ポケモンの技(人力)で頑張ろう 作:にわか
▶️はめつのねがい
じたばた
まねっこ
りんしょう
ボクは、ロックのライブコンサートの動画を見ていた。その動画では、観客がヘッドバンキングしていた。ボクもなんとなくリズムに合わせて首を振り始めた時、目の前に4つの選択肢が現れた。
ボクは困惑して固まった。
首を傾げながら見ていると▶️の点滅が止まった。そして、▶️と文字が消えた。
気が付くとボクはパソコンに向かって頭突きしていた。ディスプレイで止まるような速度ではなかった。パソコンの後ろの壁に思いっきりぶつかって、視界に星が飛んだ。何処からか悲鳴が聞こえ……
ボクは飛び起きて時間を確認した。まだ、起きるには早すぎる時間だった。深呼吸して息をととのえる。
久しぶりに、あの夢を見た。一番最初に"個性"が発動し、前世と思われる記憶がボクの記憶に混入した瞬間を。
"個性"。
記憶が混ざってしまったのと前世の記憶がボクの単なる妄想という可能性もあるので断言は出来ないけど、前世ではそんな能力的な意味のものは存在しなかったはずだ。だから、最初はヒーローとかヴィランとかについてのニュースを見て、ドッキリか何かだと思った。みんながボクを騙そうとしているのだと。
でも、すぐに受け入れた。受け入れるしか無かった。入院中、何度も何度も"個性"が発動したのだから。
"個性"に振り回されたおかげで、転生したのかもしれないとかボクは女なのになんで前世の記憶は男なのかとかどうして前世の記憶にあるポケットモンスターというゲームに出てくる技を人力で再現させようとするのかとかウジウジ考える余裕が無かったのは良かったかもしれない。デメリットがあまりにも大きすぎるということを無視すれば。
ボクは自分の個性について把握しきれていない。でも、これだけは断言出来る。ボクの"個性"はボクにとって危険であると。社会的に死にかねない事態を容易に引き起こす。幸いなことに今まで生き延びてこれたけど、いろいろと損害を被っている。
制御出来れば安全?
間違いない。でも、いつ発動するか分からない、下手すれば寝ている最中でも突然発動する能力をどうやって制御出来る?
ネットで探したり、両親に訊いたりして、いろいろな方法で"個性"の制御を試したけど出来なかった。どんなに頑張っても▶️の点滅時間を少しだけ伸ばすのが精一杯だった。そのわずかな時間内に、4つの選択肢で一番マシそうなものを選ぶしか出来ない。
独学ではこれ以上無理だった。ボクは"個性"を鍛えられる場所を探した。
ボクの両親は一般人であり、ヒーローとのコネもインストラクター的な人を雇うほどの財力も持っていなかった。ボクの"個性"もスカウトされるほど強い"個性"ではなかった。
だから、ボクが"個性"の制御方法を学ぶ道は限られていた。そして、片っ端からヒーローに弟子入りを頼んで断られたボクには、ヒーローを養成する学校という道しか考えられなかった。それも、最高の教育が受けられる学校の方が"個性"を何とか出来る可能性が高い。
ほかにも方法はあるのかもしれないが、ボクはそれを見つけられなかった。
ボクはヒーロー科がある学校の中でもトップの学校である国立雄英高等学校を目指し始めた。No.1ヒーローなら画期的な鍛え方を知っているかもしれないから教えを受けてみたいというの下心もある。
しかし、ここで問題が生じた。
ボクは別にヒーローになりたい訳ではない。ボクの精神はヒーローに相応しいほど高潔な訳でもない。強い"個性"を持っている訳でもない。
それなのに最難関学校に行きたい。
このままでは確実に落ちるだろう。
ボクは頭と体を鍛える必要があった。
ボクはさっそく勉強と筋トレを始めた。
そして、流れるように問題にぶち当たった。
頭を鍛えなければならないと決心したボクを応援するかのようにボクの"個性"も活発化したのだ。
確かに頭は鍛えたい。しかし、それはIQ的な意味であって物理的な意味ではない。決して頭突きで頭を鍛えたいわけではない。むしろ、脳細胞が減ってバカになってしまう。止めてください。
結局、勉強を妨げるかのように"個性"は発動し続けた。
屋上に上がると"そらをとぶ"(落ちる)、壁に向かって"とびひざげり"、重機相手に"インファイト"、毎日数十回は"個性"が発動した。入院だけは必死で回避し続けたが、生傷が絶えなかった。
そういう状況でもボクは頑張った。
中学校の定期テストくらいなら前世の記憶と今世の勉強で何とかカバー出来た。寒がりだと言い張って暑い日でも長袖長ズボンで過ごした。適当な委員会にも入り、部活動も真面目に取り組んだ。学校や地域のイベント、ボランティアなどにも参加していたので内申は良かった。
先生からの印象は良かった反面、親しい友人は出来なかった。放課後や部活終わりに遊ぶこともせず、用が無いときはボロが出ないようにさっさと帰宅していたのが悪かったのだろう。"個性"の暴走を必死で誤魔化していたので変な奴と思われていたというのもある。あるいは純粋な子供達は、ボクの性根を見破っていたのかもしれない。
そんな感じで自分の"個性"と付き合ってきた結果、ボクの"個性"の発動について分かったことは5つある。
・選択肢は他人から見えない
・感情が昂ると発動しやすい
・技の種類や威力、命中率や効果などが必ずしも元ネタと言うべきゲームと一致しない
・親父ギャグかと思うくらい技の名前で行動を決定している
・滑稽な行動や意味不明な行動を取らせてくる
下2つが重要だ。
例えば、"ほのおのパンチ"は、マッチ、花火、蚊取り線香、焼き芋など何でも良いから燃えている物や熱い物を握った拳を突き出す技になる。
僕は今まで数十種類以上の物を握りしめて火傷した。
いい加減学習したので普段から皮手袋を付けている。
"こごえるかぜ"は氷を口に含んで息を吐く。凍えたのはボクの口の中だけだ。
名前が物騒な"ほろびのうた"のときは、大音量で国民保護サイレンを流した。悲しい気持ちになった。
"めざめるパワー"なんて酷かった。包帯をグルグル巻いて学校に行って、危うく騒ぎになるところだった。
目覚めかけたのは性癖だけで、残念ながら何の力も目覚めない。ちょっとだけ期待したのに。
この苦労も明日で1つの区切りを迎える。
なぜなら、明日は雄英の実技試験だから。
ドキドキしながら床に就いた。二度寝なので寝れないかもしれないと思っていたけど、意外にすぐ寝れた。
ねむる
こうずい
▶️みずびたし
みずでっぽう