21世紀TS少女による未来世紀VRゲーム実況配信!   作:Leni

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89.初めてのゲスト出演<2>

 ペアを組んだ俺と閣下は、チーム対戦モードの五人組の部にエントリーした。

 二人しかいないこちらが明らかに不利だが、閣下曰くこれくらいが面白いとのこと。俺、初心者やぞ。

 

 マスターエースとアマチュア1の組み合わせで、二人のみという条件で俺達につけられた暫定ランクは、プロフェッショナル3。これがどれくらいの強さなのかは俺には解らない。

 

『プロフェッショナルはアマチュアの次のランクですね。アマチュア10から昇格するとプロフェッショナル1になります』

 

 そうヒスイさんが説明してくれる。

 いやあ、階級の位置づけではなく、実際にどれくらい相手が強いのかが知りたいのだけどね。まあ、プロフェッショナルというくらいなのだから、だいぶ強いのだろう。人数で不利なのにこのランク。マスターエースの下駄はどれだけすごいのか。

 

『ふふふ、ヨシムネがどんな動きをするのか、楽しみだのう』

 

 通信越しに、閣下がそう俺に言ってきた。俺はそれに対してテレパシー通信で答える。

 

『最近、こっちは『MARS』の対戦モードの配信をしていたけど、目は通していないんだ?』

 

『ああ、この前、ヨシムネに私の配信を見ないように言ったじゃろう? 私もヨシムネがどんな操縦をするか、今日の楽しみに取っておいたのじゃ』

 

 現在、格納庫で機体に乗り込み、マッチングをしてステージ決めの最中である。閣下は地球のビル街を申請しているが、相手は宇宙空間を要求している。宇宙空間は遮蔽物がないから、数で囲み放題だ。確実に相手が有利である。

 ステージ申請が互いから出て、どちらからも辞退がなかった場合は、AIによってステージが決定される。

 

 決定したステージは……地球の市街地だ。

 ビルほど高くはないが障害物となる建物を残している、妥協点を見いだした決定だろうか。マーズマシーナリーは体高8メートルあるので、二階建ての家屋では目隠しにもならないが。

 そうして、俺達は市街地ステージに転送され、試合開始のカウントダウンが始まる。

 

「どう動く?」

 

 そう閣下に聞いてみたのだが……。

 

『好きなように動くがよい。私がそなたに合わせる』

 

 初心者を抱えているなら、細かく指示を出していくか自由にさせるかの二択だよな。そして、自由にさせてくれるのは、こちらの気分がすこぶるよくなる。

 まあ、俺自身は別に指示を受けるのが嫌いってわけじゃないんだけどな。そうじゃなかったら、『-TOUMA-』をプレイしていた時点でヒスイさんを拒否している。

 

『レディ……ゴー!』

 

「ヒスイさん、敵の位置を教えてくれ!」

 

 開幕の合図と共に、俺はそうヒスイさんに通信を入れていた。

 

『はい、ESPをお借りします。……千里眼感度良好。位置情報をお返しします』

 

 マーズマシーナリーにはレーダー装置のような便利な電子機器は積まれていない。全ては、己の超能力を機体のソウルエネルギーで増幅してまかなう。

 俺の場合、ESP適性は凡人並だが、空間適性値が高めなので、相手の位置を把握する千里眼能力はそれなりに使える。

 感知した敵の位置を確認すると、住宅の上を飛んで一機が突出して前に出てきており、それを囲むように四機の機体が散開して、大回りでこちらに近づいてきている。

 

「突出した機体に向かうと包囲網をくらうかな?」

 

『そうですね。そちらの対処は閣下にお任せしてよろしいでしょう』

 

「おーけー。閣下、俺は右側面の敵から各個撃破を狙うよ」

 

『了解したのじゃ。他は私が囮として時間を稼いでおこう』

 

「ヒュー、さすがマスターエース。頼りになる」

 

『ふふふ、もっと褒めてくれたも』

 

『ヨシちゃん、その人褒めすぎると調子に乗るぞ』『なお調子に乗っても強い様子』『年の功』『おじいちゃん一級市民なのにゲームばっかりやっているから』

 

『おじいちゃんではない。24世紀おじさま少女じゃ』

 

 そんな視聴者と閣下のやりとりを聞きながら、俺はスラスターを噴かし右側面の敵に突撃していった。

 相手が視認できたあたりで、ヒスイさんが通信を入れてくる。

 

『敵武装、ヨシムネ様が相対している敵は計八門のエナジーランチャーを備えています。大型の核融合炉で供給エネルギーを支えているため、直線加速は速いですが小回りは利かない重量級です』

 

 その言葉に続いて、他の機体の武装情報も送られてくる。

 ふむふむ、中央に突出した機体はブレードに盾の近接タンク。他四機は全て遠距離砲撃型か。

 

