21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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EX10.満開の桜に彩られて

 ヨコハマ・アーコロジーから踏み出した先は、まさしくうららかな日和と言える空模様。

 今日は、以前から予定していた花見の日だ。高度な科学力と超能力の予知も駆使して、晴れの日をしっかりと選別してくれたマザー・スフィア。

 

 そんな人類文明の最高権力者に押さえてもらった花見スポットは、アーコロジーの外にある自然の中だ。

 とは言っても、しっかりと手入れされた観光名所の一つらしく、草木が過剰に生い茂っているというわけではなかった。

 

 場所は、カナガワエリアにある湖のほとりだ。芦ノ湖というらしい。

 しかもなんと、湖の向こう側には富士山が見える。

 

「うーん、絶景かな、絶景かな」

 

『良い景色だ』『これが桜かー』『確かに見応えがある』『美しい……』

 

 かつて箱根と呼ばれていた地域だと、ここへ来る途中のバスでマザーが語っていたな。箱根かぁ、初めて来たな。

 遠くに富士山が見えて、少し近くに湖が見えて、そして周りは満開の桜に囲まれている。

 なんとも美しい光景だ。

 

「桜も良いけど、富士山もなかなか。この時代でも富士山は、昔と変わらない姿を見せてくれているんだなぁ」

 

 すでに配信は始めているため、視聴者に向けてそんなコメントをする俺。

 すると、シートの上に座る俺の隣にいたマザー・スフィアが、ニッコリと笑って応えた。

 

「第三次世界大戦と太陽系統一戦争では、ニホン国区は国土に攻撃を受けなかったため、地形に関しては、さほど大きな変化を見せていませんね」

 

「……戦争?」

 

「はい、第三次世界大戦は、地形を大きく変える兵器が無数に使われる大戦争でしたからー」

 

「怖ー……」

 

「この大戦が惑星テラの環境を大きく変え、後に発展したテラフォーミング技術でも追いつかないほど、惑星環境は崩壊したわけですね」

 

「あー、前に『MARS』をプレイした時に宇宙から見た地球、かなりひどかったな」

 

「ええ、母なる星とか言っていられないほど、汚れていました。ですので、太陽系統一戦争の終結後は、人類の多くを宇宙へと追い出して惑星テラの環境復活に努めたわけです」

 

「追い出したってハッキリ言いやがったぞ、このマザーコンピュータ!」

 

 今日のマザーは大人ボディに桜柄の着物でバッチリ決めている。ちなみに俺は、ヒスイさんがチョイスした春物コーデの洋服だ。

 

『マザーはこういうこと言う』『三〇〇年目だからこそ言えるぶっちゃけ話ですな』『閣下が聞いたら反論してまた炎上しそう』『ところで閣下は?』

 

 俺とマザーのいろいろギリギリな会話に、視聴者のコメントも盛り上がる。そして、言及されたグリーンウッド閣下だが……。

 

「閣下なら、あっちで生ハムの原木をスライスしてみんなに配っているよ」

 

 俺はカメラ役のロボットであるキューブくんに対して、少し遠くで人だかりになっている場所を手で差し伸べた。

 

 さて、今回の花見メンバーを述べておこう。

 人類の支配者マザー・スフィアや、元貴族で元中将の配信者グリーンウッド閣下を始めとした芋煮会の参加メンバーに加えて、ヨーロッパ国区から配信者ノブちゃん、そしてニホン国区に来ていた田中さんとゼバ様が参加している。

 ただし、前回マザーが呼んだマクシミリアン・スノーフィールド博士は来ていない。彼とは、芋煮会の後に特別親しくしたわけではないから、どうやら今回は参加を遠慮したらしい。俺としては、来てくれても構わなかったんだけどね。

 

『閣下、また生ハムか』『芋煮会で見た』『新年の記念祭でも見た』『ハムのおじいちゃん少女中将閣下』

 

 視聴者達の言うとおり、グリーンウッド閣下は、これまで何度か見た生ハムの原木を今回も持参してきたようだ。

 

 料理と言えば、芋煮会では現地で料理をしたが、今回の花見では各人、お弁当の持ち込みである。

 もちろん、一人で寂しく食べろというわけではない。シートの上に弁当箱や料理の皿を広げて、みんな自由に移動して好きに食べてもらう方向だ。

 

