21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信! 作:Leni
村に投資して博物館を建てたのだが、どうやら周辺地域からスプリガン族が続々と村へと集まったらしい。
らしいというのは、店舗に訪れるスプリガン族の冒険者の数がさほど増えていないからだ。いや、むしろ減ったかもしれない。
「連日連夜博物館に入り浸って、展示物を眺めているそうですよ」
冒険者に商品を売りながら、ヒスイさんがそんな事情を話してくれた。
「冒険者を店に呼び込むために投資したのに、それじゃ駄目じゃん……」
「展示されている財宝に慣れてきたら、彼らもぼちぼち冒険者に戻りますよ」
「飽きる、じゃなくて慣れる、なのか」
「スプリガン族が財宝に飽きることはありません」
「なんなんこの種族……」
そんな会話をヒスイさんと繰り広げる。
配信時間は予定終了時刻を超えていて、延長戦だ。エンディングが近いので、もうどっしり構えることにした。
どっしり構えていたら、ケット・シー族のハニーとコボルド族のオスカーが。こちらにやってきた。ふむ、この組み合わせは何かイベントか?
『にゃあ。店主、また相談があるんだ』
『ばう』
「おう、なんだい。なんでも言ってみてくれ」
『にゃあ。店主がこの村の公共施設を作っていると聞いて、あちし達も要望を上げたいんだ』
「……そういう話聞くの、村長の仕事じゃねえの?」
今まで公共施設の要望をあげたいずれの四種族も、村長を通して企画書を出してきたぞ。
『にゃあ。村長が、どうせお金を出すのは店主なんだから、最初から店主に話を持っていけって言ってたよ』
「あいつ、ぶっちゃけやがった……!」
もう俺が村長でいいんじゃねえか。
『村長になって村を発展させよう!』『村開発ゲームかぁ』『別ジャンルになってるやん』『でも今までだって、村を開発していたようなものだぞ』
村開拓ゲームか。他所との交易が薪メインになって薪本位制経済になりそうなゲームだな。
「で、どんな公共施設が欲しいんだ?」
『にゃあ! よくぞ聞いてくれました! これは、『まだら尻尾団』と『するどき指先団』の共同企画、その施設の名は……』
『ばう。わんにゃんふれあい広場』
「わんにゃんふれあい広場」
オスカー団長のバリトンボイスから、とんでもない企画名が飛び出してきやがった……!
『にゃあ。いろんな品種の猫と犬を広場に放し飼いにして、村人や冒険者とのふれあいの場にするんだ!』
「お、おう。猫と犬って、ケット・シーとコボルドのことじゃないよな?」
『にゃあ。当たり前だよ』
『ばう。犬じゃない。妖精』
あくまでコボルドは妖精だとオスカーは主張したいようだ。
「普通の犬猫かぁ……そういえばヒスイさんがプレイ前に、いい猫ゲームだったとか言っていたが、そういうことか……」
しゃべる猫から歩く猫までそろえて、さらに普通の猫も用意してあるってわけだ。
『犬派もこれには大満足』『狐は? 狐はいないんですか?』『鳥! 鳥!』『リザードマンじゃ爬虫類欲を満たせないよ』『結局ケモミミ獣人出なかったな……』
くっ、これ収拾付かないやつだ! とりあえずスルー!
「まあ、やりたいことは解った。企画書は?」
『にゃあ。オスカー』
『ばう』
オスカーに企画書を手渡され、その必要資金の部分だけを見る。
「ふむ。余裕だな。よし、許可だ!」
『にゃあ! ありがとう!』
『ばう。感謝』
そうして魔法大工がすぐさま動き、広場が作られた。そこに、どこからかケット・シー族とコボルド族が様々な品種の犬猫を連れてきて放した。
これにはヒスイさんもにっこり……と思ったら、もっと喜ぶ人物がいた。
『ふおおおおお! 動物パラダイスですよ! なにこれなにこれ!』
ダンジョンの女神メケリンである。
『こんなに動物がたくさん! 私この村に来てよかったです!』
「……女神、あんた特にケット・シー族とコボルド族には反応していなかっただろ。なんで今更、犬猫にはしゃいでいるんだ」
俺がそう突っ込みを入れると、女神はきょとんとした顔をして答えた。
『え? その二つは人類種の妖精族ですよね? 知恵ある者です』
「ああ、そう……」
女神の尺度では、ケット・シー達は人類扱いのようだった。
女神は人類を愛でる趣味を持っていないのだろう。
『はー、最高です。私もうずっとこの村に住みます!』
その台詞を発した瞬間、女神の後ろに付いてきていた巫女達二人が、苦虫を噛み潰したような表情をした。
ふむ、二人は村に居着くつもりはないのかね。
そう思った矢先のこと、突如BGMが聞いたことのない物へと切り替わった。
そして、巫女の一人が前に出て女神に向けて話しかけた。
『女神様。実は先日、本国にて、クーデターを起こした将軍の勢力が鎮圧されました』
『そうなんですか? それはおめでとうございます』
『つきましては、女神様には本国にお戻りいただききたいと……』
『え? 嫌です』
『えっ!?』
巫女は、本気で断られると思ってもいなかったかのように、驚きの声をあげた。
『め、女神様。動物がお好きなら、本国でも用意させますから、お戻りくださいませ』
『えー、やだー! 嫌ですー! 毎日の食事は、我が家主の作る料理じゃなきゃ嫌ですー!』
料理かよ!
