この素晴らしい読者様に祝福を!   作:めむみん

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またもや有難いことにお祝いすることが多すぎて何のお祝いかは後で決めますがいつも読んで下さりありがとうございます!
※一部を頂いた感想を参考に加筆修正しました。


逃亡の先に

「まだ遠くへは逃げていないはずだ!」

「賊は二人とは限らない!相手は王城からも逃げ出す手練だ油断するな!」

 

お父さん、お母さん。

現在、俺たちは凄い練度の高い警備隊の方々に捜索されています。

ちょっとしたミスが身を滅ぼすとはよく言ったものですね。

身を持って味わってます。

 

「この部屋に来た意味ありますか?」

「ここのセキュリティは持ち出した時点で作動するはずじゃい。アラートとか言うバカでかい音が鳴るはずじゃが鳴っとらん」

 

てか何でここの警備隊の奴らここまで練度高いんだよ!

しかも初動で警察官も結構な数入って来てるし!

後から来た女性警官みたいな緩い考えしてくれたら楽だってのによ!

 

「でもさっき外にいる所を目撃したとのご報告でしたよね?」

「あの二人には逃げられたろうが仲間が居ればそいつらを捕まえられるかもしれん」

 

ベテランぽいおっさんのせいでさっきから中々移動出来ない。

まあ、何も考えずにテレポートしてくれちゃった人が一番悪いんだけども。

 

「これまでの証言からあの盗賊は二人だけだと先の議会で結論付けられたじゃないですか」

「何処かの貴族がグルなんじゃい!内通者が複数人おるはずじゃわい!ワシはそう見てる」

 

このおっさん何者だよ。

勘が鋭過ぎて怖いんですけど!

 

「いやいや、王家の懐刀であるダスティネス家やシンフォニア家の令嬢の証言ですよ?」

「分かっとらんのう。これまで賊が入ったのは必ず後ろめたいことをしてる貴族達じゃ。正当な手続きで裁けん奴らを特殊部隊を使って懲らしめとるんじゃ」

 

・・・いや、本当にこのおっさん何者なんだよ。

ちょっと見当外れな所もあるけど大体あってるぞ。

法的な手続きを取っても回収が難しい神器回収してる訳だし。

 

「ではここも何かしら違法な取引や行為を行っていると言うことになりますが?その場合監査も行いますよ?」

「この家は反王族的立場も時には取っているから目障りだったんじゃろう」

 

中道派閥ってやつか。

面倒だなあこのおっさん。

早くどっか行ってくれないと逃げるに逃げられないってのに。

 

「・・・王女様も狙われた件についてはどうお考えで?」

「身内が狙われれば誰も疑わんとでも考えておるだろう」

「くれぐれも事情聴取に来た検察官にはこの話はしないように。下手すれば不敬罪で逮捕ですからね」

「それぐらい分かっとるわい」

 

何だか連携取れてるよな。

普段から警察とも協力してるのか?

アクセルで見る貴族の護衛は、警察とよく揉めてるから不思議な感じがする。

 

『なあ、ここの警備隊のやつら警察との連携早過ぎないか?』

『ここの家は真っ当な家だからね。警察からここら辺の治安維持も任されてるし、式典なんかでは合同で警備してるからね』

 

それでこの統制の取れた動きなのか。

別々の組織って簡単には連携取れるものじゃないからな。

特に申請もなくやってきた個人の救済ボランティアが、初動では地元当局から邪魔だと追い払われるのと同じだ。

 

『そんな家から盗み出す必要あったのか?』

『神器はそもそもこの世界にあっちゃいけない物だからね』

『それ持たせて転生させてんのお宅だろ?』

『・・・ともかく、回収しないといけないんだよ』

 

やっぱり転生計画色々と杜撰な所があるよな。

勇者候補が亡くなった時に自動で天界に戻るシステムとか作ればいいのに。

 

「こんな所で何してるんです?盗まれた物は一点だけだと確認は終わったはずでは?警察署長がミーティングすると言ってますよ?なんでも合同捜査本部が立つらしいんで、隊長も来てください」

「そうか。仕方ないのう」

 

やっと居なくなった。

伝令の人ありがとう!

