サクラ大戦 剣聖の新たな道   作: ノーリ

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おはようございます。

前回の続き。第二話の後半部分になりますか。そこから戦闘前までのお話です。

この作品内ではもう既に登場していますが、ゲーム本編においてはここで初登場になるあの人が出てきます。隊長は当然として、先生とあの人はどう絡めましょうかね。

色々考えつつも、とりあえずは本文をどうぞ。


NO.08 真夜中の巡り会い

明けて翌日。

紅蘭が帝劇に加入して役者も頭数が揃いつつある。それに後押しされるかのように客足も上々だった。だが、客足が上々ということは確かに喜ぶべきことなのだが、そのしわ寄せがくる場所も必ずあるわけで。

 

「ふぅ…」

 

客を捌き終わったソーンバルケが思わず大きな溜め息をついていた。そして、最近よくやるようになった、トントンと肩を叩く動作を今回も自然と行っていた。

 

(どうにも…勝手が違うから疲れが溜まってしょうがないな…)

 

内心でぼやく。以前にも一度思ったことがあったが、これならば戦場で剣を振るっている方が余程楽だと思っていた。仕方のないこととはいえ、そのうち慣れる日が来るのかどうかとソーンバルケが不安になってしまう。と、

 

「ソーン」

 

不意に声をかけられて振り返る。そこには自分と同じようにモギリとして客を捌いていた大神の姿があった。

 

「大神か」

「お疲れ様」

「ああ。本当にな」

「全くだね」

 

男二人、同じ苦労を背負いこんでいる者同士、それだけですべて伝わってしまう。お互いがお互いのことをわかるだけに、苦笑する他はなかった。

 

「あまり慣れたくはないのだが…いずれ慣れてしまう日が来るのか?」

「そうかもしれないね」

「歓迎したくはない状況だがな」

「ハハハ…」

 

ソーンバルケのそのうんざりした意見にに大神も力なく笑うしかなかった。

 

「さて…」

 

一息ついたところで、ソーンバルケが徐に口を開く。

 

「取りあえず暇になったことだし、これからどうするか…」

「俺は花組の舞台を見に行こうと思うんだけど…ソーンも付き合うかい?」

「あいつらの舞台か…」

 

大神の誘いにソーンバルケが暫し考え込む。そう言えばここに厄介になってからというもの、仕事(と言う名の雑用)はこなしてきているが、肝心のあの連中の舞台を見たことはなかった。

 

(ふむ…)

 

今更ながらにそのことに思い至ったソーンバルケが、

 

「そうだな、行ってみるか」

 

と、頷いた。

 

「決まりだね」

「ああ」

「それじゃ「あ、あの…」」

『?』

 

二人で花組の舞台を観賞しようとした大神とソーンバルケだったが、そこにおずおずと割って入る声が聞こえてきた。何だろうと思って二人が振り返った先には、椿の姿があった。

 

「あれ? 椿ちゃん」

「どうかしたのか?」

 

予想外の人物に声をかけられ、大神とソーンバルケは椿に尋ねた。

 

「今お暇ですか?」

「暇…と言えば確かに暇だが…何かあったのか?」

 

ソーンバルケが重ねて椿に尋ねた。

 

「あの、ソーンさんにお話が」

「私に話?」

「はい」

 

椿がコクリと頷く。

 

「そうか。それじゃあ俺は外してた方がいいかな?」

 

話の邪魔をしちゃ悪いからと、大神が気を利かせてその場を離れようとした。が、

 

「いえ、大したことじゃないから大丈夫ですよ」

 

と、椿が答えた。その口ぶり、そして様子から本当に大したことではなさそうなので、

 

「そうかい?」

 

と、一応念を押して大神はその場に留まった。

 

「ええ。…で、ソーンさん」

「何か?」

「はい。明日なんですけど備品などの買い出しが大量にありまして、それに付き合ってほしいんです」

「成る程」

 

確かに大したことじゃないなとソーンバルケは思っていた。これなら、大神に外してもらう必要もないわけだ。

 

「要するに、荷物持ちと言うわけか」

「えへへ、まあそうです」

 

椿が少し照れくさそうな表情をして、鼻の頭を掻きながら正直にそう答えたのだった。

 

「仕事ならば仕方ないな。わかった」

「ありがとうございます。それじゃ、明日は宜しくお願いしますね」

「そうか。相方はお前か」

「はい。それじゃ」

 

ペコリと頭を下げると、椿は自分の職場である売店へと戻っていった。

 

「と、言うわけだ」

 

椿を見送った後、ソーンバルケが大神へと振り返る。

 

「明日はお前に雑用を任せることになるな」

「仕方ないさ。ああ言われちゃあね」

 

大神が力なく苦笑した。今からその時のことを考えているのかもしれない。

 

「…まあ、それはそれとして、舞台へ行こうか」

「そうだな」

 

思わぬ形で時間をとってしまった大神とソーンバルケだったが、すぐに舞台へと向けて歩き出したのだった。

 

