21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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EX13.食品生産工場シミュレーター300(シミュレーター)<2>

 収穫が終わり、箱詰めされたカブ。

 今のところは加工食品を作る設備もないので、そのまま出荷することにした。

 

 四脚四腕のお世話ロボットの手により、次々と工場から搬出されていくカブの箱。

 しかし、このお世話ロボット、なんでもやるな。もし作業員がロボットではなく人間だったら、ブラックすぎる労働環境だ。

 

 やがて収穫したカブは、全て工場の外へと運ばれていった。

 その後に、売上金が支払われる。その額は、多いとは言えなかった。

 

「うーん、やっぱり加工食品にした方が、売上は上がるのかね。カブの酢漬けとかに加工はできないのか」

 

 メニューをいろいろ操作しながら、そんなことをぼやく俺。

 すると、ヒスイさんが横からコメントを入れてきた。

 

「酢が必要ですね。酢のもとになる酒類を醸造することから始めましょう。設備と作物を用意しますか?」

 

「……酒かぁ。贅沢品だから金になりそう。せっかくだから、次は穀物でも育てようかな」

 

 俺がそう言うと、ハマコちゃんも乗ってくる。

 

「いいですね! 市民のお腹を満たすなら、穀物は欠かせないでしょう!」

 

 さて、穀物と言ってもいろいろ種類がある。俺が実家で育てていた米もそうだし、酒の定番であるビールを造るなら麦だ。

 だが、俺が思いついたのは米でも麦でもなかった。

 

「あれ一度育ててみたかったんだ。トウモロコシ」

 

「では、設備を購入していきましょう」

 

 そう言って、必要な設備の説明を始めるヒスイさん。

 曰く、トウモロコシは茎が長く伸びるためフィルムと水槽だけでは倒れてしまい、今のままの水耕栽培では育てることができない。

 しかし、土の購入は、現在の資金では厳しいものがある。

 そこで採用するのが、ゼリー土栽培だ。

 

 水耕栽培用の養液に薬剤を投入し、養液をゼリー状に変える。その上にシードプリンターで種を植えたフィルムを敷く。さらにその上に養液を満たし、栽培をするとのことだ。

 作物はゼリー状の養液、すなわちゼリー土に根を張り、倒れることなく成長していくのだという。

 なお、作物を収穫した後のゼリー土は、一度液体に戻して再度のゼリー化が可能らしい。

 

「じゃあ、その方向で」

 

 ヒスイさんの助言に従い、設備を購入。カブの棚の隣で、トウモロコシのゼリー土栽培が始まった。

 時間を早送りして、トウモロコシがスクスク育つのを視聴者達と一緒に見守る。

 

 時間の経過により月毎の運営資金が入ったため、トウモロコシの加工設備の購入や、カブの収穫のオートメーション化を進めていく。

 うーん、こういう設備拡張するゲームって、序盤が一番楽しいんだよな。

 

 さらに醸造設備も購入し、工場内に配置をしていくが……。

 

「……工場の敷地足りなくね?」

 

「運営資金で建物を拡張できます」

 

「醸造設備の購入で、もうすっからかんだが?」

 

「食品を売って資金を稼ぎましょう」

 

「稼ぐための酒を造る設備の置き場所が、無いんだが?」

 

「加工前の作物を直接出荷するしかないですね」

 

 ヒスイさんと、そんなマヌケな会話を繰り広げる俺。

 これにはハマコちゃんと視聴者も苦笑い。無計画だって? その通りだよ!

