21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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159.Astral Spirits(ベルトスクロールアクション)<2>

 俺が呆然としている間に、ノブちゃんは兎モンスターを二匹とも蹴散らした。

 そして、モンスターが消滅すると同時に、俺の方に向き直り、謝りだした。

 

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

「あー、いや、このゲーム、フレンドリーファイアあるから気をつけよう」

 

「ごめんなさい……練習は一人でやっていたので……フレンドリーファイアが念頭になくて……」

 

「あはは、じゃあ、ノブちゃんは初見プレイみたいなもんだな」

 

 俺は事前に練習としてヒスイさんと二人で第一ステージをクリアしたので、一応二人プレイには慣れている。

 ノブちゃんが慣れていないなら、俺の方から距離感に気をつけることにしよう。

 

『ノブちゃんも失敗ってするんだな』『クリアまでプレイしたのにか』『協力プレイに慣れていないんだな』『ノブちゃんぼっちだから……』『コラボ決まったときの配信すごく嬉しそうだったもんね』

 

 そんな視聴者のコメントに、ノブちゃんが反応する。

 

「はい……私、昔から友達いなくて……」

 

 ふむ。子供時代の遊び相手とかいないのかな。

 あ、そうか。

 

「ノブちゃんは養育施設出身じゃなくて、親元で育てられたから、一緒に育った友達がいないんだな」

 

「はい……人といっぱい話す機会は……配信を始めるまでなかったので、上手にトークができなくて……」

 

 なるほど、ノブちゃんが口下手なのはそういう経緯があったわけだ。

 

『大丈夫だ。ノブちゃんには俺達がいる!』『そうだ、ぼっちなんかじゃない』『複数人プレイを練習したいときは視聴者を呼んでもいいんですよ?』『そういえばノブちゃん、視聴者参加型企画やったことないな』

 

「みなさん……ありがとうございます……!」

 

 うんうん、よかった、よかった。

 

「それじゃ、まずは俺がお友達第一号ということで、一緒にこのゲームをクリアしようか」

 

「はい……!」

 

『ちゃっかり第一号の座をかっさらっていくヨシちゃん』『おのれ……!』『でもヨシちゃんなら……まあ……』『古参視聴者たる俺が許す』

 

 ゆ、許された。

 まあ、ノブちゃん側の視聴者に異存がないなら、それでいい。

 

「それじゃあ進んでいこうか。お互い、距離には気をつけよう」

 

 このゲームのフレンドリーファイア、身体に衝撃が届くだけじゃなくて、HP(ヒットポイント)もしっかり減るからな。そんなゲーム選ぶなとヒスイさんに言いたいのだが、ヒスイさん曰く、それくらい難点があるゲームじゃないと俺達二人にとって簡単すぎる、らしい。厳しいなぁ。

 さて、気を取り直してゲームを進行しよう。

 

 踏み固められた道を前方に進んでいくと、今度は紫色の肌をした子供サイズの人型モンスターが出てきた。

 おそらくは、ゴブリンだ。それが三匹。

 

 俺はノブちゃんの位置に注意を払いつつ、打刀で端にいるゴブリンを攻撃した。

 六回ほど斬りつけたところで、ゴブリンが消滅する。

 ノブちゃんも一匹倒し終えたようだ。残りの一匹に向かう……というのはちょっと待とう。多分、ノブちゃんが攻撃しようとするはずだ。

 

「えーい!」

 

 うん、やっぱり。フライングクロスチョップで残りの一匹の方に飛んでいったぞ。そして、そのまま高速の乱打でゴブリンを倒した。

 

『まーたノブちゃんは、そんなヨシちゃんを巻き込みそうな移動をして……』『多分この攻撃が、一番移動が速いから採用しているのだと思う』『ガチ勢特有の効率思考……!』『ノブちゃん、距離感、距離感大事にしよう!』

 

「ご、ごめんなさい……! 私……本番では練習通りにしか動けなくて……!」

 

「マジでか……」

 

 クリアするまで作ったパターン通りにしか動けないってやつか。

 

「もしかしてノブちゃん、アドリブに弱い?」

 

「ゲームは下手なので……、初めて見る状況は苦手です……」

 