 

 

椿と別れて程なく、大神とソーンバルケは舞台袖へと到着した。

 

「あ、お兄ちゃん、ソーン」

「大神はん、それにソーンはんも」

「あら、珍しいですこと」

「やあ、ちょっと拝見させてもらいにきたよ」

 

舞台袖に引っ込んでいたアイリス、紅蘭、すみれの三人に軽く挨拶すると、袖から舞台に目を向ける。同じようにソーンバルケも舞台へと目を向けた。

そこには、純白の衣装に身を包んだ軍人然としたマリアと、街娘っぽい姿の装いをしたさくらの姿があった。

 

「今やってる演目って、確か『愛ゆえに』っていうタイトルだったっけ?」

「そうやで。今回はマリアはんとさくらはんが主役や。二人とも見てみい、さくらはん頑張っとるで」

 

紅蘭が言った通り、舞台上のさくらは一生懸命に役を演じていた。

 

『オンドレ様! 私と…お逃げくださいませ』

『使命も部下も捨ててあなたと共に逃げ出す私など…もはや私ではない。そんな私を、あなたは愛せるのか?』

『オンドレ様!』

 

さくらの熱演に大神は感心したようにしきりに頷いていたが、一方でソーンバルケは少し面食らっていた。

 

(芝居だから当然と言えば当然だが、実に芝居がかった口調になっているな。あれは芝居だとわかってはいるのだが…どうもな)

 

文句があるわけではないが普段のさくらたちを知っているがゆえに、どうにも今一つ純粋に鑑賞ができないソーンバルケだった。

 

「確かに、よくやっているね」

「そうやろ? それにしてもマリアはんハマりすぎや。こら女の子は辛抱たまらんわ。失神するで」

「本当だね」

 

まったく、実に堂々とした立ち居振る舞いである。長身で美形のマリアだからこそ余計に際立って、一言で言えば『華』があった。

 

「これは確かに女性のファンが多いのも頷けるな。ソーンもそう思うだろ?」

 

振り返ると、大神はソーンバルケに感想を求めてきた。

 

「芝居の感想を私に聞かれても困るぞ、大神」

 

ソーンバルケが苦笑して答える。が、すぐに表情が戻った。

 

「ただ、確かに華はあるな。舞台映えするでもと言えばいいのか…。魅了される連中が出てもおかしいところは何一つない」

「全くだ」

 

和気藹々とした雰囲気で感想を互いに述べ合う二人。だがそんな中、どうにも不機嫌であることを隠せない人物もいた。

 

「やれやれ、田舎くさい演技ですこと。見てはいられませんわ」

 

呆れ顔になってそんなことを呟いたのはすみれである。

 

「まあ、この才能あふれる私と比べては余りにも可哀想ですけど」

「すみれ、うるさい~」

 

舞台に夢中になっているアイリスに文句を言われ、すみれは面白くなさそうに鼻を鳴らした。

 

「まったく…何で私がこんな脇役をやらねばならないのかしら。主役のスポットライトは私にこそふさわしいのに。そう思いませんこと、お二人とも?」

 

そして自分の意見に賛同を促すかのようにすみれは大神とソーンバルケに視線を向けたのだった。

 

「は、はぁ…」

「……」

 

戸惑ったようにそう絶句する大神。それとは対照的にソーンバルケは何も言わなかった。昨日までだったらその態度や言いようを咎めるようなことを言ったかもしれないが、昨日のすみれの部屋での会話を思い出し、決して傲慢さや妬み嫉みからそんな発言をしたわけではないということがわかったからだ。だからこそ、ソーンバルケは何も言わなかった。と、

 

「しっ! …いよいよ山場やで!」

 

いつの間にかそんなところまで差し掛かっていたのだろうか、紅蘭が促した注意に再び大神たちは舞台へと視線を移したのだった。

 

 

 

「オンドレ様!」

 

スポットライトを浴びたさくらが軍服に身を包んだマリアに走り寄った。が、何歩か目でその足首が変な方向に折れ曲がる。

 

「あ?」

 

間の抜けた声と共にさくらが勢い余ってマリアを通り過ぎた。そして、もつれた足はそのままにトントントンと小刻みにジャンプしながら袖へと向かってくる。そのさくらの姿に、ソーンバルケは嫌な予感しかしなかった。

 

「たっ…たっ…たっ…!」

 

何とか体勢を立て直そうとするさくらだったが、一度崩したバランスを整えるのは容易ではないらしく、咄嗟に掴まったのが舞台袖の幕だった。それに掴まって体勢を整えようとしたもののそれは叶わず、さくらはそのまま倒れ込む。そして倒れ込んださくらに引っ張られ、幕が落ちた。

 

『~ッ!』

 

