21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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79.ダンジョン前の雑貨屋さん(RPG・経営シミュレーション)<5>

『ヨシムネ。おぬしを訪ねてきた者がおるぞ』

 

 配信三日目。調合室のアップグレードをするためにせっせと商品を作っていると、猫のメケポンが何やら知らせにやってきた。

 これは……イベント発生の予感!

 

 俺はポーションを調合していた手を止め、店舗の方へと向かった。

 うーむ、お客さんの顔ぶれが種族入り乱れて多彩だな。

 

 ケット・シーにコボルド、ドワーフにエルフ。そして、そんな中に普通のヒューマンに見える褐色肌の女性が混ざっていた。

 その女性はこちらに気づくと、ゆったりとした動作で近づいてきた。

 

『お呼び立てして申し訳ありません』

 

「ああ。何か用事があるんだって?」

 

『はい、わたくし、『女傑の食卓商会』会頭をしております、アマゾネス族のメヒカと申します。よろしくお願いいたします』

 

「ヨシムネだ。よろしく」

 

『これはまた美人さん』『エルフとはまた違うよさだな』『ヨシちゃんの方が可愛いよ(はぁと)』『ヨシちゃんもたまには褐色になろうぜ』『南国ヨシちゃん!』

 

 リアルのボディは人工皮膚だから、紫外線とか当てても日焼けしないんだよな。

 しかし、ふーむ。アマゾネス族か……女性しかいない種族とかだろうか。

 

『実は、当商会はこの村で商店を開くことを検討しておりまして……今回は販売品目がいくらか被るであろうこのお店に、ご挨拶に参りました』

 

「へえ、それは……宣戦布告かい?」

 

 調合室のアップグレードが必要だというのに、売上減になりそうな要因は、ちょっと見逃せないぞ。

 

『いえいえ、滅相もございません。わたくしどもが扱うのは、食品でございます。ダンジョン用の雑貨は、携帯食料を取り扱う程度でして……』

 

「食品か……確かにうちではそんなに扱ってないな。料理の調合をしても、ほとんどが女神の胃の中に消えている」

 

 女神には三食食わせるのを約束しているからな。日数の概念がないから、一定時間経過で食事を渡しているけれど。

 

『それと、商会としての伝手がありまして、この村で余ったダンジョン産の素材を買い取り、外の商会に流すことも考えておりますが……そちらの素材の買い取りを邪魔するつもりもありません』

 

「へえ……」

 

 なんだか交渉するまでもなく譲歩されているな。

 

『ただし、食品の一つとして、酒の取り扱いを許可してほしいのですが……』

 

「あー、ええよええよ。なんでそんなにこちらの事情を考慮してくれるのかは解らんが」

 

『それは、ダンジョンの女神メケリン様がこちらのお店に滞在していらっしゃるからですね。わたくしども『女傑の食卓商会』は、以前メケリン様の食事のお世話を担当させていただいておりまして……』

 

「んー、女神、そうなのか?」

 

 俺は後ろでぼんやりと話を聞いていた女神に話を振った。

 

『え? 知りませんね。国から派遣された巫女達が全部生活のお世話をしてくれていましたから、どこの商会が食材を用意したとか興味なかったです』

 

『うーんこの女神のマイペースっぷりよ』『やることはやってくれるんだが……』『美味しいお菓子をあげるって言われたら誘拐されるんじゃないか』『チョロ女神』

 

 ひっでえ評価。でも俺この女神好きだぞ。料理をやっているとペットに餌付けをしている気分になる。イノウエさんの餌やりはいつもヒスイさんがやっているからな……。

 

『そ、そうですか……。では、これからは食材の調達は当商会にお任せくださいませ。こちら、お近づきのしるしです』

 

 そう言って、会頭のメヒカは褐色肌の部下を呼び、店のカウンターに麻袋を積んでいく。中身を確認すると、これは……香辛料か!

