世界ランカーにはチートはいりませんよ。   作:天道 士

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 投稿が遅れてしまい申し訳有りません。次の投稿もいつになるかわからないので、予めご承知おき下さい。
 第十四話において誤字指摘があったので、修正させていただきました。ご報告ありがとうございます。

 いつもより少し長めです。


第十五話

 その男は死神と呼ばれていた。多くの者からは、その黒いマントと大鎌を持つ姿から。また、ある者達からは敬意を込めて____。

 

 男はそのゲームで初めて殺人を犯した。

 

 男は皆から信頼されていた。

 

 男はそれを利用していた。

 

 男は誰にもバレずに人を殺していた。

 

 男は殺人鬼だった。

 

 男は______。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この裏切りもんがあァァァァァ!」

 

 そう言って襲ってきた一人のプレーヤーの首を男は刎ねた。

 

 どこか、場違いに手を叩く音が聞こえた。

 

「相変わらず、素晴らしい腕前だねー。」

 

「プーか。」

 

「本当にキミには驚かされるよ。なんてったって、攻略組の一角を担うキミがまさかこのゲームで最も多くの人を狩ってきた、レッドプレーヤーだなんて、そのカーソルを見て誰も思わないだろう。」

 

 男の上には緑色の明かりが光っていた。

 

「驚くことでもない。抜け道など山程ある。さっきの様に。」 

 

 男はたった今自分を殺そうとしてきたプレーヤーのいた場所を見て言った。

 

「それにしてもだ。それで、明日か?」

 

「ああ、決行は明日。お前達が待ち伏せをし、混乱に乗じて俺も加わる。」

 

「ふふ、奴らを殺すことをずっと待っていたんだ。明日が楽しみだなあ?死神さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 決行の日、その場に死神と呼ばれた男は姿を見せなかった。

 

 その日攻略組から組織された討伐隊のメンバーは壊滅的な打撃を受けながらも、ラフィンコフィンと呼ばれる殺人ギルドのメンバーを牢獄に送った______ただ、一人を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???side

 

 

 

 

「菊岡さん。アンタは何故俺が死神と呼ばれていたか知っているのか?」

 

 店を出たところで、男は菊岡に言った。

 

「その風貌とキャラ名が故に、だろ?」

 

 菊岡はそう応えた。

 

「そうかい。」

 

 男はそう言い残し、人混みの中に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主人公side

 

 

 

 いつもは余裕をもって行くのだが、今日は朝部活の時間ギリギリの時間に到着したため、ハゲに、部長で風紀委員長でもあるお前がどーのとか言われたが、気にしていない。

 

「黒田せーんぱーい、今日はどうしたんですか?いつも誰よりも早く部活に来ているのに。」

 

「今日の朝ちょっとのんびりし過ぎちゃってね。それでいつもより遅れたんだ。」

 

「へぇー。部長でもそうゆーことって、あるんですね。」

 

 俺に話しかけてきた後輩の女子は意外そうだった。

 

「まあね。たまには僕でもミスもするさ。でも、それを支えてくれる君のような人がいるから、僕はいつも慌てずに済むんだ。心配してくれてありがとうね。」

 

「っえ、いえ。こちらこそいつも部長にお世話になっているし…//。」

 

 そう言うと後輩の女の子は走って行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 その日の放課後の部活では、その後輩にやたら話しかけられたが正直、迷惑だった。

 

 

 

 帰ってくると台所の方からいい匂いがしてきた。

 

「あ、おかえりなさい。今夕飯を作ってる途中だから、手を洗って待ってて。」

 

「お、おう。」

 

 一瞬、戸惑いを覚えつつも俺は洗面所に行き手洗って、うがいをした。

 

 そういえば、朝夕飯を作るからと、詩乃に合鍵を渡したのをすっかり忘れてしまっていた。

 それにしても、俺の家で女の子が夕飯を作ってくれているというのは不思議な気持ちだ。

 今まで何度か母さんが来てくれて、料理を作ってくれたことは何度かあったが、それとはまた違う気がする。

 

「夕飯出来たわよ。」

 

 そんなことを考えていると詩乃に呼ばれた。

 

 リビングに来て俺は驚いた。テーブルの上には色とりどりの料理が並べられており、それを見るだけで、さっきまでお腹が空いていた訳でもないのに思わず、よだれを垂らしてしまいそうだった。

 

「詩乃コレは____。」

 

「今日の朝ご飯とお弁当のお礼よ。別になおきのためだけに作ったわけじゃないし、私も食べるから勘違いしないでよね……//。」

 

 詩乃は少し頬を赤らめてそう言った。

 

「それじゃあ頂こうかな、いただきます。」

 

 俺がそう言うと、詩乃も慌てて「いただきます。」と言って食べ始めた。

 

「うまい!この胸肉めっちゃ柔らかくて美味しい。詩乃って料理も出来るんだね。」

 

「別にそんなにすごく出来るってわけでも____。」

 

 

 

 そんな会話をしながら食べていると、あっという間に食べ切ってしまった。

 

「あー、美味かった。ご馳走様でした。」

 

「お粗末様でした。」

 

 

「ありがとう、詩乃。実は俺も昨日のお礼に、詩乃にプレゼントを買ってきてるんだ。」

 

 そう言って俺が取り出したのはプレゼント用に包装された少し小さい箱だった。

 

「っえ、ありがとう。開けてみてもいい?」

 

 箱を開けると、中に入っていたのは雪の結晶の形にデザインされたブレスレットだった。

 

「こ、こんな高価なものどうして____。」

 

 詩乃は驚いていたが、それ以上に戸惑っているようだった。

 

「詩乃にはお世話になったし、似合いそうだと思ったから___いらなかった?」

 

「そんなことない!その…なおきに私、たくさんもらってて、せっかく今日の夕飯、頑張って作ったのに、またもらって_____これ以上返せない。

初めて助けてもらって、

過去のことに立ち向かう勇気をくれて、

私の手を握ってくれて、

ご飯まで作ってもらって、

その上こんな素敵なものまでもらったら私、何も返せない………。」

 

「詩乃から、俺はいっぱいもらってるよ。」

 

「っえ、」

 

「詩乃に勇気をもらったのは俺も同じだ。

 詩乃は他の人が聞いたら軽蔑するような話を真剣に聞いてくれた。

 俺が情けなく泣いていた時も、離れずに一緒にいてくれた。

それに加え、こんなご馳走まで用意してくれて、俺の方こそ詩乃に何もしてあげられてない。」

 

「でも_____。」

 

「でも詩乃は、俺にたくさんもらったって、言ってくれた。」

 

 詩乃の言葉を俺が遮った。

 

「そのおかげで、こんな俺でも人の役に立てることがあるんだって、初めて思えた。 

 だから詩乃。俺は詩乃に人生をかけても、返しきれないほどの恩をもらってるから……、その、何っていうか……、えっと、お互い様だから気にしないでっていうか……____。」

 

「っふふ、」

 

 詩乃が笑った。

 

「ふーん、そっかー。なおきは私に一生かけても返せない恩があるのね。」

 

「っえ、いや、まぁ。はい。」

 

 

「じゃあ、なおき、私をずっと守ってね______。」




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???の正体は誰がいいでしょうか。

  • 主人公(黒田直樹)
  • 新たな敵(既存)
  • 新たな敵(オリキャラ)
  • シノン(朝田詩乃)

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