21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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60.リドラの箱船(サバイバルアクション・農業シミュレーション)<6>

 ライブ配信は続き、俺は数日かけて箱舟の周囲を発展させた。

 大工だけでなく農夫や鍛冶師も箱舟から解放し、村が誕生した。

 開拓を農夫に任せ、俺は神聖魔法で農作物を成長させることをメインに働いた。家畜も解放し、世話を牧者に任せる。

 

 そしてヒスイさんの要望で倉庫を守る猫を十数匹解放し、村人達に世話を任せた。ヒスイさんご満悦である。

 順調だ。都市建設シミュレーションとかでも、こういう発展途上の段階が一番面白いんだよな。信仰ポイントも少しずつ増えてきている。

 

「でも、女王を解放するポイントには届かないんだな」

 

『私はアトランティスで最も神の血が濃い人間でしたから、解放にはより多くの神の力が必要となるのです』

 

「女王を解放する利点は?」

 

『本人を前にちゅうちょなく聞きますね……。私は民を統率することができ、そしてあなたと同じ神聖魔法が使えます』

 

「あー、農業が完全に自動化されるのか。そこまでいったら作業ゲー化してゲームの止めどきだな……」

 

「一応、ストーリークリアまではやりましょうね」

 

 俺の率直なコメントに、ヒスイさんがそう言ってくる。

 ふむ、ストーリークリアか。

 

「クリア条件は神の復活だったか?」

 

 と、ヒスイさんに尋ねてみる。

 

「そうですね」

 

「その復活条件が不明なんだよなぁ」

 

「それを知るには、島の探索が必要ですね」

 

「探索か。新しい作物を探したいし、いっちょ行ってみるかね」

 

 実は、箱舟には一部の種以外の植物は保存されていない。元々は保存されていたそうなのだが、島に自然を根付かせるため、ほぼ全てを島の各所に飛ばしたモノリスから解放してしまったらしいのだ。

 ゆえに、種のない農作物がほしいときには、島を探検して作物が自生しているのを見つけてやる必要がある。

 

「米がほしいし、沼地のありそうな場所を探してみるかー」

 

 食料をアイテムボックスに入れ、毛皮のコートの上から鉄の鎧を装着。鍛冶屋に鍛えさせた打刀を武器に持ち、俺は箱舟の村を旅立った。まあ、モノリスがあったら転移で村に戻って神聖魔法を使いにくるけれどな。

 

『勇ましいな』『『-TOUMA-』でも『Stella』でも防具は装着していなかったし、新鮮だ』『すっかり文明人ですね』『ビキニアーマーは着ないの?』

 

「着ないよ!」

 

 視聴者と雑談しながら、島の奥へ。ちなみにマッピング機能で、自動でMAPが作られていっている。

 道中で様々な植物を採取しながら種へと変換し、ときおり発見するモノリスで村へと戻る。モノリスは二階建ての家くらいの高さがあるので、遠くからでも見つけやすいのだ。

 

「サバイバルアクションってジャンルだけど、アイテムボックスの容量でかいからか、サバイバル感薄いな。村で物資揃えているから、普通の冒険だ」

 

『ゲーム開始直後が一番サバイバルしてた』『農業シミュレーションって文明っぽさとサバイバルっていうジャンルが相反している』『箱舟を使わないプレイをしたらだいぶサバイバルになると思う』『このゲームの醍醐味を捨てる縛りプレイだな……』

 

 そうして村の外を探索していると、怪しい場所を見つけてしまった。

 岩場にできた洞窟で、その周辺の地面がなにやら青く光っている。

 

「いかにも何かありそうな場所だなぁ」

 

「そうですね」

 

 近くにモノリスがあるのだが、このモノリス、見事に中程で折れている。

 本来ならば赤く輝いているはずのそれは、光りを発することなく赤茶けてしまっている。

 

 手を触れるが、本来なら使えるはずの解放メニューが開かない。セーブと転移はできるようだが……。

 

「念のため、アイテムボックスの中身を村にしまってこよう」

 

 村に転移して、自宅である神殿に採取した荷物を置く。

 そして、また向こうへと戻ろうと、箱舟へと向かった。

 

『どうしました。慌ただしいですね』

 

 と、箱舟の壁面に映る女王が、そんなことを尋ねてきた。

 

「いや、なんだか怪しい場所を見つけてな。洞窟なんだが、周囲の地面が青く光っていて、近くにあったモノリスが折れていた」

 

『モノリスはそうそう折れるものではないのですが……青く光る、ですか。気をつけてください。敵がいるかもしれません』

 

「敵?」

 

『はい、海の底に沈んだ古代文明、レムリアです。かの文明の兵器は、海の底に沈んだ後も稼働し続けており……、私達アトランティスと敵対し、神の力が失われた地上を洪水で海の底に引きずり込んだのです』

 

「あー、そういう……。シナリオの方向性が見えてきたな」

 