危機一髪って所か。

 

「・・・今から逃げるよ」

「逃げるって言っても堂々と正面から出るだけだろ」

「まあね」

 

気絶していた警官二人に化けて、何食わぬ顔で離脱する作戦だ。

因みにその二人の警官は本日非番で、飲みすぎて倒れていただけだ。

俺たちが何かした訳では無い。

 

「お疲れさん。非番なのにわざわざ出てくるとは勤勉だな」

「近くに居たんだ。来なかったら署長にどやされるだろう?」

「間違いねえ」

 

守衛には気付かれてないようだ。

このまま通りを越して、そこからダッシュで逃げれば俺達の勝ちだ。

 

「所でお前さん達。いつものペンダントはどうした?」

「非常招集だから乱闘もあり得ると思って置いてきたのよ」

「・・・賊だあああああ!!警官に化けてるぞおおおおお!!」

 

何故バレた!

話し方だって酔わせる前に聞いてたし、間違ってないはずなのに!

はっ!ペンダントの話か!

カマかけてくれやがって、ここの警備員達、優秀過ぎるだろ!

ヤバい、笛の音がそこら中から近付いてくる。

 

「お頭早く逃げないと!」

「行かせるかああああ!」

 

守衛の人が槍を持って突進してくる。

最短距離でやってくるのを見て俺は魔法を唱えた。

 

「『クリエイト・アース』ッ!『ウィンドブレス』ッ!」

「ぎゃあああああああああ!!」

 

守衛の無力化に成功した。

でも増援の数が警備隊とこの街の警官全員って考えたら全く安心出来ない。

 

「助手君!こっちだよ!」

 

こうしてクリスに引っ張られて街中を駆け抜けることになる。

 

 

 

「ちょっ!これシャレになってない!捕まったらどうしてくれんだよ!」

「その時は一緒にお勤めしなきゃだね」

 

笑顔でそんなことを言ってくるクリス。

俺はイヤだ!

人権保障もない異世界で獄中生活なんて絶対にイヤだ!

 

「ふざけんな!責任取って貰うからな!アレだ!獄中結婚してもらうからな!」

「多分、めぐみんとダクネスならシャバで待ってくれるから大丈夫だよ」

 

無責任なこと言ってくれる。

俺が冤罪で捕まった時に脱走を手伝ってくれたのはアクアだったが、全く意味なかったな。

めぐみんが爆裂して気を引いて、それをダクネスがおぶって逃げたとかもあったっけ。

まあ、その時もアクアの持ってきた物は何の役にも立たなかったけども。

また捕まったらどうなるのだろうと考えた時、完全に真っ黒な逮捕ならアクアは絶対に助けに来ないだろう。ダクネスは何とか家の力で減刑出来るようにロビー活動してくれるだろう。ここまでは問題ない。ただ、めぐみんが何をするかを考えた時に不味いことになる予感しかしない。

 

「・・・捕まったらめぐみんが作った盗賊団を率いてカチコミに来そう。それで脱獄犯にされそうなんだが。てかそうなったらアイリスも出てきて政治的にも危なくなる気がしてきた」

「・・・あたしもそんな気がしてきたよ。絶対に捕まったらダメだねこれ」

 

捕まるのよりも、捕まってからの方が怖いってどんなだよ。

めぐみんとアイリスの規格外の力は危険度が高い。

何とか逃げ切らないとな。

 

「何としても逃げ切るぞ!ベルゼルグの為に!」

「ホントそうだよ!国の為に逃げ切らないと!」

「何を言っている!貴様らは国賊だ!」

 

仰る通り何だが、俺らだって世界のためにやってんだ!

俺らが国家反逆罪に問われるなら、俺らを止めるヤツらは世界反逆罪に問われてもいいと思う。

・・・ってバカなこと考えてないで、逃げる方法考えないと。

 

「お前らしつこいぞ!他の貴族だったらもう諦めるっての!」

「知るか!我々は警察官だ!犯罪者を捕まえるのが仕事だ!」

「ご最も。『クリエイト・ウォーター』ッ!『フリーズ』ッ!」

「なっ!?うわっ!?」

 

動けなくなったのに、勢い付いているから、足を凍らされた警察官達は続々と倒れていく。

後続はその倒れた連中に道を塞がれて救助を優先している。

一旦これで距離を取れた。

とは言え追っ手はまだ見えるから安心できない。

 

「お頭、どうやって逃げ切るつもりで?」

「先ずは隠れて変装のし直しが出来ないことには追われ続けるよ」

 

とは言えそこら中に警察がいるこの状況で、着替えなんて出来るのだろうか?

