ、コラボ配信をすれば両者とも一気に視聴者増につながる可能性があった。
「えっと……私からは以上です。次、ヒスイさんお願いします……」
「はい。私はニホンタナカインダストリのミドリシリーズ、業務用ガイノイドのヒスイです。ヨシムネ様のサポートを主業務として、動画配信を行なっております。ヨシムネ様の配信チャンネルへの動画アップ、SNSでの広報、他、編集業務やプレイするゲームの選定、テストプレイなどを担当しており、配信本番ではカメラワークやヨシムネ様への助言等を行なっております」
『ミドリちゃんさんの姉妹機だ!』『わー、ヒスイさん可愛い!』『業務用が個人の配信サポートやっているとかすごいよね』『クレジットを湯水に捨てるかのごとく!』『だがそれがいい』『ヒスイさんなくしてヨシちゃんの配信は成り立たない』
ヒスイさんも人気だなぁ。
「みなさま、ありがとうございます。確かに、ヨシムネ様はうっかりも多く、私のサポートなしでは配信を任せられません。姉として、ヨシムネ様の足りない部分を補っていければと思っております」
しんらつー! そんなこと思ってたのヒスイさん!
「本日も、サポート役として陰ながらお二人を支えさせていただきます。以上です」
ヒスイさんがおじぎをすると、視聴者達から拍手が流れる。
続いて、俺が司会役として進行を引き継ぐ。
「うん、自己紹介はこれでいいかな。じゃあ、次。ゲームに入る前に、コラボ配信に至るまでの話を少し説明していこうか」
いつもならすぐさまゲーム開始となるのだが、今回はそれぞれ初見の視聴者を抱えている。なので、ここまでの経緯に触れておくことにした。
「始まりは、俺がライブ配信でプレイした『最果ての迷宮』というローグライクゲームにある。先月、五日間に渡ってこのゲームの配信を行なった。だが、なかなか骨のあるゲームで、五日間では十分の一も進行することはできなかった……」
『そりゃそうよ』『100ステージあるゲームを五日間だけだからな』『なかなか見応えのあるゲームだった』『ノブちゃんが踏破したあのゲームか……』
「そう、俺がプレイを行なった数日後、フォロワーのノブちゃんは、その『最果ての迷宮』のRTA動画をアップした。すごいよな。あんな骨太ゲームをまさか短期間でRTAするとか、正直信じられなかったよ」
「ご、ごめんなさい……」
「いや、ノブちゃん。責めているわけじゃないんだ。そして、ノブちゃんのRTA動画を見て、自分のフォロワーだと知った俺は、ピンときた。コラボ配信したら面白いんじゃね? と」
そう、最大の理由はピンときた、なのだ。深い意味はない。
「補足しておきますと、ヨシムネ様がこれまで行なったコラボ配信は、『MARS』のグリーンウッド卿と、『St-Knight』のクルマム氏の二名のみとなっております。そのため、経験則から配信が面白くなりそうという判断は下せません。今回は、全てヨシムネ様の興味本位と言えるでしょう」
「ヒスイさん、もう少し歯に衣着せて!? それで、面白くなりそうとノブちゃんと連絡取ったら、予想以上に可愛いキャラをしていたんで、こうしてコラボ配信に至ったわけだ」
「可愛い……。こ、光栄です」
「うんうん、ノブちゃん可愛いよね」
『お前の方が可愛いよ』『三人とも属性被っていないから面白いわぁ』『ノブちゃんのよさが解るのは俺だけでいい……』『俺を置いていくなよ』『俺も俺も』
ノブちゃん人気だなー。さすが配信で一級市民をやっているだけある。
「正直、俺とノブちゃんでは、ゲームの腕は天と地の差がある。でも、俺は恐れずにノブちゃんと一緒にゲームをプレイするぞ! というわけで、今日はノブちゃんと協力プレイをしていこうと思う。プレイするゲームは、こちら!」
そう言いながら、俺はヒスイさんの方を手で指した。すると、ヒスイさんは両手にゲームアイコンを出現させる。
「『Astral Spirits』! ベルトスクロールアクションゲームを二人でプレイするぞー」
俺が宣言すると、背景で花火が上がり、ファンファーレが鳴った。
おおっと、ヒスイさん。今日は今までにない派手な演出だな!
『アクション!』『ヨシちゃん得意ジャンルで来たか』『ノブちゃんもアクションはすごいんだよなぁ』『つまり二人合わせると……!』『ドキドキしてきた……』
「それじゃあ、早速、ゲームを開始していくぞ!」
そういうわけで、コラボ配信はゲームパートへ。
何か面白いことが起きれば最上だが、今回は単独での配信ではない。放送事故等なく終えられるよう、気をつけていこう。