学戦都市アスタリスク~語り部の魔術師~   作:リコルト

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初めての方は初めまして。「学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~」を見ていた方はお久しぶりです。

この度、私の好きな作品である学戦都市アスタリスクの小説を新たに書くことを決意して、この作品を創作することになりました。
「学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~」を閲覧したことがある読者はこの作品のプロローグを見た後に、この作品の設定に既視感を覚えるかもしれませんが、この作品は
「学戦都市アスタリスク~調律の魔術師~」の設定を基にリメイクしたような作品です。

ヒロインも前作?に続いてシルヴィアとノエルにしようと思っています。それでも良いよ!という方はこの作品を読んでくれると嬉しい限りです!

長くはなりましたが、それでは本編をどうぞ!




入学と新たな出会い(中学三年生)編
プロローグと設定&用語


 

 

「ーーーめでたし、めでたし。はつかねずみがやって来た。話はこれでおしまい……」

 

 そう言って、僕は語った物語を語り終える。すると、それと同時にこの物語を聞いていた老若男女のギャラリーの拍手が沸き起こる。

 

 

 

ーーここはフランスのとある田舎街

 

 大規模な都市化が進む各国の都会の風景とはかけ離れた中世のお城、町並みが魅力の街だ。

 

 やはり、物語を語る場はこういう物静かな広場が良い。統合企業財体の一部の常連からはドームを借りてまで豪勢にやろうと言われるが、あまり乗り気ではない。

 

 というより、僕自身は語り部の拘りとして金持ちの為だけに聞かせるのではなく、『万人に聞いてもらいたい』という気持ちがある。まぁ、かの童話作家、シャルル・ぺローは貴族の為だけに物語を語ったと言われてるけどね。

 

 そう思いつつ、僕は広場にある噴水の側に置いておいた荷物をしまっていると、長い白髪が特徴の俺と変わらないぐらいの年齢の見知った少女がこちらに近づいてきた。

 

「本日のお話も面白かったでしたよ、シオン」

 

「カーリーさん……見てたんですか」

 

 この白髪の少女の名前はカーリー。

 

 簡潔に説明すると、僕の育ての親だ。他人から見たら、一見同い年同志に見えるが、彼女の方が年齢は上で、すでに成人もしている。というか、僕が初めてカーリーさんと会った時すでに今の外見だったから、詳しい年齢は俺でさえも知らない。

 

「カーリーさん、会議の方は?」

 

「無事終わりましたよ。ここの町長さんは話が分かる人でした。お陰で、私達の組織である『ライブラリー』に支持と資金の支援をしてくれるそうです」

 

 そう嬉しそうに言いながら、カーリーさんは僕の荷物の整理を手伝ってくれた。

 

「それは良かったですね。でしたら、そこにある評判のパスタの店に行きません?お話を聞いていた女性に教えてもらったんですよ」

 

「それは名案です。実はちょうどお腹が空いていたのです。奮発して大盛でも注文しましょう」

 

 僕は仕舞い終わった荷物を片手に持ち、カーリーさんとその店に向かおうとすると、二人の女性が僕達の道を遮った。

 

 片方はサングラスをかけた表情が読めない長身の女性。温厚というようなオーラはなく、どちらかというと冷酷と表現した方が分かりやすい人だ。

 

 そして、もう一人は栗色の髪をして、帽子を深くかぶった僕と同じくらいの年の可愛い少女だ。前者のサングラスの方と比べて、フレンドリーな感じで誰とでも仲良くなれるような感じを醸し出している。けれど、表面からでは分からない何かを隠しているな。少なくとも、普通の少女では無いだろう。

 

 素性も遮った理由も分からない二人に俺は警戒して、煌式武装に手をかけようとするが、カーリーさんがそれを見据えたようにその手を静止させる。

 

「まさか、このような場所でお会いするとは。今日は何のご用件です?ペトラ様」

 

 カーリーさんはサングラスの女性に訊ねた。

 

「別にアスタリスクを抜けてまで貴女とお話を来たわけではないわ。今日、用があるのは貴女の隣にいるその子によ」

 

「えっ?……」

 

 予想外の答えに僕は困惑する。カーリーさんと話している辺り偉い人なのは分かるけど、まさか僕の方に用があるなんて。

 