警官全員を倒しきらなきゃ無理だろうけど、それも無理だと思う。

この状況を何とか出来る打開策は無いものかと、考えていると周囲が静かになってきた。

 

「一旦、招集がかかったみたいだね」

「つまり次は集団でやってくると?」

 

こくりと頷きこちらを見るクリス。

俺に案を丸投げする気なのがヒシヒシと伝わってくる。

 

「だったらそいつらまとめて怯ませて逃げればいいだろ?」

「どうやって?」

「そこは俺に任せてくれ」

 

 

 

潜伏スキルで隠れていると重武装の警官隊が二手に分かれて走っていった。その少しあとに、俺たちをずっと追い回してくれていた警官達がどこに行ったとか言いながら探し回っている。

多分、最初に現れた奴らが待ち伏せして閉じ込める作戦だろう。

これを逆手に取るのが最善か。

 

「お頭、合図出したら走り出すぞ」

「え?まだあの人達通り過ぎてないよ?」

「いいからほら!行くぞ!」

 

手を引っ張って強引にクリスを連れ出す。

そして、隠れていた近くにある物にぶつかって大きな音が響いた。

クリスはそれに焦っているがこちらとしては大成功。

 

「居たぞ!」

「今度こそ捕まえるぞ!」

 

あの二部隊が控えてるであろう方へ敢えて向かっていく。

丁度T字路に入り込んだ。

囲いこまれるなら恐らくここだ。

曲がった先には予想通り、重武装の警官隊が盾を構えて道を塞いでいた。

 

「止まりなさい!ここは我々機動隊が通さない!」

 

そして、逆方向へと振り返るも同様に封鎖されている。

来た道は誘導要員。

つまり、俺たちは囲まれてしまったのである。

まあ、計画通りなんだけども。

 

「貴様らは完全に包囲されている。武器を捨て、大人しく投降しなさい」

 

刑事ドラマでよく聞くセリフを自らに投げかけられるとはな。

しかし、完全に包囲と言うのは嘘だな。

だって今から俺たちが突破するのだから。

 

「『ティンダー』ッ!これでもくらえ!」

 

特性の投擲物に着火して両方の部隊に投げつける。

何が投げ込まれたのか理解してないからか全く動揺がない。

対象的にクリスは青ざめた表情をしていた。

 

「ちょっと!助手君それは死人が出ちゃうよ!流石に強盗殺人はやりすぎだよ!」

「なっ、退避!たいひいいいいい!!」

 

ダイナマイト投げたと思ったクリスのおかげで陣形が完全に崩れて突破できるな。

やはり騙すならまずは味方からだな。

 

「お頭!ぼおっとしてないで行くぞ!」

「えっ!?そっちは爆弾が!!あれ?煙?」

 

俺が投げたのはダイナマイトに見せかけたただの煙幕。

無害なのに、面白い程逃げてくれて助かった。

煙幕の後に、払い除けて強行突破する必要が無くなったし、これは楽だ。

とは言え勘のいいやつが一人くらい入る者だ。

警戒していると屋敷で見た勘の鋭いおっちゃんがそこにはいた。

 

「これは煙幕か?はっ、図られた!風を起こせる者は、早くこの煙幕を何とかせい!このままじゃ逃げられる!」

「あばよ、とっつぁん!」

 

去り際になんちゃってスタングレネードを持ってる分全部投げつける。

見た目が同じだから、さっきと同じ煙玉だと思って誰も避けていない。

魔法使いが風を起こして、煙幕を払っているけど、全く意味は無い。

機動隊達はドヤ顔して総員が固まってるけど、そのおかげで効果が最大限発揮された。

とっつぁんも騙されてくれて助かった。

 

「「「うわあああああああ!!目がああああああああ!!」」」

 