幕の向こうにいたすみれ、アイリス、紅蘭はその結果待機している姿をお客さんに晒すことになる。が、それだけでは終わらなかった。どういう理屈かはわからないが幕が引っ張られたことで、連鎖的に舞台のセットが崩れ落ちたのである。唸るような轟音と共に、舞台はセットの残骸でメチャクチャになってしまった。

 

 

 

「うひゃー、舞台がメチャクチャや!」

 

舞台上の惨劇を目の当たりにした紅蘭が、あんぐり口を空けながら惨憺たる有様に唖然としている。と、

 

「…もう堪忍袋の緒が切れましたわ!」

 

すみれが怒りの形相で舞台へと上がっていった。無論、出番であるわけもない。まあそれ以前に、ここまで滅茶苦茶になってしまったらもう出番も何もあったものじゃないだろうが。

 

「あ、すみれ、ダメだよー!」

 

アイリスが制止するもののそんな声が今のすみれの耳に届くわけはない。

 

「すみれ! まだ本番中よ!」

 

舞台に上がってきたすみれの姿を目の当たりにし、思いもしない展開になってしまったマリアが何とか収拾をつけようとする。だが、ここまでグチャグチャになってしまった事態が収拾するわけがない。

 

「さくらさん! 舞台をこんなにしてしまってどうするおつもり!?」

「…す、すみません」

 

すみれの詰問にさくらが返す言葉もなく謝る。どう贔屓目に見てもこの事態を引き起こした原因はさくらだけに、何を言われてもどうしようもない。が、止まらぬすみれの糾弾にさくらも大人しく引き下がることはしなかった。

 

「全く、よくコロコロと起用に転べますこと! これだから田舎者は…ドロくさい、ドンくさい、おまけに田舎くさい…くさいくさいの三拍子ですわ!」

「…NGなら、すみれさんが一番多いですけど」

「な、なんですって!」

「二人とも! お客さんの前よ、止めなさい!」

 

火に油を注いで一触即発状態の舞台上。マリアが仲裁に入るもののそれで状況が収まるわけもなく。さくらとすみれの睨み合いは続いていた。

 

「アカン! 大神はん、ソーンはん、ここは止めに入らんと!」

「お兄ちゃん、ソーン、何とかして~!!」

「…とは言われてもな」

 

話を振られた形となっているソーンバルケが二の足を踏む。只の剣士である自分にはこんな公衆の面前に搭乗するのは敷居が高い。では大神はと言うと、ソーンバルケと同じように舞台に上がろうとはしなかった。

 

「…いや、今は本番中だ。ここはそっとしておこう」

「…成る程。さっすが大神はんや、冷静沈着やな」

「お兄ちゃん、頭いいー!」

(…今更本番も何もないと思うが)

 

大神の下した判断を称賛する紅蘭とアイリスだったが、今なお進行している舞台上の惨劇を目の当たりにしているソーンバルケにはどうにも同意しかねる意見だった。もっとも、その判断のおかげで舞台に上がらなくて済むのだから痛し痒しと言ったところだが。

しかし、ヒートアップした二人は一向に収まる気配がない。

 

「うーん…しかしこのケンカ、簡単には収まりそうにもないぞ」

「全くだな」

 

舞台上で未だにいがみ合っているさくらとすみれの姿に頭が痛くなる。この場を収めるには、何か大きなきっかけが必要だった。が、そのきっかけは思いもしないところから現れた。不意に、半壊状態のセットがミシミシと嫌な音を立てたのだ。

 

「今の音は…アカン、大神はん、ソーンはん、また舞台が崩れそうやで!」

「な、何だって!?」

「お兄ちゃん、ソーン、さくらたち危ないよ!」

「わかった。彼女たちを避難させよう!」

「だが、どうする?」

 

避難させようにも妙案など咄嗟に浮かぶわけもなく、ソーンバルケが大神に尋ねた。

 

「とにかく、声を掛けよう。危ない状況だって言うことを知らせなければどうしようもない」

「わかった」

「おーいみんな! 危ないぞーっ!」

「下がれ!」

「! 二人とも、何を!?」

 

大神とソーンバルケに気がついたマリアが戸惑いの表情を見せる。そして、それと舞台のセットがハッキリと轟音を立てたのはほぼ同時だった。

 

「ま、また舞台が!」

「崩れてきたわ!」

 

すみれとさくらもその異変をようやく感じ取った。直後、

 

「い、いかん! みんな逃げろ!」

 

大神のその悲鳴が合図になったかのようにセットが再び崩れ、そしてとうとう全壊してしまったのだった。

 

「うわあああっ!」

「きゃああああっ!」

「あれええええっ!」

「舞台が…なんてことなの…」

 

各人、避難には成功したものの、全壊した舞台の姿に愕然とする他はなかったのだった。

 

 

 

 

 

その夜。

見事に全壊した舞台の前に帝劇の面々は集まっていた。

 

「やれやれ…とんだ公演になってしまったなあ…」

 

先ほどの一件を思い出し、大神が大きく溜め息をついた。

 