『おもしれー女』『神を餌付けしたおじさん少女がいるらしい』『まあ女神が村に残っても、ゲームクリアしたらもうこの村にヨシちゃんは帰ってこないんだけどね』『よせ』『それは言っちゃならねえ』
巫女は焦って、女神を懐柔しようと言葉を尽くし始める。
『料理なら、私達が頑張りますから!』
『えー、我が家主ほど美味しい料理を作れるとは思えません』
俺、素材を買い取りまくって商品生産し続けたからか、とうとう生産レベルカンストしたからなぁ……。そりゃ調合する料理も美味いだろ。
『店主様……どうか本国にお戻りになるよう、メケリン様を説得してくださいませ……!』
「えー、こっちに話振るの? 俺関係なくない?」
『全力で当事者だと思われます……!』
「うーん、これってエンディング分岐か? どうすっかな……」
分岐を巡って、やいのやいのと視聴者コメントも盛り上がる。
しばらく抽出コメントと話していると、『両立ってできないの?』というコメントが流れた。
両立? 両立……あ、そうか。それでやってみよう。
「女神、とりあえず巫女さん達を国に帰して、聖域も向こうに戻せ」
『ええっ、我が家主、私を追い出すんですか?』
「そうじゃない。あんたはダンジョン間を自由に移動できるんだろう? じゃあ、普段は向こうの国の聖域で過ごして、俺の飯を食いたくなったらこっちのダンジョンに転移してくればいい」
『なるほど……! さすが我が家主、さえていますね。我が信徒に快適にお世話されつつ、我が家主の美味しい食事を楽しめる、いいとこ取りですか!』
『お、おお。女神様、お戻りくださるのですか。店主様、ありがとうございます!』
『では、早速あの国に戻りますよ! ダンジョンゲートの権能で二人とも送っていきます!』
女神が早速といった感じでダンジョンの方へと身体を向けた。
「おいおい、荷物とかあるだろうに」
『あ、じゃあ聖域に全部荷物を突っ込みましょう。それを向こうで取り出せばいいんです!』
女神は、上機嫌で巫女二人を引き連れ、巫女達が泊まっている家屋へと向かった。
そこで、突然アバターから魂が抜ける感覚が俺を襲う。
視界が勝手に動き、村の上空に移動する。かつてオープニングで映っていたわびしい村はそこにはなく、新しい建物があちこちに建ち、多数の人々が行き交っている。
そして、BGMが歌へと変わり、スタッフロールが表示され始めた。
「ようやくエンディングだな。このエンディングテーマも、制作者のガイノイドさんが歌っているのかな?」
『そうですよ』『可愛い歌だな』『大団円って感じ』『作中の謎は大体判明していたと思うし、ちゃんとまとまったシナリオだったと思う』『壮大なゲームではないけど、いいゲームだったわ』『ありがとうございます!』『商品の販売はヒスイさん任せだったから、販売パートがあまり見られなかったのがちょっと残念かな』『そこは自分でプレイしてみてもいいんじゃない?』
エンディングテーマをバックに、視聴者達の抽出コメントがわいわいと湧く。
スタッフロールとは言っても制作者は二人しかいないため、制作ツールとか使用素材とかの文字が並んでいるだけだ。
歌をエンディングテーマにしてしまったため、歌いきるまでなんとか文字を途切れさせまいとする努力がうかがわれた。
そして、スタッフロールが終わり、視界は再び村上空から地面へと移る。俺のアバターは雑貨屋の店舗に移動しており、カウンターでヒスイさんと一緒に座っていた。そのアバターに、俺の魂が乗り移る感覚があった。
「……以上で、『ダンジョン前の雑貨屋さん』クリアーだ。配信に連日付き合ってくれてありがとう!」
俺は、そう視聴者に向けて挨拶をする。
「今日は配信時間が長引いてしまいましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます」
ヒスイさんも視聴者に向けてそう言葉を発した。
『面白かった』『インディーズゲームもいいものだね』『総プレイ時間は20時間くらい?』『店員役のヒスイさんがいなかったら一周はもっと延びるのかな』『編集動画版の配信も楽しみにしているよー』
「今回はゲーム制作者の人も視聴してくれたりして、楽しくプレイすることができたぞ! この調子で、インケットで入手した他のインディーズゲームも配信できたらしていきたいと思う!」
「次のゲームは猫成分が足りないのですよね」
「猫基準にゲーム選ぶのは止めよう? さて、次回はいつ配信するかは決まっていないけど、配信日が決まったらまたヒスイさんから告知してもらうな。以上、銃の練習はまた別に必要な気がする、21世紀おじさん少女のヨシムネでした!」
「どのガンシューティングを選んでも、近接にこだわりそうで不安です。助手のヒスイでした」
そうして、四日間続いた『ダンジョン前の雑貨屋さん』のライブ配信は終了した。
リアルに戻って遅くなった食事を取ると、食事中に新たにメッセージが届いたことをヒスイさんに知らされた。
送り主は、今回のゲームの制作者さん。配信は大変はげみになったので、次回作の制作を頑張りたい、だそうだ。
なるほど。次回作が出たら、今度もぜひプレイしてみたいところだな。