これで完全に撒けた。

警察官のほぼ全員を無力化に成功した。

後は何とか安全地帯に逃げないと。

 

「助手君って本当に悪魔的だよね」

「誰のおかげで助かったと思ってるんだ?」

「それはそうなんだけどやり方がね?」

 

何が問題だったのか知りたい。

俺の持てる武器が最大の効果を発揮して、警察を無力化出来たというのに。

と、そんなことは置いといて、変装を解き、無事に着替えも完了した俺たちは街から抜け出す為に、馬車の席を確保しようと駅にやってきた。

 

「すみません。夜行便出てませんか?」

「今日はダメだよ。何でも貴族の屋敷に巷で有名な義賊が入ったらしくて、旅客便は全て欠便でね。全く、商売あがったりだよ。ここの関所は賄賂も効かねえし困るんだよ。王都でさえ身元さえ問題なければちょっと金積めば早いってのによ」

 

馬車に乗って街からの脱出を図るも失敗だった。

御者のおっちゃんには申し訳ないことしたなと思う。

てか、やっぱり商人とかしてると賄賂とかあるのな。

街の外へ脱出不可能と悟った俺達は急いである場所に向かった。

 

 

 

「ゆんゆん!開けて!ゆんゆん!はぁ、はぁ」

「クリスさんにカズマさん?どうしたんですか?こんな時間に」

「頼む、泊まる場所を探し回ったけど見つからなくて、外が何だか騒がしくて眠れないから、巻き込まれる前に走って来たんだよ」

「どうぞどうぞ」

 

何とかゆんゆんの宿泊している宿まで辿り着いた俺達はここに身を潜めることにした。

とんだ災難だった。

でもまあ、これでミッションコンプリートならそれでいいや。

次の街で終わりだろうからこのままゆっくりしよう。

 

「ゆんゆん、突然で悪いんだけど、紅魔の里まで転移魔法で移動したいんだけど大丈夫かな?」

「大丈夫ですけど、どうしてですか?」

「泊まる場所がないからめぐみんの家に泊めて貰おうかなって」

「分かりました。一旦外に出ましょう」

 

ゆんゆんの指示に従って、外に出て、待機していると警察官がやってきた。

こっち指して銀髪がどうのとか言ってるから早くしないと不味い。

 

「ゆんゆん悪い。急いでくれ、眠気が凄いから」

 

詠唱中のゆんゆんはただ頷くと高速詠唱を始めた。

これで何とか間に合うだろう。

 

「そこの君達少し話を」

 

と声を掛けられたが詠唱に集中しているゆんゆんにその声は届いておらず、魔法が発動した。

 

「『テレポート』ッ!」

 

後から聞いた話によると、都市封鎖後にローラ作戦でも見つからなかったため、義賊の仲間の魔法使いが街にいて、テレポートで逃げたことになっているらしい。

間違ってはないけど、ゆんゆんは何も知らないからな。

因みに俺たちは単に、転移した三人組と思われているのだとか。

ゆんゆんの隣の部屋で寝ていた両名が俺達が寝る場所が無くて、騒ぎがうるさくて野営もままならないと話していたと証言して、それがそのまま認められたらしい。

何でも、夜中に騒々しいと警察にクレームが大量に入って対応に追われて、犯人探し所では無くなったと聞く。

まあ、何はともあれ、無事に紅魔の里に到着して俺もクリスも安心していた。

こんな時間だと流石にめぐみん家に飛び入りで行くのは迷惑だろうとクリスが直前になって言い出したので、今日はゆんゆんの家に泊めてもらうことになった。

寝る前にクリスから最終目的地は紅魔の里だから、旅はこれで終わりと告げられた。

やっとこのハチャメチャな旅も終わりか。

役得な事が多かったから残念な気持ちも無くはないけど、アクアとダクネスがしでかしてないか心配なのもまた事実。

後は里で一仕事して終わりだな。

あっ!

ゆんゆんの家に来て安心して、クリスから膝枕してもらう約束してたの忘れてた!

・・・里にいる間の何処かでやってもらおう。

今はゆんゆんの家だから自重することにした。




次回の更新はカズめぐしているやつで、更新日は未定です。

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