『アトランティスVS.レムリア!』『オカルト臭がしてきたぜえ!』『海の底のレムリアとか、クトゥルフ感があるな』『蛇人間現わる!』

 

 視聴者達が、女王の言葉を聞いて盛り上がっている。

 この時代でもクトゥルフ神話人気あるんだな。

 

『箱舟がある限りあなたは不死ですが、行くならばどうか気をつけて……』

 

「おうよ」

 

 俺は箱舟から折れたモノリスへと転移し、洞窟の中へと入っていった。

 洞窟は幅広い道が下へ下へと向かっている。地面や壁面が青く光っているので、光源は必要なさそうだ。

 そして二分ほど歩くと、地底湖に出た。

 

 光り輝く水。その水の中には……。

 

『ピ! ピピ!』

 

 青く輝く四角い立方体が、みっちりと詰まっていた。

 

 

『ピピ! ピ!』

 

 電子音のような音を立てて、立方体が複数水の中から飛びだしてきた。

 そして、こちらに体当たりをしてくる。

 

「うお!? うおおおお!」

 

 俺は打刀を抜き、こちらに迫る立方体に向けて打刀を振るった。

 しかし。

 

「固え! しかも刃欠けたぁ!」

 

 鍛冶師入魂の鋼の刀が!

 

 そして、周囲から複数の立方体がこちらにぶつかってくる。

 

「ぬわー。鎧がへこんでるへこんでる!」

 

「ヨシムネ様、撤退しましょう」

 

 ヒスイさんが姿を消したまま、言葉を投げかけてくる。

 

「よしきた!」

 

 俺は、ダッシュで来た道を駆け上がっていく。

 それを追いかけてくる立方体の群れ。

 そして、俺は追いつかれ……そして追い越された。

 

『まさかのスルー』『どういうことなの』『知らない間に擬態能力を覚えたとか……』『犬と一緒に走ってたらこういうことある』『敵がわんこに見えてきた』

 

 俺はそのまま洞窟の外に出て、折れたモノリスのもとへと駆ける。

 そして、洞窟の方へと振り返ると、洞窟の中から青い立方体が次々と周囲に向けて飛びだしていくのが見えた。

 

「あー、これ、島に敵の兵器をまき散らしちゃった的な……」

 

「そうなりましたね」

 

 ヒスイさんが淡々と相づちを返してくる。ヒスイさん、ゲームクリア済みだから俺の失敗する様を黙って見守っていたんだな……。まあ、シナリオの進行フラグが立ったとでも思おう。

 

 俺は次にどうするかしばし悩んだ後、箱舟の村に戻ることにした。

 折れたモノリスに手を触れ、転移する。

 

「って、あれ、村は?」

 

 転移した先には、何もなかった。俺は慌てて周囲を見回すと、箱舟もない。ただ一つ、赤く輝くモノリスだけがあった。

 転移先を間違えたか? そう思い、モノリスに触れようとしたそのときだ。

 

『我が子、ヨシムネよ』

 

 モノリスに、女王リドラの姿が映った。

 

『レムリア兵が村へと襲ってきたため、箱舟は、現在上空に逃れています』

 

「こっちに来ちゃったかー」

 

『箱舟がある限りアトランティスの人々は不滅ですが、死を経験させたくはありません。ですから、村と村人は箱舟の中へと保存してあります』

 

「あ、そういうこと」

 

 見渡した限り、村と村人だけでなく、育てている途中の畑もなくなっているようだな。

 

『我が子よ、どうか、レムリア兵を倒し地上の安全を確保してくださいませんか。箱舟が破壊されては全てが終わりです』

 

「空の上は安全なのか?」

 

『はい、レムリア兵は、一定高度以上を飛べないようです』

 

「そっか、じゃあこっちはどうにかするよ。とは言っても、刀が通用しないんだよな……」

 

 俺は、刃が欠けた打刀を見ながらそう言った。

 固い敵とかどうすりゃいいんだ。『-TOUMA-』ではそういう妖怪は、ハンマーを使って対処したが。

 

『レムリア兵と戦うには、オリハルコンを作る必要があります』

 

「オリハルコン!」

 

 思わぬ素敵ワードに、俺は全力で反応した。

 

『オリハルコン来た!』『アトランティスと聞いて、いつかは来るかと思っていたが……』『ミスリルと並んでファンタジーの定番やね』『このゲームでは何色かなー』

 

 視聴者もオリハルコンと聞き、楽しみなようだ。

 

『オリハルコンとは、銅を神の力で鍛えた金属です。箱舟やモノリスも、オリハルコンでできています』

 

「この赤く光っているのがオリハルコンだったのかー。でも、レムリアの洞窟側のモノリスは折れていたから、奴らはオリハルコンより強かったりしないか?」

 

『オリハルコンは神の金属。半神であるあなたが振るうことで、より強靱な物となります』

 

 なるほどなー。俺専用金属って感じか。村人に持たせても効果は薄そうだな。

 

『では、地上は任せます。我が子よ、あなたに武運を……』

 

 そう言うと、モノリスに映っていた女王は消えていった。

 さて、オリハルコンの用意だ!

