ガンダム ビルドダイバーズレムナント   作:みくろん

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第二話 初戦

 「すごい。これがGBNの空……!」

 

イツキは自身のガンプラ、ガンダムレムナントのコックピットの中で、感嘆の声を上げていた。

 

 眼下に広がるのは、広大な世界。近未来的なデザインで統一された街。その外に見えるのは、どこまでも続く地平線、無限に広がる青空。

 

 その世界を飛び交うガンプラに、一つとして同じ姿は無い。誰もが自慢のガンプラを操作し、思い思いにこの世界を楽しんでいた。

 

 初めて目にする世界は、何もかもが輝いて見えた。

 

 「どうよ、すげーだろ?」

 

「あ、レイジロウ!」

 

見れば、レムナントガンダムと並走するように、レイジロウのガンプラ、レイズグレイズが飛んでいた。その姿勢はしっかりと安定しており、やはりガンプラの出来栄えも、GBNの経験も圧倒的に上である事を感じさせた。

 

 「ゲートくぐればすぐミッションエリアだけど、どうするよ?」

 

レイジロウが指し示す方向には、空中に浮かぶ転移ゲートがあった。幾多のガンプラがそのゲートに飲み込まれ、また別のガンプラが飛び出し。それぞれが目的のエリアに向かい、また帰還を果たしていた。

 

 「えっと。見て回りたいんだけど……」

 

「だよな! 案内するぜ!」

 

そう言うと二人は機体を加速させ、どこまでも広がるGBNの世界へと飛び出していった。

 

 広大な森林。どこかガンダム作品で見覚えのある街並み。個性豊かな城。見た事もない奇抜な建物。イツキにとっては目にするもの全てが新しく、刺激的だった。

 

 そしてミッションエリアの近くに差し掛かった時だった。

 

 突如響き渡る爆音と、立ち上る爆炎。

 

「ば、爆発!?」

 

「そりゃそうだろ? GBNはガンプラバトルする場所だぜ?」

 

「あ、そっか!」

 

見れば、細身の機体……AEUイナクトが必死に銃弾やミサイルの雨を回避していた。ほかの仲間はやられてしまったのか、複数の機体から集中砲火を受けている。

 

 「で、俺たちも今からバトルだぜ? 覚悟いいか?」

 

見れば、ミッションエリアの境界を示す光のドームが眼前に迫っていた。このドーム内に入れば、ミッション開始。戦闘が始まる。

 

 初めてのガンプラ。初めてのGBN。初めてのバトル。

 

 イツキは不安と緊張から、あるはずのないアバターの心臓が早鐘を打っているように感じた。

 

 「大丈夫だって! 初心者がクリアできるように作られたミッションだから!」

 

「あ、うん!」

 

内心を見透かされた訳だが、イツキにとっては相手がレイジロウ……ジロウならば悪い気はしなかった。口調から誤解されがちだが、気配りのできる、人の好い少年なのだ。

 

 深呼吸をひとつ。

 

 そして開かれた瞳は、まっすぐと正面を見据え。

 

「行こう、レイジロウ!」

 

「がってん!」

 

そして二機のガンプラは加速し、ミッションエリアへと突入、同時にチュートリアルミッションが開始される。

 

 エリアは変わらず、森林。その上空を三機のリーオーNPD……ノンプレイヤーダイバー仕様が飛行していた。青色のメインカメラがイツキとレイジロウの機体を捉え、マシンガンとドーバーガンを構える。

 

 「来るぜ! 俺が二機を抑える!」

 

「先頭の機体は、僕が!」

 

レイジロウのレイズグレイズが両手のライフルを連射し、二機のリーオーをくぎ付けにする。そしてイツキのレムナントガンダムは、先頭のマシンガンを構えるリーオーへと数発のライフルを放つが、回避、あるいはシールドで防御される。

 

 「焦るな! 隙を狙え!」

 

