飯渕side
秋乃「………何度も申し上げているように、陽乃は私のお知り合いの病院で面倒を診させます。なのでそちらからのお申し付けはお断りします。」
飯渕「ですがこのような事態でもしかしたら空きのベッドや設備が不足しているかもしれません。私の紹介する病院は既にその設備も完備してありますので、心配はありません。」
秋乃「………はぁ。話が平行線のままなので、私からハッキリと申させていただきます。私は貴方が信用出来ません。その理由は多々ありますが、これが最大の理由と思ってください。娘の陽乃を執拗に狙っているところです。」
飯渕「は、はぁ?私がいつ何処で?」
秋乃「貴方がこの家に訪ねてきた時からです。貴方の顔にはこう書いてありました。『これは良いカモが手に入った。』っと。そのような方の言う事を信じられるとお思いで?」
何なんだコイツは!?折角こっちが病院を用意してやっているというのに!お前は黙って娘をこっちに引き渡してくれれば良いだけの話を、何故ここまで粘る!?しかも理由だって僕を信じられないからだと!?失礼な奴だ全く!!
秋乃「貴方が何故、陽乃に固執しそこまで狙うのかは分かりません。ですが、会って数時間しか経っていない方に娘を預ける程の信頼を置く程、私の了見は浅くはありません。」
飯渕「………」
秋乃「それとお分かりになられたとは思いますが、一応お伝えしておきます。私の考えは一切変わりません。貴方がどれだけ策を講じ、人員を割いてどれだけの時間をかけて勧誘しようとも、私は絶対に娘を貴方達には渡しません。どうぞ、お引き取りください。」
このぉ〜………!!僕が好意的に接してやっているのに、何なんだこの態度はっ!!?だがまぁいい、まだ告げるつもりは無いが、この女の娘の記憶や感情は僕が管理している。
飯渕「………本当によろしいのですか?」
秋乃「はい。」
飯渕「分かりました。では、失礼します。」
最後の温情を捨てたな?だがもう気にする事なんて無い。今はまだ手をつけられないが、その段階まで来たらお前の事なんて忘れさせてやるよ。そうだなぁ………試しに僕の恋人……いや、妻という認識でも埋め込んでやろう。そうすればその余裕の表情も絶望に変わるだろう。精々、その表情筋を鍛える事だね。
ーーー車内ーーー
「どうします?明日も「いや、此処にはもう来ない。別の、めぼしい家はあるか?」いえ、他は特にこれといった家は………」
飯渕「チッ……金に余裕があるのなら買っておけばいいものを。預けてある金はお飾りなのかと言いたい気分だ。」
「では今後は研究を進めるのですか?」
飯渕「あぁ。遅れを取り戻す。メンバーに伝えておけ、明日から作業スピードを上げると。」
「分かりました。」
くくくくっ、この実験が成功すれば僕は前代未聞の偉業を成し遂げる事が出来る。『人の記憶と感情を操作する』という神の所業をっ!!
飯渕sideout
秋乃side
………漸く行きましたか。それにしても説得に1時間も使うなんて。私からしてみれば時間の浪費もいいところです。
都築「奥様、お疲れ様でございます。遅れながらこの都築も参加させていただきました。」
秋乃「えぇ、ありがとう。おかげで少し楽になったわ。では陽乃達の元へと行きましょう。お客様が待っているものね。」
都築「かしこまりました。では私はお客様にお茶とお茶請けをご用意させていただきます。」
秋乃「あら、先程の飯渕さんはお客様ではないのかしら?」
都築「私は雪ノ下家の害になりうる者は客ではなく敵、もしくは害虫だと教わりましたので。私の中では先程の飯渕様は害虫に該当します。」
秋乃「そうですか、良い教育を受けたのね。」
都築「勿体なきお言葉でございます。」
ーーー陽乃の部屋ーーー
秋乃「失礼します。お待たせして申しわけございません、今日もようこそおいでくださいました。」
八幡「いえ、お邪魔しています。後なんかすみません、昨日よりも2人程人数が増えてしまって。紹介します、自分の組の若頭を務めている時崎と、護衛の羽々斬です。」
狂・夜「よろしくお願いします。」
秋乃「これはご丁寧にありがとうございます。今日は来てくれて感謝します、陽乃も喜んでいるでしょう。それで比企谷さん、昨日の今日で先走っているようで申しわけ無いのですが、何か進展はございましたか?」
八幡「………進展はありました。ですが、今すぐどうにか出来る程ではありません。出来るのは現状報告くらいですね。」
秋乃「それでも構いません。」
八幡「…分かりました。ではお話しますが、少しショックを受けるかもしれません。」
比企谷さんのお話を最後まで聞いた私は、話の途中で投げ出したい程のショックを受けました。まさか記憶や感情といったものまで操ろうとしていた事に。ですが、陽乃は今も戦っているのに、私だけが逃げ出すわけにはいきません。
秋乃「…お話してくれてありがとうございます。」
八幡「いえ、それとすみません。分かっていたとはいえこのような話をしてしまって。」
秋乃「いいえ、今も陽乃は戦っているのです。なら母親の私も共に戦わなくてはいけません。娘を守る為に戦うのも、母親の責務ですから。当然、雪乃もですからね。」
雪乃「母さん……」
八幡「………お強いのですね。自分も見習いたい心構えですね。」
秋乃「比企谷さんは充分にお強いと思いますが?」
八幡「自分の強さはまだ肉体面だけです。精神面はまだまだ未熟者です。雪ノ下さんのような強靭なな精神力を身に付けたいと思いました。特に、家族を守る………とても感銘を受けました。自分も組を持つ身、子を守るのが親の務めですから。」
秋乃「成る程、それで………」
八幡「えぇ、だから陽乃さんは必ず救い出しましょう。陽乃さんの声が聞けないと、寂しいものですからね。早く目を覚まさせてやらないと。」
秋乃「………そうね。」
陽乃、雪乃、貴女達はとても良い人に惚れたのね。親の私が見ても彼はとても好ましいわ。
もし私が貴女達の立場だったとしても、間違いなく彼を好きになっているわね。ふふふっ。