ガンダム ビルドダイバーズレムナント   作:みくろん

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八話 殲光

 翌日。イツキは兄に指定されたエリア……軌道エレベーターベースを訪れていた。

 

 ベースエリアとは、GBNの各地にあるログイン地点であり、またミッションを受けるための施設でもある。所在地は極東、砂漠、月面、コロニー、資源衛星内と様々だが、そのどれもが等しく拠点としての機能を有していた。

 

 「おせーな、マサルさん」

 

イツキの隣に立つレイジロウが、何度目かの呟きを漏らす。既に待ち合わせの時間を二十分は過ぎているというのに、待ち人……イツキの兄は未だに姿を見せない。

 

 「GBNじゃビクトールって名乗ってるらしいよ。だから本名は、ね?」

 

「っと、悪い。ビクトールさん、か」

 

「まぁ、兄さんは時間にも結構ルーズだから」

 

「つくづく似てねーよな、お前ら」

 

「でも、兄弟だよ」

 

「知ってる」

 

暇をつぶすように、とりとめのない会話を続ける二人。そして、ついに待ち人が姿を現した。

 

 「違ったら悪い。イツキか?」

 

話しかけてきたのは、機動戦士ガンダムOOに登場する組織、ソレスタルビーイングの制服に身を包んだ、長身の男だった。その傍らには、まるで秘書であるかのように一歩引いた位置に立つ、気真面目そうな女性の姿。

 

 「うん。久しぶり、兄さん」

 

髪形こそ違うものの、その顔には確かに兄に面影がある。そして何より、その雰囲気が間違いなく兄だと感じさせる。

 

 「顔そのままかよオイ。もしかして隣は……」

 

「ご無沙汰。ここではレイジロウな」

 

「フルネームから一文字取っただけかよ」

 

こうしてみると、むしろ自分よりも兄……ビクトールに似ているのはレイジロウなのではないか。イツキはそう感じていた。性格というか雰囲気というか。何か似通った部分があるのだ。

 

 「あぁ、そういや待たせちまったよな。どうするよ。早速やるか?」

 

「あ、その前に兄さん。フレンド登録しない?」

 

そう言うとイツキはパネルを操作し、兄にフレンド申請を送る。

 

 「おう。レイジロウもやっとくか」

 

「だな」

 

レイジロウも慣れた手つきでビクトールにフレンド申請を送ると、すぐさま申請受諾という返事が返ってきた。

 

 そしてそこに記されたビクトールの情報を見た二人は。

 

 「Aランク……!」

 

「こりゃ……簡単には勝たせてもらえねーぜ? イツキ」

 

「あたりめーだろ」

 

そう言うと、ビクトールは親指で自分を指し示し。

 

 「殲光のビクトール。相手が弟だろうが容赦はしねーぞ」

 

 

 

 バトルの準備のため、イツキとビクトールはハンガーへと向かう。そして残されたのはレイジロウと、自分からは一切口を開こうとしない、秘書のような女性の二人だった。

 

 二人は現在、観戦用のモニターの前で無言で佇んでいた。

 

 (や、やりづれぇ……!)

 

レイジロウの内心は、その一言に尽きた。

 

 とにかく、話が続かないのだ。レイジロウが名乗ると、女性は丁寧な、しかし無機質な所作で「フィアーです」とだけ名乗った。

 

 その後も何か話題はないかと四苦八苦しながら話しかけるも、返事は全て「はい」「いえ」の二択。

 

(ま、話したくないってんならいいけどよ)

 

無理に相手をする必要もない。レイジロウはそう結論付けると、視線をモニターに向けた。

 

 「負けんなよ、イツキ」

 

 

 

 「へぇ。余りモンにしちゃ、よく仕上げたな」

 

「まぁね……」

 

軌道エレベーター傍の宇宙空間。今回の戦いの舞台となるエリアだ。

 

 ベース近くの光景を再現したエリアであり、そこには現在、二体のガンプラが向かい合っていた。

 

 片方は、イツキの駆るレムナントガンダム。ウイングガンダムプロトゼロと、ガンダムダブルエックスをミキシングした、基本性能に特化した機体。

 

 それに対するのは、ダブルオーガンダムをベースとした改造ガンプラ。

 

 両肩のGNドライヴとその制御装置は大型に改造され、翼のようなシルエットに。全身にはクリアパーツのソードビットが装備され、手に持つのはツインバスターライフル。さらに背中には、ツインサテライトキャノンの砲身。

 

 「ま、俺のオールブレイクには敵わねぇだろうがよ」

 

ガンダムオールブレイク。それがビクトールのガンプラだった。

 

 「やってみなきゃ、分からないよ」

 

「言うじゃねぇか、イツキ」

 

そして、二人のモニターにカウントが表示され。

 

『BATTLE START』

 

 

 開始と同時。互いに距離を取る。イツキはライフルの狙いを定め、発射する。しかしそのビームは、オールブレイクの周囲を飛び回るソードビットによって、容易く防がれる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 「ハァッ! 軽いんだよ!」

 

お返しとばかりに放たれる一撃。ツインバスターライフルの過剰な火力がレムナントガンダムに襲い掛かるが、ここまで大振りな攻撃に当たるほど、イツキも、そしてレムナントガンダムも弱くはない。

 

 余裕をもって回避したところで、再びのアラート。

 

「うあっ!?」

 

何が。左足に被弾したらしいが、ダメージこそあれ、戦闘には支障はない。が。

 

 「大振りだけかと思うかよ!?」

 

オールブレイクの両足に装備されたパーツから、ビーム砲が放たれる。決して高い威力を持つ訳ではないが、無視できる威力でもない。

 

