「無駄ァッ!」
ドゴォン!
キラークイーンの突進でゴーレムの左腕が削られ、
「無駄ァッ!」
ズバァッ!
シルバーチャリオッツと俺の斬撃で右脚が両断され、
「「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!」」
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!
それでも尚、回復するその体躯を無駄無駄ラッシュで削って行く。
一見、無駄無駄と連呼している俺達の方が無駄な事をしているとしか見えないこの光景、しかしながら此処に打倒ゴーレムの秘策がある。
キラークイーンの第一の爆弾。
両手に触れた物を爆弾に変え、左手に組み込まれた起爆スイッチを押す事で爆発させられる。
最後の爆発の後に、最初に触れた物しか爆発出来ないというデメリットはある(シアーハートアタックは別)が、最大の特徴は『触れた物自体を爆発させる』か『触れた物ではなく、それに触った物を爆発させる』か任意に選ぶ事が出来る。
そう…『触れた物ではなく、それに触った物を爆発させる』爆弾を起点に、その爆発因子をゴーレムの身体中に撒き散らし、馴染ませてから爆発させる…これが今の行動の真意だ。
放っておけば俺達のラッシュによって、ゴーレムが削られ消える運命にある以上回復させない訳には行かず、回復させれば爆弾化した土くれが因子を身体中に撒き散らし、全身が爆発する…既にフーケは詰んでいて、尚且つ奴はそれに気づいていないっ!
絶望的としか言えなかったあの状況下でもこの画期的な結論を導けるルイズは本当凄ぇな…俺はここに断言するぜ、ルイズは、このハルケギニアの歴史に燦然と輝くメイジになるっ!
「今よ、サイト!」
「よし、分かった!」
そして、
「覚悟しなさいっ!土くれのフーケ!」
カチッ!
ちゅどぉォォォォォォォォォォォォン!
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
30メートル級のデカさを誇るフーケのゴーレム、その全身が爆発するともなれば…その破壊力は凄まじいでは済まされなかった。
互いのスタンドに捕まって後方へ飛ばせた俺達でもその爆風から逃れる事は叶わず、空地の外の木々と共に木の葉の如く吹き飛ばされた。
スタンドの身体能力に物言わせた踏ん張りで何とか(吹っ飛んだ瞬間の)打撲程度で済んだが、
「けほっけほっ!ちょっとルイズ、一体何なのあの爆発は!少しは加減しなさいよね!」
「うるさいわねキュルケ!フーケのゴーレムを一撃で消し飛ばして見せたんだから結果オーライよ!」
それ以外は…危うくと言った感じだった。
タバサこそ自分の使い魔である風竜にしがみついていたので事なきを得たが、乗っていたは良いが爆発による衝撃に耐える最中に振り落されてしまったらしいキュルケは…色々と擦りむいていた。
そしてもう1人、
「い、一体何が起こったのですか!?」
爆発その物こそ食らっていなかったみたいだが、それによって吹っ飛ばされた木々はそうでもなかったのか、所々切り傷を負ったロングビルが帰って来る。
さて…どう出るか、な…
「あの廃屋の中に『破壊の杖』を見つけました。そしたら同時にフーケのゴーレムが襲ってきたのです。ですがそれも私の魔法で木端微塵にしました」
「そうでしたか…それで、『破壊の杖』は何処に?」
「此処に」
「そしたら…それをこっちに寄越して貰おうかね」
「「え?」」
「そこっ!動くんじゃあないよっ!」
ルイズが『破壊の杖』を手に歩み寄ると同時に豹変し確保、こちらに杖を突きつけるロングビル、いや、
「ミス・ロングビル…貴方が、土くれのフーケ…!」
「ご名答。それにしてもアタシのゴーレムをいとも簡単に木端微塵とはやってくれるじゃあないかい、『ゼロ』のルイズ。お蔭でアタシの計画が台無しだよっ!」
「け、計画…?」
「ええ、折角だし説明しましょうか。これを盗み出したはいいけど使い方自体は全く知らなかったのよ。どんなに良いマジックアイテムであろうとその使い道が分からなければ宝の持ち腐れ、安く買いたたかれるのがオチって訳。だからこれをアンタ達に一旦渡して、そこにゴーレムを向かわせる事で使わせようとしたのに…アンタのせいで結局分からず仕舞いよっ!」
ちっ…そういう訳か…!
