『スクウェア王国・13番街』
「なんであんな奴にあれだけの力があるんだ!」
悪態をつきながら、入り組んだ道を走り抜ける。想定など到底できないであろう事象に見舞われて、自分がいつも追っている犯罪者たちの気持ちが痛いほどわかった。
「なんだ!?あぶねえな!」
裏通りの酒場から出てきた輩は噂の賞金首を見てもなんとも思わないようで、新鮮な情報に触れていないらしい。
少し前の時間なら、歓楽街は観光客や客引きで溢れかえるはずだが、この時間になると人いきれの街は少し老いてしまったようだ。
「仕事が早いな」
マークからおおよそ外れたことを確認し、この街を脱出することだけを考える。先ほど手に入れたお得意先から出てきた自分の素顔の写真に、生け捕り限定と高額賞金の文字。
「ありえねえ、初っ端から5億かよ...」
初手でこの金額は常識はずれだ。一流の凶悪犯罪者の額を与えられたことに、冷や汗をかく。寒気が体の真ん中から消えない。
それでもまだ希望を持っていたのは、書類の効果が及ぶ範囲にも限界があるからだ。
「ここから一番近い無法地帯は…鳥島か」
鳥島というのはあくまでも通称で、犯罪組織の国だ。連合国の枠ではないが、海を渡る必要があり、名の知れた賞金稼ぎが入国するにはものすごく危険だ。しかし、背に腹は代えられない。
この世界では、基本的に体制側による拘束や制限が以上に強い。それぞれの国の傲慢な貴族達とそいつらを守る軍隊が強い力を持っている。また、連合軍なるものまである。大きな組織で、各国から選出されるエリート戦闘員で構成される。
ただの軍隊と連合軍の違いは、規模と力、そして体系だ。国の軍隊は当たり前だが、連合軍よりも統率は取れているが弱く規模も小さい。給料をもらって優先順位と命令が告げられ、それをこなすだけだ。たいして、連合軍はとにかく一人当たりの戦闘力が高い。また、彼らはそれぞれの契約に基づいて任務に挑む。存在の体系はギルドに近い。重要な任務は参加しないと位を剥奪されることもある。
「向こうも、予測はしているだろうから、真逆に行くっていうのも一つの手だな」
逆方向に行くのであれば、一番近い無法地帯は通称、蛇の国。この国の王は人格者で軍隊はとてもつもなく強く安定している国との評判だ。
「そうなると、カスミの街の近くを通らなければならない」
どのように動くにも危険はあるようだが、決断するにはやはり対象の情報が欲しい。しかし、普段の店や情報屋はもう敵だ。
「よし、まずはここを目指すか」
今後の人生を左右する賭けに選んだのは、浮かんだ選択肢の中でも危険なものだった。
「その前に、あいつの番号は...これか」
専用の機械を使い、元仕事仲間に連絡をする。
「大変なことになった!助けてくれ!」
『スクウェア王国・6番街』
贔屓にしていた店は、相変わらず賞金稼ぎや連合軍戦士で溢れかえっている。たった今、店を出た男もその一人だ。彼らの中には特殊な能力や武器を持っているものもいるため、簡単には侵入できそうにない。
目的は、賞金稼ぎのギルドの一級の調査書だ。場所が割れていて、なるべく長期の討伐対象のものが好ましい。やつらの仲間となるのは御免だが、野良一匹での行動は厳しい。共通の敵から身を守るという点に関して協力体制をとることも視野に入れなくてはこの先は生き残れないだろう。
「さて、そろそろかな」
少し待っていると、うるさいくらいに活気のある酒場が面白いくらいに急に静かになった。
「お待ちかねだ」
瞬間、怒号のような騒音とともに扉が豪快に開けられた。我先にと13番街の方へ向かっていく。まるで、地獄から魔物があふれたようだ。
どうやら、相棒はしっかりと仕事をしていたようだ。
「さてと、そろそろ行くか」
ドアを開ける直前に、街中に仕掛けていた機械の遠隔スイッチを押した。もう、止めることはできない。時間との戦いだ。
「親方!まだ、やってる?」