 すると、帽子をかぶったもう一人の女の子が僕の目の前にまでやって来て、僕の手を掴んだ。

 

「お願い。君の力を貸してもらいたいの!特殊文化保護組織『ライブラリー』所属の稀代の魔術師(ダンテ)()()()()()君に!」

 

「は、はぁ………」

 

 

…………………

 

 

………………………………

 

 

………………………………………

 

 

 これは一体どういう状況だろう………

 

 いきなり、現れた初対面の可愛い女の子に手を握られ、力を貸してもらいたいとお願いされた。

 

 カーリーさんの方を向いてヘルプを要求するが、彼女もまだ状況を掴めていないようだ。僕の方を向いて首を横にひねっている。

 

「あの、力を貸すのは別に構わないんですけど、名前を教えてくれませんか?」

 

 僕はまず、目の前の彼女に名前を訊ねた。

 

「ああ!そうだよね、君にはまだ名前を名乗っていなかったね!少し待ってて………」

 

 そう言いながら、彼女は帽子を脱ぎ、髪に隠れたヘッドフォン型の髪飾りに触れると、彼女の栗色の髪は鮮やかな紫色へと変化した。

 

「私の名前はシルヴィア・リューネハイム。よろしくね、本宮シオン君」

 

 

 

 

………えっ?

 

 

 

 

 

「シルヴィア・リューネハイム?まさか、先日の《王竜星武祭》で準優勝したあの?」

 

「うん、そうだよ!」

 

 まさか………正直名前を聞いた今でも信じられない。アスタリスクの一角であるクインヴェールの序列一位であり、世界的トップアイドルである彼女が僕の目の前にいるなんて。

 

 けど、だとすれば理解はできる。彼女から出ていた只者ではない気配、そして変装をするまで姿を隠す理由が。だって、こんな場所に世界的トップアイドルがいたら、大騒ぎだもんな。

 

「ということは………」

 

 僕は先程、カーリーさんにペトラ様と呼ばれていた女性に視線を向ける。シルヴィア・リューネハイムと対等に話せるペトラという名前は知る限り一人しかいない。

 

「ええ、そうよ。私はペトラ・キヴィレフト。クインヴェールで学園長をしているわ」

 

 やはり……。カーリーさんと見知った仲だとは思っていたが、クインヴェールの学園長だったのか。

 

 

 僕はこの急展開な状況にしばらく頭を悩ませていたが、落ち着いた所でもう一度目の前のシルヴィア・リューネハイムに訊ねた。

 

「成る程、怪しい人物で無いのはよく分かった。で、僕に何をして欲しいって?」

 

「実はある人を探していて、シオン君にはその人を君の魔術師(ダンテ)の能力で探して貰いたいの」

 

 成る程、探し人か。学園長もいるから一体どういう危ない案件かと若干ヒヤヒヤしたわ。けど、シルヴィアさんやペトラさんの顔からして………

 

「もしかして、その探している人ってシルヴィアさんやペトラさんの大事な人か何か……」

 

「うん、その人の名前はウルスラ。私に歌を教えてくれた先生で、ペトラさんの旧友。数年前から行方不明で、私もずっと探しているけど、なかなか見つからなくて」 

 

 そう言ってシルヴィアさんは深刻そうな顔をした。アイドルをしている以上シルヴィアさんにとって歌がどれだけ特別なものかは理解出来る。そのウルスラさんは今のシルヴィアさんを形成した親とも言って良いだろう。

 

 

 

 一応、統合企業財体の幹部であるペトラさんがいる以上、僕個人の意見だけで手助けをするかを迷ったためカーリーさんに相談したが、カーリーさんは僕の自由にして良いと言ってくれた。

 

「分かった。協力するよ」

 

「本当に!?ありがとう!」

 

「ああ、少し離れててくれ」

 

 そう言って嬉しそうに跳び跳ねる様子だったシルヴィアさんを僕の近くから離れさせ、僕の腰に付けていたホルダーケースから一枚の栞を取り出す。

 

『さぁ、語ろう。グリムが遺した物語を。顕現せよ、全てを見通す魔法の鏡よ』

 

 僕がそう言うと、栞が輝きだし、僕の周囲に星辰力(ルイーナ)が集まり始める。しばらくすると、集まった星辰力は鏡の形となり、僕の前に現れる。

 

