21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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今回、著作権の切れている歌の歌詞を掲載しています。


192.ガルンガトトル・ララーシの大地に立つ

 宇宙船を降り、宇宙ステーションに入る。宇宙ステーション内部は、ぼんやりと青く光る金属で作られており、さらに天井には照明が備え付けられていてとても明るい。

 

 発光する金属とか不思議でならないが、異星文明によるものなのだろうか。

 そんな疑問を浮かべながら、集団で施設内を歩いていると、今度は緑色に光る建材で作られた部屋の前に到着した。

 そこで、フローライトさんのアナウンスが入る。

 

『ここがテレポーター施設です。順番にお入りください』

 

 そう指示されたので、俺達はきちんと並んで一人ずつ施設へと入場する。

 施設の中は、がらんとした何もない箱状の広い部屋であった。

 

 全員が部屋に入ると、壁に映像が流れ始める。それは、先ほど宇宙船からも見えた惑星の姿。

 

『これが惑星ガルンガトトル・ララーシです。青い綺麗な星ですね。でも、この青さは水によるものではありません。惑星の表面をおおう結晶生物由来の色です』

 

 結晶生物……?

 聞き覚えのない生物だ。フローライトさんがその謎の生物について説明を始めた。

 

『結晶生物は、惑星テラや惑星ヘルバにおける植物に近い存在です。知性を持たず地面に根を張って繁殖する生命体ですね。ケイ素生物の一種です』

 

 惑星ヘルバは人類文明が発見した、太陽系外にある惑星の名前だ。

 植物が存在する、惑星テラに極めて環境が近い星らしい。我が家のガーデニングコーナーにいる動く植物レイクはそこの出身だな。先ほどヒスイさんが飲んだモッコスという飲み物も、この惑星ヘルバの植物を煎じたお茶だ。

 

『惑星ガルンガトトル・ララーシの大気の主成分は窒素。それと酸素と水蒸気と二酸化炭素が少々。平均気温は180℃。重力は約0.94G。熱に関する感覚を切り替えれば、アンドロイドの身体で問題なく活動可能です』

 

「窒素と酸素と二酸化炭素か。ケイ素系の空気は含まれていないんだな」

 

 俺が隣に立つヒスイさんにそう話しかけると、ヒスイさんは小声で答えた。

 

「ケイ素ガスである水素化ケイ素、シランは、引火性の高い極めて危険なガスです」

 

「そうなのか。ほら、二酸化炭素相当の空気がケイ素であるとしたら、二酸化ケイ素とか……」

 

「二酸化ケイ素は、いわゆる石英ですね。この気温ではガスにはなりません」

 

「石英かぁ……そりゃ空気になるわけないか」

 

 どうやら、ガルンガトトル・ララーシの大気成分は、異星っぽさが薄いらしい。惑星テラに似た星だからこそ、生命が育まれたってことかな。

 

 と、そんな会話をしていると、フローライトさんが再びアナウンスをした。

 

『当ステーションは、惑星ガルンガトトル・ララーシの先住種族ギルバデラルーシによって打ち上げられた地表観測用の建造物です。彼らはコンピュータや外燃機関の技術を持たないため、全て超能力による人力で運用されていました』

 

 人力の宇宙ステーション! すげえな。軌道上に打ち上げるのも、サイコキネシスを使ったんだろうか。

 

『そこに、我々人類文明が接触し、ステーションを改修しました。照明を取り付け、重力を発生させ、宇宙港を整備しました。ギルバデラルーシは呼吸をしないため、惑星テラと同じ成分の空気を注入しています。ゆえに、本来ならば生身の人間でも活動が可能となっております。ですが、万が一の事故を防ぐため、今回はアンドロイドにソウルインストールしたアーティストのみを招いております』

 

 何かが起きて、うっかり有名アーティストが死んでしまったとかになると、せっかくの記念祭にケチがついてしまうからな。さもありなん。

 

『ギルバデラルーシはまだAIとアンドロイドに対する理解が薄く、AIのことを自動で動く道具だと認識しています。ゆえに、AIによる歌唱は本物の歌唱ではなく楽器演奏の類だと感じるようで、今回の記念祭にAIの歌手は招かれていません。AIのアーティストは今回、演奏に専念する予定です』

 

 なるほど、ミドリシリーズのヤナギさんとか人気歌手なのに、出場者に選ばれていないのはそういうことか。

 

『それでは定刻となりましたので、地上部の人類基地へと転移します。……転移完了しました。おつかれさまでした。後はAR上の指示に従い、宿泊施設に各位で移動してください。基地内の散策は自由ですが、基地からの外出は許可が必要です。ご了承ください』

 

 そのアナウンスが終わると、視界に矢印が表示された。これがARでの指示か。

 

「じゃ、移動しようか」

 

「はい」

 

