21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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EX9.MECATECH BATTLE CITY(シミュレーション)<2>

 さて、ロボメカ製作バトルゲーム配信、第二戦だ。

 進行役のヒスイさんから告げられた第二戦のテーマは、『空中戦』。要するに空飛ぶメカを造れってことだが……大丈夫かねぇ。

 子供時代にプレイしたことのある走行メカ製作ゲームでは、空飛ぶメカを長時間飛ばすことは相当困難だった記憶があるのだが。

 

 まあ、このゲームは自分で全部メカを組み上げるというよりも、造りたい物をオートで組み上げてもらう、製作者というよりも企画者的な役割を負うシミュレーションゲームではある。なので、ずっと飛び続ける機体を頼めば、それだけで完成するかもしれないな。

 

 と、そこまで考えたところで、ヒスイさんが場の進行を続ける。

 

「それでは製作に入っていただきますが、配信のカメラはお二方のうちどちらか一方を映していきたいと思います。まず、第二戦はヨシムネさまが製作する様子を配信します」

 

 おっと、俺と田中さん二人の製作の様子を同時に映すわけじゃないんだな。つまり空中メカを造る光景がすべて視聴者の人達に公開されるわけで……。不甲斐ない様子は見せられないな!

 

「よろしいですね? では、始めてください」

 

 ヒスイさんの号令で、目の前から田中さんが消え、周囲の風景も切り替わる。

 広い格納庫はそのままだが、格納庫は天井が開いており、見上げると晴れた空が目に映った。

 

「うーん、空飛ぶメカか。何がいいかなぁ。戦闘ヘリ、戦闘機、空飛ぶロボ……」

 

『戦闘ヘリってスピードで負けそう』『戦闘機って小回り利くの?』『やっぱりロボットでしょ』『空を飛ばない機械を飛ばすのも一興』『空飛ぶ戦車にしてリベンジを』『空だと球体が強い』『宇宙ならともかく空を飛ばすなら球体はそこまでではないような』

 

 しばらく悩んでいると、視聴者コメントが様々な案を出して盛り上がっていく。

 ふむふむ。さて、どうするか。

 

「ヨシムネ様、時間制限は設けておりませんが、配信の時間内に収まるよう気をつけてください」

 

 と、ここでヒスイさんから巻きでいくよう要請が入った。

 ま、勝敗で何かが決まるわけでもないし、そこまで本腰をいれずにやってみるかね。

 

「じゃあ、田中さんは高確率で人型ロボットを造ってくるだろうから、こちらも空中戦用の人型ロボットでいくかー」

 

『スラスターいっぱいつけよう!』『ビット兵器で惑わそう!』『突撃してパイルバンカー』『自動操縦だからGを無視した急加速とかもできますよ』

 

 そんな視聴者のコメントを味方につけながら、俺は最高に強い人型ロボットを目指して、製作を進めていった。

 数十分後、渾身の出来と言える人型ロボットが格納庫に収まっていた。重力下で空を飛ぶので、あまりゴテゴテとさせずに軽量化を目指した。その結果、武装は腕部に備え付けたビームバルカンと、右手のビームソード、左手のビームシールドと、割と簡素な構成だ。

 その代わり背中部分にはX字に生えたスラスターが、空中での小回りが利くようバランスを考慮して配置してある。

 

「完成! 名付けて機動ロボ・スカイエックス!」

 

『できたー!』『完璧だ』『これはヨシちゃんの勝ちですな』『私達のロボに負けはない』

 

 視聴者コメントにかなりの部分を任せて造ったため、完成したロボットに視聴者達も満足感を覚えたようだ。

 そんな中、俺の横にずっといたヒスイさんが、確認するように言った。

 

「完成でよろしいですね? では、対戦といきましょう。お互い、格納庫からの発進となります。相手の格納庫は数キロ離れた場所にありますので、対戦は相手を探すところから始めることになります」

 

「お、索敵からか。レーダー積んでおいてよかったなー」

 

 視聴者からのアドバイスで、武装は少ないものの空中戦に必要な機能はいろいろと付けてあるのだ。

 

「それでは、戦闘開始です」

 

 ヒスイさんがそう宣言すると、俺達のロボット、スカイエックスが起動する。

 そして、自動操縦で格納庫の天井から飛び立った。

 

 そこから、スカイエックスを遠目から見た形の映像が、目の前に開く。

 

 スカイエックスは、一方向を目指して真っ直ぐに飛行している。

 下にはビル街があり、敵の攻撃からの遮蔽物に役立ちそうな環境となっていた。ふーむ、これは、身を隠しやすい人型ロボットにして正解だったか?