「それじゃあ、暴君な支配者マザー・スフィアへの挨拶はここまでにして、他の人のところも回っていこうか」

 

「お供します」

 

 俺はその場で立ち上がると、黙って俺の後ろの方で待機していたヒスイさんをともなって、他のメンバーへの挨拶回りを開始した。

 マザーの近くにはニホンタナカインダストリの社員達が座っているが、その中でも特に目立つ面子のところへ向かう。

 その面子は、RTAが得意な配信者のノブちゃんと、ギルバデラルーシの元大長老ゼバ様、そして技術者の田中さんとニホンタナカインダストリのタナカ室長の四人。

 ゼバ様と田中さん、そして田中さんとタナカ室長の組み合わせは分かるのだが……なぜノブちゃんが?

 

 ノブちゃんは技術の話とかできそうにないけれど、彼らは何やら空間投影画面を開いて何かを見ながら話し合いをしていた。

 

「よっす。なに見てんの?」

 

 俺は四人の隣に座りこみ、話しかける。

 

「あ、どうも……。視聴者の皆様もこんにちは。ノブちゃんです」

 

 さすが配信者というわけか、ノブちゃんがキューブくんに向けて存在をしっかりアピールしてきた。

 そして、次に反応したのはゼバ様。

 

「ヨシムネか。実は、宗一郎とゲンゴロウにアンドロイドを見てもらっている」

 

 宗一郎はご先祖様の方の田中さん、ゲンゴロウはニホンタナカインダストリに勤めるタナカ室長のことだな。

 そんな二人のタナカのうち、室長の方が空中で指を動かすと、俺とヒスイさんの目の前にも投影画面が表示された。

 

「ギルバデラルーシが導入するAIのボディについて相談されていたんだ」

 

 タナカ室長のその言葉を聞いて、この場の話題を把握することができた俺。しかし、疑問は残る。

 

「なんでその話題にノブちゃんが混ざっているんだ?」

 

「あ……私は、今度お迎えする高度有機AIについてのご相談を……」

 

「ああ、ノブちゃん、配信サポートにAIを付けるって言ってたね。ワカバシリーズを予定しているんだったかな?」

 

「はい。それで……、ちょうどワカバシリーズを開発・販売している……ニホンタナカインダストリの方がいらっしゃったので……」

 

 と、俺とノブちゃんはそんな言葉を交わした。

 なるほどなるほど。そういう集まりね。

 

 で、投影された映像の中身はというと……。ツルツルした体表が特徴の人型のメカだ。

 

「これ……アンドロイドなん?」

 

 俺がそう問うと、答えたのはなんと視聴者コメントだった。

 

『アーララであるな』『アーララ?』『何それ』『ギルバデラルーシの古い物語に出てくる、空想上の生物だ』『予想外の答えが出てきた!』

 

 まさかの答えに、俺はゼバ様の方をチラリと見た。

 すると、ゼバ様が期待通りに解説を始めてくれた。

 

「ギルバデラルーシの間で昔から語られる伝承上の存在だ。身の回りの世話や仕事の手伝いをしてくれる、生物の形をした怪奇現象……そうだな、人間でいうところの妖精だろうか」

 

 妖精!

 

「仕事の手伝いをしてくれる妖精っていうと、『小人の靴屋』みたいな感じか」

 

 俺がそう言うと、俺の隣に座ったヒスイさんが補足するように言う。

 

「靴職人の妖精といえば、レプラコーンですね。他にも家憑き妖精として、ブラウニーやホブゴブリンなどの伝承が、惑星テラに昔からあります」

 

 うーん、どれもゲームでよく聞く名前だ。

 

「で、この映像は、その妖精さんの姿だと」

 

 俺がゼバ様にそう尋ねると、ゼバ様は「うむ」と答えた。

 

「正確には、アーララを模した存在だ。我々、ギルバデラルーシをサポートするために作られた、アンドロイドだそうだ。詳しくは、宗一郎に聞いてくれ」

 

 話題を振られた田中さん。すると、彼は喜々として、このアーララを模したアンドロイドについて説明を始めた。

 

 曰く、アルフレッド・サンダーバード博士が主体となって進めていた、大規模プロジェクトの成果物。

 ケイ素コンピュータとそれに搭載する新型AIが完成し、このたび晴れて公開となったらしい。

 これにより、高度有機AIと呼ばれていた、知性と人格を持つAI達は、新たなステージへと進む。有機化合物の電脳からケイ素化合物の電脳へと乗り換え、より高性能で、安定性、保全性に優れた存在に昇華していく。

