ゼロの使い魔の奇妙な冒険   作:不知火新夜

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使い魔品評会にトリスティンの王族であるアンリエッタ姫が観覧する事となりテンションが上がるルイズ達学院の生徒。才人もまたその人となりを見聞きして俄然やる気になったっ!


15話

品評会本番の時ッ!

今回、主賓として招かれたアンリエッタ姫は最前列中央に陣取り(主賓なのだから当然だが)、その周囲を騎士団の中でも指折りらしい面子が警護し(国王の血筋なのだからまあ当然といえる)、その周りに教師や他の学年の生徒が観客として鎮座していた。

そんな中での品評会、他の参加者達もさぞや、姫様に素晴らしい演目を披露しようという意気込みや、失敗は許されないという緊張に満ちている、かと思ったが…

 

モンモランシーの使い魔らしきカエルは、彼女が奏でるバイオリンの旋律に合わせて華麗(?)なダンスを披露していた…見た目だけに目を瞑れば素晴らしい物だろう。

キュルケの使い魔であるサラマンダーのフレイムは、その場で火を噴いていた…今回は使い魔の特徴を見せる物だし、オーソドックスながらこれも十分なアピールになるだろう。

タバサの使い魔である風竜は、アクロバティックな飛行を見せつけた…今回のライバルになりそうだな。

だがギーシュの使い魔であるデカいモグラ…てめーはダメだ。

意外、それは『ギーシュ共々薔薇塗れになってポーズを取っていた』…やれやれだ。

さて、俺達の番だな。

 

「頑張りますか」

 

そう意気込み、俺とルイズは舞台へと上る。

 

「彼が私の使い魔で、名をサイトと言います。種族は…人間です。それじゃサイト、始めて」

「了解…それでは、我が故郷に古くから伝わる剣術をお見せしましょう」

 

俺の種族を言うのに少し溜めた様な素振りがあったのは、やはり前代未聞且つ悪い意味で『どうなんだ?』という意識があったからだろう…まあそれはいいとして、ルイズに促され、俺は早速、練習の成果を見せる。

 

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結論を言うと、演目が終わった直後に鳴り響いた拍手の嵐に手応え有りと感じたが、しかし優勝はタバサの風竜(シルフィードと言っていたな)となり、俺は2位だった…派手さで負けたか。

それはまあ良いとして…さっきからルイズの様子がおかしい。

お出迎えや品評会、その後の夕食を経て部屋に戻ってからというものの、頬を赤らめて呆けていると思ったら急に顔をブンブンと振って慌てる、の繰り返しで、何度か声を掛けたが、反応しているのか怪しい。

その豹変ぶりと来たら、バイツァダストの効果で取り付かれた奴といい勝負だ。

まさか…最近言っていた夢と関係でもあるのか?

と、思っていると、

 

コンコン

 

こんな夜更けだというのに来客を知らせるノックが聞こえる…一体誰だ、こんな時間に。

その音で弾かれた様に部屋のドアを開けようとするルイズの一方で、俺は背負っていたデルフリンガーの柄を掴み、警戒を怠らない。

そんな俺を置いてルイズが開けたドアから入って来たのは…

 

「あなたは?」

 

怪しい…怪しすぎる、と一発で分かる服装をした女性…だと思う。

純白のドレスからして高貴な存在だというのは分かるが、その上にフードを目深にかぶっている為にその顔は分からない。

更には右手に、水晶をはめ込んだ杖を持っていて、人目を警戒する様に、空いていた左手でドアを後ろ手で閉める等、行動もまた…怪しい。

挙げ句に、閉め終わるや否やその杖を振り、その杖から粉状の光が出る…これで確信した、この女が只ならぬ存在だと言うのは、コーラを飲めばゲップが出るっていうくらい確実ッ!

 

「待ちなさいサイト!…これは、探知魔法(ディテクトマジック)ですね?」

「ええ。何処に目が光っているか、聞き耳を立てられているか分かりませんからね」

 

だがその気配を察知したルイズが俺を止め、しかも敵意の欠片も無くその女と話をする…何でそう呑気に出来る、まさか知り合いか?

その疑問は、その女がフードを脱いだ瞬間、氷解した。

 

「やはり…姫殿下!」

「お久しぶりです、ルイズ・フランソワーズ」

 

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

俺は部屋に入って来た怪しい女が何か変な事を起こさないか警戒していたが、入って来たのはアンリエッタ姫様だった。

な…何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も何が起こったのか分からなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

お忍びだとか夜逃げだとか、そんなチャチな(ry

 

「ああ、ルイズ!懐かしいわ、ルイズ!」

「い、いけません、姫殿下。こんな下賤な場所へお越しになられるなんて」

「そんな堅苦しい行儀は止めて!貴女と私はお友達じゃないの!」

「そ、そんな畏れ多い事…昔は幼少ゆえ、姫殿下には無礼な振る舞いをしてしまい、申し訳ありません」

 