 

 まあ、いいさ。そのままのトウモロコシでも入植者の主食になるし、茎や葉だってセルロース素材として化学工場に売れる。

 

「しかしなるほど、工場の拡張と機材配置を楽しむ、定番のシミュレーションゲームって感じだな……フリゲでこういうの昔やったわ」

 

「このゲームは無料配付ですからね!」

 

 俺のコメントに、ハマコちゃんが楽しそうに答える。

 それにしても、工場の天井が高くて立体的な配置も可能なので、なかなか機材のレイアウトに迷うな……。水耕栽培用の棚とか、天井ギリギリまで段を伸ばせるみたいだし。

 効率的な配置を求めたいが……今はライブ配信中だ。残念ながら、妥協していかなければならない。

 

「しかし、設備の見た目は、21世紀の工場とそんなに変わらない気がするな……。もっとSFっぽい不思議な外観を想像していたんだが」

 

 俺は、工場に並べた金属製の機材の数々を見ながら言った。すると、ヒスイさんが横から説明を始める。

 

「ゲームの舞台となっている惑星は、惑星テラと同じように鉄鉱石の埋没量が膨大です。よって、鉄が安価に用意できる素材となります。ヨシムネ様にとっては、その鉄やステンレス製の外装が馴染み深いのでしょう」

 

 醸造設備とか特に、ステンレス製の箱みたいな見た目だからなぁ。そりゃあ、見覚えがある外観になるわな。

 

「惑星の人口が未だ少なく、工場に分配されるソウルエネルギーが足りていない影響もあります。エナジーマテリアルの使用や、時間操作を行なう超能力機材の導入がなされていませんから」

 

「人口の影響なんてあるんだ……」

 

「工場の規模を大きくしていくと、食糧の充実で惑星に受け入れられる移民の数も増えます。その結果、ソウルエネルギーの供給量も増えていきます」

 

 なるほどなー。

 

 と、そんな感じで手探りの運営を続けてしばらく。

 ようやく、トウモロコシを原料とした蒸留酒の第一弾が完成した。バーボンに代表される、トウモロコシのウイスキー……と言い張るにはちょっと熟成期間が足りないかな?

 

「試飲してみましょう!」

 

 と、ハマコちゃんが、瓶詰め(ガラス瓶でもペットボトルでもない謎容器詰め)された酒の前で、そんな主張を始めた。

 えっ、待って。

 

「これ、飲めるの?」

 

「飲めますよ! このゲーム、生産した食品は、すべて飲食が可能なんです!」

 

「マジかー」

 

『いいじゃん』『でも味覚共有機能オフになってる』『残念』『酒か。酩酊の感覚は興味深い』

 

 おっと、視聴者と味の共有をできない配信設定になっていたのか。ヒスイさん、どういうことだ?

 

「必ずしも、美味しい食品ができあがるとは限りませんので……」

 

「あー、失敗作もできるんだ」

 

「はい。自由度の高いゲームですから」

 

 美味しい食品を作り上げることも、ゲームの一環ってことね。

 でも、この蒸留酒、試作品を作る前に大量生産して瓶詰めしちゃったぞ?

 

「基本にのっとった製造をしていますので、まず失敗はないでしょう」

 

 とのことで、ヒスイさんを信じて製品を一本空けて、試飲することに。

 味の方は……。

 

「うーん、味や香りに深みが足りない気がする……。オーク樽じゃなくて、金属樽での熟成だったせいかな?」

 

 一応、短期間で長期熟成したときと同じ化学反応を起こさせる機材とかも、導入したんだが。

 

「そうですねぇ。確かに、今一つといった味でしょうか。現代だと金属樽でも、オーク樽での長期熟成と同じ風味を出せる添加物があるそうですが」

 

 俺の寸評にハマコちゃんも同意して、さらに添加物の情報なんてものを寄越してきた。

 添加物、添加物か……。

 

「ウイスキーは、やっぱり木樽で熟成してみたいなぁ……」

 

 そんなことをぼやくと、一人だけ試飲をしていなかったヒスイさんが、横から言う。

 

「オーク材は惑星の外からの取り寄せとなりますので、高額ですね。工場内でオークの木を育てるならば、その限りではありませんが」

 

「木を育てるなら、果樹が先だな……」

 

 ワインやブランデー用のブドウの木とかね。

 

 ともあれ、試飲を終えた蒸留酒はそのまま出荷することになった。

 酢? 蒸留酒の方が稼げそうだったので、造っていないよ!

