優等生賞金稼ぎ 指名手配される。   作:亡霊中年

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当時の私の頭のなかには、明確な最終回があったのに、ログインできない間に忘れてしまいました。


再会

「な、なんだ!?制御できない!!」

 圧縮した空気をうまく操れなくなったようで、透明な刃でできた花火が拡散していく。窮屈さから解放された予測不可能な線は向こう見ずな性格のようで、様々なものを通り魔的に刻んでいく。それが俺なのか刻み音なのか、はたまた磔男か、ここにいる以上、例外は考えられない。

 ただ、やつは自分の特大の爆弾を手元で爆発させてしまったわけで、深くて間抜けな傷を次々に拵えていく。

「ど、どうしてこんなことが!?」

 深い傷と何もできない自分に驚いているようにも見える。

 どうやら、うまくいったようだ。これでこいつは、扉に磔になっていた男よりも弱い。構えの割に何も起きないと超能力者もくだらない人間の仲間入りだ。

「さてと、犯罪者ギルドでいくらの値がつくかな?」

 逃げられたりされたら困るから殺してしまうことにしよう。ただ、こいつが何者かを証明するために、顔は原型をとどめないといけない。首の骨でも折ろうか。

「仕掛けたのはそっちのほうだ。俺のために死んでもらう」

 首を利き手で鷲掴みにする。どうやら、超能力者はもはや声すら出ないようだ。ひゅうっと息だけが漏れて出てくる。もうすぐ、それすらもできなくなってしまうだろう。

「悪いな」

 かわいそうに。さようなら。

「な、なにをしているんですか!?」

 見られてもどうでもよかった。彼女でなければ。

「何って、俺は賞金稼ぎだから、こいつを殺すんだよ」

「だって、その人には連合軍の刺青が入っているのに」

「あなたは、そんな人じゃないでしょう!?」

 アリスだ。数日前に分かれて以来だ。なんでこんなところにいるのだろう?

