やはり俺の極道生活はまちがっている   作:生焼け肉

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『本物』と『偽物』の私

 

 

陽乃side

 

 

………私は小さい頃からずっと自分で作った仮面を被りながら他人と接してきた。友達と会う時、パーティーの時、学校がある時、お出かけする時、全てにおいて常に常備していると言ってもいい程に。家族の前では普段の私を出せたけど、いつの間にかそれが分からなくなって、家族の前でも自分の仮面で話すようになった。幼馴染の隼人もそう、最初は良い感じだったけど、やっぱりダメだった。

 

嘘だらけの私。偽りの私。空っぽの私。いつの間にか『本当』の私が分からなくなった。全てが『偽物』で作られた私で構成されていた。当時の私は嫌には感じなかった。これからこういう風に過ごしていくんだと自分自身で断定していたから。他の未来があるとは思えなかった。

 

私を理解してくれる人。見つけてくれる人。ちゃんと感じてくれる人。そんな人はこの世に誰も居ない、存在しない、そう思っていた。この先私に会う人達は、ずっと『偽物』の私を見ていくのだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

けど、1人………1人だけ、家族以外で私を、『本当』を見てくれた人が居た。

 

 

八幡『さて……おい、そこの。怪我はないか?』

 

 

比企谷八幡君………出会いは少し変な感じだったけど、彼のこの一言で少しだけ私の人生が変わった。

 

 

八幡『………俺をお茶に誘うんだったら、まずその薄い鉄仮面を外す事だな。』

 

 

この一言……たったこれだけの言葉なのに、私は普通を装ってたけど、心の中では胸を撃たれたかのような衝撃だった。私の事を、家族以外にも『本当』の私が見える人が居たんだって。

 

それから八幡君との付き合いはそれなりっていう形で進み、交流もしていった。私はある程度、人が私の事をどう見ているのかをその人の顔を見て判断する能力が身に付いていた。当然なから八幡君の顔も見た………けど八幡君は他の人と違って、私の顔をまっすぐ見ながら私と話す。殆どが軽口の叩き合いとか、変なお喋りだけど、その他愛も無い話が暗い部屋で閉じ篭もった私に囁いてくる。優しく諭しながら、それでいて包み込むかのように………

 

 

そして………こんな事を言われた。

 

 

ーーー名古屋城・天守閣ーーー

 

 

陽乃「綺麗だねぇ………」

 

八幡「あぁ……こっから眺める街ってのは、こんなにも壮大なんだな。16代続いた徳川家もこんな景色を見てたんだろうな。」

 

陽乃「………あのさ八幡君。」

 

八幡「?」

 

陽乃「私ね、ちょっと自分が分からなくなってきたんだ。今も混乱中。」

 

八幡「……何だ急に?」

 

陽乃「今、君の前ではこうやって仮面を外せてる。それは自分でも分かってる。ちゃんと外せてるんだって。けどね、この外し方が分かんなくてさ、何故か君の前だと無意識に外れるの。雪乃ちゃんやお母さんとお父さんの前では少し話をしないと外せない。人前では仮面の、『偽物』の私でしか居られない。ちゃんと君と会ってからは、この仮面を捨てようって思ってはいるんだけど、もうやり方が分からなくてさ………どうしたらいいのか、どうやればいいのか………」

 

八幡「………」

 

陽乃「ねぇ………君ならどうする?捨てたくても捨てられない、付き合っていくしかない、そんなのがあったら君はどうする?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「お前はその仮面が嫌いなのか?」

 

陽乃「え?」

 

八幡「いやだから、お前はそのお前が作った仮面が嫌いなのかって聞いてんの。」

 

陽乃「べ、別に嫌いじゃないけど………でも今はあったら邪魔なの!」

 

八幡「ふ〜ん、俺はその仮面、嫌いじゃないけどな。面白いし。」

 

陽乃「人が真面目に悩んでるのに!」

 

八幡「だって、それも含めてのお前だろ?」

 

陽乃「っ!」

 

八幡「俺はお前の仮面(それ)、胡散臭いとは思ったが嫌いとは思った事は1度もねぇぞ?その嘘だらけで偽モンの仮面とお前でも、その要素が『雪ノ下陽乃』って人間を構築してる。俺はそれを否定するつもりは無いぞ?」

 

陽乃「で、でも!私はこんな私、嫌っ!もう仮面を付けながらは嫌なの!」

 

八幡「じゃあ俺と家族にしか見せてくれなかった顔ってのを他の奴等にもぶちまけるのか?それはそれでショックだな。」

 

陽乃「な、何で?」

 

八幡「だってその方が特別扱いされてるみたいで良いじゃねぇか。心を許してもらえてる、って感じがするしよ。俺は今のお前、好きだけどな。だってハッキリしてるじゃねぇか。俺と家族はOKで、他の他人はNO。それに、偽モンのお前が居なくなっちまったら、それはそれで寂しいもんだと思うぞ?」

 

陽乃「………」

 

八幡「まぁ俺は『本物』のお前であろうと『偽物』のお前であろうと、これまでと変わらずにやっていくけどな。だって俺、どっちのお前も好きだし。」

 

陽乃「っ!!」

 

 

ーーー回想終了ーーー

 

 

昨日の名古屋城で夕陽に当てられながらこんな事を話していた。八幡君はどちらの私も肯定すると言ってくれた。その後は吹っ切れた。だから居酒屋ではバカみたいにお酒を飲んで、八幡君に甘えた。

 

八幡君がああやって行ってくれなかったら、私はきっと『偽物』の私を殺していたと思う。でも八幡君が肯定してくれたから、『偽物』の私とも一緒に生きていこうと思ってる。

 

 

陽乃「………んっ、んんぅ……」

 

八幡「ん?起きたか?」

 

陽乃「……あれ、八幡君?もしかして一緒に寝てたの?私覚えてなくて………」

 

八幡「だから飲み過ぎだって言ったんだよ。具合はどうだ?」

 

陽乃「……不思議と良い気分だよ、何でだろう?さっきまで夢を見ていた気がするんだけど………何の夢を見ていたんだろ?」

 

八幡「疑問を疑問で返されて、さらに疑問を投げかけられても困るんだが……まぁいい、悪く無いのなら構わない。それよりも、おはよう陽乃。」

 

陽乃「んふふっ♪おはよう、八幡君っ!」

 

 

 





なんか変な所あったら教えてください。

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