 

 そんなこんなで、酒の出荷でまとまった売上金が入ってきたため、次の設備投資をすることにした。

 

「作物の品種改良って、できるのか?」

 

 新規に導入した機材の成果で、流れるように自動収穫されていくトウモロコシ。その光景を眺めながら、俺はそんな疑問をヒスイさんに投げかける。

 

「可能です。追加で言いますと、現在、作物の種を購入していますが、工場内での種の生産も可能です」

 

「いいね。じゃあ、それ関連の機材を……」

 

 ということで、購入したのは種子培養器なるマシンだ。

 なんでも、品種改良して気に入った種を培養して複製し、同じ性質を持ったクローン種子をいくらでも創り出せるそうだ。クローン種子か……作物の性質が似通いすぎて病害に弱そうだな。

 でも、同じ品質の作物を作り続けられるのは、商業的に強いぞ。

 

 そうして俺は、味を測る検査器も導入して、酒の味が向上するトウモロコシを選別して培養・複製していった。

 

「うん、金属樽でも、満足のいく味の酒ができたぞ!」

 

「美味しいです!」

 

 ハマコちゃんと一緒に、何度目かになる試飲をする俺。

 しかし、視聴者的には同じ作物を作り続けるのは不満があったようだ。コメントで、別の食材を作れとしきりに催促してくるようになった。

 

「では、ヨシムネさん。おつまみとなるお肉を作りませんか? ここにジャーキーでもあると、最高ですよ!」

 

「おっ、いいねぇ。じゃあ、メニューを開いて、と」

 

 ハマコちゃんにも促され、『ミスト牧場』は、畜産分野へと事業進出することとなった。

 

 えーと、何々……。肉の生産には大別して、オーガニックな家畜の飼育と、肉の細胞を培養する培養肉、作物から抽出したタンパク質を固める合成肉があるようだ。

 オーガニックな肉は……うげっ、設備投資に必要なクレジットが莫大過ぎる。

 

「となると、培養肉か合成肉か……」

 

「培養肉を選ぶ場合、培養液を構成する栄養素の確保が必須となります。作物の栽培から始めるとよいでしょう」

 

「合成肉の場合は?」

 

「合成肉を選ぶ場合、合成にタンパク質などが必要となります。それらを抽出できる作物の栽培からですね」

 

「どっちにしろ、農作からは逃れられないのかよ!」

 

 俺がそんなツッコミを入れると、ヒスイさんはフフフと笑った。

 

「これまで使ってきた養液と同じように、外部から素材を購入することも可能です。ただし、自前で全部そろえられるようにした方が、後々の事業拡大に有利となります」

 

 自前かぁ。素直に素材を買った方が早いのではと思ったが、このゲームって時間の早送り機能があるしな……。

 

「じゃあ、もうしばらく農業をやっていくぞー!」

 

『肉はしばらくお預けか』『肉の培養早く見たいなー』『ジャーキーか……』『そういや塩は安いみたいだけど、どこから持ってきてんの?』

 

 塩か。カブの食品加工に必要になったから途中で購入したが、確かに安かったな。

 

「この惑星にも海があるようでして、こことは別の加工工場で塩の精製をしているという設定ですね」

 

「へえ、さすが地球型惑星」

 

「ちなみに、事業拡大を進めていくと、第二工場が建設可能となります。海や岩塩坑のそばに工場を建てれば、安価で塩の精製をできるようになりますよ」

 

「……本格的だなぁ」

 

 そんな会話をヒスイさんと繰り広げつつ、新たな設備投資をして肉に必要な作物を生産していく。

 大豆、やはり大豆は正義。

 

 ついでだし、大豆で納豆も生産しておくか。

 小さな設備を導入して納豆を作り、出荷する。すると、ヒスイさんからこんな報告が。

 

「……市場で、納豆ブームが起きたようです」

 

「なんで!?」

 

「このようなブームに合わせて対象品目を出荷すると、売上が伸びますよ」

 

「商機! ああいや、今は肉の素材集めだ……」

 

 納豆ブーム、起きちゃったか。うちの工場では、米も醤油も生産していないんだけどなぁ。

 

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