 

 そんなことを考えていたときのこと。スカイエックスの正面から何かが飛んできて、一瞬で交差してスカイエックスにぶつかった。

 次の瞬間、スカイエックスを巻き込んで何かが爆発する。

 

『えっ!?』『なんだ?』『速すぎて見えない!』『エックスー!』『大丈夫だ、シールドで防いだ』

 

 お、おお。空中戦、思ったよりもスピードがすごいぞ!

 

「では、田中様の機体の映像も表示いたします」

 

 ヒスイさんがそういうと、目の前にもう一枚、投影画面がポップアップしてくる。

 そこに映っていたのは……。

 

「戦闘機じゃん!」

 

 意外なことに、田中さんが用意したメカは人型ロボットではなく、バリバリの戦闘機だった。

 

『ガハハ、驚いたか!』

 

 通信がつながっているのか、田中さんの声がこちらに届いた。

 

「うへえ、スラスターがあるっていっても、戦闘機相手だとスピード勝負では勝ち目がなさそうだ……!」

 

『あっ、旋回してミサイル撃ってきた』『さっきシールドで防いだのはこれか』『あ、エックスさすが』『高度を下げた!』

 

 おっと、スカイエックスが高度を下げて、ビル街に紛れ込んだな。上空からの爆撃が来ても、ビルを盾にしてある程度しのぐことができそうだ。

 それに、最高速ならともかく、小回りなら戦闘機よりも人型ロボットの方が上だ。そのへんを上手く突いてくれれば……。

 

『おっと、それは甘えな!』

 

 田中さんがそう言った瞬間、戦闘機が空中で変形し、人型ロボットに姿を変え、スカイエックスと同じようにビル街に降りてきた。

 って、戦闘機から人型ロボットへの変形って、それってまさか……!

 

「マクロス! それマクロスじゃん!」

 

 またアニメネタで来やがった!

 

『違えよ、マクロスは超時空要塞、宇宙戦艦だ。これはマクロスに出てくる、可変戦闘機の方だ!』

 

「あ、そうなの?」

 

『おうよ。VF-1 バルキリー、宗一郎カスタムってところよ』

 

 そこから、ビル街を舞台にした戦闘が繰り広げられるのだが……。

 

「空中戦とはなんだったのか」

 

 俺がそう言うと、視聴者達も口々と同意するようにコメントを返してきた。うん、空じゃなくて地上メインで戦っているね。まあ、地に足はつけていないけど。

 

 それからしばらく戦っていたのだが……。スカイエックスがビルを盾にし続けるというゲリラ戦法に徹し、一方で田中さんの機体はミサイルを撃ち続けたもののミサイル切れを起こした。そして、その隙に近づいたスカイエックスが、近接戦を挑む。

 田中さんの機体はレーザーで応じるものの、近接用の武装は存在しなかったようで、スカイエックスがズンバラリンとビームソードで田中さんの機体を切り刻んだ。

 

『かーっ、空に逃げたら勝ち目は十分だったっていうのに、今度はこっちの戦闘プログラムの練り込みが浅かったか!』

 

 田中さんは残念そうにコメントを残して、第二戦は終わった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 第三戦。ヒスイさんから告げられたテーマは、『自由』。何もない荒野を舞台に戦うので、自由に機体を造って存分に戦いきってほしい、だそうだ。

 そして、製作の間、配信は田中さんの方を映すことになる。

 

 試合開始まで、俺の機体は謎に包まれたままってことだ。なるほど、それなら、みんなをあっとおどろかせる機体にしようか。

 そんな思いで自由に機体を組み、数十分後、自由なバトルの幕が上がる。

 