 

「ヒスイさん、銅鉱脈の場所判る?」

 

 今まで金属は鉄だけで足りていたので、銅は採掘していないのだ。

 

「はい。採掘が必要なので、モノリスから鉄のツルハシを解放してから向かいましょう」

 

 あ、そうか。解放メニューはモノリスにもあるから、箱舟がなくても道具の解放は行なえるのか。

 他にもモノリスは道具を神に捧げることもできるので、畑を作れば農作物を信仰ポイントにも変えられるな。地上にレムリア兵がいるだろうから、のんきに農業できるかは知らないが。

 

 俺は、モノリスからツルハシを取り出すと、ヒスイさんの指示する場所に向けて転移をした。

 案内されるまま歩き、ときおり姿を見せるレムリア兵から姿を隠し、着いたのは渓谷。

 そこで岩肌にツルハシを振るい、銅鉱石を多数確保した。

 

「アイテムクラフト!」

 

 銅鉱石をアイテムクラフトで製錬し、銅のインゴットを作り出す。

 それをさらに――

 

「アイテムクラフト!」

 

 神の力であるアイテムクラフトを使い、オリハルコンを作り出すことに成功した。

 

「うわー、GPごっそり持っていかれた」

 

『綺麗な赤やね』『これがこのゲームのオリハルコンか』『光っているなぁ』『これ防具にしたら、光りすぎてめっちゃ目立ちそう』『敵が寄ってくる分には、今は大歓迎じゃないですかね?』

 

「よし、これをクラフトして武器と防具にするぞ」

 

 俺はさらにアイテムクラフトをして、オリハルコン製の打刀と鎧を作りだした。

 

 そこで本日の配信は終了。

 そして翌日。俺は早速、試し切りをすることにした。

 渓谷から飛び出して周囲を巡回していたレムリア兵を見つけ出し、打刀で斬りつける。

 

 おお、すっぱり斬れた。

 

「さて、あとはレムリア兵を倒すだけなんだが、しらみつぶしに倒していかないといけないのか?」

 

「ヨシムネ様、そのことですが、女王から伝言です。箱舟で上空から地上を観察したところ、レムリア兵は一定時間島を彷徨った後、洞窟へと帰還しているようです。水が動力源なので、燃料を補給しているのではないかと」

 

 俺の疑問に、ヒスイさんがそんな助けの言葉を告げてくれた。

 つまり、洞窟で出待ちすれば、全てのレムリア兵を殲滅できると。

 

「しかし、洞窟の中には大量のレムリア兵が待っていると思われます。どう対処しますか」

 

 そりゃあ、洞窟の奥まで入らず、出入り口で留まるとか。

 ……いや、ここは。

 

「突撃じゃー!」

 

『マジかよ』『ヒュー』『ヨシちゃんによる一騎当千の活躍が見られる!』『負けて全部を失う!』『そしてサバイバル生活へ逆戻り』『村の倉庫、今はないんだよなぁ』

 

 アイテムロストが怖くてデスペナありゲームができるか!

 行くぞー!

 

 俺は折れたモノリスへと転移し、洞窟へと入っていく。

 道中、レムリア兵がまばらに出現するが、見つけ次第殲滅だ。

 そして、地底湖へと出た。

 

「かかってこいやー! 無双ゲーの始まりじゃー!」

 

 俺の声に反応したのか、地底湖に浸かっていたレムリア兵が、次々と飛び出してくる。

 それに対し、俺はシステムアシストを駆使して縦横無尽に駆けていく。

 そして。

 

「大勝利!」

 

「ぎりぎりの勝利でしたね」

 

 村人が薬草から作った魔法の回復薬を使い切り、治癒の水魔法を使い倒したためGPも空だ。確かにぎりぎりだった。

 だが、地底湖には、もはや動くレムリア兵はいない。

 視聴者達も、俺のことを口々に称賛してくれた。うーむ、褒め言葉が快感だ。

 

 そして俺は念のため、帰還してくるレムリア兵がいないか地底湖に陣取り待機し、ゲーム内で一日が経ったため洞窟を出た。

 折れたモノリスから転移し、箱舟のあった場所へと戻ってくる。すると、そこにあるモノリスに女王が映った。

 

『勝利したようですね。我が子の成長、喜ばしく思います』

 

「これで、村を元通りに戻せるな」

 

『それなのですが……上空から島を確認したところ、レムリア兵が潜んでいそうな箇所が他に三箇所あります。そこを先に殲滅してほしいのですが……』

 

 マジかよ……。

 

 そうして俺はしばらくの間、農業シミュレーションではなく、アクションゲームを楽しむ羽目になったのだった。

 アクション要素ありのゲームをわざわざ選んだのは俺なので、問題ないといえば問題ないのだが、ギャップの激しいゲームだな。

 


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