『スーパープレイヤーじゃないのか』『違うんだなぁ』『ノブちゃんは圧倒的な練習量で、ゲームの腕をカバーしているだけだよ』『今回の場合、二人プレイの練習が一切できなかったから、一人プレイの動きを必死にやっているんだと思う』

 

 そうだったのか。

 ノブちゃんはゲームがすごく上手い人じゃなくて、すごく練習する人だったと。

 

「ノブちゃん、『最果ての迷宮』のRTA動画の練習って、どれくらいやった?」

 

「時間加速機能を使って……ええと……休憩を含めて八ヶ月くらい?」

 

「マジかよ……よく一人でそんなに練習重ねられるな……」

 

「ヨシちゃんも……『-TOUMA-』で……長期間プレイをやっていましたよね……? それを見習ったんです……!」

 

「ええっ、それ絶対、見習わない方がいいやつだぞ。それに俺は、ヒスイさんがいたから孤独に耐えられたわけで……」

 

「確かに……一人で練習するのは寂しいですね……。あっ、でも、ときどき休憩して……乙女ゲームをやっていますから……」

 

『ゲームの疲労をゲームで癒す』『あるある』『ノブちゃん、サポート用の高度有機AI導入した方がよくない?』『インストール用のボディ高いだろ』『リアル用のアンドロイドボディは高いけど、ソウルコネクト用のインストール機器は一級市民の配布クレジットがあれば、そこまででもない』

 

「なるほど……勉強になります……!」

 

 あー、AIって別にアンドロイドを用意しなくてもいいのか。

 VRに接続できるパソコンみたいなのさえ用意すれば、そこにインストールしてVR上でのサポートはやってもらえると。AIにも人権はあるから、リアルのボディは必須だと思っていたよ。

 

 それはさておき、また雑談で中断してしまったので、ゲームを進めないと。

 

「ノブちゃん、とりあえずフライングクロスチョップは封印しよう」

 

「えっ……でも、あれがないと……どうやって移動したらいいか……」

 

「いっそのこと、練習した内容は忘れよう! お互い、初見プレイの気持ちで挑むんだ」

 

「でもそれだと……私……下手なので足を引っ張るかと……」

 

「問題ない、問題ない。お互いの弱点をカバーし合うのが協力プレイだ」

 

 それっぽい言葉で話を締め、ステージの前方へと進む。

 再び現れる兎とゴブリン。それらを慎重に処理していく。

 

 ノブちゃんも、ちゃんとフライングクロスチョップを封印して、一匹ずつ慎重に殴っているようだ。

 だが、その動きには先ほどまでの精細さはない。練習通りに動けないとなると、ただの攻撃も上手くできないようだな。

 ときおり敵の反撃を受けているのが判る。

 

「しかし、VRでベルトスクロールをやると、ここまで雑魚狩りが楽しいのか」

 

 雑魚を次々となぎ倒していく爽快感がすごい。ベルトスクロールアクションらしく敵は頑丈だが、攻撃回避が任意でできるので、思っていたよりもサクサクと敵の処理ができている。

 

「私は……これが初めてのベルトスクロールなので、よく解らないです……」

 

 そんな会話を混ぜながら敵を蹴散らして進んでいくと、やがて木が立ち並ぶ森の前に到着した。

 そして、その森の中から、一匹の巨大なモンスターがのっそりと出てくる。

 

 棍棒を持った人型の青肌巨人。オーガか? ああ、オーガはプレイヤーの種族だから、もしかしたらトロールかな。

 BGMが切り替わり、敵のHPゲージが視界の上部に表示される。

 

「よし、ノブちゃん、第一ステージのボス戦だ! 攻撃が強烈だから、上手く避けていこう!」

 

「はい……!」

 

 そして始まるボス戦。雑魚敵は登場しないので、ちょうどボスを挟み撃ちにするように位置取りを工夫した。

 

「あ……これなら……好きなように殴れます……!」

 

 俺がボスを挟んで反対側にいるので、フレンドリーファイアを気にしなくてよくなったノブちゃんが、急に高速の乱打を始めた。

 それに反応したボスが反撃をするが、ノブちゃんはそれを上手くかわしていく。

 

 よし、それじゃあ俺も攻撃開始だ。

 打刀で隙だらけの背中を斬りつけ、わずかながらHPゲージを削る。

 

 すると、前後から攻撃されたボスモンスターが、一度に俺達二人を攻撃するように棍棒で三六〇度全部をなぎ払った。

 