「ケガ人が出なかっただけでも良かったですよ」

「でもなぁ…見てみい、この舞台…」

 

慰めにもならない慰めをマリアが大神にかけた後の紅蘭の発言で、全員の視線が舞台に再び移る。そこには何も変わり映えのしない、半壊以上のメチャクチャになってしまったセットの舞台があった。

 

「さくらさん! あなたセットを壊してしまって一体どうするつもり!」

「すみません…」

 

憤懣やるかたないといった表情でキッとさくらを睨み付け、すみれが怒りを露にする。さっきの舞台上では売り言葉に買い言葉ですみれに文句を言っていたさくらも、改めて自分の引き起こした惨状を目の当たりにするにあたって冷静になったのか恐縮して謝罪することしきりだ。だが、勿論それですみれの怒りが収まるはずもない。

 

「すみませんじゃ済みませんことよ! 明日だって公演はあるんです。今夜中に直してちょうだい!」

「そんな…」

 

冴えないさくらの表情が更に沈んだ。その様子を目の当たりにし、流石に看過できず大神が二人の間に割って入る。

 

「おいおい、さくらくん一人を責めることないだろ?」

 

大神の意見は至極もっともだった。確かにこの惨劇を引き起こしたのはさくらである。それ自体は疑う余地もない。だが、ここまで被害が拡大したのにすみれが一枚噛んでいることもまた事実だった。更に言えば、人間誰だって失敗はあるし、この崩壊したセットを一晩で直せというのはどう考えても無理があった。が、本人に自覚はなくとも頭に血の上った今のすみれには火に油を注ぐ結果にしかならない。

さくらに向けて睨んでいた視線を大神へ移すと、すみれは酷薄さがにじみ出る薄い笑みを浮かべた。

 

「あら…それならさくらさんの代わりにセットの修理をしてくださいますの?」

「え?」

「どうなんですの?」

「わかった。やってやるよ」

 

すみれに詰め寄られ、これもまた売り言葉に買い言葉の側面があることは否めないが、大神がそう答えた。

 

「俺にも責任があることだし」

「大神さん…」

「……」

「大神はん」

「お兄ちゃん、かっこいい!」

 

大神の返答に、団員たちは皆一様に好意的な視線と言葉を向けた。そしてそれは、他ならぬすみれも同じだった。

 

「少し…言い過ぎましたわ。でも、ホントによろしいんですの?」

「ああ。みんな舞台で疲れていることだろうし、俺が夜の間にやっておくから」

「となれば、私も手伝わんわけにはいかんな」

「え?」

 

その時はじめて、そこまで傍観者に徹していたソーンバルケが口を開いた。皆が今度は一様にソーンバルケに振り返る。

 

「いいのかい、ソーン?」

 

大神が尋ねると、ソーンバルケはフッと息を吐いた。

 

「今更だな。泊りになってしまった以上、お前一人に任せるわけにもいくまい。やるだけのことはやってやるさ」

「ありがとう。助かるよ、ソーン」

「なに」

 

気にするなとばかりにソーンバルケがヒラヒラと手を振った。セット崩壊による舞台中止の事後処理を手伝っていたこともあり、帰るタイミングを完璧に逃してしまっていたソーンバルケは、今日は帝劇に泊りになることに決まっていたのだ。ということで、これも大雑把に言えば雑用である以上、ソーンバルケが手を貸すのも当然のことではあった。

 

「…お言葉に甘えます。明日になったら、私たちもお手伝いしますから」

「照明関係はウチが明日直したるさかい、あんまり無理せんでな」

「お兄ちゃん、ソーン、頑張ってね!」

 

花組の面々は頭を下げるとそれぞれの自室へと戻っていく。

 

「さて、それじゃあやろうか」

「そうだな」

 

彼女たちを見送った後、帝劇の雑用コンビは千里の道の一歩目を歩き出したのだった。

 

 

 

 

 

「とは言え…」

 

目の前に積み上がる、瓦礫と言っていい残骸の山を見ると正直ゲンナリする大神だった。

 

「…引き受けたのはいいけど、こりゃ大変な仕事だぞ」

「ボヤくなボヤくな」

 

肩を落としている大神を励ますかのように、ソーンバルケが大神の肩にポンと手を乗せた。

 

「文句を言っても何も始まらんぞ」

「うん…わかってるよ。わかってるんだけどね…」

 

しかし目の前の瓦礫の山を目にしてしまうと、どうしても溜め息が出てくるのを抑えられなかった。

 

「まあ、とにかくやれるところまでやるしかないだろう。どだい、一晩で片付くとは誰も思っていないだろうさ」

「そうだね」

 

覚悟を決めた大神が早速修理に取り掛かる。それを確認したソーンバルケも一足遅れて同じように修理に取り掛かり始めた。

 

 

 

「大神さん…ソーンさん…」

「え?」

「ん?」

 