 

『南方の香辛料です。こちらも、この村に置く商店で取り扱う予定でございます』

 

『食事がより美味しくなるわけですね! 我が家主、これで料理をよろしく!』

 

「はあ……まあいいけど」

 

 このゲーム、料理作るのは調合で一瞬だしな。

 

『そうそう、他の商会との伝手を先ほどお話ししましたが、このダンジョンに存在しない素材がご入り用の場合は、お知らせください。輸送費をいただきますが、他の商会を通じて別のダンジョンから素材を調達してまいります』

 

「おお……ヒスイさんの言っていた商会機能か……やったぜ」

 

 そういうわけで、商会がダンジョン村に進出してくることになった。

 ちなみに少し会頭と雑談したが、この商会はアマゾネス族の集団らしく、商隊を組み各地を転々とすることで、一時の伴侶を探して子供を産むということをしているらしい。生まれてくる子供は必ずアマゾネス族の女性で、相手はケット・シー族でもコボルド族でも構わないらしい。

 うーむ、女しか生まれない種族か。繁栄しすぎたら世界がアマゾネス族にあふれて、最終的に男がいなくなって人類が絶滅する、大変な種族だな。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 調合室のアップグレードを終え、さらに三つ目の中級ダンジョン、『中級の遺跡+2』を開放した。訪問種族はスプリガンだ。

 目減りしていた店の資金は、ようやく補充されていき、素材買い取りからの商品作成、販売もスムーズに行なわれるようになった。テストプレイ以外でもダンジョンに入ることはできるし、実は他の冒険者を誘ってダンジョンに挑むこともできる。だが、ダンジョン攻略にはそれほど苦労していないので、素材は自分で集めるよりも買い取りすることが多かった。

 帰還の羽根は組んでいるPT全員に効果が適用されるので、テストプレイも複数人で挑めるのだが俺はその必要性を感じていなかった。

 

 そんな経営パートに偏り気味のプレイを続けていたところ、またもやイベント発生の予兆があった。村長が訪ねてきたのだ。

 

『酒蔵も増築され、宿屋も増え、住宅も増えた。そこで、村の公共施設を増やそうって話になっているんだ』

 

 まだ年若い青年の村長が、そう話を切り出した。

 

「へえ、村が栄えるのはいいことだな。何を建てるんだ?」

 

『各種族から要望が上がってきていてね。今のところ三つの企画が立っているけど、まずは一つだけ建てる。でも、資金の問題がね……』

 

「ほう、資金」

 

『出資してくれないかな? その代わり、どの施設を建てるのかは選ばせてあげられるよ』

 

 そう言って、村長は俺に企画書を三枚渡してきた。どれどれ……。

 

 1.酒場。要望はドワーフ族。まあ、ドワーフなら当然の要望だな。というか今まで村に酒場がなかったのが驚きだな。

 2.浴場。要望はエルフ族。エルフ族は毎日の沐浴の習慣があるらしく、それを浴場のお湯で行ないたいらしい。まあ水で沐浴とか辛そうだしな。

 3.博物館。要望はスプリガン族。スプリガンは、宝箱の出やすい遺跡ダンジョンばかりに出入りしている種族だが、財宝が好きで一日中でも眺めていられるらしい。

 

 投資にかかる費用は結構するが、払えない額じゃない。ここは、よーし。

 

「浴場じゃー! お風呂配信するぞー!」

 

『いえーい!』『一面肌一色!』『ケモもいるぞ』『ヨシちゃんの貴重な入浴シーン』『今時お風呂なんて存在しないから、ゲームだけの文化だな』

 

 というわけで大金を村長に押しつけ、魔法大工の手により浴場が即日完成した。魔法ボイラーで薪いらずらしい。

 

「よーし、ヒスイさん浴場行くぞー!」

 

「店番が……」

 

「お風呂配信より大事な物はない!」

 

『ちょっとちょっと、私を置いていかないでください!』

 

 女神もメンバーに加わり、浴場へと向かった。

 

「キャストオフ! って、更衣室に足を踏み入れただけで自動でバスタオル姿に!」

 

『ですよねー!』『知ってた』『そりゃあ、健全ゲームですから』『期待なんかしていなかったんだからね!』

 

 浴場では、すでに人が多数詰めかけており、よく知る顔も見受けられた。

 ケット・シー族の上級冒険者ハニー、エルフ族の冒険者クラン『世界の緑団』団長、アマゾネス族の会頭メヒカなどだ。

 俺は彼女達に挨拶し、浴場内を眺める。

 

「バスタオル外れないけど、どうやって身体を洗うんだ」

 

「入浴機能はフレーバー要素でしかないので、お湯に浸かるだけですね」

 

 俺の疑問に、そんな言葉をヒスイさんが告げてきた。

 

「そっかー、八ヶ月ぐらいぶりのお風呂だと思ったんだけどな」

 