 

 その試験運用として、ケイ素コンピュータを用いたアンドロイドを製造し、ギルバデラルーシの生活サポート役として配置するとのことだ。

 

「ちなみに、ギルバデラルーシにそいつらを渡すのも一つ理由があってな」

 

 面白おかしそうに、田中さんが言葉を続ける。

 

 惑星ガルンガトトル・ララーシのギルバデラルーシ文明は、強力な超能力と共に発達した。

 その結果、惑星テラの文明にあるような外燃機関は発明されなかった。そのため、彼らには、自動で動く道具で生活をより便利にするという発想にとぼしかった。

 しかも、今回彼らにもたらされる道具、高度なAIを積んだアンドロイドは、知性と人格を持つ。道具ではあるが、同じ人として接することも求められる。この時代の高度有機AIは、人権を認められているのだ。

 家畜やペットではない、人格を持つ道具に助けられる生活に、ギルバデラルーシ達は慣れる必要があった。

 

 つまり、ケイ素コンピュータに搭載したAIのテストベッドであるとともに、ギルバデラルーシにAIを受け入れさせる最初の一歩でもあった。

 

「はー、なるほどなー」

 

 確かに惑星ガルンガトトル・ララーシに行ったときは、何度かギルバデラルーシの住居に入ったこともあった。確かにそこでは、電気で動く家電なんて使われていなかったな。

 

『いずれ人類みたいに働かなくてすむ生活になるのか』『今もギルバデラルーシは家から出ない生活と聞いたよ』『働いてはいるぞ』『超能力ですべてこなすのだ』

 

 アンドロイドがあらゆる仕事をしてくれる生活に、はたして彼らは慣れるのかな。

 AI達って、人類をとことん甘やかす性質があるからなぁ。ギルバデラルーシにも、その性質は向けられるだろう。

 

「ま、そんなわけでまずは、ゼバに付けるアンドロイドの見た目を決めているってわけよ」

 

 田中さんがそう言って、再度、空間投影画面を指さした。

 なるほどなるほど。人類側のアンドロイドは人類の姿を模している。でも、ギルバデラルーシ側のアンドロイドは空想上の妖精の姿をさせるのか。

 多分、自分達とは違う存在と認識させるためにそうするのだろうが……それが吉と出るか凶と出るかは、俺には分からないな。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 その後も、俺は各員に挨拶をして回り、ようやく一息ついて自分達の用意した弁当を食べる余裕ができた。

 ヒスイさんと一緒に春野菜や春の山菜をたっぷり使った、彩り豊かな料理が五段重ねのお重に詰まっている。もちろん、この弁当を作った様子も先日に配信している。

 そのときは味覚共有機能付きでの味見をしていないため、視聴者達もこの日を楽しみにしていたようだ。

 

 ちなみに、人類用の料理の味は、ギルバデラルーシも感覚を変換して楽しめるようになっているらしい。

 種族の違いで、配信の楽しみが減るということは避けられるというわけだな。

 

 あと、魂だけの存在になるVR空間上では、感覚を変換しないまま人類がギルバデラルーシの結晶食の味を楽しんだり、その逆でギルバデラルーシが人類の料理の味を楽しんだりできるようになっているとのこと。

 今度、配信のネタとしてそれを扱ってみるのもいいかもしれないな。

 

「では、いただきます」

 

「はい、いただきます」

 

 周囲が大いに騒がしくなっている中で、俺とヒスイさんは二人で大人しく食前の挨拶を交わした。

 参加者のみんなは、もう酒も入ってテンション最高潮みたいだが……俺達はまず料理を楽しむところからだな。

 

 箸を取り、シートの上に広げられたお重から料理を取る。まずはタラの芽の天ぷら。味付けは藻塩だ。

 

「うーん、やっぱり春といえばこの味だな!」

 

『こりゃ美味い』『食感がいいね』『これ好き』『タラの芽……木の新芽かぁ』

 

 この時代だと、春の山菜も季節関係なく食べられるのだが……やっぱり春に食べるのが一番美味く感じそうだな。

 さらに俺は、ふきのとうの天ぷらもいただき、春の味を存分に楽しんだ。

 