「これがシオン君の、『語り部の魔術師(メルヒェンテラー)』の能力…」

 

 突然、能力によって現れた魔法の鏡にシルヴィアさんだけでなく、ペトラさんも呆気に取られていた。

 

「ああ、僕の能力は物語を顕現させる能力。今回出したのはグリム童話の有名な作品『白雪姫』に出てくる何でも答えてくれる魔法の鏡だ」

 

 僕はシルヴィアさん達にそう説明しながら、鏡の前に立ち、その表面に触れる。

 

「鏡よ、鏡。シルヴィア・リューネハイムが探しているウルスラさんの居場所を示せ!」

 

 そう言うと、魔法の鏡は虹色に輝き始め、僕達にウルスラさんのいる場所を示し始めた………

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………………………

 

 

 

…………………………………………………

 

 

「くっ!!」

 

「シオン君!!」

 

 地面に片膝をつける僕を心配そうにシルヴィアさんが駆け寄ってくる。僕とシルヴィアさんの前には先程まで虹色の輝きを放っていた魔法の鏡、それが光を失い無残に割れていた姿があった。

 

「カーリー!これは!?」

 

「……分かりません。今までに無い形です」

 

 僕達の後ろでもカーリーさんとペトラさんが予想外の結末に困惑する中、僕はシルヴィアさんに肩を貸して貰い、ゆっくりと立ち上がった。

 

「……恐らく、ウルスラさんには僕の能力すら通さない何かがある筈です。それをウルスラさんが意図的にやっているのか、それとも他の誰かによって行われているかは分かりませんが。……すいません、失敗してしまって」

 

 力が及ばず、良い結果を出せなかった面目無さに僕はシルヴィアとペトラさんに謝るしかなかった。

 

「別に謝る必要は無いよ。私達が無理にお願いしたことだから。それに、最初の一瞬だけだったけど、ウルスラの姿が見えたし、アスタリスクの何処かにいる事は私とシオン君の能力で確証が持てたから、私達としては十分な収穫だったよ」

 

「シルヴィの言う通りよ。貴方は十分私達の要望に答えてくれたわ。だから、頭を上げなさい」

 

「………分かりました」

 

 そう言われてしまい、僕はペトラさん達に促されるような形で、二人に下げていた頭をゆっくりと上げることにした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「………お二人はこれから?」

 

 僕はここに来た目的を失敗という形ではあるが、果たし終えたペトラさん達に訊ねた。

 

「すぐにアスタリスクに帰るわ。私もシルヴィも明日はアスタリスクで仕事が入っているから」

 

 成る程、学園長とアイドル。ここでゆっくりしている程、暇では無いということか。

 

「そうだ!シオン君、電話番号交換しようよ!君とはまた近い内に会える気がするんだよね!」

 

「え、あ、はい」

 

 そう言われて僕はシルヴィアさんに携帯を取られ、半ば強引的な形で電話番号を交換することになった。シルヴィアさんに携帯を返して貰うと、そこには本当にシルヴィアさんの電話番号が入っており、しかもお気に入りとして追加されていた。

 

「それじゃあ、また何処かで会いましょう」

 

「まったねー!シオン君!」

 

 二人はそう言って、僕に別れの言葉を残し、その場を後にした。

 

「……シオン」

 

 しばらくして、取り残された僕にカーリーさんが後ろから声をかけてくる。

 

 

 

「……お腹が減りました」

 

 うん、知ってた。この悲しそうなトーンで話す時のカーリーさんはお腹が減った時である。時計を見ると、レストランに行こうと話してから一時間以上経過していた。

 

「分かりました。行きますよ」

 

 こうして、僕は空腹でフラフラの状態のカーリーさんの手を取り、レストランへと向かった。

 

 

……………………

 

 

 

…………………………………

 

 

 

……………………………………………

 

 

 

「そう言えば、シオン。実は貴方に特待生の推薦状が届いているのですよ」

 

「特待生?何のですか?」

 

 思い当たるものが無いため、カーリーに問い返すと、カーリーさんは大盛の二倍の量がある特盛のパスタがあった空の大皿をどけて、懐にあったポケットから封筒を取り出し、机に置いた。

 

「これ、ガラードワースの校章ですよね。まさか、特待生の推薦って……」

 

