双子の心と秋の空   作:蒼奈涼音

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第五話「勧誘?何それ美味しいの?」

 

第5話

 

「勧誘?何それ美味しいの?」

 

 

 

 

昼休みが終わり、幸村は次の授業の教室に向かって歩いていた。

 

すると前方に見覚えのある二人を見つけ、幸村は「真田、柳」と声をかけた。

 

真「おぉ、幸村か…。お前も移動教室なのか…?」

 

幸「あぁ、次は音楽でね…二人とも、大丈夫かい?なんだか疲れてるみたいだけど…また赤也が何かしたのか?」と幸村が聞くと柳は苦笑してその言葉を否定した。

 

柳「探し人がなかなか見つからなくてな」

 

幸「探し人?」

 

真「あぁ…全く!!小向はどこに隠れておるのだ!!」と熱り立つ真田の言葉に幸村は「小向って…君のクラスの小向かい?」と問いかける。

 

真「!!奴の居場所を知っているのか!!幸村」

 

幸「うん、昼休みは彼に花の水やりを手伝ってもらっていたんだ。彼に何かあったのかい?」

 

真田が説明しようとするが柳が「次の休み時間に話そう。時間がないからな」と時計を見せた。

 

幸「確かにね。じゃあ後で教室に行くよ」

 

 

そして次の休み時間…。

 

 

柳と真田は体育でのバドミントンや仁王の考察を幸村に伝える。

 

幸「なるほどね…確かに勧誘してみる価値はありそうだ」と幸村は含みのある笑みを浮かべる。

 

幸「実は放課後、部活の前に少し花壇の手入れを手伝ってもらうことになってるんだ」

 

真「なるほど、そのタイミングで勧誘…だな」

 

柳「だが、弦一郎。お前から聞いた小向の性格を考えると、入れといっても無視されるのがオチだと思うが?」

 

真「うむ…確かに…」と唸る真田。

 

幸「真田…ここはオレに任せてもらえないかな?オレも興味があるしね」

 

真「そうか…?確かにその方がいいかもしれんな。頼むぞ幸村」

 

 

そして放課後…花壇にて。

 

 

約束通り、柚瑠は花壇の所に来ていた…。

 

「早くやっちまおうぜ。お前だって部活あんだろ?」と面倒臭そうではあるが進んで雑草を抜く柚瑠。

 

作業中の雑談として幸村は柚瑠に聞いた。

 

幸「君はテニスをやったことがあるかい?」

 

「あぁ、まぁ昔な…だから?」

 

幸「うちの「却下」まだ何も言ってないよ」

 

「行かない、やらない、入らない、面倒臭い以上。いきなりなんだよ…あ、真田辺りが何か言ってたのか?」

 

幸「じゃあ試合しない?」

 

「お前話聞いてた?」

 

柚瑠の意見と質問を完全に無視する幸村。

 

幸「そういえば…真田はあの庭園のこと知らないんだね」

 

「だからなんだ…」

 

幸「君のサボり場所になってるって聞いたらどんな顔するかな?」と微笑みを浮かべる幸村。

 

この時柚瑠は思った。

 

(何だこいつ!!!!見た目に反して腹ん中真っ黒じゃねーか!!)

 

そんな幸村に脅しに近い勧誘をされ、柚瑠はある約束を取り付けた。

 

 

そして数分後…。

 

 

柚瑠はテニスコートにやって来た…柚瑠が取り付けた約束は幸村と試合し、柚瑠が勝ったらもう勧誘して来ない真田にもあの場所は教えないという約束だ。

 

 

柚瑠は渋々ジャージに着替え、平部員からラケットを借りた。

 

靴は元から運動靴だ。

 

 

そしてコートにて…。

 

 

コートにはギャラリーが集まっていた…結構な数だ。

 

(前の方にいるのがレギュラーか?赤髪にハゲに…何だあのもじゃもじゃ…ワカメみてぇ…。逆光眼鏡に糸目もいんのか…ってかあの銀髪もいるし…あいつもテニス部だったのか…)

 

何とも個性が強そうな面々だ。

 

そんなギャラリーを気にも止めず幸村は「試合は1セットマッチでいいかな?」と柚瑠に問う。

 

「シンプルだし…それでいいよ」

 

幸「じゃあ、真田。審判頼むよ」

 

真「あぁ、分かっている」と真田は位置につく。

 

「おい幸村。オレが勝った時は分かってんな」と柚瑠は幸村を軽く睨むが幸村は「あぁ、もう君を勧誘するのはやめるし、あの事も言わないよ」と余裕の表情。

 

「サーブは?」

 

幸「君からでいいよ」と微笑む幸村…。

 

「久しぶりだからな~鈍ってないかな」と呟きながら柚瑠は位置につく。

 

真「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ、小向サービスプレイ」

 

真田の号令がかかると柚瑠はボールを数回バウンドさせ「フゥ」っと一呼吸置いてからスパンッとサーブを出した。

 

幸(軽いサーブだな)と幸村も余裕でサーブを返す。

 

だが柚瑠は…。

 

ジャ「動かないだと!!」

 

ボールは柚瑠側のコートへと容赦なく突き刺さる。

 

真「15―0」

 

それからも柚瑠は幸村のボールを打ち返すがすぐに動きを止め…。

 

真「ゲーム幸村、1―0」

 

あっという間に幸村が1ゲームを先取した。

 

丸「おいおい…やる気あるのかよ…」

 

ギャラリー達はどよめきだすがそんな中で柚瑠は…。

 

柳生「笑っている…?」

 

そう、笑っていたのだ。

 

「幸村、こっからが…本当のゲームだ」と妖しく笑う柚瑠に幸村は眉を寄せる。

 

