雪乃side
陽乃「今年の文化祭も終わりかぁ〜。中々楽しかったよ、雪乃ちゃん。さすがは私の妹だね。」
雪乃「私1人の力ではないわ。これも全部皆が協力してくれたおかげよ。それに、この文化祭の1番の立役者は私ではないわ。」
陽乃「ん?他に誰がいるの?」
雪乃「比企谷くんよ。彼には文化祭が始まる前から始まっている時まで、すべてにおいて助けられたもの。不良達から文化祭を守ってくれたのだって彼だから。私には出来なかった事よ。」
陽乃「私も見たかったなぁ〜八幡くんの喧嘩。演奏が被ってなければ私も見られたのに〜。」
喧嘩は見世物じゃないわよ。でも、あの人数で無傷なのは確かに凄かったわ。
陽乃「学校中彼の噂で持ちきりだよ。あのヤクザの男が身を挺して文化祭を守ったって。これで比企谷くんの評価も大分変わってくるよね。いや〜お姉さんとしては八幡くんが漸く正当な評価を受けてもらえて嬉しい限りだよ。」
雪乃「……そうね。彼はこの学校ではあまり良い噂を聞かないから。ヤクザというだけで忌避する人もいるから、これはこれで良い風向きになったのだと思うわ。」
陽乃「まぁ雪乃ちゃんをこんな風に変えてくれた王子様だもんね〜。雪乃ちゃんからしてみれば嬉しいもんね〜。」
はぁ………また姉さんは心にも無いことを言うのね。これが姉さんの持ち味でもあるけれど。
陽乃「……そろそろエンディングセレモニーだね。結局比企谷くんとは会えなかったなぁ〜。」
八幡「俺がなんだって?」
陽乃「おっ、比企谷くん〜!待ってたよ、文化祭の英雄くん!」
八幡「何だそれ?」
陽乃「君が今そういう風に呼ばれてるんだよ、廊下とかで聞かなかった?」
八幡「聞くわけねぇだろ。ていうかあんな雑魚追い払っただけで英雄扱いかよ、それだったら誰でも英雄になれるぞ。」
陽乃「素直じゃないな〜。まっ、それが比企谷八幡くんなんだけどさ。」
本当、素直じゃないわね。
八幡「それよりも雪乃、今のステージ発表が終わったら実行委員長の挨拶だが、大丈夫か?」
雪乃「問題ないわ。メモ無しでも言えるようにしてあるから平気よ。」
八幡「ならいい。そんじゃ俺はお前の勇姿を見守る事にするわ。」
陽乃「あっ、じゃあ私も〜!」
ーーーステージ発表終了ーーー
雪乃「……皆さん、お楽しみ頂けたでしょうか?今年の文化祭はこれまで行われてきた中でも1番の盛り上がりを見せたと言っても過言ではないでしょう。殆どの方が知っているとは思われますが、予想外のアクシデントもありました。ですが、それを1人の生徒が守ってくれた事によってこの文化祭は最後まで無事に終わりを迎える事が出来ました。それでは学年別に優秀賞・最優秀賞の発表と地域賞の発表に移ります。」
雪乃sideout
ーーーーーー
陽乃「聞いた八幡くん?八幡くんのおかげで文化祭は最後まで無事でいられたって〜!」
八幡「過大評価だな、あいつも。けど、まだ文化祭は終わりじゃねぇよ。あんたも知ってるとは思うが、遠足は無事に家に帰るまでが遠足だという。なら文化祭も無事に全てが終わってからでないと、本当の終わりとは言えねぇよ。」
陽乃「ふぅーん、まるでこの後に何かが起きそうな言い方だね。何か知ってるの?」
八幡「何も知らねぇよ。ただ……アレだ、嫌な予感がするってだけだ。ただの直感だけどな。」
その後は雪乃が優秀賞や最優秀賞を獲得したクラスの発表を行なっていた。八幡の思っていた事はどうやら杞憂で終わりそうだった。
陽乃「うんうん、雪乃ちゃんも大分良い感じになってるね。様になってる。」
八幡「元々あいつは様になってるから問題ないだろ。それに陽乃もやった事あるんだろ?実行委員長。大変さはよく分かると思うが?」
陽乃「まぁね〜。けど私の時は実行委員だけじゃなくて、手伝える人は文実に呼んで手伝ってもらうように声掛けてたっけな〜。」
八幡「人海戦術ってヤツだな。お前らしい。」
2人が話しているうちに全ての受賞が終了していた。残すは終わりの挨拶のみとなった。
雪乃「ではこれにて、第○○回、総武高ぶ「ちょっと待て!!!」んか………?」
突然声を上げた生徒がいた。それは八幡もよく知っている顔だった。
「無事に終わった?俺らを犠牲にして無事に終わったって本当にそう思ってんのかよ!!?」
「俺たちは文化祭実行委員で仕事して、クラスの出し物にも協力した!そりゃ俺らだって悪いことをしたとは思ってるよ!!けどよ、それで本当に無事に終わったってお前本気で思ってんのか!!?」
その2人は文化祭実行委員の記録雑務係の男2人で八幡に仕事を押しつけていたウチのメンバー2人だった。どうやら文化祭を楽しめていなかったようだ。
雪乃「それは大変残念に思います。ですが、それは先輩方の自業自得です。私たちはこの文化祭をより良いものにする為に準備や活動をしてきました。しかし先輩方はそれを1人の後輩に押し付けて、尚且つ自分たちは僅かな作業だけしかしていなかったではありませんか。後輩の成長の為、聞こえは良いですが、私には先輩方のサボりの口実にしか聞こえませんでした。」
雪乃は2人に正論をぶつけた。しかし2人は頭で理解していても、やはり納得が出来なかったようだ。
「このぉ……ふざけんな!!」
パシィン!!
雪乃「うっ!?」
「何がサボりの口実だ!!知ったような口叩いてんじゃねえぞ!!」
教師1「お前ら何をやってる!!」
教師2「今すぐ取り押さえるぞ!!」
男性教師陣が暴力を振るった2人を取り押さえようと、壇上まで駆けつけた。だがその行動はある人物によって止められた。
その人物は異常なまでの怒りと殺気を身体から滲み出していた。その異変は会場全体を包み込んでおり、全身を震え上がらせる程だった。
八幡「随分とまぁ色々と言ってやがるなぁ……その舌、どんな作りになってんだ?」
「「っ!!」」
八幡「テメェらの言ってる事はとりあえず理解はしたし、同情する所も一応はある。けどよぉ……」
八幡は壇上に登ると、2人の目の前に立った。
八幡「女に手ェ出していい事にはならねぇだろうがっ!!!」
バゴォッ!!!
「ぶぐふうぁ!!?」
「お、おい!なにしやぐべっ!!?」
八幡の右の拳で1人は壇上から体育館の床へと吹き飛ばされ、1人は壇上奥まで蹴り飛ばされた。
八幡「男が女に手を上げんのは最低の行為だ。それも分からねぇテメェらは男じゃねぇよ。人の皮被った虫けら以下のゴミ野郎が……文句を垂れる暇があるんだったら、最初からンな下らねぇ事すんじゃねぇよ。」
八幡は雪乃が叩かれた際に落としてしまったマイクを拾った。
八幡「文化祭はこれで終了だ。各自、クラスの出し物の片付けと教室内の机や椅子の配置。清掃に移れ。3年から順番に体育館から出ろ。」
ドスのある低い声で八幡は指示を出した。文化祭は終了したが、最後の最後で思わぬアクシデントが起きてしまった。