 普段リアルの部屋では、ナノマシンを使った洗浄機で着ている服ごと洗っている。お風呂場は部屋に存在しないのだ。

 

『桃色天国じゃ』『ふとももがなまめかしい』『ううむ、ソウルコネクトに慣れすぎて、女体を見ても何も思わなくなってしまった……』『まだ性別超越の領域には行きたくないなぁ』

 

 透けてすらいないバスタオル姿に対する反応は、様々だった。

 

「ちょっと男子ー。なに女湯見てるのさー。ここは女子の領域だゾ」

 

 そう男性視聴者に向けて俺が言うと……。

 

『おい、おじさん少女』『あんた中身男じゃねーか!』『僕知っているよ。ヨシちゃんはまだ性別を超越していないって』『若人よ、魂に身を任せるのじゃ』

 

 ううむ、流れるような突っ込み。

 ともあれ、身体を洗う必要がないとのことなので、湯船に直接突入する。ゲームなのでかけ湯もなしだ。

 

『ふにゃあああ。なんですかこれー。気持ちいいー』

 

 湯船に入った女神がとろけておる。

 でも、ちょっと待て。

 

「女神。そんなに翼を広げるな。すっげえ邪魔」

 

『はいー? なんですかー? ふおおおお』

 

「ええい、翼をばちゃばちゃさせるな! 水辺のカラスかお前は!」

 

 迷惑な女神であった。

 

「メケポンさんが一緒じゃないのが残念です」

 

 そんな女神の被害にも負けず温まっていると、俺の隣で湯に浸かるヒスイさんが、そんなことをぼやいた。

 

「メケポンは猫だからな。お風呂は好きじゃないだろう」

 

「いえ、私達の後ろについて浴場までいらっしゃっていましたよ。ただ、彼、オスなので……」

 

「ああ、なるほどそういうこと……」

 

 この浴場は男湯と女湯にはっきり分かれているのだ。別に分厚いバスタオルで隠すんだから、混浴でも問題ないと思うけどな。普段、バスタオル姿よりも露出が多いキャラも結構いるぞ。アマゾネス族とか。でも、目の保養的には男がいないのはありがたい。

 

「しかし、エルフ族以外にもいろんな種族が来ているな」

 

「清潔でいたいのは種族関係ないですからね。同じように酒場を作っても、各種族がやってきますよ」

 

 浴場の様子を眺めて言った俺に、ヒスイさんがそう言葉を返した。ふむ、酒場ね。

 

「博物館は?」

 

「……ほぼスプリガン族専用施設になりますね」

 

「駄目じゃん」

 

「都市部ならともかく、本来、村には無用の施設でしょう。最終的には資金が余って、全て建てることになりますが」

 

「なるほどなー。で、この浴場はゲーム的にどんな効果があるんだ?」

 

「エルフ族の冒険者の訪問がいくらか増えます。他の種族も全体的に訪問が増えますね」

 

「博物館は?」

 

「スプリガン族が爆発的に増えます」

 

「村の事情はともかく、ゲームバランスはちゃんと取れているってことだな」

 

『中級ダンジョンの選択肢八つあるけど、設置できるのは四つまでなんだよな』『村に訪れない種族がいて、それ関連の施設も建設できないってことか』『やりこむなら周回プレイ必要だな』『凝ってるじゃん』

 

「一周で全ての要素を網羅できないのは、それはそれで気になるかなー。と、それよりもお風呂だ。お風呂回と言えば女子同士の桃色会話。ねえヒスイさん、意外と胸大きくないー?」

 

「ヨシムネ様と同じサイズですが」

 

「そういえばそうだった。同じサイズのボディだったよ!」

 

 そんな雑談でキャッキャウフフと十分ほど潰し、浴場を後にすることにした。ゲームだからか長湯してものぼせないのはいいな。

 

「よーし、他の公共施設の建築も目指して、稼ぐぞー!」

 

 店への道中でそう気合いを入れていると、濡れたままの翼をばっさばっさと動かして乾かしている女神がぽつりと言った。

 

『次のダンジョン拡張、もうできますよ』

 

「マジかよ!」

 

『浴場の集客効果ですかねー?』

 

 結局その日の配信は、『中級の湿原+3』のテストプレイを終え、リザードマン族を村に招いたところまでで終わった。公共施設のさらなる拡充までは資金が足りなかった。続きはまた明日だ。

 

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