修理を開始してから少し経ったところで不意に大神とソーンバルケは誰かに呼ばれた。二人が顔を上げると、そこには所在なさげな表情で立っているさくらの姿があった。

 

「あれ? さくらくん?」

「どうした、こんな時間に」

 

予想していなかった珍客の姿に、大神もソーンバルケも修理の手を止めてさくらに尋ねた。

 

「ごめんなさい、大神さんもソーンさんも。あたしのせいでこんなことになってしまって」

「いや、いいんだよ。誰かがやらないといけないことだし」

 

さくらに気を遣わせないためかそんなことを言う大神だったが、先ほどまでのやり取りを思い出したソーンバルケはよく言うものだと感心しつつも呆れていた。

 

「それより、どうした?」

 

ソーンバルケがいきなり姿を現したさくらに重ねてその理由を尋ねる。

 

「あっ、あの、私にもお手伝いさせてください!」

「え?」

 

突然のさくらの申し出に、どうしたものかと困った大神がソーンバルケを仰ぎ見た。

 

「…いいのではないか?」

 

さくらの様子に感じるところのあったソーンバルケがそう答える。一度は部屋へと戻ったものの、やはり責任を感じているのだろう。であれば、どの程度手伝ってくれるかはともかくとしてその責任感に折り合いをつけるためにも、ここはさくらの申し出を受けてやった方が彼女のためになると判断したのである。

 

「じゃあ、手伝ってもらおうかな。俺たちと一緒に壊れたセットを修理してくれるかい?」

「はいっ!」

 

表情を綻ばせながら、こうしてさくらが修理に加わったのだった。

 

「では、ここはお前たちに任せる」

 

さくらが加わったことで、ソーンバルケが腰を浮かせた。

 

「え?」

「どこへ行くんですか?」

「表もこれだが、裏の状態も酷かったからな。ここをお前たちがやってくれるなら、私は裏の方の補修に回ろう。何かあったら呼んでくれ」

「そうか。わかった」

「よろしくお願いします」

「ああ」

 

軽く手をヒラヒラと振ると、修理道具を持ってそのままソーンバルケは舞台裏へと向かったのだった。

 

「それじゃあ、俺たちは引き続きこっちをやろうか」

「はい!」

 

ソーンバルケが姿を消した後、改めて大神とさくらがセットの修理に取り掛かり始めた。

 

 

 

「あ~あ…それにしても、あたしってどうしてこんなにドジなんだろうなぁ」

 

さくらが合流して修理を開始してから少し、呟くようにそんなことをさくらがボヤいた。勿論、手は動かしたままである。

 

「大神さんやマリアさんみたいにしっかりしている人がうらやましいですよ」

「そんなことないよ。それに、誰だって最初からしっかりしてる人なんていないさ。今は無理でも、努力していけばいい」

「そ、そうですか?」

「ああ。さくらくんにだってきっとそんな日が来るよ」

「あ、ありがとうございます…」

 

そんな他愛ない会話を交わしながら黙々と修理を続ける二人。だが不意に、

 

「そうだ! 大神さんもソーンさんも、まだお仕事続けます…よね?」

「…え? ああ、そうだね」

 

突然そんなことを聞かれ、少し戸惑いながらも大神が答えた。と、

 

「ちょっと待っててくださいね。すぐに戻ってきますから」

 

そんな一言を残し、さくらがどこかへと走り去ってしまったのだった。

 

「お、おい、さくらくん」

 

大神が声をかけたが時すでに遅し。その時にはさくらの姿は影も形もなかった。

 

「行ってしまったか…仕方ない、修理を続けるか」

 

突然姿をくらましたさくらに戸惑いながらも大神までここを離れるわけにはいかず、セットの修理を再開した。ソーンバルケを裏から呼び戻してもよかったのだが、すぐに戻ってくるとさくらが宣言していただけに、余計な二度手間になりかねないのでそれは止めることにしたのだった。

黙々と修理を続ける中で、不意に大神は手が滑って自分の指の上に金槌を振り下ろしてしまう。

 

「痛っててててて…!」

 

激痛に表情を顰めながら、痛みを和らげるために患部にフーフーと息を吹きかける。と、

 

「あら…?」

 

不意に聞き慣れぬ声と、舞台上を歩いてくる足音が聞こえた。大神が振り返ると、そこには陸軍の軍服を着た見たことのない女性の姿があった。

 

「怪我したの?」

 

突然の展開に大神は振り返ったまま固まってしまい、返事をすることすら忘れてしまう。女性はそのまま大神の側までやってくると、物腰柔らかに膝を折って大神に手を伸ばした。

 

「あ、あああああ、あの…」

「ふふ、おかしな子ね」

 

言葉通り女性はクスクスと笑うと、包み込むように大神の腕をとった。そしてゆっくりとその腕に自分の顔を近づけると、不意に怪我をした指を咥えたのだった。

 

「いっ!?」

 