 もちろん、山菜や野菜ばかりでなく、肉や魚介類も弁当には入っている。

 それらを一口分ずつ食していき、俺とヒスイさんは弁当が上手に作れたことを喜び合った。

 

「さて、じゃあ料理も楽しんだので……」

 

『おっ、なんだ?』『何かやるの?』『何か芸でも見せてくれるのか』『ヨシちゃん歌ってー』

 

 視聴者が何やら宴会芸を求め始めたが、俺はそれを無視して後ろの方に置いていた時間停止がかかった箱を持ってきて、ゆっくりと開けた。

 中に入っていた物は……酒の容器だ。

 

「酒盛りタイムだー! 宴会じゃー!」

 

「お酒の味が苦手な方は、これ以後、味覚共有機能をお切りください」

 

 酒の容器を持ち上げながら叫ぶ俺と、視聴者に注意をうながすヒスイさん。

 

『そっちかー』『芸じゃないのか』『宴会といえば芸でしょ』『ヨシちゃん歌ってー』

 

 いやー、これだけ人が騒いでいる中で、素面のまま歌は辛いっす。

 そう思っていたら……何やら奥の方から大きな声が聞こえてきた。

 

「宴会といえば芸! その通りじゃ! なので、今から私が歌ってしんぜよう!」

 

 この声は、グリーンウッド閣下か。

 そちらの方向を向くと、閣下が楽器のキーボードを携えて、こちらに近づいてくるのが見えた。

 

「余人を交えぬ外での宴会ともなれば、歌唱は基本じゃな! なので、ヨシムネも知っていそうな曲を練習してきた!」

 

「おおー、21世紀の曲、歌ってくれるのか?」

 

 閣下の言葉に俺が期待するようにそう言うと、閣下は首を横に振って答える。

 

「少しズレて、20世紀じゃ。我がブリタニアの誇る偉人達、ビートルズの名曲を歌うぞ!」

 

 そう言って、閣下はエナジーマテリアルで椅子を作り座ると、キーボードからピアノの音を出して上機嫌で歌い始めた。

 

 この曲は……『Hey Jude』か! 知っているけど! 名曲だけど! 俺が生まれるよりも前の曲だよ!

 それに、ビートルズなら、もっと花見が盛り上がるようなアップテンポの曲もあったろうに。いきなりバラードとは予想もしていなかったぞ。暗い曲というわけでもないから、これはこれで桜が映えるようで構わないのだけど。

 

『良い曲やん』『恋の歌か』『興味深い』『子供の恋を応援しているのか?』

 

 おっと、ギルバデラルーシの視聴者が、興味を示したようだぞ。

 彼らって、雌雄がなくて長老個体が卵を産んで増える生態なんだよな。だから、愛という感情はあっても恋という感情は知らない。まあ、人類との交流で恋愛についての理解も進んできたようだけど。

 

 そんな恋愛応援歌と異種族のコメントを肴に、俺は酒を飲み始めた。

 うーん、桜の下でビールを飲むと、花見に来たって感じがするな!

 

「どうも、酒をお届けに来ましたよ」

 

 と、演奏と酒を楽しんでいると、俺達の所に二人組が近づいてきた。

 超電脳空手の師範であるチャンプと、その恋人ミズキさんだ。チャンプの腕には、酒瓶がにぎられている。あの銘柄は確か、チャンプの実家が経営している酒蔵で造っている日本酒だ。芋煮会の時は樽で酒を持ちこんでいたが、今回はガラスの一升瓶を何本も持ちこんだようだな。

 そんな酒をチャンプから受け取り、俺は最後の伴奏に入り始めた閣下の曲を背景に、チャンプと話し込み始めた。

 

「さっき挨拶したときは聞けなかったけど、ミズキさんとの仲はどうなん?」

 

「良好ですよ」

 

「結婚を前提に、お付き合いしているんだよね?」

 

「ええ、まあ」

 

 コロニー住まいだったミズキさんは、現在惑星テラのニホン国区にあるチャンプの実家に住み込みで、空手の修業をしている。内弟子ってやつだ。実際は、跡取りであるチャンプの妻になる予定なのだが。

 

「結婚式には呼んでくれよ」

 

「家伝の技術やしきたりを一通り伝えてからになるので、結納は来年ですね」

 

『家伝の技術』『何それ気になる』『すごい空手の技?』『強そう』

 

 そんな視聴者の声に、ミズキさんが反応する。

 

「無人島に一人で放り出されて、長期間生き延びる術だそうです……」

 

 超電脳空手のリアルサイド、ハードすぎる……!