「きゃあ!」

 

 おっと、ノブちゃんが被弾したぞ。吹き飛ばされて転んでいる。

 

「し、知らない行動パターン……!」

 

 起き上がりながら、ノブちゃんがそんなことを呟いた。

 

『ソロプレイじゃ見られない攻撃か』『ボス戦はそういうやつ多そうだな』『つまり、ほぼ初見プレイみたいなもんか』『ノブちゃん頑張れー!』

 

「ノブちゃん、大丈夫か?」

 

 俺はノブちゃんに追撃がいかないよう、ボスモンスターに攻撃を加えて注意を引きながら、そう尋ねる。

 

「大丈夫です……! フレンドリーファイアがないなら……想定外の攻撃程度どうにかします……。今まで、高度有機AIサーバ接続プレイも、してきましたので……!」

 

 あー、確かに、高度有機AIサーバに接続すると、ゲームの敵が知性ある思考をするようになって、見たことがない攻撃を繰り出すようになるんだよな。

 と、そんなことを考えている間にも、ボスモンスターの攻撃が俺を襲う。

 だが、第一ステージのボス程度の攻撃、VRのアクションゲームに慣れた俺が食らうわけもない。

 

「加勢します……!」

 

 起き上がったノブちゃんが、ボスモンスターの背後から攻撃を開始する。

 前後から挟み撃ちにされ、ボスモンスターは叫び声を上げ、めちゃくちゃに暴れ回る。

 俺はそれをなんとかかわしたが、ノブちゃんは攻撃を受けてしまった。

 と、ノブちゃんのHPの残りがやばい。

 

「ノブちゃん、回復魔法だ!」

 

「えっ、あっ、えっと、あー……!」

 

 俺に話しかけられて焦ったのか、ノブちゃんの動きが鈍り、ボスモンスターの蹴りをもろに受けてしまった。

 そして、ノブちゃんのHPがゼロになってしまう。

 

「ノブちゃーん!」

 

『ノブちゃんが死んだ!』『おのれオーガ!』『今のは、ヨシちゃんが戦犯じゃない?』『いきなり話しかけるから……』

 

 いやいや、話しかけた程度で戦犯扱いされても困るぞ。

 地面に倒れ、動かないノブちゃん。

 だが、これはゲームだ。本当に死んだわけではない。なので、復活ができる。

 

 ノブちゃんのHPが全回復し、ノブちゃんはその場で起き上がった。

 

「ごめんなさい……! 復活しました……!」

 

「おう、攻撃再開だ!」

 

『ちなみに、復活可能回数は無限に設定してあります。ですので、今回の配信でゲームオーバーはありません』

 

 復活したノブちゃんについて、この場にいないヒスイさんの解説が入る。

 ゲームオーバーにならないのは、ありがたいな。お互い足を引っ張ってしまっても、気兼ねなく進行ができる。

 

 そして、再び二人での挟み撃ちが始まる。

 ベルトスクロールアクション特有のボスのしぶとさを感じながらも、確実に敵のHPゲージを削っていく。

 そして――

 

「倒したぞー!」

 

「やりました……!」

 

 ボスモンスターは倒れ、ちりとなって消えていった。俺達二人は、その場で拳を握り、天に向かって突き付けた。

 

『おめでとう!』『一回死んだけど、なかなかの動きじゃん』『というかヨシちゃんHP減ってねえ』『ヨシちゃんやばくない?』

 

「ふふふ、俺はアクションゲームが一番得意だからな。散々練習した成果だ」

 

「やっぱり練習は……大事なんですね……!」

 

 おおっと、ノブちゃんに余計なことを吹き込んでしまったか。

 ああ、でもノブちゃんはスーパープレイで一級市民になっている配信者だ。

 圧倒的な練習量がそれを支えているというのなら、練習はいいこととしっかり覚えさせておくのは、彼女の今後のためになるのかもしれない。

 

「さて、次は森林ステージだ。ここから先はプレイしていないから、どんな敵が出てくるか楽しみだ」

 

 俺がそう言うと、先を知っているノブちゃんが「うふふ」と笑って言った。

 

「意外な展開が……待っていますよ……!」

 

 そりゃあ楽しみだ。

 俺達は意気揚々と、森林に足を踏み入れるのであった。

 

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