21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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エピローグ
214.21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!


「よーし、お前ら、レースするぞー!」

 

『わーわー』『よき』『よきかな』『私が勝つ!』『乗りこめー!』

 

 宇宙暦300年記念祭から一ヶ月が過ぎ、人類と異星人の交流が本格的に開始された。

 

 様々なゲームがギルバデラルーシにも公開され、人類のネットワークにギルバデラルーシが参加するようになった。

 俺と閣下、ノブちゃんの三人の頑張りの結果によるものか、異星の彼らはゲーム配信にも興味津々だ。ヨコハマ・アーコロジーに帰ってから再開した俺の配信にも、彼らが多数接続してきた。

 

 配信中の抽出コメントを聞くに、人類とギルバデラルーシは価値観が違うものの、どうにか仲よくやっているようだ。

 

「ギャラクシーレーシング、始めるぞー!」

 

 そして俺は、両種族のさらなる融和を図るため、視聴者参加型の配信を企画した。

 正直なところ、俺の配信の視聴者はそれなりに多い。その人達が全員参加できるゲームとなると、そうそうない。

 

 そこでヒスイさんが選んでくれたのは、以前ミドリシリーズの全員と一緒にプレイしたゲーム、『ギャラクシーレーシング』だ。

 

『ギャラクシーレーシング』は、宇宙船を操縦して行なうレースゲームだ。

 

 一度のレースで最大一万人が同時プレイできるが、有料のサーバを借りれば、その一万人のレースを同時にいくつも並行して開催できる。

 さらに、レースの主催者が『ギャラクシーレーシング』のソフトを持ってさえいれば、参加者はゲームを購入していなくてもよいという、まさに視聴者参加型の配信向けの仕組みだ。

 

 サーバを借りると参加人数に応じてそれなりにクレジットがかかるが、一級市民に配給されているクレジットの額と比べたら微々たるものだ。

 

「各ブロックの一位を集めて決勝戦を行なうから、みんな張り切って競い合ってくれ!」

 

 俺がそう言うと、コメントがさらに盛り上がる。

 

 さて、俺が出場するのは第一レースだ。第一とはいっても、他のレースと同時開催なので番号はどうでもいい。

 今回ばかりはヒスイさんも敵であり、彼女は俺と同じ一番レースに出場するため、大人げない妨害が予想された。

 

 そう、このゲーム、他者の妨害が可能だ。

 コースの途中でアイテムを拾うことができて、そのアイテムの効果で有利になったり、相手に不利を押しつけたりできる。

 アイテムの活用が勝利の鍵となる。ただし、レースなので、機体選択も重要だ。

 

 俺は、機体を吟味して、直線加速が速い宇宙船を選び出した。

 

『主催者はコースを選んでねっ!』

 

 今回のレースの肝は、機体を選択した後にコースを決めることができるという部分だ。

 つまり、参加者はコースに合わせた有利な機体を選ぶことができない。ただし、主催者の俺を除く。

 

 さらに言うと、視聴者の大半はこのゲームを未経験で、操作方法を学ぶところから始めなければならなくて、俺はこのゲームの経験者。

 ふっ、勝ったな。ヒスイさんさえいなければな!

 

 ……ヒスイさんのことを考えたら、こりゃあ勝てるかどうか結構怪しいな。一応、少しでも勝率を上げるため、直線加速が速い機体に有利なコースを選ぶ。

 

「コースはこれだ。ダイソン球」

 

 恒星の周りを構造物で囲んだという、人工の超巨大球体を周回するコースだ。

 障害物が少なく、コース自体もあまり曲がりくねっていないが、時折地面から火柱が噴き出るという危ないコースである。火柱が噴き出るダイソン球って一体なんなんだよ。

 

『げっ、このコースか』『どういうコースなのだ?』『ダイソン球かー。現実には存在しないガジェットだな』『通称噴火ロードだね』

 

 どうやら、ゲーム経験者が視聴者の中にもいるらしい。まあ、第一レースに混ざってなければそれでいい。

 ヒスイさんに勝てるかは判らないが、このレース、本気で取りに行く! 視聴者のみんなは初心者ばかりだろうから、順位を気にせず楽しむことだけ考えてくれ! その間に俺が勝つから!

