21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信! 作:Leni
『ダンジョン前の雑貨屋さん』の配信を終えて次の日の朝。朝食の場で次の配信ゲームについて、ヒスイさんと相談しようとしたところ、こんな提案をされた。
「ヨシムネ様、超能力特性を検査しにいきませんか?」
「むっ! 超能力特性か。それは、俺がどの種類の超能力が得意かという?」
「そうですね。『MARS』のオンライン対戦モードなどもそうですが、自前の超能力を使えるゲームなども今後プレイしていく可能性が高いですから、一度検査しにいってみましょう」
ふむふむ。確かに、前から俺はどんな超能力が得意か少し気になっていたんだ。
一応、ゲーム外のリアルで、自前で組んだセルモデルをサイコキネシスで飛ばしてみたりはしたんだが。
「検査に予約とかは必要じゃないのか?」
と、ふと疑問に思ったことをヒスイさんにぶつけてみたのだが……。
「いえ、むしろヨシムネ様を連れてきてくれと、向こうから催促されているほどでして……」
「そうなのか」
「ええ、21世紀人の魂が、超能力学の観点から見て現代人と差異があるか、調べてみたいのだそうです」
「ええっ……解剖とかされないよな俺」
「ご安心ください。すでにヨシムネ様のご遺体は解剖されております」
「そういえば献体してたな! そして今ガイノイドボディだから解剖とか関係なかった!」
なに解剖を怖がっているんだ、俺は。無敵のミドリシリーズだぞ。
あっ、でも魂をいじられるのは怖いな。魂はさすがに無防備だ。
「本格的な研究ではなく、ただの検査ですのでご安心ください」
「ああ、解ったよ」
ご安心くださいって二回も言われたぞ。そんなに狼狽していたか俺。
ともあれ、実験区に検査に行くことは決まった。行くのは今日の午前中だ。そんな急に予定を割り込んでも許されるあたり、本当に来るのを期待されていたんだなー。
「どんな超能力特性が出るのかね。自分ではどの超能力が得意かとか、全然判らないんだが」
「定量的に測定しないと判らないものですからね。何しろ、超能力は扱える能力が幅広すぎます」
「そんなもんか」
まあ、テレパシーとサイコキネシス、どっちが強いか比べろと言われても、無理としか答えられないな。
しかし、扱える能力が幅広いか。
「個人の超能力特性が対戦系のゲームに反映されるとなると、あまりフェアじゃなくなるな。個人の特性で強さが変わってしまうんだろう? 『St-Knight』とか超能力使えるみたいだし」
「『St-Knight』は、個人の超能力特性はさほど反映されないゲームバランスのようです。一方、『MARS』の対戦モードは超能力特性が強く影響しますが」
「『MARS』は視聴者にも超能力ゲーと言われていたな」
「フェアに戦う対戦型ゲームと言うよりも、マーズマシーナリーの搭乗シミュレーター的な側面が強いですね」
「実は、いずれ来たる、対宇宙人戦争の兵士育成のために用意されたゲームである! とか」
「『ヨコハマ・サンポ』に出てきたようなクラッキング能力がある生命体が発見されない限り、人類が徴兵される可能性はないでしょうね。『MARS』の対戦モードが超能力特性を反映しているのは、おそらくマザーの趣味です」
「マザーの趣味か」
まあ、あれはマザーが作ったゲームだからな。
と、話し込んでいたから食事の手が止まっていたな。午前中に出かけるなら、早めに食べ終えてしまわないと。
俺とヒスイさんは、会話を止めて食事を再開するのであった。
◆◇◆◇◆
「お姉様、ようこそいらっしゃいました!」
キャリアーと呼ばれる自動運転の乗り物に乗って実験区の入口に到着した俺とヒスイさんは、とある人物に迎えられていた。
ヒスイさんと同じ行政区の制服に身を包んだ、茶髪のガイノイド。胸につけられた職員証を見ると、サナエと日本語で名前が書かれてある。
「現実では初めましてですね。私、今年一月に、この実験区へ新規に配属された、ミドリシリーズのサナエと申します!」
「ああ、ヨシムネだ。よろしく」
新規配属のミドリシリーズか。ヒスイさんの代わりに、ニホンタナカインダストリが実験区に納入したという個体だな。
「ヒスイも護衛おつかれさまです」
ヒスイさんに目を向けながら、サナエさんが言った。
護衛かぁ。そういえば、そんな名目で俺のもとに行政区から派遣されているんだよな、ヒスイさん。
護衛が必要なくなったらヒスイさんがいなくなるとかなったら、辛いものがあるな。
と、そんなことを思いながらヒスイさんを見ていたら、こんな言葉をかけられた。
「私は護衛でなくなってもヨシムネ様と一緒ですよ」
「おおう、ヒスイさんエスパー?」
「アンドロイドは超能力を使えません」
単に俺の表情から察されたというだけか。そんな不安そうな顔をしていたかね?