 そして、右側面の敵はさすがに俺に気づいたのか、エナジー弾で弾幕を張ってくる。

 弾幕は厚いが、足を止めての射撃。いい的だ。

 

 俺はライフルを構えて、射撃。

 相手は慌てて回避行動を取るが、未来予測に従って撃たれた銃弾は、ごっそりと相手のサイコバリアを削った。

 

「よし、命中!」

 

『だいぶ当たるようになってきましたね』

 

「もう俺を蛮族だのゴリラだの言わせない!」

 

『なんじゃヨシムネ、そなた、近接の方が得意だったりするのか?』

 

 俺とヒスイさんの会話に、閣下がテレパシー通信で割り込んでくる。

 

「うっ、まあ、近づいて斬る方が好きかな」

 

『それなら、敵は鈍重じゃ。サポートしてやるから存分に斬り込むとよいぞ』

 

「ええー、まあ、いいか」

 

 俺はブレードを抜くと、スラスターを噴かして敵の張る弾幕に突っ込んでいった。

 もちろん、敵のエナジー弾に俺の機体が触れるようなことはない。標的に近づくにつれ、慌てて他の機体が援護に入ろうとするが、そこを閣下が狙い撃ちにしていく。

 

『ほう! ヨシムネ、なかなかの回避能力じゃの!』

 

「俺は未来視が得意なんだ。そうそう当たらないぞ!」

 

『こちらがヨシムネ様の超能力特性になります』

 

 ヒスイさんがそう言うと、閣下が驚きの声を上げた。

 

『な、なんじゃあ、この馬鹿げた時間適性は! ははっ! ヨシムネ、このまま鍛え上げれば、いっぱしのスーパーエースになれるぞい』

 

 どうやら、ヒスイさんが閣下に向けて俺のデータを転送したようだった。

 

『これ、一人でスペースコロニー何個分の食品保存サービスまかなえるんだ……』『楽々働かずに一級市民へなれますね。羨ましい』『ヨシちゃんは、すでに一級市民なんだよなぁ』『マジで?』『研究所に21世紀の肉体を生贄に捧げ、一級市民の地位を得る!』『うわー、そうか、600年前の身体だから学術的価値があるのか』

 

 俺の視聴者達にはすでに常識となっている配信者ヨシムネの経歴が、閣下の視聴者達にも共有されていく。

 こういうエピソードが知れ渡るほど、俺の配信者としての強みが広まるということだからな。よい宣伝になる。

 

 と、そんなやりとりをしている間に、敵機へ接近が成功した。相手は重量級の機体で、こちらは機動力特化の軽量級だ。逃げようとしても無駄である。

 ブレードを構え、突っ込む。

 すると、相手はランチャーをしまい、八本の腕でブレードを構え始めた。

 

「八刀流だと!? タコかお前は」

 

『脚部もありますので、十本脚ですけれどね』

 

 俺の突進にカウンターを仕掛けようとしてくる相手の斬撃を避け、側面へ回り込む。そして、ブレードを振るうと、相手のサイコバリアを貫通して相手のサブアームの一本を切り飛ばした。

 

「よしっ!」

 

 さらに畳みかけようとすると、相手が必死で距離を取ろうとした。次の瞬間――

 

『ヨシムネ、一人そっちに行くのじゃ』

 

『ヨシムネ様、その場を動かず』

 

 と、一機の機体が横から突っ込んできて……俺から距離を取ろうとした元八刀流の機体に衝突した。

 

「はっ?」

 

 えっ、敵同士が衝突事故?

 

『やったのじゃ! ヨシムネ、今じゃ! 決めるがよい』

 

『ヨシムネ様、ブレード攻撃です』

 

「お、おおっ!」

 

 あまりの衝撃にサイコバリアが解けている元八刀流の相手に、俺はブレードを振るって袈裟斬りにした。

 さらに、衝突したもう一機がふらついていたので、こちらはコックピット狙いで突きをおみまいする。

 

 どちらも撃破判定となったのか、敵機は市街地の住宅に突っ込み、沈黙する。

 

『うむ、見事な太刀筋じゃ。私達、結構いいコンビじゃのう』

 

 閣下が称賛の声を上げてくるが、それよりも俺は気になることがあった。

 

「なんで敵同士が衝突したんだ?」

 

『ああ、それか。なに、敵を上手く追い詰めてやって、衝突するコースを全力疾走させただけじゃ』

 

「ええっ、そんなことできるの……」

 

『わはは、これが魔剣王の父、赤き機竜の実力じゃ!』

 

『そんなことできちゃうのがマスターエース』『マスターエースランクは修羅の国だからな』『半分人類辞めているよこいつら』『その修羅の国を見学できるから、閣下の配信見るのは止められないんだよなぁ』

 