 荒野で向かい合う二つの機体。

 田中さんのメカは、『千手ロボット』。千手観音のごとく、背中から無数の腕が生えた人型ロボットだ。

 一方の俺はというと。

 

『なに、この、なに?』『水車?』『いや、これは……』『パンジャンドラムじゃん!』

 

 そう、俺が用意したのは、第二次世界大戦のイギリス軍が生みだした、珍兵器。自走式の爆弾兵器『パンジャンドラム』である。

 見た目は、二つの水車が合わさって一つの巨大な車輪になったような、そんな独特の形状をしている。

 

『うおっ、こりゃまたずいぶんなゲテモノを……』

 

 おーい、元ブリタニア教国の中将閣下。イギリスの画期的兵器がゲテモノだってよ!

 まあ、俺もゲテモノだとは思うけどな!

 

 そんな混沌とした状況の中、ヒスイさんが淡々と開始を告げる。

 

『それでは、戦闘開始です』

 

「ぱんころー」

 

 戦闘開始と共に俺は、パンジャンドラム発進のお決まりの台詞を言い、目の前に開いていた荒野の映像の中のパンジャンドラムが、勢いよく発進する。車輪のような珍兵器は、車輪のように自ら転がって相手に向かっていった。

 

『うおお、避けろー!』

 

 爆弾満載の機体が素早く転がり、千手ロボットへ向けて突進していく。だが、パンジャンドラムは愚直に直進するのみであり、千手ロボットはひらりとそれを回避する。

 まあ、こうなるよね。しかしだ。

 

『うお、避けても追尾してきているぞ』

 

「ふふふ、田中さん。こいつはただのパンジャンドラムではないぞ。敵をどこまでも追い続ける機能搭載型だ!」

 

『ゲテモノに高度な改造を施しやがって!』

 

 千手ロボットが回避した方向へ、パンジャンドラムは急旋回して再び大回転して突進を続ける。

 何気に小回りも利く、この改造パンジャンドラム。一方で、千手ロボットは、遠距離武装は一つも積んでいない益荒男ぶり。どうやら機体コンセプトは、無数のアームで殴るだけのようだ。テーマが『自由』だからって、自由すぎるだろ。

 しかし、爆弾がくくりつけられているパンジャンドラムを不用意には殴れないようで、回避を続ける千手ロボット。

 

 やがて、千手ロボットはパンジャンドラムをその無数のアームで抱えるようにして受け止めた。

 

『よく止めた!』『体当たりしかできないなら、もう勝ちやん』『よし、そのまま投げ飛ばせ!』『パンジャンドラム恐るるに足らず!』

 

 視聴者コメントが千手ロボットを褒めたたえる。なるほど、これは千手ロボットが取り得る、最善の選択なのかもしれない。

 まあ、でも相手は爆弾兵器なわけで……。

 

『ああー……』

 

 田中さんは状況を理解しているのか、そんな落胆するような声を上げた。

 そして、次の瞬間。千手ロボットの手の中で、パンジャンドラムは大爆発を起こした。

 

「ははは、当然ながらパンジャンドラムの戦闘AIには起爆の判断も任せてあるぞ!」

 

 高らかに俺はそう宣言する。やがて爆発の煙が晴れたその跡には、バラバラになったパンジャンドラムと、スクラップと化した千手ロボットが残されていた。

 

『え、ええー……』『自爆兵器ってこと!?』『どういうことなの……』『笑うしかない』

 

『パンジャンドラムとは、20世紀の第二次世界大戦中に当時のイギリス、今でいうブリタニア国区で開発された自走式の自爆兵器です。当時としては珍しい大型の無人兵器であり、機体ごと爆発することで敵を撃破する目的で試作されました』

 

 最後にヒスイさんによるパンジャンドラムの解説が行われ、ゲストとの対戦会は一勝一敗一引き分けで終わったのであった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 VRでの配信を終え、リアルに帰ってくる。

 意識が戻って目に映った光景は、あまり見覚えのない天井と壁。そう、ここはニホンタナカインダストリにあるVR接続用の個室だ。

 俺はソウルコネクトチェアから起き上がり、個室から出る。

 