途端に展開される『かつての親友との感動の再開ッ!』というシーンタイトルが付きそうな姫様とルイズ、2人だけの世界。

だがその実態は…片やその感動を精一杯味わいたいっ!といわんばかりの不自然にも見えるハイテンションさを発揮する姫様、片や王族と貴族という建前から礼節をわきまえざるを得ない為に困惑した様子のルイズ…余りに対照的だった。

…どう突っ込めば良いんだ?と、困惑気味な俺を差し置いて、姫様とルイズの話は続く。

ルイズが俺にも話してくれた幼少時代の思い出から始まり、その後現在に至るまでの事、そして最近のフーケを捕縛した事に話が移った所で、

 

「ところで…そちらにおられるのが、貴女の?」

「あ、は、はい。サイト・ヒラガと言います。俺がルイズの」

「まあ、貴男がルイズの恋人ですか!随分と頼もしそうなお方を選ばれたのですね」

 

ドギャァァァン!

 

「ち、ちちちちち違いますッ!彼は私の使い魔ですッ!」

「はは…ルイズみたいな格別な女性が恋人なら大歓迎なんですがねぇ」

「ア、アンタも何悪乗りしているの!」

 

品評会で俺の演目を最前列で見たとは思えない、グレートなマジボケですぜ、姫様…

 

「本当に凄いわね、ルイズ。人を使い魔として召喚しただけでなく、あの土くれのフーケを、そのゴーレムを彼と2人だけで圧倒して捕縛するなんて。それに品評会での素晴らしい演目…友として、これ程誇らしい事は無いわ」

 

姫様の絶妙過ぎるボケに振り回される俺達だったが、

 

ヒュン!

 

「キャッ!?」

 

その瞬間、俺達限定でザ・ワールドされた…

 

「何かしら?風で物が飛んだのでしょうか?」

 

突如聞こえて来た僅かな風切り音と、その正体が頬を掠めた事にビックリした姫様が、その原因を気に掛ける声で正気に戻った俺が、その正体を探ると…

 

コロコロ…

 

矢、だった。

その瞬間、血の引ける思いとはこの事だろうなと言わんばかりの感覚を覚えつつ、ルイズの方を向くと…同じみたいだ、顔が物凄く青ざめている。

ま さ か

 

「おや?そちらにいる銀色の騎士みたいな方は」

「ひ、姫殿下ぁ!何も言わずに部屋の周りにサイレントをお掛け下さいませぇ!」

「サイレントをぉ!サイレントをぉぉお願いしますぅぅぅ!」

「は、はい!」

 

いきなり豹変した俺達の只ならぬ様子を察してくれたか、慌てつつもサイレントを唱えてくれた姫様。

あ、危ねぇ…まさか姫様がスタンド使いとしての才能を持っていたとは…

 

「姫様、今から申し上げる事は、他言は一切なりません。これは元々、俺とルイズ達ヴァリエール公爵家の中でのみ共有すべきだった秘密なのです」

「姫殿下、サイトの説明で無礼に思う事がありましたらお許しくださいませ。ですが、余りに突飛に思える事であっても、全て事実なのです」

「は、はい」

 

そして始める、ルイズ達ヴァリエール公爵家の皆に話したのと同じ説明を。

 

------------

 

「サイトさんが、このハルケギニアとは何もかも違った世界の出身で、召喚と同時に持ち込まれた矢によってルイズ達ヴァリエール公爵家の面々はスタンド使いとなった…この様な感じで宜しいでしょうか?」

「はい。余りに突飛で、俄かには信じられないでしょうが…」

「いえ、矢で攻撃されるまで何の気配も感じられなかったのに、攻撃されたら突如現れたシルバーチャリオッツもそうですが、サイトさんの身なりも恐らくハルケギニアでは存在しないであろう物…信じるには十分です」

 

姫様は、あっさり信じてくれた様で、スタンドの扱い方を聞いてきたので実践に移ることにした。

すると、

 

「これでしょうか?なにやら野菜を繋ぎ合わせた様な外観ですが」

 

野菜を繋ぎ合わせた…まさかっ!?

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!

 

赤や黄色、緑が入り混じった独特の色合い。

トマトの様な頭部と胴体を兼ねた部分に刻まれた、ジャック・オ・ランタンの様な特徴的な顔付き。

そこから突き出る、ズッキーニを模した丁髷みたいな物体と、一対の前足。

これは、これは…第4部に登場するイタリア料理人トニオ・トラサルディーのスタンド『パールジャム』だっ!

 

「ルイズ…もしかしたらカトレアさんの病気…治るかも知れねぇ」

「え!?ほ、本当なの!?」

「あぁ、本当だ。まあ詳しい説明は姫様と一緒にな」

「こ、これが私のスタンドですか。ちょっと…変わっていますね」

「はい。姫様のスタンドは『パールジャム』と言いまして、

 

あらゆる病気を治す力があります」


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