21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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61.リドラの箱船(サバイバルアクション・農業シミュレーション)<7>

 レムリア兵の拠点を潰してまわる。

 レムリア兵製造工場らしき場所や、巨大兵が待ち構えている場所などもあったが、難なくクリアできている。

 巨大な敵との戦いは、『-TOUMA-』で慣れている。システムアシストの助けがあるから、『-TOUMA-』より簡単だ。

 

 指示された場所のレムリア兵を全て倒し終えると、空から箱舟が元の場所に降りてきた。

 そして、また信仰ポイントを稼いで、村を元の形に戻す日々の始まりだ。

 

 農業生活が戻ってきたことにほっとするが、ストーリー進行は停滞してしまったな。

 と、そう思っていたのだが、あるときGPを回復するために大工のアーキナー謹製の御殿で眠ると、あるビジョンを見た。

 それは、水の底。超巨大なレムリア兵が、赤く光り輝く青年を拘束している。

 俺は、なぜかその青年が神であることが理解できた。

 拘束された青年は、レムリア兵に力を吸い取られている。いや、違う。神の赤い力は、青く光るレムリア兵の力と反発している。拘束されているように見えて、実際にはレムリア兵を抑えつけているのだ。

 

『我が子よ……今のうちに、こいつを……ラ・ムーを討ってくれ』

 

 神は、そう俺に語りかけてきた。

 

「……という夢を見たのさ」

 

 そしてゲーム内での朝、俺は見た夢を箱舟の女王リドラに語っていた。

 

『なるほど。その巨大なレムリア兵は、おそらく古代文明レムリアの統治機構、ラ・ムーでしょう。かつてのレムリア文明にて人々の生活を管理していましたが、ある日暴走してレムリアを海の底に沈めたと伝説に語られています』

 

「うへえ、暴走するマザー・コンピュータかよ。このゲームがマイナーな理由がいろいろ揃ってきたな」

 

 神様が出てきて、マザー・コンピュータの暴走があってと、今の時代の人には受けない要素なんじゃないか?

 俺はそういうの嫌いじゃないけれど。あと、せっかく農業やってたのに、レムリア兵のせいで畑全部没収とかもきつい。

 

『俺はマシンの反逆系ちょっと苦手』『現実で起きたらと思うとめっちゃ怖いわ。いや、マザーは信じているけど』『今のところ神様からキャラクター性が見いだせないんだよなぁ』『古典SF好きだから暴走するコンピュータとか大好物です』

 

 うーむ、視聴者の意見もいろいろだな。

 そして、女王が言葉を続ける。

 

『神の所在が判って安心しました。ヨシムネ、向かってくれますか?』

 

「向かうって言ったって、海の底だぞ? 神様の居た場所は、空気があるようだったが……」

 

『そうですね……海の中を進む船が作れればいいのですが、オリハルコンは塩水で腐食してしまうのです』

 

 うへ、完璧な金属だと思ったら、そんな弱点があったのか。

 

『もしかしたら、長老ならば何かを知っているかもしれません。我が子ヨシムネよ、長老を解放してくださいませんか?』

 

「いいよいいよー。えーと、解放メニューを開いて……げっ、ポイント高いな」

 

『ですが、足りるでしょう?』

 

「ええい、ストーリー進行のためだ、解放!」

 

 そうして、長老と呼ばれる少年が箱舟から解放された。長老なのに見た目が若いのは、神の血が濃いかららしい。

 早速、俺と女王リドラは、長老に海の底に向かう方法を聞き出すことにした。

 

「レムリア兵を形作る青き金属は、あれもまたオリハルコンなのじゃ。銅と海水から作る、青きオリハルコンじゃ。あれならば、海の中を進む船も作れるじゃろうが……」

 

 そこまで言って、長老は言いよどむ。

 

『青いオリハルコン!』『銅がベースだから、赤銅や青銅といろいろあるわけだな』『青銅が青みがかるのは腐食した後だぞ』『個人的にはオリハルコンは青のイメージだわ』『ミスリルは緑!』『ミスリルも青だろー』

 

 そんな視聴者のコメントを聞き流しながら、俺は長老に話の続きをうながす。

 

「青きオリハルコンは神の力と反発してしまう。神の子が操ることは不可能じゃろう」

 

「うーん、外れか。他に何か知っていそうな人はいるかな」

 

 俺は女王に視線を向けるが、長老は手の平を前に差し出して「待て」と言った。

 