 つまりあれか、チャンプの同類。チャンプは実年齢若いみたいだから、300年近く研鑽してきたであろう閣下は、チャンプとは別の方向性での猛者なんだろうけど。

 

 ともあれ、敵は残り三機だ。どう動くか迷っていると、閣下から通信が入る。

 

『むっ、ヨシムネ。敵はどうやら残り全員でヨシムネを潰すようじゃぞ』

 

「解るのか」

 

『私はテレパスなのじゃ。通信傍受して、さらに相手の思考の表層をさらうことなど、容易い』

 

「おー、サイコバリアと精神防壁突破して読み取れるほど、テレパシー適性が高いのか。こりゃ閣下はニュータイプだな」

 

『ニュータイプ? なんじゃそれは』

 

「20世紀のロボットアニメに出てきた、精神感応ができる宇宙に適応した新人類のことさ」

 

『ほほう。まあ、私はほとんど惑星テラから出たことがないのじゃがな』

 

 ニュータイプっぽい能力者だったけど、生活環境はオールドタイプだった。

 

「で、こっちの方針は?」

 

『ヨシムネはどうしたい?』

 

「敵のブレード使いと戦いたいな」

 

『了解した。援護するのじゃ』

 

 残りの二機の遠距離砲撃型がさらなる弾幕を張ってくるが、俺は未来視を駆使して前進。閣下も相手の思考を読んでいるのか、軽やかに弾丸をかわしていた。

 

『こちらをお進みください』

 

 ヒスイさんが示してくれた最適な道を進み、住宅を弾丸からの盾にしつつ、敵のブレード持ちに俺は肉薄。

 

「勝負!」

 

 ブレードを互いに振るい、つばぜり合いをする。サイコバリアに守られた大質量の金属の塊が、大きな音を立ててぶつかり合った。

 俺はそこでわずかに後退。力を抜くことで相手をつんのめらせる。

 このあたりは、『-TOUMA-』で学んだ剣術の動きだ。あのゲームで覚えた術理は、巨大ロボットであるマーズマシーナリーの動きにも一部役立つことがある。

 なにせ、マーズマシーナリーのボディにはシステムアシストなんていう、ご都合主義が働かないからな。全て自分のサイコキネシスで機体を動かす必要があるのだ。

 

 バランスを崩した相手に、ブレード一閃。これを相手は盾で受け止めるが、未来視で知っていた流れだ。

 続けざまに放たれた相手の反撃に、俺はブレードを持っていない左腕でこれを受け止めた。相手は先ほどバランスを崩し、さらに盾で衝撃を受け止めた直後の不安定な攻撃だ。サイコバリアを厚く張った腕は、見事にブレードを受け止めていた。

 

 動きを止めた相手に、俺はブレードを振りかぶり唐竹割りをお見舞いする。

 俺のブレードはサイコバリアを突破し、相手の頭部を叩きつぶした。ぐらりと相手が揺れる。そこへさらに、ブレードを一発、二発と叩きつけた。

 すると、敵機はその場でひざを突き、動かなくなった。

 

 ふう、エレクトロキネシスやパイロキネシスが使えないと、ブレード攻撃に威力が足りないな。ブレードの質量増やすか?

 そう考えていると、閣下からテレパシー通信が入る。

 

『よくやったのじゃ! 私達の勝利じゃ!』

 

 周囲を見てみると、閣下が残り二機の遠距離砲撃型を見事に撃破していた。ううむ、いつの間に。

 

『ゲームセット!』

 

 視界が安定し、俺達は格納庫に戻された。

 そして俺は、コックピットのハッチを開け、機体から降下する。

 すると、先日の打ち合わせ通りに閣下も機体から降りていたため、俺達は向かい合うと――

 

「いえーい!」

 

 その場で勢いよくハイタッチした。

 

「大勝利なのじゃ! ヨシムネ、大活躍じゃな! ヒスイもラットリーも正確なオペレーションじゃったぞ」

 

『やったね』『初心者だから初々しい姿を見られるかと思ったら、なかなかの強さじゃん』『あの時間適性ならいいスナイパーになれると思ったら、まさかの剣豪』『ヨシちゃんきゃわわ』

 

 うーん、褒めて伸ばす。いい配信者だな。

 

「あとは、ラットリー、相手チームに健闘のメッセージを送信しておくのじゃ。さて、ヨシムネ、疲れておらぬか?」

 

「ああ、大丈夫」

 

「では、続けて対戦を続けていくのじゃ。今日中にどこまで駆け上がれるかのう」

 

 そういうわけで、俺達は特に反省会もせずに、次なる対戦に身を投じるのであった。

 閣下は気を使ってサポートに徹してくれているから、ずいぶん気持ちよくプレイできている。ゲスト出演は、こういう待遇が普通なのだろうか?

 そんなことを思いつつも、俺達の戦いは続く……。

 

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