突然の予想だにしない展開に大神は完全にフリーズしてしまう。それはつまり女性の為すがままにされてしまうというのと同義である。結局その状態は、女性が自発的に大神の手から口を離すまで続いたのだった。

 

「どう?」

 

女性が穏やかな口調で大神に話しかける。

 

「…は、はい。もう痛くないです」

 

大神が顔を赤らめながらそう答える。心なしか、顔もしまりがなくなり鼻の下も伸びていた。

 

「頑張るのもいいけど、程々にね」

「は…はい」

 

その大神の様子を見て言葉通り大丈夫だと判断したのか、女性はそのまま舞台上を立ち去ったのだった。

 

 

 

「き…綺麗だ」

 

未だ呆然としながら思わず大神が呟く。

 

「だ…誰なんだろう、あの人は…」

 

相も変わらず夢心地の様子で呟く大神。そんな大神を現実に引き戻すかのような激痛がいきなり背中から襲ってきた。

 

「ってえ~! だ、誰だ、背中をつねるのは!」

 

夢見心地だったところを急に現実に引き戻された大神が恨みがましい口調になって首だけ振り返った。そこにいたのは、

 

「いいっ! さくらくん! いつから居たんだ!?」

 

非情に不満気な表情で大神を睨んでいるさくらの姿があった。心なしかその背後には燃え盛るような火炎と、般若の面をつけて着流しを着た剣士の姿も見えるような気がした。

 

「なんだか、随分楽しそうでしたね?」

 

そう言うさくらの口調は随分と寒々しいものであった。

 

「い…いや…その…」

 

どうにかして軟着陸を試みようとする大神だったが、悲しいかなその技術は大神にはなかった。少なくとも今は。

 

「いいな、恋人みたいで」

「そ、そんな…恋人だなんて…」

 

口では否定はするものの、どことなくその表情は嬉しそうである。そしてそれがまたさくらを不機嫌にさせる。

 

「そう…じゃあ…」

 

ふんっとばかりにプイっとそっぽを向くと、さくらはその場に何かを置いてそのまま立ち去ってしまったのだった。

 

「あっ! さくらくん! ちょっと待ってくれ!」

 

大神が慌てて呼び止めるもその声はさくらには届かない。いや、届いてはいるのだがさくらが意図的に無視しているのかもしれない。とにもかくにも、さくらの姿はその場からなくなってしまったのだった。

 

「ああ…行ってしまった…」

 

後悔先に立たずというわけでもないが、さくらに去られたことに肩を落とす大神。と、不意にさくらが置いていった何かに大神の視線が移った。

 

「あれ? これは…」

 

手に取ってみてみると、それは弁当だった。ふたを開けると、まだ温かい手作りの弁当が所狭しとぎっしりと詰められていた。

 

「わあ、お弁当だ! 手が込んでいるなぁ…。これってひょっとして、俺たちのために作ってくれたのか?」

 

お手製のその弁当を手に取り見ていると、大神に罪悪感が滲んできた。ゆっくりと、その弁当のふたを閉める。

 

「…さくらくんの部屋に行こう。いくらなんでも、このままじゃさくらくんに失礼だ」

 

そう決心した大神は、さくらを追いかけて自身も舞台上から去ったのだった。その少し後、

 

「何かうるさかったが…何かあったのか?」

 

ソーンバルケがひょっこりと舞台裏から姿を現した。どうしても手が離せない場所を修理していたため、舞台上がうるさかったのには気付いていたが様子を見に行くことができなかったのだ。しかし舞台上には誰の姿もない。

 

「ん?」

 

大神とさくらはどうしたのだろうと思いながら辺りをキョロキョロと見渡す。と、その視線があるものを捉えた。

 

「これは?」

 

それに近づいて手に取る。それは先ほどさくらが作ってきた弁当だった。ふたを開けてその中身を確認したソーンバルケがもう一度辺りを見渡した。

 

「恐らくさくらが差し入れて作ってくれたのだろうが、それにしてはさくらの姿も大神の姿も見えないのが気になるが…まあいい」

 

作業が進み、丁度小腹も減ってきたところだった。いいタイミングと言えば実にいいタイミングである。

 

「飲み物を用意してから、有難く頂戴するか」

 

さくらが用意した弁当のうち一つを手に取ると、ソーンバルケはそれを手に持ってさくらや大神たちと同じように舞台上から去ったのだった。

 

 

 

 

 

「…さあ、着いたぞ。さくらくん、居るかな?」

 

さくらの自室前。舞台から走り去ったさくらを追って取りあえず大神は彼女の自室前までやってきた。さくらが自室に戻ってきているかどうかはわからないが、時間的に考えればここにいるのが一番可能性が高いからだ。

 

「ふぅ…」

 

一つ大きく呼吸をする。そして、コンコンとそのドアをノックした。

 

『はい…どなたですか?』

 

ドアの向こうからさくらの声が聞こえ、大神は自分の予想が当たっていたことに内心でホッと一息ついた。だがこれはまだ目的達成のための第一歩に過ぎないのである。

 