レイジロウのアドバイスを耳にして、イツキはまず、回避に専念する。放たれるマシンガンの銃弾を回避、回避、回避。更に接近してくるリーオー。おそらくこのまま接近すれば、リーオーは近接攻撃を狙ってくる。イツキは、それを狙い澄ます。

 

 果たして、その瞬間は訪れた。リーオーがマシンガンを左手に持ち替え、右手で肩にマウントされたシールドからビームサーベルを取り出そうとする、その瞬間。

 

「そこ!!」

 

ライフルから放たれるビームが、隙を見せたリーオーの胸部へと吸い込まれる。

 

 着弾、そして装甲を融解させながら貫通。胸部を撃ち抜かれたリーオーは、そのまま空中で爆散した。

 

「や、やった!」

 

コックピットで歓喜の声をあげるイツキ。初めてのバトルで、初めての撃破。その高揚感に、指先が震えるのを感じていた。

 

 「いや、初心者の動きじゃねーぞ!?」

 

「え? あ、ありが……うわぁ!?」

 

レイジロウの驚愕と共に送られた賛辞の言葉に気を取られた一瞬。大出力のビーム砲がイツキの機体をかすめ、ライフルを破壊。その衝撃でイツキは地上の森へと落下してしまう。

 

 「何!?」

 

レイジロウから、焦りの声が漏れる。そして、自分が相手取る二機のリーオーを見て驚愕した。何故なら、そのメインカメラは赤く、放たれるプレッシャーは確実に強者のソレになっていたからだ。

 

 そして、それが意味することを、レイジロウはすぐさま理解した。

 

 「ハードモード!? チュートリアルのハズ……うぁ!?」

 

放たれたビームをかろうじて腕のシールドで防御するも、衝撃でイツキの落下した方向とは逆へと吹き飛ばされる。

 

「しまった!」

 

その隙を見逃さず、リーオーはイツキの落下した地点へと真っ直ぐに加速する。しかしもう一機のリーオーはマシンガンを放ち、レイジロウの機体を釘付けにしていた。

 

 「邪魔すんなよ……!」

 

 このままでは、突如として強敵と化したリーオーによて、イツキは撃破されるだろう。チュートリアルの相手と、ハードモードの敵ではその戦力に雲泥の差がある。まともにやり合えば、初心者のイツキは間違いなく敗北するであろう程度には。。

 

 初めてのGBN。初めてのバトル。だというのに、最初から一方的に敗北すれば、どうなるか。

 

 せっかく一緒にGBNの世界で遊べるようになった親友が。たったの一度のバトルでGBNから去ってしまうかも知れない。

 

 そんな事は、受け入れられなかった。だから。

 

 「ザイン!!」

 

『はい、マスター』

 

レイジロウは全力で、目の前の障害を排除することを決めた。

 

 

 

 「やられたのはライフルだけ……GBNってハードなんだね……」

 

森の中へと落下したイツキは、木陰でレムナントガンダムの損傷を確認していた。幸いにも破壊されたのはライフルのみであり、マニュピレータ等は損傷していなかった。それを確認すると、イツキはレムナントガンダムを立ち上がらせる。

 

 イツキの抱いた感想は、実際には的外れなものであった。初心者用のミッションで、ハードモードの敵機など出現することは本来あり得ないことだ。が、そんな事を知る由もないイツキはただ、自分の機体状況と、周囲の状況の確認を行っていた。

 

 周囲は深い森。この中にいれば、そう簡単に見つかりはしないハズだ。レムナントガンダムに残された武器は、両腰の大出力ビームソード。対する相手の武器は、強力なビーム砲であるドーバーガン。シールド裏にはビームサーベルも装備していたはずだ。

 

 「森に隠れて、誘い込む?」

 

そして接近してきたところを、ビームソードで撃破……できるだろうか? そもそも、上空からドーバーガンであぶり出される可能性もある。

 

 「レイジロウを待つ……!?」

 

安全策が頭をよぎった瞬間。突如として目の前の樹木が爆風によって薙ぎ払われる。

 

 「もう見つかった!?」

 

