21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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161.Astral Spirits(ベルトスクロールアクション)<4>

「えっ……猿……ですか?」

 

 自由の女神を見た俺の突っ込みに対し、ノブちゃんが聞き返してくる。

 

「ああうん、『猿の惑星』。猿が支配する謎の惑星に不時着した地球の宇宙飛行士が、ラストで自由の女神を発見して、実は未来の地球に辿り着いたって気づく映画のことな」

 

「なるほど……意外な展開だと思ったのですが……ヨシちゃんにとってはそうではなかったと……」

 

「実は未来の地球……惑星テラだったっていうオチは、ゲームでも多用されているから、視聴者も驚いていないんじゃないかな」

 

『確かに驚くほどではないな』『AIと人類が惑星テラを捨てて、残されたわずかな人間が一から文明復興していたってオチの映画をこの前見た』『魔法は古代科学文明のナノマシンによる作用とか、定番だよね』『ファンタジーかと思ったらSF。それもまた王道』『我が家のような安心感』

 

 謎の大迷宮の奥底に辿り着いたら、新宿が広がっていたって3DダンジョンRPGもあったなぁ。

 

「そうだったのですか……」

 

 うお、ノブちゃんが落ち込んだ!

 よっぽど展開の意外さに自信があったんだな。

 

「いやまあ、定番ではあるけど、話が面白くないわけではないぞ」

 

「そうですか……?」

 

「うんうん、王道っていうのは下手に奇をてらうよりもいい場合だってあるんだ。ベルトスクロールアクションみたいなストーリーよりもアクションが重視されるジャンルだと、王道を貫くくらいでちょうどいいよ」

 

「そうですか……!」

 

 というわけでノブちゃんのテンションが戻ったので、ゲームを再開にする。

 がれきに囲まれた一本の道。それを真っ直ぐ進んでいく。

 

 すると、脇のがれきの山から、敵が出現する。

 それは、人の背の高さ程度のサイズを持つ機械兵器だった。脚が生えており、四本脚の機体と六本脚の機体がいる。

 砲塔が備え付けられており、また、中にはマニピュレーターでブレードを構えている機体もいる。

 

「多脚戦車か! あ、なるほど、洞窟の壁画の蜘蛛はこいつか!」

 

「はい……! 魂をこめられた攻撃しか通用しないという……過去の惑星テラにおける……殺戮(さつりく)兵器です……!」

 

『超能力に弱そう』『でも超能力が使えると言っても、人間が生身で兵器と戦うのはなぁ』『今のヨシちゃん達も生身じゃん?』『ファンタジー世界の住人はゴリラだから』

 

 はい、ゴリラいきますよ。

 というわけで、砲撃をくぐり抜け、ブレードをかわし、多脚戦車を破壊していった。

 破壊した多脚戦車は、その場で爆発を起こして四散し、何も残らず消えるようであった。どうやら、今までのモンスターとはまた違った形で死体を残さないようだ。

 ステージ上に死体が残ったら、邪魔だからな。ベルトスクロールアクションの進行の都合で、そうなっているのだろう。

 

 多脚戦車を倒して進み、途中で追加になった蜂のようなドローンもなぎ倒し、俺達は進む。

 兵器が相手ということで、遠距離攻撃が多めになったので被弾も増えた。

 ノブちゃんが回復魔法を使ってくれるので死んではいないが、俺ももう少し精進しなければいけないな。囲まれて一斉射撃されても難なく回避できるようになりたい。

 

 そうして激戦を繰り広げ、俺達は道の終点に辿り付いた。

 道は途切れており、前方には大きな穴が空いている。そこでしばし待っていると、なにやら地響きが起き始めた。

 大きな音が穴から聞こえてくる。そして、穴からはいだすように巨大な何かが出現した。

 

 それは、三つの長い首を持つ機械のドラゴンだった。

 機械のドラゴンは両の手で穴のふちをつかみ、三つの頭でこちらを見下ろしてきた。頭一つずつにHPが存在するのか、敵のHPゲージが三本視界に表示される。

 

「ラスボス……機械神デウス・エクス・マキナです……!」

 

 ノブちゃんのその言葉を聞き、俺は打刀を構えた。

 

 前に倒したドラゴンよりもはるかに大きい、機械神。攻撃できるのは、頭を地面に下ろしてきたタイミングか?

 いや、穴のふちをつかんでいる手を狙えば……!

