七章ラグネ勝利IFアフターの妄想です。

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 本作品には、『異世界迷宮の最深部を目指そう』最終章(八章)までのネタバレが大量に含まれています。また、同九章のネタバレも若干ないこともないです。
 ネタバレを望まない方はご注意ください。

 あと、表現がわかりづらかったり、設定周りで無理があったり変だったりすると思いますが、可能であれば許してor流していただけると幸いです。……申し訳ない。









氷鏡を二枚合わせて

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――冷たい。

 身体が少しずつ氷菓(シャーベット)になっていくような感覚だった。

 

 ……氷菓(シャーベット)

 自分で考えておきながら、私はその言葉に妙な引っ掛かりを覚える。

 

 確か氷菓(シャーベット)というのは、その名の通り氷でできたお菓子の一種だった筈だ。

 そういえば、この『異世界』には似たようなものはあるのだろうか――そこまで考えて、違和感が明確な形になった。

 

 これは、確か――混線だ。

 『親和』した『魔石』からは、知識が流れ込んでくることがあると教わった。

 それが誰の『魔石』からかなんて、一々考えるまでもない。私はそいつのことを、世界で『一番』よく知っている。だから――

 

「――ぁあ(・・)

 

 心の底に灯った熱が、いままさに氷漬けにされようとしていた真実を溶かしていく。

 

 あの『運命』の日、フーズヤーズ攻城戦を制したのは私だった。

 忘れられるわけがない。カナミに勝ってノスフィーさんに勝って、私は『全て』の『魔石』を奪い、ママの教え通りに何もかもを背負って進んだのだから。

 ただ、そうまでして辿り着いた『一番』の『頂上』に、ママは待っていなかった。

 

 代わりにそこにいたのは、黒髪黒目の少女。

 『水の理を盗むもの』アイカワ・ヒタキだった。

 

あぁっ(・・・)

 

 あれこそが、世界を影で操っていた黒幕だ。

 白い『魔法の糸』を操る『異邦人』。

 『次元の理を盗むもの』を作り上げて『不老不死』を与えようとした、ママの同類――そして、私が挑むべき次の『一番』。

 

 ああ、わかりやすい。

 戦って、私は負けたのだ。

 そして、間違いなく、あの女は私の人生で『一番』の敵。

 

ああ(・・)!!」

 

 いまの私は『不老不死』――ノスフィーさんを殺して、奪い取った力のおかげだ。

 

 私はその光に照らされているから、何度だって挑戦できる。

 たとえ、世界の理からして【アイカワ・ヒタキには勝てない】と決まっていたとしても、問題はない。

 

 いいや、むしろ『理想』的ですらあった。

 それなら、『永遠』に挑戦し続けられる。

 意味がない(・・・・・)という難点はあるけど、私にとっては慣れたものだ。

 

 目を開けて、豪雪と『魔法の糸』に閉ざされた、白くて暗い空を見上げる。

 心身がぴたりと一致して、ふわりと前髪が揺れる。

 

 ノスフィーさんと……一応ついでにカナミのおかげで、ようやく私はそれに気づけた。

 だから私は『勇気』を出して、何度でも叫ぶ。

 何の飾りもない、心からの笑顔すら作りながら――

 

「――『だから(・・・)おまえにだけは(・・・・・・・)絶対に負けない(・・・・・・・)』!!」

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【――どこかで聞いたような叫びを、相川陽滝は聞いていた】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【もう何度目になるだろうか。

 だから、彼女の感想は――

「……はぁ、またですか。本当に、しつこい女……」

 僅かに苛立ちを滲ませた、その一言に集約されていた】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【本当ならば、こんなことに付き合っている場合ではない。

 『陽滝の兄』は死んだ。このラグネ・カイクヲラという少女に殺されて、蘇生のための手段(ノスフィー・フーズヤーズ)さえも奪われた。

 陽滝が目的を果たす為には、すぐにでも次の『異世界』へと移り、渦波の蘇生と計画の再構築に取り掛かる必要がある】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【不幸中の幸いと言うべきか、もうこの『世界』に敵はいない。――たった一人を除いて。

 指し手すら倒れた盤上で、未だ陽滝を執拗に阻み続ける『最後の敵』だけが残っている。

 『光の理を盗むもの』を奪い、『不老不死』となった『月の理を盗むもの』を下手に放置してしまえば、どんな致命的なタイミングで背中を刺されるかわからない。それは陽滝にとって、もう(・・)許せることではなかった。

 ゆえに、陽滝はラグネへの対処を強いられ――そして、難儀していた】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【『不老不死』を手にしてる存在相手に、殺害という選択肢は取れない。

 しかし、何度陽滝が《冬の異世界(ウィントリ・ディメンション)》に封印しても、ラグネはその度に反逆を繰り返した。洗脳に慣れた『次元の理を盗むもの』の魔石はとっくに抜かれているというのに、懐かしい叫びと共に何度でも――

「――返してもらうっすよ!! 私が受け継いだ、カナミのお兄さんの魔石を……!!」

 そしてまた、いつも通りの戦いが始まる。

「『私は幻を追いかける幻』『世界(あなた)に存在さえもできない』――!!」

 それは唯一、いまの陽滝を害しうる手段だった。

 単純な肉体の損壊に依らない、生死の『反転』という即死攻撃。『魔法の糸』による自動修復でも、直接的な『死』からは回復できない。

「『私は――っ!?」

「それはさせませんよ」

 もちろん、陽滝がその直撃を喰らうことはない。止めるのは簡単だ。喉を『静止』させて『詠唱』を妨げるだけでいい。

 ラグネが陽滝に勝てることはなかった。

 身体そのものとなっている『光の理を盗むもの』以外の全ての魔石を奪われているというのもあるが――単純に、敗北の記憶を奪われて、戦術がいつも同じなのが大きい。

「く、くそっ……――」

「……はあ。またあなたの負けです」

 胸に《ディスタンスミュート》を差し込まれたラグネは、悪態をつく権利すら奪われて、再び凍結されていく】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【戦いにすらなっていない――筈なのに、それでも終わらない】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【――今日もまた、その『詠唱』が凍てついた世界に響き渡る。

「『私は幻を追いかける幻』『世界(あなた)に存在さえもできない』――!!」

 毎日毎日、同じような天気の下、同じような戦いを繰り返す。

 その繰り返しはいつまで経っても終わらなくて、陽滝の心の底を引っ掻くような台詞を含んでいた。

 ――だから、止めていた筈の思考が、ほんの少しだけ動いてしまう。

 もしかして――】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「――『だから(・・・)おまえにだけは(・・・・・・・)絶対に負けない(・・・・・・・)』!!」

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

【――この繰り返しが終わることは、『永遠』にない。

 ラグネは立ち上がり続け、陽滝はそれを止め続ける。

 どちらも、目的を果たせないまま。

 『最後の一人』が二人いるという『矛盾』は、ずっとずっと解決されない――】

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「……どうして、こんな結末(こと)になっちゃったんだろう」

 

 その呟きを聞いたのは、いつだったか。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

「ねぇ。……あなたは、どう思う?」

 

 その問いに、どんな『答え』を返したのだったか。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 ――まだだ。

 そう誓って、『契約』を重ねる。

 

 いつまでもいつまでも、『永遠』に。

 『未練』の先の先に、『夢』を見て。

 『過去』も『未来』も塗り潰して、『理想』は演じ続けられる。

 

 




 実質ラグひたエンド(終わらない(でも終わってる))


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