21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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203.Stella クリスマスイベント編<1>

『al-hadara』の配信を終え、俺とヒスイさんは人類基地の談話室でのんびり茶を楽しんでいた。

 閣下とノブちゃんの姿は見えない。今頃、それぞれの担当部族にゲーム紹介をしているのかもしれないな。

 

 さて、そんな談話室に、見覚えのある顔がやってきた。

 二十歳ほどの姿をしたマザー・スフィアと、AI研究者のアルフレッド・サンダーバード博士だ。

 

 マザー達はカウンターで何かの飲み物を受け取ると、なぜかこっちに近づいてきた。

 

「よかった、話があったんですよ、ヨシムネさん」

 

 そう言いながら、俺達の座るテーブル席に着くマザー。

 

「お久しぶりですね。それと、博士は初めましてかな」

 

 とりあえず、無難に挨拶をしておく俺。マザー相手には未だに敬語だ。人類文明で一番偉い人だからな。

 

「はい、お久しぶりですね。フレディ、こちら、21世紀おじさん少女のヨシムネさんです」

 

 フレディと呼ばれたサンダーバード博士が、こちらを見る。

 

「ああ、話は聞いている。アルフレッド・サンダーバードだ。よろしく。ギルバデラルーシとの交流は、上手くいっているようだな」

 

「そうですね。さっきまで、人類の文明を紹介するようなゲームを元大長老と一緒にやっていたところです」

 

「仕事しながら見ていたよ。あのゲームを使ったのは、着眼点がよかった。彼女達も、かなり人類への理解が深まったんじゃないか」

 

 サンダーバード博士に褒められた。だが、功労者は俺じゃない。

 

「ゲームを選定してくれたのは、こちらのヒスイさんですね」

 

 俺がそう言うと、サンダーバード博士がヒスイさんの方をチラリと見る。

 

「日本田中工業……今はインダストリだったか? そこのミドリシリーズか。うちの研究員にもアオシリーズの子がいるが、かなり優秀なAIだな」

 

 アオシリーズは、ニホンタナカインダストリの業務用男性型アンドロイドだったかな。

 ヒスイさんは、「恐縮です」と言って頭を下げる。

 

「そういえば今まで姿を見なかったですけど、マザーもこっち来ていたんですね。やっぱり記念祭に出るんですか?」

 

 俺がマザーにそう話を振ると、コーヒーを飲んでいたマザーはコップをテーブルの上に置いて答える。

 

「この惑星には先ほど到着したばかりですよ。先日まで、人類圏への通信がとても細かったので、こっちに来られなかったんです」

 

「それはどういう……?」

 

「ほら、私って本体は別のところにあって、アンドロイドは全部遠隔操作ですから。本体がどこにあるかは、秘密ですけどねっ」

 

 ああ、マザーって、アンドロイドボディを同時に何箇所にも派遣して、遠隔操作して人と交流しているんだったな。

 今目の前にいるマザーも、遠隔操作された機体ってわけだ。

 

「それで、昨日になってようやく、この惑星にある人類圏との本格的な通信設備が稼働したんですよ」

 

 耳にあるアンテナを触りながら、そんなことをマザーが言った。

 

「これまでは、この惑星に派遣していた研究員の超能力で、細々と通信していたんだ」

 

 サンダーバード博士がマザーに続けてそう言った。

 超能力で通信。テレポーテーション通信のことだろう。今の人類は、超能力による人力技術が文明の下支えになっているからな。

 

「通信施設は、ソウルコネクトチェアの対価としてギルバデラルーシの超能力を借りている。私もいろいろ交渉を手伝わされたよ。私は研究者であって、外交官ではないというのに」

 

「フレディにはその節は、お世話になりました。ちなみに惑星内のタキオン通信もこの施設で行なっているので、ゲームの通信対戦をしたいギルバデラルーシの方々が、率先して管理と動力の確保をしてくれていますよ。これも、ヨシムネさんがゲーム紹介してくれたおかげですね」

 

 テレポーテーションの動力源は人間じゃないのか。そして、委託に至った背景には、俺と閣下、ノブちゃんのゲーム紹介があるわけね。

 俺も率先してゲーム紹介をやったわけじゃなくて、あくまで仕事として頼まれただけなのだが、感謝されるのは悪くないな。今では、ゼバ様と一緒に遊べてよかったと思っているし。

 

「そういうわけで通信が確立しましたので、次からは問題なく『Stella』のプレイが可能ですよ」

 