 

 俺は、機械神の手に走り寄り、思いっきり打刀で斬りつけた。

 だがしかし、打刀は硬質な音を立てて弾かれ、相手のHPゲージは一ミリも削れなかった。

 

「機械神は頭にあるクリスタル以外は無敵です……! クリスタルを……狙ってください……!」

 

 そう言われて、俺はもとの位置に戻る。そして、機械神の頭を見上げてみると、確かにドラゴンの形をした頭には、目の部分と額の部分にクリスタルでできた弱点っぽい部位が存在していた。

 

『あれ狙うの難しくない?』『ラスボスだけ戦闘ルール変わるのあるある』『ジャンプ攻撃が鍵になるな……』『普通にカウンター狙ったら、質量差で吹き飛ばされるだろうからなぁ』

 

 そんなわけで、俺とノブちゃんの死闘が始まった。

 こちらの攻撃が届くのは、機械神が首を下げてきたときのみ。ジャンプ力はそこそこあるが、それでも巨大な機械神が首を上げれば届かなくなる。

 自然と待ちの姿勢になるが、口から極太ビームを放ってくるので油断ならない。

 だが、それでも確実にダメージを重ね、頭のクリスタルを破壊して一本、二本と機械神の首が落ちていく。

 

 やがて、残り一本だけとなった敵HPゲージはわずかとなり――

 

「ヨシちゃん今です……!」

 

「トドメだ!」

 

 機械神の首を使ったなぎ払いへのカウンターが見事に決まり、機械神のHPゲージを削りきった。

 

「よし、勝ったぞ!」

 

「いえ……まだです……!」

 

「第二形態あんのか!」

 

 穴から完全に身を乗り出した機械神が変形を始め、巨大な砲塔へと変わる。その砲塔の先は、魔法陣が描かれた空に向いている。

 

『拡散波動砲発射まで残り180秒……』

 

 そんなアナウンスが機械神から流れる。そして、相手のHPゲージが復活した。

 

「ヨシちゃん……反撃はしてこないので……時間までに破壊しましょう……!」

 

「お、最後に殴り放題か。弱点は?」

 

「特にないはずです……どこでもいいから……攻撃しましょう」

 

 よし、それじゃあ行くぞー!

 

『フルボッコタイム!』『覚えたコンボ試し放題だ』『二人とも生き生きした顔をしていらっしゃる……』『どんどんボロボロになっていくラスボスの図』

 

 打刀で斬りつければ斬りつけるほど、装甲がはげて内部が露出していく。

 電気がスパークし、火花が散る。

 これが最後だと思うので、MP(マジックポイント)をつぎ込んだ特殊攻撃を連打する。

 やがて、『残り120秒』のアナウンスが入ったあたりで、機械神のHPゲージが消滅し、砲塔がこちらに向けて倒れてきた。

 

「今度こそ勝ったぞー!」

 

 俺は倒れる砲塔をよけ、砲塔が地面と激突した瞬間に合わせて、打刀を天に掲げた。

 

「あ、そこにいると……」

 

 ノブちゃんがそう言った瞬間、機械神は爆発を起こして四散した。

 そして、その爆発に俺は巻き込まれる。

 その爆発にはダメージ判定があったらしく、俺は吹き飛ばされ、HPがゼロになった。

 

「ぐえー!」

 

『最後の最後で死によった……』『爆破オチかー』『今日はヨシちゃん死なないなと思っていたら』『初見殺しすぎる……』

 

 ひどいオチだな!

 と、そんなことを思っていると『復活しますか?』の表示が出たので、『はい』を選んで起き上がる。

 

「いやー、酷い目にあった」

 

「ごめんなさい……もっと早めに言っておけば……」

 

「ネタバレ禁止したのは俺だから、いいって、いいって」

 

 そんなやりとりをしている間に、空に輝く魔法陣がやがて消えていき、空の上から精霊オンディーヌが降りてきた。

 

 そこから精霊はなにやら語り始めたが、要約すると『ありがとう、島からモンスターを消すから、遺跡は好きにしていいよ。自分は大地に還る』という内容だった。

 そして、俺とノブちゃんは遺跡の財宝を手に入れ、町に帰還するのであった。

 というところでエンディングテーマが流れ始め、スタッフロールへと背景が変わる。

 

「ゲームクリアです。おめでとうございます」

 

 セーラー服から振り袖姿に戻った俺の横にヒスイさんが出現して、そんなことを言った。

 ノブちゃんもモンクの衣装からもとの姿に戻っている。

 

「ふう、クリアか。ヒスイさん、プレイ時間はどれくらいだったかな?」

 

「48分ですね」

 

「アーケード系ベルトスクロールと考えれば、そんなものか。ほどよい長さだったな」

 

「私は……もう少しヨシちゃんと一緒に、遊んでいたかったです……」

 

「最後の方は、お互いコンビネーションもしっかりできていたからな。楽しかった」

 

「はい……! 楽しかったです……!」

 

 本人はゲーム初心者で上手じゃないとは言っていたが、序盤のフレンドリーファイアを除いたら結構いい動きしていたな。

 いや、まあ一人だとしても練習をしてきたのだから、適切な動きは染みついていたのだろうけども。

 