「ええ、そのまさかです。シオンに届いたのはガラードワースの特待生入学の推薦です」

 

 僕はカーリーさんから封筒を受け取り、中身を確認すると、僕の名前が書かれた特待生入学の通知が記されていた一枚の手紙が入っていた。

 

「それにしても、どうして僕が?」

 

 ガラードワースに特待生に入るような理由に思い当たる節が無く、カーリーさんに訊ねた。

 

「実はこれを薦めたのはある貴族からなんです」

 

「ある貴族?」

 

「メスメル家。ガラードワースの運営母体であるEP(エリオット=パウンド)を支える大貴族で、シオンがいつか助けたノエル・メスメルの一族です」

 

「っ!!?」

 

 それを聞いて、僕は驚きを隠せなかった。まさか、先日助けた()()()がそんな大貴族の出身だったとは思いもしなかったからだ。

 

「………良いんですか?僕達の組織はどこの統合企業財体にも肩入れしない不干渉を掲げていた筈です。僕の為だけにそれを取り下げるのは……」

 

「別に構いませんよ。確かに私は組織の長として不干渉を掲げていましたが、それは私達の方針が他の統合企業財体と噛み合わなかっただけです。シオンには話していなかったのですが、最近クインヴェールの運営母体であるW&W(ウォーレン・アンド・ウォーレン)とEPが私達の組織の動きを支持して、つい先日この二つとは同盟を組むことになったのです」

 

 マジか、それは知らなかった。あ、だからペトラさんと見知った仲で話していたり、僕がシルヴィアさんを手助けする事に肯定的だったのか。

 

「それはつまり、僕がガラードワースとさらに密接な関係なるためのパイプになれと?」

 

 今までの話を理解した上で、カーリーさんにそう訊ねると、彼女は首を横に振った。

 

「いえ、これは命令ではありません。私はシオンに純粋にアスタリスクでの学園生活を楽しんで貰いたいだけです」

 

「アスタリスクでの、生活?」

 

「シオンは私に拾われて、育てられて、色々な知識と技術を学んできました。今のシオンの実力だと、アスタリスクでも上位の序列に楽々と上がれる筈です。けれど、その知識と技術を得る代わりにシオンには同世代の友達というものがほぼいません。それは当時、発展途上だった私の組織を支える為だったのは十分に理解しています」

 

 カーリーさんはそのまま真剣に話を続ける。

 

「だからこそ、今のシオンにはこの機会を使って打ち解けられる人達を作って欲しいのです。彼処では実力を互いに高め合える者、自分を支えてくれる者、色々な人達に会える筈です」

 

 カーリーさんのこんな真剣な表情は見たことがなかった。カーリーさんは本当に僕のことを考えた上で、この考えを伝えているのが僕の気持ちに響いてくる。だから、僕も答えは決めた。

 

 

 

「分かりました。僕はアスタリスクに行きます」

 

 

 

 




オリジナル登場人物

・本宮スバル

『二つ名』語り部の魔術師(メルヒェンテラー)

特待生入学によりガラードワース中等部3年に所属予定の黒髪の少年。特殊文化保護組織『ライブラリー』所属の魔術師で、その実力は他の統合企業財体が警戒する程。
童話にまつわる能力が使え、二つ名のように各地で物語を語る講演会を開いている。

・カーリー

年齢不詳、経歴不詳の白髪の不思議な少女?
本宮スバルの育ての親であり、特殊文化保護組織『ライブラリー』のトップ。
仕事をすると、お腹が減りやすくなる体質で度々息子であるシオンに手を焼かせている。


オリジナル用語

・特殊文化保護組織『ライブラリー』

カーリーをトップに、シオン等が属している組織。
都市化や最先端化を進める他の統合企業財体の方針に反するように、環境の保全、文化的遺産の保護、貧しい地域への支援等を主に活動している。
最初はシオン等数名しかいない組織だったが、統合企業財体から何らかの理由で迫害された人達を集めた所、数年で統合企業財体に引けを取らない規模にまで拡大。現在もその規模を拡大している。
最近、統合企業財体であるW&WとEPと方向性の一致で、同盟のようなものを組んでいる。
ちなみに本拠地はアスタリスクから飛行機で4時間離れた場所にある人工島である。

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