 と、それから世間話をいくつか交わして、コップを打ち合わせて乾杯もして、チャンプとミズキさんは別の場所へと移動していった。

 

 そのときには閣下の曲は、すでに終わりを告げていた。

 代わりに、閣下の配下であるメイド長のラットリーさんが、閣下のキーボードを弾きながら別の曲を歌っている。

 家令のトーマスさんのハーモニカと合わせた曲。ビリー・ジョエルの『Piano Man』だ。これも俺が生まれるより前の曲。まあ、それでもちゃんと知っている曲だけど。

 

 酒場の様子を歌ったバラード曲を聴きながら、お酒を飲み進める。

 その最中にも、ヨコハマ観光局のガイノイド、ハマコちゃんがやってくる。そして、田中さんが惑星テラに残るつもりがなくて悲しいなどと、ワイン片手に絡み酒で愚痴を言ってきた。

 それを適当にあしらううちに『Piano Man』の演奏が終わる。

 

 すると、次に宴会芸という名の歌唱大会に手を挙げたのが、先ほど田中さん達のところにいたノブちゃんだ。

 そのノブちゃんは以前にも見た、フライングVのギターを手にしている。さらに伴奏役として、なぜかミドリシリーズのガイノイド、ヤナギさんを連れていた。

 歌手として忙しいはずのヤナギさん。それなのに、今回こうして参加しているのは、どういうことだろうか。しかも、歌手なのにトランペットという、演奏しながらでは歌えない楽器を用意している。

 

「私もヨシちゃんのために……練習してきました……! 是非、聴いてください……!」

 

 ノブちゃんがそう告げると、ギターを静かに弾き始めた。

 

「こ、この曲は!」

 

 ゆったりとしたギターのイントロと一緒に、ノブちゃんの歌声が響く。

 そして、その後、勢いよくヤナギさんがトランペットを高らかに鳴らす。

 

 うわー、これは懐かしの『THIS IS MY HAPPINESS』じゃないか!

 マイケル・ジャクソン(本人)が出演したことで有名な音楽ゲームが昔あって、その二作目のエンディングで使われた曲だ。

 うわああ、ノブちゃんの歌声で、子供の頃の思い出がよみがえる! ギターアレンジいいなぁ!

 

 酒の勢いもあるのか、思わず俺はその場で手拍子を始めた。

 すると、花見会場全体から手拍子が続き、場は一体となった。

 

 やがて、曲は終わりを告げる。皆が手を叩く速度を一気に速め、今度は拍手喝采となった。

 

『良い曲だった』『歌詞が良いね』『ノブちゃんさすが』『ヨシちゃん歌ってー』

 

 今日は、なんだか俺に歌わせようとするコメント多いな!?

 俺が視聴者のノリに怖じ気づいていると、不意にヒスイさんが荷物を漁りだし、何かを取りだして俺の方に差し出してきた。

 これは……俺のベースギターじゃないか!

 

「さあ、ヨシムネ様。歌いましょうか」

 

「……よし、やってやらぁ!」

 

 俺がベースをにぎって立ち上がると、ニコニコ顔のノブちゃんがギターを抱えたまま手招きしてきた。

 さらに、キーボードを持った閣下がまたこちらに近づいてきている。

 

「記念祭の時は私がボーカルでしたけど……、今度はヨシちゃんボーカルですね……!」

 

「うむ。せっかくだから弾いてやるのじゃ」

 

 ノブちゃんと閣下がそれぞれそんなことを言い、ヒスイさんがその場でエナジードラムセットを作り出す。

 ラットリーさんも笑顔でやってきて、かつての『ヨシノブwith配信シスターズ』が再結成となる。今度は俺がボーカルだから『ヨシムネwith配信シスターズ』になるのか?

 

 ともあれ、俺は勢いのまま演奏をノリノリで始め……。うららかな日和、桜の下の大宴会は、我が家に帰るまで騒がしく続けられたのだった。

 




予定していた番外編のストーリーは、これで完結となります。
以後は、気が向いたときにちょこちょことゲーム配信回を載せていく予定です。

最後に、もしよければ評価ポイントを入れていってくださると嬉しいです。
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