次のサーブは幸村だ。

 

幸「(君がどういうつもりか知らないけど…)オレは負けないよ!!」と幸村は強めのサーブを出した。

 

柚瑠は笑みを浮かべたままそれを静かに返す。

 

幸村はそのボールを打とうとするがボールは幸村の手前で沈み、コートに落ちた

 

真「15―0」

 

丸「ボールの勢いが…」

 

ジャ「死んでる…」

 

 

それから柚瑠は快進撃を見せ…。

 

 

真「げ…ゲーム小向、1―1」

 

ジャ「嘘だろ…」

 

切「さっきと動きが全然違うッスよ!?」

 

丸「どうなってるんだよぃ!!」とガラリと変わった柚瑠のプレイにギャラリーはざわめく。

 

そんな中で柳はポツリと呟くように「どうやら小向は…わざと1ゲーム落としたようだな…」と言った。

 

柳生「わざと…ですか?」と柳生は怪訝そうに眉を寄せながら柳に問う。

 

柳「あぁ…恐らく精市のプレイを観察する為だろう…今の返球はオレの空蝉と原理は同じだ。ボールの勢いを殺し、弾まぬように回転をかけている」

 

「さぁ、どんどんいこうか!!」と柚瑠は再びスパンッとサーブを放つ。

 

幸「(また軽いサーブを?)こんな軽い球をオレが返せないとでも?」と幸村は球を返そうとラケットを振るう。

 

だがボールがラケットに当たると幸村は苦しそうに顔を歪めて球を返した。

 

幸(なんだ今の打球…さっきの球より…)と幸村が思った時だ!!

 

幸村の考えを読み取ったように柚瑠は「重いだろ?」と不敵な笑みを浮かべる。

 

「確かに音は軽いぜ…でもな、だからって打球まで軽いと思わない方が身のためだっ!!」と柚瑠が放ったスマッシュが幸村のコートを射抜く。

 

「オッサーン、ちゃんと審判やれよー」

 

真「分かっておるわ!!!!たわけが!!あとオッサンではない!!!」

 

「じゃあ、お次はっ…はっ!!」と再びサーブを打つ。

 

幸(思ったてた以上に…手強い)と幸村がそのサーブを返そうとした時だ!!

 

幸「!!」

 

なんとバウンドしたボールは不規則な超速回転を始め、いくつかの分身を作った。

 

球がブレ、分身を作るその様は…まるで花でも咲くかのようだった…。

 

幸村は何とかボールを打ち返すがネットに引っ掛かり、アウトになる。

 

真「ゲーム小向、2―1」

 

「…いい加減パワーリスト外せば?ハンデ背負ったまま勝てる相手じゃねーってのは分かっただろ?」と柚瑠はため息を吐く。

 

幸「フフッ、確かに…そのようだね…」と幸村は手首に付けられたパワーリストを外す。

 

そこからは幸村の動きも良くなり、互角の試合が繰り広げられる。

 

だが、試合は未だ柚瑠がリードしている。

 

そんな二人の試合を見て柳は「なるほどな」と呟いた。

 

仁王「何がじゃ?柳」

 

柳「いや、お前の言った事が少し分かった気がしてな」と口元に笑みを浮かべる柳。

 

柳「色々と見ていたが…アイツのプレイは相手をタイミングを狂わせたり惑わせたりするものが多い。それに加えて的確なボールコントロール、試合運び、打球の重さも全て計算されている。確かにアレは技術がなきゃ出来ない。どことなく…お前のイリュージョンに似ているな」と自分の考察を述べる柳。

 

 

だが…その時だ!!

 

 

ドサッと何かが倒れる音がした!!

 

二人がコートを見ると…なんと!!コートには柚瑠が倒れていた…倒れた柚瑠の近くで…一匹の黒猫がにゃーと呑気に鳴いている。

 

柳「精市、どうしたんだ!?これは…」

 

幸「いきなりこの猫がコートに入ってきてね…オレが打った球が猫に当たりそうになったのを彼が庇ったんだ…多分その時頭を打ったんだと思う」という幸村の顔は若干青い。

 

幸村の説明を聞きながら柳は容態を見る。

 

柳「心配するな。軽い脳震盪だ。大事には至らない。とりあえず保健室に連れていこう」と柳が言うと幸村はホッと胸を撫で下ろし、柚瑠を保健室まで運んだ。

 

 

数分後…。

 

 

「うーん…あれ…どこだ?ここ…」と寝惚けた様子で柚瑠は起き上がる。

 

幸「気が付いたみたいだね」とこちらを見て微笑む幸村…。

 

「あ、試合!!」と立ち上がった時、頭に痛みが走る。

 

擦ってみると少したんこぶが出来ていた。

 

幸「猫を庇ってボールに当たって昏倒するなんて、君も案外間抜けなんだね」

 

「間抜けじゃねぇ(怒)」

 

幸「でも約束は守ってね」

 

「は?約束?」

 

幸「うちの部に入ってもらうよ」

 

「いやいや、オレだって負けてねーし!!」

 

幸「途中棄権は立派な負けだよ。はいこの子」と幸村はベッドの上に柚瑠が助けた黒猫をのせた。

 

黒猫はにゃーと呑気に鳴き、すり寄ってくる。

 

この時…柚瑠は「黒猫が不幸を呼ぶとは本当だったんだ」と本気で思った…。

 

こうして小向柚瑠はテニス部に強制入部させられたのだった。

 

 

to be continued




はい、彼女は不本意ですがとうとうテニス部入部です(笑)

試合を書くのに結構苦労致しました(・・;)

これからも柚瑠君の活躍にご期待あれ(^o^)/
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