「そう結論を急ぐでない。神の力を持つ赤きオリハルコン、海の力を持つ青きオリハルコン、それらを合金とすれば、あるいは」

 

「ほう、合金」

 

「青きオリハルコンは神の力では加工できぬが、火の炉で溶かすことはできる」

 

 そういえば、レムリア兵の死骸をアイテムクラフトしようとしたら、弾かれたことがあった。

 

「レムリア兵を倒したのじゃろう? 材料は揃っているということじゃ。後は、鍛冶師達の出番じゃな」

 

 よっしゃ、死骸集めだ。レムリア兵の死骸は、そこらに転がっている。

 未来のゲームだから、表示数に限界が来て死骸が消滅してしまうということがないんだよな。動物の死骸は一定時間経過で骨以外なくなるようだが。

 

 そうして俺は、箱舟の周辺にあるレムリア兵の場所をヒスイさんに案内してもらい、死骸を抱えて村に帰った。アイテムボックスやモノリス転移も神の力なので、自力で運ぶしかないのだ。

 

 鍛冶師達にレムリア兵を引き渡すと、赤オリハルコンを液状に加工してくれと言われた。彼らがレムリア兵の死骸である青オリハルコンを溶かすのに合わせて、俺も液状の赤オリハルコンをアイテムクラフトで作り出す。

 二つの金属は、反発することなく混ざり合い、そして……。

 

『紫オリハルコン!』『美しい輝きだ……』『私これ好き!』『紫のミスリル採用しているゲームは見たが、紫のオリハルコンは初めて見たな』

 

 完成した紫オリハルコンは、赤オリハルコンより神の力との親和性が高いことが判った。

 なので、新たに箱舟から解放した魔法陣技師に潜水艦作りを任せると共に、鍛冶師達に紫オリハルコン製の武具の作成を依頼した。

 やがて、ゲーム内の日数は過ぎ、潜水艦は完成する。

 海岸線に立てられた造船所にて、見守る魔法陣技師を前に俺は、紫オリハルコンの打刀を掲げて言った。

 

「しゃあッ! 推定ラスボス戦へ出発じゃあ!」

 

「神の子よ、ご武運を!」

 

「農耕神様は武神だった!」

 

「新たな神話の一幕だ!」

 

 そう口々に言う魔法陣技師達に見送られ、俺は潜水艦に乗り込んだ。

 

「さて、向かう場所は判るかな、ヒスイさん」

 

 俺は、守護妖精になっているヒスイさんにラスボスの居場所を尋ねた。

 

「操縦桿を握るとムービーシーンに変わって、自動で到着します」

 

「あっ、そういう……」

 

 そして、飛ばせないムービーを挟んで到着である。

 海の底のはずだが、空気がある。今でも古代レムリア人が生きていそうな雰囲気だが、迎えてくれたのは人ではなくレムリア兵だった。

 

「今更レムリア兵がなんぼのもんじゃい! って、ぎゃあ! レーザー撃ってきた! てめえ!」

 

『油断大敵』『ここラスダンだろうしな』『BGMが壮大』『お口悪子さん(だがそれがいい!)』

 

 視聴者のはげましのような何かを聞きながら、俺は奥へ奥へと進んでいく。

 うーん、敵が非人間だと、会話がなくて楽でいいがストーリーとしてはちょっと物足りないな。まあ、RPGじゃないからよしとするか。

 

 そして、俺はついに神様の待つ大広間へと到着した。

 

「とうとう来たね、我が子よ……」

 

 金属的な翼の生えた優しそうな青年が、拘束されたままそう俺に言葉を向けた。

 だが、話すのは後だ。

 

『警告。あなたは最重要区画に無断侵入しています。ただちに退出しなさい。警告に従わない場合は、撃退します』

 

「お前がラ・ムーね。さて、どこが弱点なのか……」

 

 ごちゃごちゃした立方体の塊って感じだな。中心らしき場所には、神様が拘束されている。

 

『警告。警告。警告。侵入者の侵入経路を探知。海上に人類の存在を確認しました。人類は消去しなければなりません。そして、ヴァルーシアの再生を行ないます』

 

「させないよ。あの島は、最後の希望なんだ」

 

 そう言って神様が身体から赤い光を放つと、大広間が揺れた。

 

「さあ、我が子よ。今のうちにラ・ムーを討つんだ。このままでは、また島が海の底に沈められてしまう」

 

