ガンダム ビルドダイバーズレムナント   作:みくろん

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三話 飛躍

 「なるほど……」

 

放課後。イツキとレイジロウ……ジロウは一つの机を挟んで向かい合い、一つのガンプラを眺めていた。

 

「サテライトキャノンもバスターライフルも、マサルさんが改造に使った残りで作ったわけか」

 

「うん。だからレムナント……残滓って名付けたんだけど」

 

それは、イツキのガンプラであるレムナントガンダムだった。

 

 先日の激戦で破損したはずのライフルと左腕は、まったくの無傷だった。GBNはサーバー上のデータでバトルするという仕組みなので、ガンプラが破損することはない。この気安さも、やはりGBNの人気の理由であった。

 

 「つまり良いとこ無いじゃねーか!? シールドも無いから変形もできないし!?」

 

「び、ビームソードは使えるよ?」

 

「白兵戦用モビルスーツか! もうエピオン使え!?」

 

「ジロウくん、イツキくん。少し静かに」

 

騒いでいたのは主にジロウ一人だが。これが連帯責任というものか。

 

 「あ、委員長」

 

二人を注意したのは、委員長……クラス委員長である槙野 アイだった。きっちりとした服装に、いかにもな眼鏡。肩にかからない程度に切りそろえられた髪は薄っすらと茶色味を帯びていたが、正真正銘の地毛だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「それにガン……おもちゃまで学校に持ち込んで。没収されるわよ?」

 

「放課後だからセーフだろ」

 

「はいはい。で、これは……イツキくんが作ったの?」

 

アイは興味深げに、レムナントガンダムを眺める。その瞳はどこか、真剣さを帯びているようにも感じられた。

 

 

 

 その夜。イツキはGBN内でレイジロウを待っていた。約束の時間まではもう5分ほど。その間に、イツキはヘルプ画面でGBNの基礎を学んでいた。

 

 「……こう操作するとフリーバトルモード、ね。うっかり触らないようにしなきゃ」

 

時折言葉が漏れるのは、イツキの癖である。曰く、頭の中で留めるよりも口に出したほうが考えがまとまるらしい。

 

 「悪い、待ったか!?」

 

「ううん。全然!」

 

耳慣れた声に顔を上げると、そこにはやはり、ジロウのアバターであるレイジロウの姿があった。アバターは任意で外見だけでなく声も変えられるが、二人とも肉声に、リアルとほぼ同じアバターにしていた。やはり、この姿がしっくりくるらしい。

 

 「今日もランク上げ、よろしくお願いします! 教官殿?」

 

「うむ! ではミッションを受諾しようではないか」

 

二人はひとしきりふざけ合うと、ミッションカウンターへと向かう。

 

 「朝も言ったけど、チュートリアルの敵はバグって強くなってたからな。多分拍子抜けするぜ?」

 

「うん。でも油断は禁物、だね?」

 

前回の戦いでは、本来イージーモードで出現するはずの敵機がハードモードとなって出現していた。どうやらここ最近でバグが増加しているらしく、原因は違法ツールの使用ではないかと噂されている。

 

 イツキに本来の難易度を教えるべく、レイジロウは出来るだけ簡単なミッションを選んでいた。

 

 「で、今回は俺はお留守番。行ってこい、イツキ!」

 

「うん! イツキ、レムナントガンダム。行きます!」

 

デッキからカタパルトを経て、レムナントガンダムが飛翔する。

 

 今回の目的地は前回同様、森林地帯だ。今回は慣らしということもあり、ゲートを使って一気に移動するようにレイジロウから言われていた。

 

「ゲートの中も興味あるし、ね」

 

ゲートをくぐるのはどんな感じなのか。それもイツキにとっては興味を惹かれる体験であった。

 

 そして、レムナントガンダムがゲートへと突入する。

 

「わぁ……」

 

中には、想像もつかないほどの広大な電脳空間が広がっていた。あれほど行き交っていた他のガンプラの姿は全く見えない。おそらく、パーティか何かを組んでいないと一緒に移動はできないのだろう。

 

 そして電脳空間に浮かぶゲートをくぐると、すぐに森林地帯に到着した。本当に一瞬の出来事だった。

 

 「すごいね、これ!」

 

「便利だろ? っと。ミッションエリア、目の前だぜ」

 

イツキの眼前には、昨日見た光のドームがあった。あのエリアに入れば、また戦闘となる。

 

 「今回はリーオー一機の撃破。お前なら楽勝だよ!」

 

何しろ、初戦闘でハードモードのリーオーを撃破しているのだ。イージーモードに後れを取ることなど、まずありえないだろう。

 

 

 そしてレイジロウの予想は的中……いや、それ以上の結果となる。

 

 戦闘エリアに入った直後。イツキは回避運動も取らずに直進してくるリーオーにライフルを放つと、それだけで敵機の右腕が吹き飛ぶ。あまりのあっけなさに、イツキ自身さえ声を漏らす程だった。

 

 しかし未だ、撃墜には至っていない。リーオーはふらつきながらもサーベルを抜刀し、更に直進してくる。

 

 もう一発ライフルを放てば、それだけで終わってしまいそうだが、あえてイツキは左腕でビームソードを抜刀する。するとレムナントガンダムの左腕放熱フィンが展開し、大型のビーム刃が展開される。

 