「むー、お姉様、ヒスイばかりでなく私もかまってください!」
ヒスイさんの方を見ていたら、サナエさんがそんなことを言ってくる。
「ああ、サナエさんは検査の出迎えか?」
「はい、今日は私が一日ナビゲートいたします! それと、お姉様、どうか私のことはサナエと呼び捨てにしてください」
「うん? いいのか?」
「はい! 私は妹ですから、気軽に呼んでくれた方が嬉しいです」
「そうか。サナエ、早速案内よろしく」
「お任せください! ふふーん、ネットワークで自慢できますねー」
ネットワークか。ミドリシリーズのガイノイドは、常時、独自の高速通信ネットワークでやりとりしているんだったな。そこで俺と会ったことを自慢か。
「うーん、ネットワークが荒れなきゃいいけど」
「すでに荒れていますよ。紛糾です」
俺の独り言に、ヒスイさんがそう答えてきた。そうか、紛糾か。
俺はそれ以上ネットワークのことには触れず、サナエの案内で実験区の奥へと移動した。
「お姉様のことは、実験区の超能力研究部門が検査するようです。ちょっといろんな部署でお姉様の取り合いになったのですが、超能力特性を調べるのだから超能力研究部門で、とマザーが介入したようでして」
「マザーが直々に介入してきたのか……」
「それだけお姉様は重要人物ってことですね!」
実験区を進むと、ところどころで白衣を着た研究員とすれ違う。ただし、移動中に偶然すれ違ったとかいう感じではない。
わざわざ廊下の途中で立ち止まって、俺を待っていた感じだ。
その証拠に、すれ違った後、俺達の後ろをつけてきている。
「はい、超能力研究部門の区画に到着です。さあ、後ろの人達は帰った。おこぼれはありませんよ! しっしっ!」
サナエが追い払うように手を振ると、白衣の研究員達は素直に残念そうな顔をして散っていく。
集まった研究員に占める人類とアンドロイドの比率は半々といったところだった。
そして、一仕事終えたサナエが大きなドアの前に立つと、鍵の開く音が聞こえ、ドアが自動で開いた。
ドアの向こう側にサナエが進み、俺とヒスイさんもそれを追う。
「みなさーん、連れてきましたよー!」
入室すると、そこには多数の研究員が待ち構えていた。
サナエの掛け声に研究員達が近づいてきて、口々に俺に言葉を投げかけ始めた。
「21世紀人か! ちゃんと超能力は使えるのか!?」「あんた配信見てないの? ガジェットをサイコキネシスで飛ばしてたじゃない。それよりも、使ってて違和感とかある?」「普段、無意識で発動していることはあるか?」「好きな能力はどれですか?」「研究用にソウルエネルギー提供してくれない?」「21世紀では超能力はどういう存在だったんだ?」
ううーん、聖徳太子じゃないから聞き取るのは無理っすわ。
俺が困り顔になっていると、そこにサナエが割り込んだ。
「はいはい、今日中に検査を終わらせるんですから、質問はなしでお願いしまーす」
「くっ、おのれサナエめ」
「聞こえませーん」
「ヒスイさんが助手だったときは、こう、もっと言うこと聞いてくれたのに……」
「ヒスイみたいに使われるだけの私じゃないですよー。さ、お姉様、検査に参りましょう。こちらのソウルコネクトチェアですよ」
俺はサナエに手を引かれ、室内の隅に置かれた椅子へ案内される。
「ソウルコネクトチェアか。検査はVR空間でやるのか?」
俺はそうサナエに尋ねてみる。
「んー、ちょっと違いますね。検査機器と魂をつなげるのに、ソウルコネクト技術を応用するという感じでしょうか。検査中は眠っている感じになるそうです」
「そうか」
「では、座ってくださいね。違和感とかないですか? 一応、実験区にある中で一番お高いのを用意したんですが」
「わざわざ用意したのか……検査が決まったのは今朝だったよな?」
「研究員の人が頑張って、他所から引っ張ってきました!」
そうか……別に普通のタイプで構わなかったんだけどな。
ともあれ、感謝しつつ俺はソウルコネクトチェアに座る。うわぁ、なんだこれ。ふっかふかで、すわりがよい。
俺がチェアに身を任せると、研究員の人達が周囲を囲み、空間投影画面を開いて何やら作業をしだした。
「それではお姉様、検査機器と接続しますので、意識が途絶えるはずです。しばらくおやすみなさい」
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