 

『参加者全員の準備が完了したよっ!』

 

 宇宙船のコックピットに移動した俺は、操縦桿を握ってレースの開始を待つ。

 

『レース開始10秒前!』

 

「勝つぞ勝つぞ俺は勝つぞ。決勝戦に参加できず実況アナウンサー担当なんて、受け入れないぞ」

 

『3……2……1……スタート!』

 

 うおー、アクセル全開!

 

 機体性能で独走できるかと思ったが、意外とみんなもやるもので、宇宙船の群れが塊となってコースを直進していた。

 皆でまとまって直線を駆け抜ける。だが、いいのかな? ここは噴火ロードだぞ。

 俺は、ちょいっと操縦桿を右に傾けた。

 

 次の瞬間、コースのど真ん中に巨大な火柱が立ちのぼり、いくつもの宇宙船を飲みこんだ。

 

「はっはっは、油断大敵だ!」

 

 火柱に当たった機体は、冷却のため数秒間行動不能になる。

 コースの真ん中を直進していた機体と、左右に火柱をかわした機体とで、明暗が分かれた。

 だが、左にかわした人はご愁傷様だ。次はコースが右へカーブするからな。

 

 そうして、俺は順調に宇宙船を飛ばしていく。

 途中で手に入ったアイテムは自己加速アイテムだったので、アイテムのエネルギーを上手くチャージして、一気に前へと飛び出すことができた。

 

 このまま逃げ切りたいが、先頭に出たら狙われるもの。

 スタン砲が飛んできて被弾してしまい、暫定一位を他者に奪われた。

 

「ふふふ、でもいいさ。先頭は、みんなから狙われて不利だからな。最後のギリギリで奪えばいいんだ」

 

 俺は配信向けにそんな説明台詞を言って、アイテムが格納されているサポートボックスへ向けて機体を加速させた。

 

 激しい攻防が繰り広げられ、やがてレースは終盤へ。

 エネルギーチャージ済みの自己加速アイテムを温存していた俺は、最後の直線でアクセルを全開にした。

 先頭の機体の後ろにつき、アイテムを使うタイミングを狙う。

 

 ここか。まだだ。いける。まだだ。ここだ!

 

 アイテムによる加速で一気に一位へ躍り出ようとした、その瞬間。

 俺の機体は雷撃を受けていた。

 

「!?」

 

 そして、先頭を走っていた機体はそのまま真っ直ぐに進み、ゴールへ。

 雷撃で撃ち抜かれた俺の機体は、しばし減速した後、遅れてゴールへと飛びこんだ。

 

「マジかー」

 

 その後、全機体が無事に完走し、レースが終わる。

 

 宇宙船を降り、ダイソン球の表面に移動した俺は、巨大な電光掲示板に表示されたレース結果を見る。

 

 一位、知らない人。

 二位、俺。

 三位、ヒスイさん。

 

「ありゃ。もしかして俺に雷撃放ったの、ヒスイさんかな?」

 

「そうですよ」

 

 背後から急に声をかけられて、俺はびっくりして肩を跳ねさせた。

 後ろを振り向くと、ヒスイさんがいた。

 

 ヒスイさんは一位になれなかったというのに、嬉しげだ。そんなヒスイさんに、俺は言う。

 

「雷撃は一瞬しか動き止まらないから、妨害としては弱いんだよね。三位で残念だったね」

 

「いえ、想定通りの結果です」

 

「うん?」

 

「これで、決勝戦を私とヨシムネ様の二人で実況できます」

 

「んなっ!? はかったな、ヒスイさん!」

 

「ふふふ、ヨシムネ様がいけないのですよ……」

 