 やはり、放熱が間に合っていない。イツキは自機の状態を確認しつつ、リーオーを迎え撃つ。振り下ろされるビームサーベルを払うつもりで、横にビームソードを一閃。結果、リーオーはビームサーベルごと両断され、爆散した。

 

 そして、ミッション完了のアナウンスが流れる。

 

 「こ、こんなにあっけないの?」

 

「それが普通の難易度……にしても、お前やっぱ初心者じゃねーだろ!?」

 

「が、ガンプラ完成させたのも初めてだよ!?」

 

「ぜってー嘘だ! 俺でも最初はもうちょっと手こずったぞ!」

 

ぎゃーぎゃーとにぎやかなやり取りを交えつつ、イツキはゲートを使い、メインロビーへと帰還するのだった。

 

 

 

 「はーい。イツキ君育成計画に大幅な修正を加えます」

 

「何さそれ……」

 

「新兵の皮をかぶったガトーは黙ってなさーい」

 

「言いすぎだよ……」

 

しかし事実として、イツキとレムナントガンダムの実力は到底Eランク、初心者ではありえないものだった。たった二度目の操縦で、無傷で敵機の撃破などそう容易い事ではない。ましてやイツキは、初めての戦闘でハードモードの敵機を撃墜しているのだ。

 

 「というわけでさっさとランク上げて、フォース組んで連戦ミッションでも行こうぜ!」

 

「連戦?」

 

「説明はあと! ほら、いろんなフィールドミッション請けようぜ!」

 

「え? あ……!」

 

そしてイツキは、レイジロウに手を引かれ、ミッションカウンターまで連行される。

 

 強引なやり方だが、レイジロウの晴れやかな笑顔を見ると、イツキは自然と、仕方ないと思えてしまうのだった。

 

 

 

 そこからは、連戦に次ぐ連戦だった。

 

 ある時は砂漠で。ある時は荒廃した市街地で。ある時はSDガンダムの世界で。果ては月面、宇宙空間で。あらゆる場所をめぐり、撃破、採集、探索など、気になったミッションを次々受諾し、その大半を成功させていた。これはGBN経験者であるレイジロウの補助によるところも大きいが、イツキの実力も確かなものだった。

 

 また、この頃からレイジロウのレイズグレイズも、本来の装備に切り替わっていた。

 

 メインアームには大型の専用レールガン。そして背中に装備された追加スラスターと、サブアーム。そこにライフルを二丁装備した、レイズグレイズ本来の装備だ。

 

 「あんまり俺が出しゃばる訳にもいかねーからさ。抑えてたんだよ」

 

つまり、これからは自重せずに行くつもりなのだろうか。一瞬不安を覚えたが、この友人に限って、自分の出番をすべて奪うことはないだろう。イツキはそう結論付けた。

 

 そしてついに、イツキはFランクからEランクへ。更には目標のDランクへの昇格を果たした。

 

 「お前、ちょっと集団戦が苦手みたいだなー」

 

「うぅ。そりゃあ囲まれたら焦るよ……」

 

これまでの戦闘で、イツキとレムナントガンダムの弱点も少しずつ浮き彫りになっていた。

 

 まずイツキは、センスはかなりのものだ。予測射撃、回避運動、とっさの対応力。それらは高いのだが、どうも眼前の敵に集中し過ぎる癖があるようだった。そのため何度か不意打ちを食らい、そのたびにレイジロウがフォローに回っていた。

 

 そしてレムナントガンダム。ライフルとサーベルのみ、という極端にシンプルな武器構成。一体多数を相手取るときの解決策がほぼ無く、包囲されるとそのまま撃墜される事さえあった。

 

 「ま、それはおいおい直すとして。早速、フォース組もうぜ!」

 

「あ、うん!」

 

スパルタ式で一気にランクを上げさせたのは、これが理由でもあった。GBNではDランク以上にならないとフォースへの加入ができない、というルールがあるからだ。

 

 二人は意気揚々とミッションカウンターへと向かい、フォース結成の申請を開始する。が。

 

「レイジロウ。フォースの名前は?」

 

「え? レイジロウ大隊とかじゃダメ?」

 

「自己主張強すぎない?」

 

「イツキ小隊?」

 

「なんで規模小さくしたの?」

 

「俺とイツキ」

 

「メンバー増やす気ないよね?」

 

「レムナントグレイズ」

 

「格好いいけど機体名にしない?」

 

「何ならいいんだよ!」

 

「考えてなかったの!?」

 

 「コントやるなら別の場所でやってちょうだい?」

 

不意に聞こえた声に、イツキとレイジロウは二人揃って振り返る。

 

 そこに立っていたのは……何というべきか。アイドルのような姿をしたアバターだった。ピンクの髪に露出多めなフリル付きの衣装。それはまさに、アイドルだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あ、えっと。ごめんなさい」

 

「悪い悪い。じゃあフォース名はまた。連戦ミッションでも請けるか」

 

レイジロウは手慣れた様子で申請を取り消すと、新たなメニューからミッションを受諾する。

 

 「ねぇ。物は相談なんだけど」

 

アイドルのような少女から再び声がかけられ、イツキとレイジロウは振り返る。

 

 「私もそのミッション、参加していいかしら?」

 

「は?」

 

あっけに取られる二人をよそに、少女はメニューを操作し、二人にフレンド申請を送る。

 

 「私の名前はマギア。魔法少女アイドルダイバーよ!」

 

こうして、数奇な出会いは果たされた。それはきっと、必然として。

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