「君も知っているだろう。今の俺がどんな状況におかれているか。これはしょうがないことなんだ」

「なんのことですか?」

 当てつけのように、丸めてしまっておいた自分の手配書を放り投げる。

「こ、これは!?ど、どうして!?」

「どうやら、聖女様ってお方に嫌われてしまったらしい。俺やこいつがこんな無惨な姿になっているのは彼女のありがたいお言葉のおかげだ」

 彼女はどうやら本当に、聖女が恩人に激怒している理由を知らなかったようだ。

「もっとも、この国のルールではこの男の方に理があって、ならず者は俺のほうだということもわかっている。だがここで捕まるわけにはいかない」

「な、なんでこんなことになるの!?」

「残念だが、貴族に指名手配された段階で捕まったら死ぬのは確定だ。あとはどんな拷問を受けることか。俺にはやることがある。ここで終わるわけにはいかないんだ」

 俺に聞かれても困るが、アリスにそれを言うのは酷だと思った。不本意だが、極悪人として彼女の前から消えよう。そろそろ、超能力を無効にできなくなる。

 彼女ほど心に傷を負っていた人間にこんな姿を見せてしまうなんて、彼女を地獄に突き落とした人間たちとやっていることは何も変わらない。しかし、やらざるを得ないのだ。

「そ、そうだ。私、貴族とコネがあるの。掛け合ってみる!」

 ボロボロの服にしがみついてきた。きれいな服が俺なんかの血で汚れてしまうのが申し訳なかった。

 好意が痛い。それでも突き放す。

「もう遅い。直に、ここには俺をこんな姿にしたやつと同じ発想の連中が押し寄せてくる。俺はこいつの首を土産にして、協力者を探すしか今日を生き残るすべはない」

「じゃ、じゃあ私が協力して安全な場所に匿ってあげる!」

 なぜか、向こうも必死だ。大丈夫だよとあのときの俺のように必死な笑顔を浮かべている。

「残念だが、俺は金を稼がないといけない。隠れて余生を過ごすのは無理だ」

「わ、私が養ってあげる。こ、こう見えてお金持ちなんだよ!」

 やけにしつこい。もう時間がないっていうのに。

「そういう話じゃないんだ」

「お金が必要なんでしょ!?本当にいくらでもあるの!だから、一緒に行こう?」

「金が必要なんじゃない。稼ぐことが必要なんだ」

「同じじゃない!」

 まずい、もう時間がない。とりあえずギータの意識を完全に落としておこう。まだ一応生きてはいるが完全に生気がない姿を見たら素人は勝手に誤解してくれるだろう。

「ほら、もう殺したぞ。連合軍の戦士をだ。これで俺は聖女と関係なく連合国との敵対関係となった。ここには長くはいられない。離してくれ」

「まだ、生きてるよこの人。やっぱりあなたは悪い人じゃない。こんな時でも私に気を遣ってくれるなんて」

 しまった。最近、この子は人の死ぬ姿を嫌というほど見たんだ。これくらいの誤魔化しに騙されてくれるほど甘くはなかったか。

 仕方がない。

「教えてくれてありがとう。今、とどめを刺すことにするよ。それとも君がやってくれるか?」

 気は進まないが、無理な選択肢を押し付ける。これで話は一気に進むはずだ。

「そ、そっか。私がその人を殺してあなたの見方だって証明すれば、あなたも私を信じやすいんだ」

「な、なにを...」

「ちょっとまってて。私がその人を殺す」

「何を言っているんだお前は?」

 あんな連中に捕まる程度の少女が何を一丁前に。

 しかし、想定の域を超える魔力が流れる。損失を惜しまず一気に最大級の力の渦を創り出していく。

「こんな力を持っていたのか!?」

 だが、本気のようだ。彼女からは今まで一切感じたことのないような種類の魔力の増幅を感じ取れる。

「さあ、そいつを離して!私の魔法は重力魔法だから範囲がちょっと広いの!このままだとあなたにまでダメージが!」

 まずい。このままだと本当に彼女はなぜだかわからないがこいつを殺してしまう。こんな姿は見せたくなかったが、これ以上は彼女も俺も危険だ。

 やるしかない。アリスを乱雑に振りほどき、後ろに飛びのいて、全力で首を握りつぶす。

「きゃあ!」

 振りほどかれた年ごろの娘は可愛らしい年相応の悲鳴をあげていた。だがもう、違和感がすごい。すでに、ただの明るい快活な年ごろの女の子とは思えない。

 一気に潰したため、勢いよく首から血が噴き出た。少し前から呼吸が不自由だったためか、黒かった気がする。なんとかアリスには血の噴射はかからなかったようだ。

「ごめんな。もう二度と会うことはないと思うから。ここにいたら聖女と連合軍に狙われる。聖女と連合国がなくなったらまた、会えるかもな」

「そ、そんな...!?それじゃ、もう...」

 凄惨な殺人現場を目の当たりにしたせいか、崩れておちてしまった。魔力が制御できていないようで、手を差し伸べるのも危険だが。

「まあ、聖女がいなくなることはあり得るが連合軍はなくならないだろうな」

 それだけ言って、隣国の無法地帯へ走り出した。まだ、ドーピングの能力はしばらく使えそうだ。追手や障害物がないととてもやりやすい。とりあえず、この国から一刻もはやく出ていきたかった。

 それにしてもなんで、あの娘は代わりに殺すなんて言ったんだろうか、相当精神を病んでいるらしい。精神的に病んでいる人間のことはあまりよくわからないが行動原理は少しだけわかりそうだ。

「ヒーローを否定したくない気持ちなんだろうな。きっと」

 俺なんかがそれにならなければよかった。

「それにしてもやばいな。もう道具はほとんどないぞ。電波妨害も超能力の無効化もできない」

 放ってしまうタイプのアイテムは回収ができないのだ。

 しばらくこれだけか。青いボール。これだけが頼みの綱だ。

 

 

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