やはり俺の極道生活はまちがっている   作:生焼け肉

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新・ことわざ

 

 

八幡side

 

 

予想外にも程がある。まさか麗姉さんが見に来るなんて思いもしなかった。取り敢えず姉さんの事も紹介しておくことにしよう。普段は自身が立ち上げたブランド、【GraCieuX(グラシュー)】の社長をしており、世界にも支店をいくつか作っていて、20代にして凄腕のビジネスマンだ。だが裏の顔は千葉仁堂会直系 白麗会会長の立場を持っている。

 

そう考えると組への上納金は比企谷組よりも上だと思われそうだが、各店の売り上げの1部だけを本部に上納しているだけなので、上納金は直系の中でも真ん中辺りだ。それでも1,000万円は超えてくるから訳だから充分だけどな。

 

組の運営自体は側近の人に任せっきりだから、実質的にはヤクザはしていないと言ってもいいだろう。そんな超ブランドを作り上げてしまった凄腕社長の姉さんが俺の授業を見に来るってどういう事?って思えてくるよ。

 

 

担任「はい、それでは今日はちょうど親御さんも見に来て下さっているので、ことわざを作ってもらおうと思います。本日ご都合が合わなくて来られなかった方もいるとは思いますが、皆は自分の親をテーマにしたことわざを書いてみてください。保護者の皆様にもこちらのボードをお渡しいたしますので、息子さんや娘さんのことわざを作ってみてください。尚、出来ましたら挙手をお願いします。」

 

 

ことわざねぇ………でも、姉さんの事を書かねぇといけないよな。

 

 

担任「保護者の皆様もお子さんの近くに行っても構いませんよ。」

 

 

おいおいおいおい、そんなこと言うなって!絶対こっちに来るから!

 

 

麗「ふふふっ、八幡は私のことをどんな風にことわざで表してくれるのかしら?」

 

八幡「期待しない方がいいぞ。碌でもない事書くかもしんないから。」

 

 

ーーー数分後ーーー

 

 

葉山「はい。」

 

担任「はい、葉山くん。」

 

葉山「俺はこれを書きました。【親の道しるべ】。今の俺がいるのは、父と母がここまで俺を育ててくれたおかげなので、これを表しました。」

 

 

お手本だな……あんな風に書けるんだな。

 

 

担任「子供も親を大切に思っている事が伝わる良いことわざですね。」

 

 

それから暫くしていろんな発表があった。

 

【ツノが生えた女】

【息子につける薬は平手打ち】

【親の心まるで知らず】

【奔放息子、赤点取るな!】

【娘の春、来たり!】

【母は雷、父は晴れ】

 

 

何とも想像のしやすい家庭だろうって思ったわ。なんでそんな簡単に思いつくんだ?

 

 

麗「いいかしら?」

 

担任「あっ、はい!どうぞ!」

 

麗「私が書いたのは【親は砥石、子は原石】よ。子供っていうのは親の背中を見たり、体験や経験を聞いたりして育つというわ。なら親は自分の持っている武器、これでいう砥石ね。その武器で如何にして何も加工されていない原石である子を宝石に磨き上げるかを指しているわ。」

 

 

何人もの親が頷いていた。いや、上手いな……俺も単純にそう思った。俺の親じゃねぇのにこんな風に書けんの?

 

 

麗「ふふふっ♪期待しているわよ、八幡の発表。」

 

八幡「いや、期待しないで。」

 

 

本当に期待なんてしないで。姉さんのに比べたら物凄く平凡だから!

 

 

八幡「はい。」

 

担任「はい、比企谷くん。」

 

八幡「俺のは【父は背で語り、母は目で語る】です。父とはそんなに言葉を交わしませんが、父の背中、後ろ姿を見ると、『よく見ておけ。』とか『こうするんだぞ。』という言葉が伝わってくるような気がします。母は目が合った瞬間に何があったのか、すぐに見抜かれてしまう事があります。母には隠し事ができない、みたいな感じです。父親と母親の教育と愛情を表現しました。」

 

 

またも保護者の人が頷いたりしていた。恐らく思い当たるような事があるのだろう。俺は実際にそうやって育ったようなもんだから、これが当たり前だ。他の所は知らないけど。

 

 

担任「成る程、親の教育と愛情の良さを感じますね。良いことわざですね。」

 

 

するとちょうどチャイムが鳴った。

 

 

担任「はい!ちょうど時間になりました。じゃあ今回は、そのままHRに移って帰りの挨拶をしましょうか!時間短縮しましょう!」

 

 

HRでは特に連絡事項も無かったので、すぐに終わることが出来た。あったとしても親がいるから手短になっただろうけどな。

 

 

麗「良い言葉だったわ八幡。ついでに言うのだけど、私だけに作ったことわざはないのかしら?」

 

八幡「………思いつかねぇよ。【姉の愛は無限大】でいいんじゃねぇの?」

 

麗「そうね、八幡に対してなら無限大ね。」

 

 

相変わらずブレないな………

 

 

麗「じゃあ八幡、行きましょう。もう車は来ているから乗っていきましょう。」

 

八幡「あぁ……狂三はどうする?」

 

狂三「いえ、家族の時間を邪魔する程無粋ではありませんので、遠慮しておきますわ。」

 

八幡「そうか、それじゃあまた明日な。」

 

狂三「えぇ、また明日お会いしましょう。」

 

 

ーーー車内ーーー

 

 

八幡「……そういや、何で俺の参観日の事知ってたんだ?俺は母ちゃん以外に教えてないんだが?母ちゃんから聞いたのか?」

 

麗「いいえ、八幡がコンビニから出る時だったかしらね。偶々通ったのだけど、貴方が参観日の事を口にしていたから母さんに聞いたのよ。その日なら全部の予定をキャンセルすれば時間を作れたから私が行くと言っただけよ。」

 

八幡「スゲェな、全部の予定キャンセルって……普通出来なくない?」

 

麗「普通は、ね。でも、愛する八幡の為だったら、会議や食事なんてどうでもいいわ。」

 

八幡「よく考えろよ。俺と行く行きつけのフードコートと会合で行く高級料理店、どっちが良いと思ってんだよ。」

 

麗「八幡と行くフードコートの方がいいに決まってるわ。」

 

 

予想通りの答えをありがとう。後、腕を離してください。姉弟とはいえ、気にならないわけじゃないんだから。

 

 

麗「ふふふっ♪直に触ってもいいのよ?」

 

八幡「やめろ、そういう事は思っても言う事じゃねぇ。思ってなくても言うな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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