「けど、まだ諦めた訳じゃあ無いよ。そのアンタがこうしてノコノコと捕らわれてくれた。その使い魔はどうやら『破壊の杖』を知っている様子。これがどういう意味か…分かるね?」
「まさか…『破壊の杖』について話せ、話さないならルイズの命は無いって訳かっ!?」
「ご名答。直ぐそこまで理解してくれるとは流石だねっ!アンタだって主人として慕っているこの小娘を失いたくは無いでしょう!この小娘の行く末を見ていきたいんでしょう!だったら…さっさと話した方が自分の為だよっ!」
「だが断る」
「「なっ!?」」
「簡単だ…此処で話した所でその効果を実践してそのまま皆殺しという寸法だろう。その手には乗らないぜ。それに…詰んでいるのはてめぇの方だ」
「はっ何を言い出すかと思えば」
ドシャァッ!
「あぐっ!?な、何だい一体!?」
ギリギリギリ!
「がぁぁ!?アタシの腕が、腕がぁ!?」
バキィッ!
「な、杖がっ!?」
傍目から見れば、
フーケが突然転んだ
→うつ伏せだが杖を持った右腕だけ上げた恰好のまま動かない
→持っていた杖が突如折れた
→現在進行形で痛がっている(今ココ)
という奇怪な光景が繰り広げられていた。
だが俺とルイズの目には、
フーケの背後に回り込んだキラークイーンが足払いと踵落としを同時に繰り出してうつ伏せに転ばした
→そのまま腕ひしぎ十字固めに移って身動きを取れなくした
→更に空いていた左腕で杖を粉砕した(今ココ)
という光景がしっかりと映っていた。
「天下の大泥棒も、案外大した事ないわね。相手の力量も策略も理解せずに、勝った気でいるなんてね。良い言葉教えてあげる。相手が勝ち誇った時、既にそいつは敗北している…サイトの恩師の名言よ。今のアンタが、正にそうね」
「が、あ、な、何を…」
「1つ教えてあげるわ。アンタがベラベラと話す迄もなく、サイトはアンタが土くれのフーケではないかと、予感していたの。尤も…黒とは言い切れなかった様だけど」
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俺とルイズがひそひそ話をしていた所までバイツァダストする。
「ルイズ…あのロングビル、もしかしたら『土くれのフーケ』その物かも知れねぇぞ」
「なっ!?急に何言い出すのよアンタ!?ミス・ロングビルが『土くれのフーケ』!?寝言は寝て言いなさいよっ!」
「しっ!声が大きい…って、今周囲にサイレントが掛かっているんだったな。それはともかくとしてだ、俺も当てずっぽうでそんな大それたことは言わねぇぜ。そう考えたのは…色々と不自然な点があったからだ」
「不自然な点…一体何処に有るの?」
「まず1つ…フーケの隠れ家が学院から馬で4時間も離れている場所にあり、ロングビルは其処を、物音で目覚めてから早朝の教職員の緊急会議まで…多く見積もっても8時間余りで見つけ出して帰って見せたって点だ」
「8時間余りで帰って見せた…あっ!」
「そう…そこまで余白の少ない時間で成し遂げるには、土くれのフーケの後を執念深く追い続けなければ無理だ。だがロングビルはこう言った…『近くの農民に聞いた』。こんな説明が出来るとしたら…鋭いヤマ勘でフーケの大体の居所を察知出来、たまたま近くに、幸運にもフーケの姿を見る事が出来た農民が通り掛かった時だ。そんな事、天文学的とも言える確率だ」
「た、確かにね」
「2つ目は同じく『農民に聞いた』という点だ。その時間帯、俺のいた世界で『草木も眠る丑三つ時』と言われているぜ。このハルケギニアにおいて、こんな時間帯に起きて出歩かなけりゃならねぇ奴といったら、要所を守る衛兵位の物だろう?」
「言われてみれば、ますます怪しいわね…」
「だが、完全に黒とは言えねぇ。仮にフーケだったとして、何故自らの隠れ家に招待するのか、その理由が皆目見当もつかねぇ。今はあくまで『一番怪しいな』程度だ」
「分かったわ。気を付ける」
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「…で、一先ず怪しく見ている素振りを見せず、泳がせる事にしたんだが…まさかルイズ自らゴーレムをぶっ飛ばすとか言い出すとは思わなかったぜ。まあ結果オーライだったがな」
「どう?『ゼロ』のルイズ達の掌の上で踊らされた感想は、レディ?」
「…最悪だよ…このアタシが、『土くれのフーケ』と恐れられたこのアタシがこんな小娘に良いようにされていたとはね…」
未だキラークイーンがホールドしていて動けないフーケを前に、今までの鬱憤を晴らすかのように皮肉たっぷりに応対するルイズ…その目からは『ゼロ』と言われていた自分に対する劣等感は薄まっている様に感じた。