 と、マザーが言う。

 ああ、そうか。プレイの予定をしていた『Stella』はMMORPGだから、サーバとの通信経路が確立していないとプレイができないのか。

 間に『al-hadara』のプレイを挟んで配信スケジュールが遅れてしまったと思っていたが、どのみち昨日になるまではできなかったわけだ。

 

「それで、ヒスイちゃんにプレイ方針のメモを送っておきますので、ヨシムネさんも見ておいてくださいね」

 

「ん? 適当に散策でもして終わろうと思っていたけど、何かあるのか?」

 

 マザーの言葉に、俺はそう尋ねる。すると、マザーはニッコリ笑って答えた。

 

「この基地に居たら解らないでしょうけど、世間ではすっかり冬至のお祭り、クリスマスムード一色ですよ!」

 

「ええと、つまり……」

 

「ヨシムネさんとヒスイちゃんには、ゼバさんと一緒に、クリスマスイベントを攻略してもらいます!」

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 ということがあってから翌日、俺とヒスイさんは、ゼバ様と一緒に『Stella』をプレイすべく、配信を開始した。

 本日は、前回までのゲルグゼトルマ族に限定した配信とは違い、惑星ガルンガトトル・ララーシにいる全部族が視聴者としてやってきていた。

 

 どうやら、惑星中にソウルコネクトチェアを配布する作業は完了したらしい。

 記念祭は1月1日で、今日は12月23日なので、それなりの余裕をもって配り終えたようだな。

 

 さて、『Stella』である。

 俺はゼバ様に『Stella』の招待コードを贈って、ログインをした。すると、ゼバ様が『Stella』への初回ログインをした通知が来たので、ヒスイさんと一緒に、ゼバ様のもとへと飛んだ。

 

『Stella』では、招待コードを贈った知り合いのキャラメイクとチュートリアルに同行できるというシステムがある。

 キャラメイクの青い不思議空間に飛んだ俺は、最初のキャラクター名入力画面から進行せずに待っていたゼバ様に手を振った。

 

「来たか。……ヒスイはいつも通りだが、ヨシムネ、妙に小さくないか? それに、頭部がいつもと違うようだが……それは触角か?」

 

 ゼバ様は俺の姿を見ていぶかしげな声をあげる。

 今の俺は、『Stella』のキャラクター、かたつむり観光客こと、天の民だ。

 その特徴は、ロリロリなぷにぷにボディ。そう、妙に小さいのだ。触角に見えるのは、アバター装備のウサギ耳だろう。

 

「そういう種族のキャラクターを操作しているんだ」

 

「そうか。そういうのもありなのだな。では、始めるとしようか」

 

 ゼバ様が早速とばかりに話を切り出したので、俺はゼバ様に手順を説明する。

 

「これから、使用するキャラクターを決めていくぞ。これは自分が操る仮の肉体を作る作業だ」

 

「うむ。私も、ルールに従って架空の人物を作り上げ、それをサイコロの目で操作して冒険するテーブルゲームに馴染みがある」

 

「ギルバデラルーシにも、テーブルトークRPGみたいな文化があるんだなぁ……」

 

『幻影も用いて本格的だぞ』『ヨシムネも一度やってみるといい』『ヨシムネを私達の遊戯に誘うのはいいな』『なかなか白熱する』『テーブルトークRPGとやらも気になるな』

 

 サイコロの目で操作というから、もしかしたらテーブルトークRPGもどきじゃなくて、ただのスゴロクだったりして。

 それはそれとして、まずはキャラクター名の入力だ。

 

「ここは、『ゼバ』って入力すればいいかな。部族名まで入れると長すぎるから、いろいろ不便になる。もちろん、本名じゃない仮の名前を入力してもいいんだが」

 

「ここは本名でいこう。私の分身を作るのだ」

 

 そう言ってゼバ様が、入力ウィンドウに名前を入力する。

 

『キャラクター名が決定しました。性別を選んでください』

 

「性別、性別か……私に雌雄はないのだが」

 

「大丈夫、なしの選択肢もあるから」

 

 もしここで男か女の性別を選んでも、選択種族によっては強制的に「性別なし」に変えられることもあるらしい。

 

『種族を選択してください』

 

 さて、ここからが本番だぞ。

 選択ウィンドウが表示され、そこに八つの基礎種族が表示されている。

 それを興味深そうに見るゼバ様だが、今回はそこから選ばせるつもりはない。

 

「ゼバ様、いろいろ種族があるけど、実は今回、ゼバ様用に用意された新種族があるんだ」

 