 すると、同時に別の個室から田中さんが出てくる様子が見え、俺は彼に向けて挨拶をした。

 

「どうも、おつかれさまです」

 

「おう、おつかれさん。配信とか経験少ねえから、なかなか楽しかったぞ」

 

「そう言っていただけたなら嬉しいです」

 

「本当なら、ゼバのやつも出したかったんだがなぁ」

 

 ゼバ様か。田中さんと一緒に、異星人である彼もこのニホンタナカインダストリにやってきているんだよな。

 ゼバ様も配信のゲストに出ないか打診はしたのだが、断られてしまった。

 

 いつもなら、ゼバ様は喜んで俺の配信に出てくれるのだが……今のゼバ様はなぁ。

 そのゼバ様が待つ部屋へと、田中さんと俺は、後から出てきたヒスイさんも連れて歩いて向かった。

 

 すると、待機室では、三メートルを超える長身のゼバ様が、ニホンタナカインダストリから贈られた品物をテーブルの上に広げていた。

 その品物は、美しい宝石類だ。

 しかも、ただの宝石類ではない。サンゴ、琥珀、べっ甲、象牙、真珠といった有機生物由来の宝石類である。どれも、地球、すなわち惑星テラでないと手に入らない物だ。ゆえにケイ素生物が住む惑星出身のゼバ様にとって、これ以上ないお宝だと言える。

 

「ゼバ様、まだ見てたんだ……」

 

 俺がそう言うと、ゼバ様は手に持っていたべっ甲をテーブルの上の敷き布にゆっくりと置き、こちらに向けて言った。

 

「うむ、時間を忘れて見入ってしまった」

 

 そう、ゼバ様は、この品々を眺める時間が惜しくて、先ほどの配信に出演してくれなかったのだ。

 もともと、ゼバ様の種族はキラキラした結晶が大好きな人達であるが……。

 

「配信始めてから二時間以上経っているけど、ずっと見ていたのか……」

 

「ああ、なんとも美しい。ヨシムネも見ていて欲しくならないのか?」

 

「ならないなぁ」

 

「ふむ? 人類の若い女性という存在は、宝飾品を好む傾向にあると学んだが」

 

「俺、ボディは女だけど、魂は男だからなぁ」

 

 俺が肩をすくめてそう言うと、横から田中さんが突っ込みをいれてくる。

 

「魂に性別はねえよ。それに男だって、古くから金銀を好む権力者は多いぞ?」

 

「じゃあ田中さんも、宝飾品好きなんです?」

 

「いや、キラキラしたやつより、メタリックな機体の方が好きだな」

 

 俺と田中さんがそんな会話を交わしていると、ゼバ様はきらびやかに光る玉虫を手に取った。

 

「これなど、メタリックで美しいと思うが」

 

「いや、そういうのとは違えよ」

 

「そうか。ならばこれらは独り占めにしてよいのだな」

 

「もともと全部、お前さんに送られた記念品だよ。人類からの友好の証なんだから、俺や瓜畑が受け取るわけにはいかねえって」

 

「そうか、そうか」

 

 今度はゼバ様と田中さんがそんな会話を交わし、俺は物欲も人それぞれだなぁ、などと思ったのであった。

 思えば、この時代に来てから物欲とか全然ないな、俺。

 俺がこの時代に来た原因って、時空観測実験の影響によるものなので、行政府からの賠償金とかも受け取れるのだけれど。一級市民として毎月高額のクレジットを受け取っているから、お金もそんなに必要ないし。

 

 せいぜいが、マザー・スフィアと直通で話す機会をもらったり、そこで融通を利かせてもらったりする程度だ。

 マザー・スフィア相手にも、無理はそんなに通さない。ああ、でも、直近でちょっと頼んだことがある。

 

 季節は春。日本の春といえば、桜。

 そう、花見の季節。ちょっとマザーには、花見の場所取りをお願いしたぞ。

 

 田中さんとゼバ様がちょうど惑星テラまで来ているし、花見を満喫しようじゃないか。

 

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