「あの…大神だけど」

『……』

 

少し時間を置き、ドアがゆっくりと開いた。そして、さくらがゆっくりと姿を現した。

 

「さくらくん…さ、さっきはどうも…」

 

取りあえず会えたとは言え、いざさくらを目の前にしたら何を言ったら良いものかわからずに、お茶を濁すようなことしか大神の口からは出てこなかった。

 

「…とりあえず、中へどうぞ」

 

淡々と告げる。その口調、声色から怒っているのか呆れているのか蔑んでいるのかどんな感情を抱いているのかわからず、大神はヒヤヒヤだった。

 

「…おじゃまします」

 

そう答えると、小さくなりながら大神はさくらの部屋へと足を踏み入れたのだった。

 

(さくらくんの部屋に入るのは初めてだなぁ…)

 

失礼にならないようにあまり周囲をジロジロ見ないようにしながら、大神はさくらの部屋を眺めてそんなことを思っていた。

 

「ところで、何の御用なんですか?」

 

当然ではあるが早速の質問に大神が内心で言葉に詰まる。いきなり切り出すのも性急過ぎかと思い、まずは何気ない話から攻めようと試みた。

 

「そう言えば昼間は三つ編みだったね。なかなか可愛かったよ」

 

髪に目が留まった大神が昼間の舞台のことを思い出してそう伝えた。が、

 

「そうですか」

 

さくらの返事は素っ気ないものだった。まだご機嫌斜めなのを肌で感じた大神が更に言葉を続ける。

 

「さくらくん、さっきは手伝ってくれてありがとう。服、汚れなかった?」

「大丈夫です。大神さんこそ、指は大丈夫ですか?」

 

いい感じに話が転がったかなと一瞬思った大神だったが、さくらの表情がすぐに強張ったものになった。

 

「あ、大丈夫ですよね。あの綺麗な女の人に介抱されたんだもの」

(…まずい、まだ怒ってる)

 

さくらの機嫌が簡単に治りそうになさそうなことを感じた大神は、搦手ではなく正攻法で攻めることにした。

 

「そ、その…」

「何でしょう?」

「お弁当、ありがとう。そのお礼が言いたかったんだ。せっかく作ってもらったのに、すまなかった」

「大神さん…」

 

大神のその一言にさくらの表情が嬉しさと申し訳なさが入り混じったものに変化した。

 

「ごめんなさい、あたしも意地張っちゃって」

「いや…それにしても、あの女の人は誰だったんだろう?」

 

さくらの機嫌が良くなったことで気が緩んだのか、大神が思わず呟いてしまった。

 

「……」

 

さくらの表情が再びムッとしたものになり、ジト目が大神を射抜く。

 

「あ、い、いや、何でもないんだ。じ、じゃあ、俺はもう帰るから」

 

自らの失態を自覚した大神がそそくさとさくらの私室を辞した。

 

「じゃあ、お休み」

「今日はお疲れさまでした。お休みなさい、大神さん」

 

途中雲行きが怪しくなったものの、何とか上手く話がまとまったことにホッとしながら大神はさくらの私室から去ったのだった。そして向かった先はセットの修理をするための舞台…ではなく、自分の私室だった。どうやら怒涛の展開があったことですっかりとセットの修理を忘れてしまったらしい。

 

「ふぅ…今日は大変な一日だったな。ゆっくり寝よう」

 

ベッドに腰を下ろす。まだ指先に僅かに走る痛みに、大神は先ほどのことを思い出していた。

 

「それにしても…あの女の人、誰だったんだろう」

 

指を咥えてもらったことが鮮明に脳裏に蘇る。

 

「…いい夢が見られそうだな」

 

普段からは考えられないようなにやけた顔でベッドに横になり、大神はそのまま眠ってしまった。

で、肝心の舞台はというと…

 

「……」

 

大神もさくらもいなくなったセットを、さくらのお手製の弁当で腹ごしらえが終わったソーンバルケが一人黙々と修理していたのであった。

 

(あいつらはどうしたんだ…?)

 

疑問が晴れることはない。また、この時間帯ということもあって最悪の考えも脳裏をよぎる。つまり、引き揚げてとっくに休んでいるという事態だ。そしてそれは正解だったりするのだが、セットの惨状を見るにソーンバルケも同じようにその選択肢を採るのは躊躇われたのだった。

 

(仕方ない…)

 

文句を言っても始まらないので修理を続行する。勿論、一人では進捗に限界はあるし何より眠気には勝てない。とは言え、取りあえずできるところまではやるかと決めたのだった。

 

(明日は椿のお供で買い出しに付き合わなければならないから、それに支障がないように考えると、夜明けぐらいまでがリミットか)

 

夜明けになったら仮眠をとるようにしようと考え、ソーンバルケはそこまでは修理に徹することにした。そして引き続き黙々とセットの修理に従事し、夜明けを迎えた後にサロンで横になって仮眠をとったのだった。