「ほう?」

 

「『その他の種族』ってところから選べる、ギルバゴーレムがその新種族だ」

 

「どれどれ……」

 

 その他の種族を選択すると、膨大な量の種族が並ぶが、俺はゼバ様に検索機能を使わせてギルバゴーレムを表示させた。

 

 ギルバゴーレム。特殊な鉱石で構成された未知のゴーレム。超能力の技術を持ち、胆力と頑強さに優れる代わりに、動きが鈍重で防具を装備できない。

 と、そんな説明文が書かれていた。

 

 サンプルとして表示された見た目は……以前、記念祭の説明会で見た、ギルバデラルーシの岩の鎧という物に似ていた。

 

「これは、岩の鎧を着た私達……か?」

 

「えーと、マザー・スフィアのメモによると、岩の鎧の形をしたゴーレムらしい」

 

「ゴーレムとは?」

 

「魔法で動く、大きな人形かな。身体は自然物でできていて、石でできたストーンゴーレムとか、泥でできたマッドゴーレム、木でできたウッドゴーレムとかがいる。全部、ファンタジーの中で登場する架空の存在だ」

 

「魔法の人形か。それに私の魂が宿り、動くというわけだな」

 

「うん、そんな感じ。体高は2メートル」

 

「小さくないか?」

 

「このギルバゴーレムは、ギルバデラルーシのプレイヤーが人間の生活圏で活動しやすいよう用意された種族らしい。それとは別に、ギルバデラルーシそのものを新種族として後日実装予定、だそうだ。そっちは体高最大6メートルにできるようだぞ」

 

「なるほど。ヨシムネと足並みをそろえるなら、このギルバゴーレムがよさそうだな」

 

 ゼバ様は迷うことなく、種族を決定した。

 そして、見た目の調整へと入る。

 

 ゼバ様は各項目をしっかりと見て、岩の鎧の見た目をしたギルバゴーレムの外観をいじり始める。

 ゼバ様にはこだわりがあるのか、すんなりと終わりはしなかった。作っている間にも視聴者達が外観に様々なコメントを投げかけており、ゼバ様はそのコメントに影響されて微調整を入れ、その後に「何かが違う!」と叫んで微調整を繰り返した。

 

 うーん、キャラメイクって、こだわり出すと時間を無限に食うんだよな。今の俺は配信のために現実準拠の見た目しか使わないので、沼にはまらずに済んでいるが。

 

 そして、30分が経過し、ヒスイさんが「配信の時間がなくなるので、あと五分で切り上げてください」と注意を投げかけた。

 すると、ゼバ様はいろいろ諦めたのか、見た目の調整を終えた。

 

 次に、選択スキルの決定。

『Stella』はキャラクターレベルが存在しない完全スキル制のゲームだが、その中で特に集中して鍛えたいスキルを三つ選ぶことができる。

 

 ゼバ様はここでも10分ほど悩み、攻撃用に『サイコキネシス』、移動用に『歩行』、趣味用に『管楽器演奏』のスキルを選んだ。それにともない、肩書きが『旅の演奏家』になった。

 

「移動はテレポーテーションじゃなくて大丈夫か?」

 

 俺がそう尋ねると、ゼバ様が答える。

 

「作成した直後のキャラクターは未熟なのだろう? つまりソウルエネルギーが少ないということだ。ならば、サイコキネシスを移動の補助に使い、要所要所で歩いてヨシムネ達に遅れないようにせねば」

 

「管楽器演奏は? 音楽とか演奏っていう幅広い範囲のスキルもあるし、トランペット演奏みたいな一個の楽器を専門に扱うスキルもあるぞ」

 

「管楽器だけを幅広く扱ってみたい。ゆえに、このスキルを選んだ。ギルバゴーレムは呼吸ができるのだろう?」

 

「マザーのメモによると、そうらしいね。一応、実装予定のギルバデラルーシも、普段呼吸はしないが楽器演奏のために一時的に息ができるようにするらしい」

 

『朗報だ』『私もそのゲーム絶対にやるぞ』『いつからできるのだ』『大長老がうらやましい』

 

 ゼバ様をうらやむコメントがどんどん出てくるが、ゼバ様は「キュイキュイ」と笑って流した。

 

 以上で、キャラメイクは終了。

 次はチュートリアルが待っている。戦闘訓練も行なわれるが、はたしてゼバ様は作りたてのキャラクターの脆弱極まりない超能力に耐えられるだろうか。

 

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