 と、意味不明なやりとりをして、俺達のレースは終わった。ちなみに一位はギルバデラルーシの人だった。「キュイキュイ」言って、めっちゃ喜んでいた。

 

『駄目だった』『一万人レースで一位とか無理ー』『芋洗い状態で笑ったわ』『これだけの人数が同時参加できるとは、すごいゲームだ』

 

 そんな視聴者のコメントが流れる中、決勝戦が始まる。

 俺とヒスイさんは、用意された実況席でレースの様子を実況していった。

 

 さすが、各レースの一位が集まっているだけあって、激戦だ。

 決勝戦の参加者は、人間とギルバデラルーシ、そしてAIが入り乱れた状態で、理想通りの配分と言っていい。

 

 熱い戦いを俺は全力で実況し、ヒスイさんが解説を入れる。

 視聴者達が楽しげにコメントを入れ、決勝戦の参加者がしのぎを削る。

 

 そして、みんなが盛り上がったままレースは無事に終了した。

 

「一位を獲得したのは、ウェヌス第23コロニーからお越しの――」

 

 表彰を行ない、皆で賛美を送る。

 AIを出し抜いて人間の参加者が勝利したのだ。これはかなり誇っていいと思う。

 

 その後、全員参加レースと決勝戦を交互に行ない、二時間ほど遊んだ。

 人間もギルバデラルーシもAIも、みんな楽しくやれたと思う。異種族間の融和は成った。それを実感できるひとときだった。

 それをかみしめながら、本日の配信を終える。

 

「以上、一度も一位が取れなかった、21世紀おじさん少女のヨシムネでした」

 

「一度も一位を取らせなかった、助手のヒスイでした」

 

 VR空間からログアウトし、俺はヨコハマ・アーコロジーの自室で目覚める。

 ソウルコネクトチェアに座った状態で、俺はしばらく天井を眺める。

 その横で、ヒスイさんがじっと立っている。

 

「……ヒスイさん」

 

「なんでしょう」

 

「お疲れ様。今日もありがとう」

 

「はい、ヨシムネ様も、お疲れ様でした」

 

「本当にありがとうね」

 

「……? はい」

 

 ヨコハマ・アーコロジーに帰ってきてからというもの、しばらく俺は、毎夜寝る前に、家族の手紙を読み返していた。

 望郷の念にかられるが、この手紙は過去にとらわれるための物ではなく、未来を生きるための物だと思い返し、それ以来読み返すことをやめて、大切にしまっておくことにした。

 その間、ヒスイさんは何も言わずに、優しい顔で俺を見守っていてくれた。

 

 過去へは戻れないが、俺には今がある。未来がある。

 

「ヒスイさん、次はなんのゲームを配信しようか」

 

「そうですね。スゴロク系ゲームなどはいかがでしょうか」

 

「いいねいいねー。どんなの?」

 

「恋愛スゴロクです」

 

「恋愛!? ちょっとどんなのか予想できないな……」

 

「21世紀の学園に入学した女子生徒となり、数々のヒーローと恋愛を繰り広げる、乙女ゲームの一種です」

 

「ノブちゃんがめっちゃ食いつきそうなやつ! でも、俺にはハードル高すぎない?」

 

「大丈夫ですよ。ヨシムネ様ならいけます」

 

「なんの根拠があるんだそれ……」

 

「大丈夫ですよ。なぜなら、今のヨシムネ様は、おじさん少女なのですから」

 

「おじさん少女は、魔法の言葉ではない!」

 

 俺のその言葉に、ヒスイさんは表情を崩して笑みを浮かべる。そして、その足元に座る猫ロボットのイノウエさんが、小さく鳴いた。

 

 俺は21世紀おじさん少女のヨシムネ。未来の世界で生きる、ゲーム配信者だ。

 ヒスイさんに助けられ、時には視聴者達に翻弄(ほんろう)されながら、これからも俺は配信を続けていく。

 




「21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!」は以上で完結です。
なお、気が向いたときに番外編を掲載していく予定です。

あとがきは2021年11月6日の活動報告に掲載しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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