少女恋物語   作:不思議ちゃん

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幼馴染 渋谷凛4

「私、春のことが好き」

「…………ぇ?」

 

 唐突な私の告白に春の足が止まる。

 そこからさらに二歩ほど歩いてからおもむろに振り返って、真っ直ぐに春を見る。

 

 春の表情には驚きと、嬉しさ、後悔など、様々な感情が読み取れた。

 一瞬だけ、自己満足な告白で春を悩ませてしまうことに躊躇いを覚えたけれど。

 踏み出してしまったのだからもう戻れないと気持ちを切り替え、一度深呼吸をしてざわついた心を落ち着ける。

 

「私、春のことが好き」

 

 誤魔化されないようにもう一度同じセリフを口にする。

 

「ずっと春のことが好き。……この気持ちに気付いたのは最近だけれど、私はずっと春のことが好きだった。今でもその気持ちに変わりはない」

「…………凛の気持ちは嬉しいけど」

「言わないで」

 

 好きという言葉を聞きいて春は笑みを浮かべるけれど。

 彼女のことを思ってか、口を紡ぐ。

 

 春が何かを言いかけていたけれど、私の決心が鈍ってしまう。

 このままだと春の彼女になりたい欲を抑えきれないかもしれない。

 

「私が、幼馴染って関係に甘えていたのが悪いの。これから先もずっと隣に春がいて、何も変わらない日が続くんだって思ってた」

 

 ──そんなこと……あるはず無いのにね。

 

 そう口にした時、私の目から涙が流れ落ちる。

 抑えようと思っても感情が高ぶって落ち着く気配はない。

 

 ……初めからこんな風に素直な気持ちだったら、また違ったのかな。

 

 春が声をかけようとしているけれど、どう声をかけたらいいか分からず。

 結果、何も言えないまま私から目を逸らす。

 

 そんな春の行動を目にして胸の奥が痛んだけれど、優しい言葉をかけられたらもっと痛く、惨めになっていただろう。

 結果として一番マシな選択肢なのだろうけれど、そう割り切れないのが人の心か。

 

「……………………」

「……………………」

 

 互いに口を開く事はなく、嫌な沈黙が続いた。

 

「俺、凛の事が好きだ」

「……っ」

 

 自分でも酷い顔をしているのが分かる。

 今まで以上の後悔が押し寄せてくるが、もうどうしようもない。

 

「今でも凛に未練があるのに、付き合ってる彼女がいる。優柔不断な俺でもいいって言ってくれて、それに甘えて。……ここで彼女を振って凛と付き合うなんてこと、俺にはできない。これ以上、凛に顔向けできないことをしたくない」

「……彼女と別れて私と付き合おうなんて言ってたら、春のことぶん殴ってたよ」

「……最後に失望されるようなことをしなくて良かったよ」

「…………」

「…………」

「帰ろっか」

「ああ」

 

 互いにクスリと笑みをこぼし、いつもと同じように並んで帰り道を歩いていく。

 けれど二人が胸に抱く気持ちは普段どおりでは無いことは、口にせずとも分かっていた。

 

「……それじゃ」

「おう」

「これまで通りとはいかないと思うけれど、明日の朝も一緒に行こう」

「……ああ。また明日な」

 

 先程から目を合わせようとしない春に、私はキュッと口を紡ぐ。

 今ここで気を緩めてしまえば惨めにも春へ縋り付いてしまいそうで。

 だんだん小さくなっていく春の後ろ姿から視線を切り、店口から家へと入っていく。

 

「あら凛。おかえ……り」

 

 そこには店じまいをしていたお母さんがおり、振り返り見た私の様子がいつもよりおかしいことに気付いたのだろう。

 近くによって心配そうにしている。

 

「……どうかしたの?」

「私、……春に振られちゃった」

 

 私の無理やり作られた笑みに、告げられたセリフ。

 それを理解するやお母さんは何も言わずに私を優しく抱きしめる。

 

「ずっと……ずっと好きだったのに。春のこと何でも知ってるのに。気付いたら私の側から春が居なくなっちゃった……」

「そうね。凛も春くんも、もう少しだけ素直になれたら良かったのにね」

「ぅ……ぅぅっ、…………」

 

 その後、私が泣いて何を言っているのか分からなくなっても、お母さんはただただ優しく頭を撫で続けた。

 

 

 

 

 

「それで、凛はこれからどうしたい?」

 

 落ち着いて風呂や食事を済ませた後、私のの部屋にあるベッドに、私とお母さんは並んで座っていた。

 

「……よく分からない。春に気持ちを伝えて区切りをつけることしか考えてなかった」

「そうね。今の凛だと、何もかも失った気分よね」

 

 それなら。とお母さんは続け、とある紙を私へと差し出す。

 

「…………アイドル?」

「そう。これでシンデレラガールになって、凛を振ったこと春くんに後悔させてあげなさいな」

「…………ふふっ。なにそれ」

「私はアリだと思うけれど、案の一つとして考えておきなさい。あなたの人生なのだから、後悔しない選択をしていけばいいわ」

「後悔しない選択……」

 

 要件は済んだと、お母さんは私の部屋を後にする。

 ドアを締め切る間際、私のことを見ていた気がするけれど。

 私は渡された紙に夢中となっていた。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

「おはよう、春」

「おう」

 

 翌日、いつもと同じように私と春は並んで学校へと向かっていた。

 何かを話そうとしている春だが、何を話したものか纏まっておらず、口を開いては閉じるを繰り返していた。

 

「私、決めたから」

「…………へっ?」

 

 昨日と同じ場所で同じように、私は口を開く。

 何を決めたのか、訳がわからない春は足を止め、私の顔を見る。

 

 

 

「私、シンデレラガールを目指す。そして春に私を振ったこと、後悔させてやるんだから」

 

 今できる最高の笑みを浮かべて、そう宣言してやった。




今更ながら付き合うルートの話が大変薄っぺらく千文字持たないので諦めます
次は先輩美嘉…かな?
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