索敵能力も強化されているのか。それともトリコロールの目立つ機体色のせいか。リーオーは真紅の瞳をギラつかせながら、イツキの機体へとその銃口を向ける。

 

 「くそ……うあ!?」

 

慌てて後退して森に逃げ込もうとするも、その樹木に邪魔をされ、一瞬動きを止めてしまう。当然、敵機がその隙を見逃すはずもなく。狙いすましたビームが放たれる。

 

 やられる! 敗北を覚悟した瞬間。引っかかっていた樹木が機体の重さに負け、根元からへし折れた。仰向けにひっくり返るような動きで機体が派手に転倒し、奇跡的にビームを回避する。

 

 「な、何!?」

 

中のイツキにそんな事が分かるはずも無く。転倒した衝撃と、何故か目の前を通り過ぎる大出力ビームの閃光が混乱を加速させる。

 

 さらに、ビームを回避される形となったリーオーは追撃を仕掛けるべく、シールド裏からビームサーベルを抜刀し、急接近してくる。

 

 奇しくも、その状況は。

 

「……!」

 

イツキの望むものでもあった。

 

 レムナントガンダムの瞳が強く輝き、右腕の放熱フィンが展開。出力を最大まで発揮すると、ビームソードを腰のサイドアーマーに懸架したまま前方に向け、ビームの刃を展開させた。

 

 

 

 「手こずった。イツキは!?」

 

『健在です。が、その付近に敵機の反応あり』

 

レイジロウの声に、無機質な声で「誰か」が応答する。しかし、そのコックピットにはレイジロウの姿しかなく、また誰かと通信している様子もない。

 

 レイジロウは機体を跳躍させ、森を抜けて上空へと飛び立つ。その直後に、全身をハチの巣にされたリーオーが森の中で爆発。黒煙を立ち上らせる。

 

 「間に合えよ、くそ!」

 

ブースターで急加速し、レーダーに表示されたポイントまで一直線に加速する。ちょうどその瞬間に、森で爆発が起きる。

 

 確か残った敵はドーバーガンを装備したタイプ。イツキのレムナントガンダムは、確かに出来のいいガンプラだった。とはいえ、シールドも無くあのビームに耐えるほどの防御力は持っていないだろう。直撃すれば、まず撃墜は免れない。

 

 『反応、消失しました』

 

「何!?」

 

無機質に告げられた言葉に、愕然とするレイジロウ。そして沸々と湧き上がってきたのは、親友を撃破したであろう、敵機に対する怒りだった。

 

 『リーオーの反応、消失しました』

 

「ゆるさ……ね、え?」

 

次いで告げられた言葉に、レイジロウの怒りは霧散し。代わりに広がって来たのは困惑だった。

 

 まさか、倒した? ハードモードの敵機を。初心者のイツキが、単独で?

 

 「れ、レイジロウ~~」

 

「イツキ!」

 

通信が可能な距離まで近づいたのか。憔悴してはいるものの、それは確かにイツキの無事な声だった。

 

 そしてレイジロウがイツキの元へたどり着くと、周囲は戦闘の激しさを物語っていた。

 

 焼き払われた森の一部。折れた樹木。そして、その根元で仰向けに倒れたまま動かない、レムナントガンダムの姿。更にその左腕は、根元から破壊されていた。

 

 「イツキ! 大丈夫か!?」

 

「レイジロウ……」

 

イツキは盛大なため息のあと、弱弱しく口を開く。

 

 「GBNってハードだね。やっぱすごいよ、レイジロウは」

 

「え……」

 

むしろ凄いのはお前だ。と言いたかったが、今はやめた。

 

 「僕、絶対強くなるよ。レイジロウの足を引っ張らないくらいには」

 

各部を軋ませながら、レムナントガンダムが立ち上がろうとする。レイジロウはレイズグレイズの手を差し出し、レムナントガンダムを引っ張り起こす。

 

 「期待してるぜ、イツキ」

 

「うん!」

 

こうして、波乱のファーストミッションは終わりを迎えた。

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