 俺はヒスイさんを伴って、転移用の部屋から出た。

 すると、視界の上部に空が見えた。時刻は夜なのか、空は暗く、星がまたたいている。

 

「ヨシちゃん、空すごいですよ、空!」

 

 そんなことを叫びながら、ノブちゃんが俺の方に駆け寄ってきた。

 

「おー、綺麗な空だな」

 

「私、アーコロジーの外に、出たことないので、夜空を見上げるのって、初めてなんです!」

 

「そうなんだ。確かに俺も、この時代に来てから夜空を見上げる機会ってなかったなぁ……」

 

「両親から聞いていたとおり、とても綺麗です……」

 

 ノブちゃんに釣られて顔を上に向けて空を見上げると、一面の星の海。

 

「知的生命体が高度な文明を築いているのに、空気は汚れていないんだなぁ。これは21世紀の田舎でも見られなかったレベルの光景だぞ」

 

「うふふ。あの星のどこかに、惑星テラが、あるんですかね……ロマンチックです」

 

 惑星テラは恒星じゃないので、見えてもそれは太陽だと思うが、無粋なので黙っておく。

 

「なんで宇宙船から見た光景より、ここから見える夜空の方が、素敵に、感じるのでしょうか……」

 

「あー、確かに、星が綺麗な気がするな」

 

 空を見上げながら、ノブちゃんとそんな会話をする。

 疑問が浮かんだときは、ヒスイさんの出番だ。

 

「大気の影響ですね。上空には温度や密度が異なる空気の層がいくつもあり、その境界で光が屈折するため、地上から見た星は光がゆらいで、またたいているように見えるのです」

 

「なるほどなー」

 

「はわー、学術的です……」

 

 しばらく星を眺めていた俺達だが、ふとノブちゃんが背中のギターケースを下ろし、中からギターを取りだした。

 それは、弦の張られていないエレキギターだ。フライングV。ギターケースの形状から薄々予想していたが、ノブちゃんがフライングVだと……? アコースティックギターとかの方が、似合うんじゃないかな!

 

「ヨシちゃんとヒスイさんに、私の修行の成果を見せます! 聞いてください、『きらきらぼし』」

 

 ノブちゃんがギターを構え、手を上に振り上げる。すると、光る弦が6本ギターにかかり、ノブちゃんの手に光るピックが現れた。

 エナジーマテリアルだろうか? 未来の楽器は弦もこんなんなのか。確かにエナジーマテリアルでできているなら、弦が演奏中に切れる心配がない。

 

「Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are」

 

 ノブちゃんの演奏は続き、俺はその歌声に聞き惚れる。

 エレキギターで演奏する『きらきらぼし』というインパクトにも負けない、ノブちゃんの美しい歌声。

 なるほど、吟遊詩人を一年やり遂げたのは、嘘ではなかったらしい。

 

「Twinkle, twinkle, little star, How I wonder what you are...」

 

 やがて、歌が終わり、ノブちゃんはギターの弦を弾いて曲を締める。

 すると、いつの間にか集まっていた人間やアンドロイドの聴衆達が、一斉に拍手をした。

 

「あ、どうも。ありがとうございます。ありがとうございます」

 

 ノブちゃんはその拍手に、笑顔で手を振って答えた。

 てっきり恥ずかしがるのかと思っていたが、彼女も立派な配信者ということか。受け答えがしっかりしている。

 

 そうして五分ほどノブちゃんは聴衆達の相手をした後、俺達は解散することにして宿泊施設へと移動し始めた。

 宿泊施設は、廊下に扉が並ぶホテルのような場所で、俺とヒスイさんは相部屋だった。

 

 宿泊施設の部屋の中は、リビングに寝室、遊戯室、トイレがある。風呂場はない。ナノマシンで洗浄できる時代だから、用意されていないのだろう。

 遊戯室を確認すると、革張りのソウルコネクトチェアが二台並んでいた。

 

「おっ、ちゃんとあったな。これがあれば、楽器の練習もはかどるぞ」

 

 俺はソウルコネクトチェアを手で撫でながら、そんなことを言った。

 すると、ヒスイさんが横から半目で告げる。

 

「覚悟してくださいね」

 

 か、覚悟……?

 

「今回の記念祭は、一流のアーティスト達が集まる祭典です。そんな中で、素人丸出しの演奏を披露するわけにはいきません」

 

「お、おう……」

 

「ヨシノブ様は、ゲームで一年間ギターを練習してきたと言いました。グリーンウッド卿は昔ピアノを習っていたと言いました。では、素人のヨシムネ様はどれだけの期間、練習が必要でしょうか」

 

「ええと、時間加速して三ヶ月くらい……?」

 

「三ヶ月で済ますなら、練習時間をみっちり詰めこまなければなりませんね」

 

「うぅ、お手柔らかに……」

 

 久しぶりのVR修行か……震えてきやがったぜ……。

 

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