陽乃side
お母さんが来て首に手を回されて抱き締められたと思ったら、その身体は震えていた。数分してから私を離すと目には涙が溜まっていて流れてきそうだった。その後に雪乃ちゃんと八幡君が来て、八幡君に後押しされる形で雪乃ちゃんが恥ずかしそうに私に向かって来た。再会の挨拶をしたら、雪乃ちゃんは涙を流しながらお腹に抱き着いて泣き出してしまった。そうだよね、1ヶ月もの間眠ってたんだもんね。流石に心配にもなるよね。
そして今は落ち着いて張り詰めていた気が一気に緩んだからか、私の手を握りながら眠っている。これは離せそうにないね。
陽乃「………お母さん、突然ログアウトのボタンが出てきたからすぐにゲームから抜け出したんだけど、現実世界で何かあったの?病院の中が少し騒がしいのは分かったんだけど、それだけでさ………」
秋乃「陽乃、貴方はまた助けてもらったのよ。比企谷さんに。」
陽乃「え……八幡君が?」
八幡「雪ノ下さん、それは大袈裟ですよ。俺は思いついた策を仲間に命じてやってもらっただけの事です。俺自身は命令しかしてない、ただどっしりと構えてただけですよ。」
秋乃「……それでも娘を助ける為に動いてくれたのは事実。陽乃が昏睡状態になった日から動いていたようにも見えましたが?」
八幡君……そこまでしてくれていたんだ。
八幡「あぁ……口では雪ノ下さんには勝てませんね。降参です。そういえばまだ挨拶してなかったな。陽乃、1ヶ月ぶりの再会だな、おかえり。」
陽乃「……うん、ただいま八幡君。」
秋乃「改めて聞きますが、体調はどうですか?」
陽乃「少し身体を動かしにくいかな。1ヶ月ずっと身体を動かしてなかったからかもね。筋肉や器官が衰えちゃってるんだね。けど2人の声は聞き取れるし、気分も悪くないから大丈夫だよ。」
秋乃「そうですか、それは安心しました。」
お母さんは胸を撫で下ろすような動作をしてから、置いてあるパイプ椅子に腰掛けた。けど、本当に現実に帰ってこられたんだよね。
秋乃「そういえば、向こうの世界では何をしていたのですか?陽乃のしてきた事を聞きたいです。」
陽乃「う〜ん、そうだね………」
私はゲームの世界でやった事をお母さんと八幡君に話した。空を飛んだ事、モンスターを倒した事、ダンジョンにに入った事、私がゲームで経験した事をすべて話した。
陽乃「それからね~……」
コンコンコンッ
秋乃「どうぞ。」
葉山母「失礼します、秋乃さん。陽乃さんがお目覚めになって本当に良かったです。」
秋乃「えぇ、本当に。」
葉山母「それと、大変申し上げにくいのですが、陽乃さんは目が覚めて間もないので、何か異常がないか検査をする形になります。なので今日は………」
秋乃「分かりました。そういう事でしたら私達も帰りましょう。余り刺激してもいけませんからね。それでは陽乃、また来るわ。」
陽乃「うん、またね。」
秋乃「比企谷さん。申しわけ無いのですが雪乃を運んでいただいてもよろしいでしょうか?本来なら起こさなければならないのですが、このように安心した雪乃の顔を見るのは久しぶりなもので、起こすのは少し気が引けてしまって………」
八幡「分かりました。」
八幡君は雪乃ちゃんの身体を起こさないようにしながら動かして、そのままお姫様抱っこをした。良いなぁ〜私もやってもらいたいなぁ〜。
八幡「じゃあ陽乃、俺も暇を見つけたらまた来る。それじゃあな。」
陽乃「うん、八幡君も来てくれてありがとう。」
そしてお母さんと八幡君と(眠ってる)雪乃ちゃんは帰って行った。
葉山母「陽乃さん?あの男の子は誰なの?貴女とも秋乃さんとも随分親しげだったけど。」
陽乃「ん〜説明するのが難しいですけど………」
………もう言っちゃおうかな♪
陽乃「私の
待っててね八幡君!すぐに元の身体に戻して、君にたくさん構ってもらうんだから♪
陽乃side
八幡side
八幡「いいんですか?送ってもらって。」
秋乃「はい、勿論です。貴方は娘の……いえ、私達の恩人なのです。そんな方に歩いて帰らせる真似は出来ませんから。」
八幡「俺なんてただの高校生ですよ、そこに極道が付きますけど。」
秋乃「………1つ、お聞きしても?」
八幡「何ですか?」
秋乃「陽乃と雪乃、比企谷さんから見てどのような女性に映りますか?」
難しい質問な上に直球で来たな………確かに1ヶ月前までは色んな事があった。陽乃とはプチ旅行、雪乃とはお泊りをした。どっちも共通して言えるのは………一緒に居ても苦痛じゃないし、それどころか向こうからキスもしてきた。俺としては、どっちか1人を選んだとしても結婚して構わないと思っている。俺の全てを知っているからだ。
八幡「………少し難しいですが、両方共に同じアプローチを受けたのは確かです。」
秋乃「ほう、といいますと?」
八幡「告白と同時に接吻、といったところです。娘さんからとはいえ、貴重な初めての口付けを奪ってしまい、申しわけありません。」
秋乃「謝る必要はありません。寧ろ私としては何方かが比企谷さんに嫁いで欲しいと思っていましたので好都合です。それにけしかけたのは私ですから。」
それで2人は急にあんなアプローチをしてきたのか。これで合点がいったな。けど、俺にはどっちを選べと聞かれたら答えられる自信が無い。贅沢な答えになるが、どっちも良いから。