 

 

 

 

 

明けて翌日。

 

「はぁ…」

 

大神は窓際に腰掛けて呆けた表情で溜め息をついていた。こうなっている理由はただ一つ、昨日舞台で出逢ったあの女性のことが忘れられないのだ。

 

「あの綺麗な人…一体誰なんだろう。あんな夜中に劇場の中にいたということは、帝劇の人なのかな…。でもここに来て一ヶ月…一度も逢ったことはなかったし…」

 

いつもの精悍な表情からは信じられないほどだらしなく緩みきっている。それほど、昨夜の出逢いは大神にとってインパクトが強かったのだろう。

 

「はぁ…もう一度逢いたいなぁ…」

 

隊員たちには決して見せられないその緩み切った表情で、大神は更に溜め息をついたのだった。

そんな中、看板女優たちはというと舞台のセットのところに勢揃いしていた。

 

「さあみんな、はりきって修理しましょう!」

 

昨夜のこともあってやる気に満ち溢れているさくらの声が響き渡る。

 

「なんや、さくらはん。えらいハリキリようやな」

「ふん…昨日の失敗でちょっとは懲りたんじゃないかしら?」

 

懐疑的な紅蘭とまだ納得していないすみれがそんなさくらに対しそれぞれ思ったことを述べる。そんな中、

 

「ねえねえ、さくら。お兄ちゃんとソーンがいないよ? どうして?」

 

アイリスがこの場にいない二人のことについてさくらに尋ねた。

 

「お二人とも昨日遅くまで舞台の修理をしてたから…寝かせてあげましょう。それにどっちみち、ソーンさんは今日は買い出しで帝劇を離れているから」

 

さくらがそう言ってアイリスを窘めた直後だった。

 

ビーッ…ビーッ…

 

劇場には似つかわしくない警報の音が鳴った。そしてその音を聞いた瞬間、彼女たちの表情に緊張感が走る。

 

「来ましたわね!」

「みんな、修理は中断よ。指令室に集合して!」

「待ってましたで! いよいよウチと光武の初陣やな!」

「行きましょう、みんな!」

 

乙女たちが走り出す。帝国歌劇団から帝国華撃団へとその様を変える瞬間だった。

 

 

 

「帝国華撃団・花組、出撃準備完了しました!」

 

作戦指令室に隊長である大神の号令が響き渡った。皆、先ほどの装いから一変して己の身を戦闘服に包んで整列している。帝国歌劇団のもう一つの顔…この帝都を脅かす『魔』を退ける戦闘組織、帝国華撃団へその姿を変えたのだった。

 

「うむ!」

 

そしてこの帝国華撃団の発案者であり創設者の一人でもある米田が、軍服に身を包み司令として指揮を執る。

 

「黒之巣会は芝公園を襲撃中だ!」

 

黒之巣会…それが彼ら帝国華撃団の敵の名前だった。

 

「芝公園…?」

 

敵襲撃位置の場所を聞いたマリアが、何かを思い出すように呟いた。

 

「確かあそこには、最近帝都タワーが建ったばかりだわ」

「そんな大事なものを破壊されるわけにはいきませんね!」

「帝都タワーは東京全域の電波の発信・中継地点なんや! あそこを破壊されたら、軍の暗号通信からお茶の間のラジオまで、根こそぎパーやで!」

「つまんな~い、アイリスまたお留守番なの」

「アイリスの光武もじきできるよって、ここは辛抱やで」

「うん…」

 

留守に回されるアイリスは面白くなさそうだが光武…霊子甲冑と呼ばれる彼らの戦闘兵器がなければどうすることもできない。そのため、紅蘭が不満気なアイリスを宥める。アイリスもわかっているのか、それ以上は何も言わなかった。

 

「よし、大神。出撃命令を出せ!」

「はいっ!」

 

米田に敬礼すると、大神は隊員たちへと振り返った。

 

「帝国華撃団、出撃せよ! 目標地点、芝公園!」

「了解!」

「お任せあれ!」

「紅蘭、がんばってね」

「がんばりましょう、大神さん!」

「…ウチの戦闘服姿、大神はんは初めてやな。結構似合っとるやろ?」

「もちろん! よく似合うよ」

「よっしゃ! 張り切っていこか!」

「よし! 総員光武に搭乗! 出撃準備に入れ!」

 

隊員たちが各々自分の光武に搭乗する。

 

「さあ…ウチのかわいい光武。いよいよあんたの出番やで…ウチと一緒にがんばろうな!」

 

その中で他の隊員と同様に自分の光武に搭乗した紅蘭が、慈しむように光武に語り掛けた。やはりメカニックということもあって、機械に対する思い入れは一入なのだろう。

 

「よっしゃあ、行くで! 李紅蘭、今日が初の晴れ舞台や!」

 

そして帝国華撃団は、芝公園へと向かって出撃したのだった。

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