 先ほどはツインバスターライフルを目隠しに使い、この攻撃を確実に当てに来たのだ。イツキはそう理解する。

 

 強い。

 

 Aランクは伊達ではない。改めてその事実を確認させられる。

 

 イツキは何度もライフルを放つが、その全てがソードビットにより防御される。バスターライフルの銃口は常にレムナントガンダムを捉え、両脚からは絶え間なくビームが放たれる。

 

 接近しようにも、迂闊に近づけばバスターライフルの的。更には接近出来たところで、ソードビットの嵐に加え、本体も近接武器を備えているだろう。

 

 「降参するか? ん?」

 

「まだ、まだ……!」

 

イツキはレムナントガンダムの機体状況を確認する。細かなダメージが蓄積している。このままでは、何も出来ないまま敗北する。

 

 「なら!」

 

ライフルをしまい、両腰からビームソードを取り出す。

 

 「お?」

 

特攻でも仕掛けるつもりか。ビクトールは一瞬戸惑うも、動きを止めたレムナントガンダムに対し、バスターライフルを放つ。

 

 強力無比なビームの奔流がレムナントガンダムを飲み込む。そしてその閃光が晴れると、そこにレムナントガンダムの姿は無く。

 

 「……上かよ!!」

 

ビクトールは頭上にソードビットを集中展開させる。その直後、凄まじい勢いでレムナントガンダムが襲い掛かる。そしてその姿は、先ほどとは明らかに異なっていた。

 

 展開された各部の放熱フィン。炎のように逆立つ、真紅のラジエータープレート。

 

 「パワーアップか! 面白れぇ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

気合と共に、レムナントガンダムがビームソードを振りぬく。それによってついに限界を迎えたソードビットが砕け散り、残りのビットがレムナントガンダムに殺到する。しかし。

 

 「速ぇ!?」

 

一瞬でソードビットの範囲外に退避し、そして再度距離を詰めてくる。ツインバスターライフルを放つ猶予はない。ビクトール一瞬で判断を下し、ガンダムオールブレイクは機体背部から大剣を取り出すと、レムナントガンダムの突撃を正面から受け止める。

 

 「ぐがっ!?」

 

予想以上の衝撃に表情を歪めつつ、両脚のビーム砲を放とうとした瞬間。

 

 「もらった!!」

 

「何!?」

 

レムナントガンダムはそのままビームソードを振り下ろし、ガンダムオールブレイクの両脚、そのビーム発射口を両断する。

 

 「舐めんな弟!!」

 

無防備に晒されたレムナントガンダムの機体背面に、ツインバスターライフルの銃身をを叩き付ける。更に追撃とばかりに振るわれた大剣が、レムナントガンダムのラジエータープレートを切り飛ばす。

 

 「まだ、まだぁ!!」

 

兄弟の戦いは、激しさを増していく。

 

 

 

 「すげーな……Aランカーに食い下がってやがる」

 

レイジロウはモニターの中で行われる戦闘に釘付けとなり、思わず感嘆の言葉を漏らす。

 

 「ビクトールの本領は殲滅戦。一対一はむしろ苦手分野です」

 

「マジか……って、え?」

 

初めてフィアーの「はい」「いえ」以外の言葉を聞き、レイジロウは一瞬フリーズする。

 

 「それに何より」

 

やけに様になる仕草で、フィアーは眼鏡のズレを直し。

 

「殲光の異名。それを今から思い知るでしょう」

 

 

 

 「はぁ……っ!」

 

「どうした、息切れか?」

 

二人の戦いは大きな山場を迎えていた。

 

 レムナントガンダムはついにブレイジングレムナントの使用時間制限を迎え、冷却状態に。全身の損傷も目立ち始め、まさに満身創痍。

 

 対するガンダムオールブレイクは、ソードビットの数を半数以下まで減らしたものの。その本体は両脚以外、まるで無傷。

 

 これがAランク。イツキにとっては、その実力差を何度も感じさせられる戦いだ。

 

 だが、だからどうした。

 

 勝ち目がない訳ではない。攻撃は効く。理不尽な力を持っている訳でもない。

 

 そして、自分は、自分たちはまだ負けていない。

 

 「そうだよね、レムナント」

 

その声に応えるように、レムナントガンダムのカメラアイが強く輝く。

 

 そして、ビームソードの柄を構えなおし、ガンダムオールブレイクを見据える。

 

 「いい覚悟だ。イツキ」

 

「え……」

 

その視線の先で。青と白を基調としたガンダムオールブレイクが、真紅に染まっていく。

 

 「見せてやるよ、俺の……”殲光”をな!!」

 

「トランザム!?」

 

それは機動戦士ガンダムOOに登場する、GN粒子によって稼働するMSが使える特殊システム。機体の粒子放出量を増加させ、機体性能を飛躍的に高めるシステムだ。

 

 「兄さん……今まで本気じゃ……」

 

「本気だったぜ! そしてコイツは、俺の全力全壊(オールブレイク)……」

 

ガンダムオールブレイクが、腰に装備されたリフレクターと両肩のツインサテライトキャノンを展開。更に、ツインバスターライフルを真っ直ぐに、レムナントガンダムへと向ける。そして、トランザムの真紅の輝きが更に強まり。

 

 「避けも防ぎも出来ねぇ必殺!!」

 

その全ての輝きが、一瞬で銃口へと集中し。

 

 「ツインサテライト!! バスターライザァァァァァァ!!」

 

「嘘!?」

 

イツキの視界は閃光に……否。必殺の殲光に飲まれ。有り余る破壊の光は地上まで到達し、衛星軌道上からも確認できるほどの大爆発を起こした。

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