八幡side
ーーー中庭ーーー
3月の中旬に入り、俺達の通っている総武高も段々と旧校舎での暮らしに慣れてきた。新校舎の修繕作業は順調に行われていて、あの3人も馬車馬のように働かされている。見ていて少しだけ愉快な気分になる。特にあのガキがヒーヒー言ってるのを眺めるのは特に笑いもんだ。
さて、そろそろ卒業シーズンも近付いて来た。それに伴って小町の受験結果の張り出しも近くなって来ている。あんなに頑張って勉強してたんだ、合格しているだろう。まぁ元々の学力も悪くはないしな、落ちるなんて事は無いと思う。緊張でガチガチになったり、答えを間違えていなければ。
めぐりも寂しさを感じている頃だと思う。もうすぐこの学校とお別れだからな………会いに来ようと思えば来る事も出来るとは思うが、登下校は出来なくなるからな。
八幡「………別れと出会いの季節ってのはよく思いついたものだな、この言葉を初めて考えた人は。」
ーーー教室ーーー
夜架「っ!八幡さん、どちらへ?」
八幡「ん?ちょっと中庭にな。奴等がしっかり働いているかどうかを監視しに行ってた。監視をするまでも無かったけどな。」
雪乃「雪ノ下建設や貴方の組員が見張っているのだから大丈夫ではないの?」
八幡「いや、アイツ等の辛そうな顔を見てると、少しだけ楽しい気分になれるからよ。」
めぐり「理由がちょっと怖いよ、八君……」
八幡「それよりもお前等、飯はどうしたんだ?食べてないのか?」
狂三「八幡さんを置いて食べる筈がありませんわ。そうでしょう?」
雪乃「今日の当番は私だから、貴方が来るまでは食べないつもりでいたもの。良かったわ、来てくれないと晩ご飯になるところだったわ。」
めぐり「この時間は私の楽しみでもあるから♪早く食べようよっ!」
夜架「さぁ旦那様、お席についてください。皆、旦那様が来るのを待っていたのですから。」
八幡「………そうか、そりゃ悪かったな。それじゃあ、食べるか。」
ゆっくりと過ごすこの時間も、我ながら良いと思っている。極道、堅気関係無く接してくれる2人にも感謝の念を忘れないようにしないとな。
ーーー放課後・屋上ーーー
八幡「………」
……初めて見る景色ではないが、屋上から見るこの景色は割と気に入ってる。1年前までは1人で静かに眺める事が出来たが、今では若頭が転校してきたり、護衛役が関西から転校してきたりでかなり賑やかになってしまった。まぁ今は1人だから問題は無いけどな。
めぐり「八君?」
八幡「っ!めぐりか………どうしたんだ?」
めぐり「なんか教室で見てたら物足りなくなっちゃってさ、屋上だったら良い眺めかもって思っちゃってさ〜、来ちゃった♪」
八幡「そうか……確かに今日は良い夕日だな。」
めぐり「うん。」
めぐり「ねぇ八君、聞いても良いかな?」
八幡「何だ?」
めぐり「八君はさ、私達が最初に出会ったのって運命だって思ってる?」
八幡「………いや、俺は偶然だと思ってる。それを聞くって事はめぐりは運命だって思ってるのか?」
めぐり「うん……だって、あそこで会ってなかったら、八君とはただの先輩と後輩、取引先の人とその娘っていう関係で終わってたかもしれないから。だから私は、あの時あの場所で君と出会ったのは運命だって思ってるよ。」
八幡「あぁ~悪いな、そんな風に思ってるとは知らなくてよ………空気読むべきだった。」
めぐり「ううん、八君は正直に答えてくれただけだもん。けど思うんだ、何でこの出会いが1年前じゃないんだろうって。もし君が1年生で私が2年生だったら、もう1年あったのにさ………」
八幡「なら留年するか?」
めぐり「あははは、君と過ごせるのならそれも良いかもね。でもそれはダメ。」
まぁ、だろうな。言ってみただけだし。それに留年なんて、俺が許しても両親が許さないだろう。
めぐり「あ〜ぁ、あともう1年……ううん、君と同じ歳だったらなぁ………時崎さんや雪ノ下さん、羽々斬さんが羨ましいよ。」
八幡「……偶には俺に甘えても良いんだぞ?今この場では先輩後輩の関係無視して、極道の男とその女って関係でも俺は構わない。」
めぐり「………うん、そうだね。じゃあ今だけは先輩を捨てて君に甘えてみようかな。」
するとめぐりは俺の腕に寄り掛かって目を瞑った。俺はめぐりを自分の方に抱くようにすると、めぐりは甘えるかのように顔を胸元に埋めてきた。
すると、胸元からじわりと熱を感じた。
めぐり「私、もっと八君と一緒に居たい。君の為にお昼ご飯だって作りたいし、一緒に食べたいし、放課後活動も一緒にやりたいし、一緒に登下校したいし………まだやってない事、いっぱいあるのに。八君と………やりたい事、たくさんあるのに……」ポロポロ
八幡「………」
めぐり「ヤダよ……この学校から、八君と離れ離れになるの……ヤダよぉ〜!もっと八君と一緒に居たいよぉ〜!」ポロポロ
八幡「………」
泣き喚くめぐりを横にして、俺はただめぐりを自分に抱き寄せながら頭を撫でる事しか出来なかった。他に思いついていればそれを実行しただろうが、今の俺にはこれしか思いつかなかった………