「よっしゃ、ラスボス戦じゃー!」

 

 青く輝くラ・ムーに向けて、俺は打刀を抜き躍りかかった。

 そして……。

 

「第三形態まであるとかきついっす!」

 

 俺は、トカゲ型巨人の姿になったラ・ムーと戦いを続けていた。

 

『この形態、クトゥルフ神話要素を感じる』『ラ・ムーの暴走は、人類に復讐しようとする蛇人間のコンピュータウィルスによるものだったんだよ!』『な、なんだってー!』『ヴァルーシアとか言っていたしマジかもしれない』

 

 視聴者達、雑談しているけど、俺を応援するつもりはないの!?

 

「我が子よ、あと少しだ!」

 

 NPCの神様の方が俺を応援してくれる……! さらには、たまに神の力を放ってラ・ムーの動きを止めてくれるいい人だ。

 

「さあ、今だよ!」

 

 神が一際強い力を放ち、ラ・ムーがダウンする。俺は、ラ・ムーの巨体を駆け上っていき、頭に向けて全力で打刀を叩きつけた。

 ラ・ムーの頭はひび割れていき、内部から強い光が漏れ出してくる。

 俺は慌ててラ・ムーの身体の上から降りる。すると、ラ・ムーはバラバラになって崩れ落ちた。そして、神様の拘束も解ける。

 

「我が子よ、よくやってくれたね」

 

「うむ、大勝利!」

 

 神様にたたえられて、俺は打刀を天に掲げた。

 

『あ、ようやく終わった?』『長かったなー』『これ、神様が実はラスボスとかならないよね?』『ありそう』『早く農業に戻って』

 

 視聴者達も、少しは俺をいたわって?

 

「ラ・ムーを失ったここは、いずれ海に飲まれる。早く脱出した方がいい」

 

 そう神様が優しげな顔でこちらに語りかけてくる。

 俺は打刀を鞘に収めながら言葉を返す。

 

「ああ、神様はどうするんだ?」

 

「私は一足先に地上に向かうとするよ。では、我が子と再会できる日を楽しみにしている」

 

 神様はそう言うと、一瞬強く輝き、そしてこの場から消え去った。

 先に転移か何かで逃げたのか。俺も、逃げなきゃな。

 

 俺はラ・ムーの死骸のコアっぽい部分を抱えると、ダッシュで潜水艦の泊めてある場所へ向けて走って行った。

 

『ちゃっかりラスボス回収している』『まあ海に沈んだら回収できなさそうだしな』『他の青オリハルコンと何か違うのかね』『新しい武器が作れても、倒す相手がいなさそう』『RPG最終装備あるあるやね』

 

 道中、邪魔するレムリア兵はいない。ラ・ムーが滅び、機能を停止したのだろう。もう戻ってこられそうにないし、レムリア兵の死骸を潜水艦に詰め込んでいきたいが……。

 

「ヨシムネ様、脱出までのタイムリミットを視界に表示しておきます。お急ぎください」

 

 おっと、ヒスイさんに注意を受けてしまった。

 俺は、タイムリミットが来る前に潜水艦に戻り、操縦桿を握ってまたムービーシーンを挟んで、地上の島に移動した。

 

 潜水艦から出て、島に足を踏み出すと、何か上空に大きな物体が漂っているのを発見した。

 それは、箱舟が置かれている場所のちょうど真上に位置している。

 なんだろうか、あれは。俺は近場のモノリスに寄り、箱舟まで転移する。そして、女王リドラに何が起きたのかを聞くことにした。

 

『ラ・ムーの討伐お見事でした。神も、私達の元へと戻ってきてくださいました』

 

「それより、あの上に浮いている物体は……?」

 

『あれは、神が地上に降臨したときに乗っていったとされる、天のゆりかご。あの中で、神は眠っていらっしゃいます』

 

「ああ、疲れて休んでいるのか」

 

『神はこのままでは目を覚まさないでしょう。力を大きく失ってしまったのです。ですので、私達の信仰の力が必要です』

 

「……なるほど?」

 

『我が子ヨシムネよ。村を発展させ、私を解放し、祭りを開くのです。そうすれば、神は再び私達の前に降臨することでしょう』

 

 どうやら、ラスボスを倒しても、素直にゲームクリアというわけにはいかないようだ。

 アクションパートの次は農業パートだ。クリア目指して頑張るぞー!

 


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