『今日は笑顔のノブちゃんが見られてよかった』『確かにいつもよりも笑っていたな』『またコラボやってほしい』『次は乙女ゲームでコラボだな!』

 

「乙女ゲームの二人プレイって、いったいなんだよ」

 

 視聴者コメントに思わず突っ込みを入れてしまう俺。

 ただ、まあコラボ配信をまたやるのは悪くないかな。ノブちゃんは口下手だけど、性格の相性は悪くなかったし。

 

 やがて、スタッフロールは終わり、俺とノブちゃんのプレイヤーキャラクターが酒場で騒いでいる構図を背景に、『Fin』と文字が表示される。

 そして、タイトル画面に戻ったので、俺はゲームを終了させてSCホームへと戻った。

 

「さて、以上で本日のゲーム『Astral Spirits』は終わりだ。ノブちゃんにとっては初めてのコラボ配信だったと思うが、どうだった?」

 

「えっと……楽しかったので……またコラボやりたいです……!」

 

 ノブちゃんは両手をグッと握ってそんな感想を述べた。

 またやりたいか。光栄だな。

 

「じゃあ、今度また企画するから是非参加してくれ。もっと人数を増やして、大人数での配信もありだな」

 

「えっと……その、楽しみです」

 

「では、私はパーティーゲームを見つくろっておきます」

 

 パーティーゲームか。まあ、ヒスイさんのチョイスなら外れはないだろう。

 

「次こそ……ちゃんと練習してきますね……」

 

「ははは、ノブちゃん、パーティーゲームは別に練習いらないよ。盛り上がりさえすればいいんだ」

 

「そう、なのですか……?」

 

 ノブちゃんの疑問に、俺は「そうだよ」と答えておく。

 パーティーゲームをガチでやるのも悪くないが、訳が解らないままみんなで騒ぐのもありだろう。

 

 そして、その後、五分ほどノブちゃんと『Astral Spirits』の感想を言い合う。

 ノブちゃん曰く、フライングクロスチョップを封印するなら、鈍重なオーガ族を選択したのは失敗だったらしい。

 確かに、ノブちゃんが攻撃を回避できずにいたシーンは結構あったな。種族的な問題だったのか。

 

「さて、名残惜しいが、そろそろお別れの時間だ」

 

 と、俺は会話が途切れたタイミングで締めに入る。

 

「もう終わりですか……」

 

 心底残念そうにノブちゃんが言うが、どうやら今回のコラボ配信は本当に心から楽しんでくれたようだ。

 

「先ほども言ったように、また機会を作って、ノブちゃんと一緒に配信する時間を作りたいと思う」

 

「約束ですよ……! 絶対にですよ……!」

 

『ノブちゃん必死だな』『この子、他に友達いないから……』『俺が……俺達が友達だ!』『視聴者と配信者の間には、超えられない溝が存在するから……』『ヨシちゃん……ノブちゃんを頼むぞ!』

 

「なんで託された感じになっているんだよ。まあ、俺もノブちゃんも、今後配信は続けていくから、応援よろしくな。以上、21世紀おじさん少女のヨシムネでした!」

 

「今日は出番があまりなかった、助手のヒスイでした」

 

「あ、これ私もですよね……? ノブちゃんでした」

 

 と、ノブちゃんがそこまで言い切ったところで、配信が終わる。

 俺は肩から力を抜き、息をはいた。

 

「ノブちゃん、おつかれー」

 

「あ、はい。おつかれさまです……」

 

「配信は無事成功ってことで」

 

「そうですね……」

 

「あ、そうだ。さっき言った今後についてだけどさ」

 

「なんでしょう……やっぱり無理ですか……?」

 

 いやいや、なんでそうなる。

 涙目になるノブちゃんに、俺は「そうじゃないよ」と語りかける。

 

「別に配信外でも俺のSCホームに訪ねてきてくれていいからな。ほら、普段から俺と接して会話していると、トークも上手くなっていくかもしれないだろう?」

 

「いいんですか……?」

 

「ああ。閣下なんて、配信以外の仕事もあるのにしょっちゅう遊びに来ているぞ」

 

「グリーンウッド閣下ですか……。鉢合わせたらどうしましょう……」

 

「配信者仲間として友達になればいいんじゃないか?」

 

「と、友達ですか……。閣下と友達……」

 

「大丈夫、いけるいける」

 

 そうノブちゃんをはげましたが、結局、解散するまでノブちゃんは不安そうだった。

 きっと友達慣れしていないんだろうなぁ。学校が存在しないこの時代だと、養育施設に入らないとコミュニケーション能力の形成に問題が生じてしまうんだな。親元で子供を育てるのは立派だが、良し悪しがあるんだなぁ。

 

 まあ、俺が友達第一号ということで、今後も末永くお付き合いさせていただこう。

 一人でこの時代に放り出された俺だが、知り合いも順調に増えてにぎやかになってきたものだ。

 

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