学戦都市アスタリスク~語り部の魔術師~   作:リコルト

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歌姫との再会

 

 

「ここが中央区か……」

 

 入学してから早々ガラードワースの序列上位入りを果たしてしまい、生徒会への入会や序列上位者に与えられるプライベートルームへの引っ越しなど濃密な数日を送っていた僕は昨日ついにそれらから解放され、アスタリスクに来て初めての休日と言って良い日を過ごそうと思っていた。

 

 ただ、初めての休日と言っても足りない生活必需品の買い物だけで終わってしまうだろう。だって、本当に忙しかったんだから。

 

 ちなみに、今日ノエルは同じ学年の子と用事があると言って連れてきてはいない。わざわざ僕だけの為に案内させるわけにも行かないし、同じ学年の友達がいるのは良いことだからそちらを尊重しよう。

 

「それにしても流石はアスタリスク。学園も大きかったが、中央区はその数倍はある大きさだな」

 

 見渡してみると、ファストフード店、喫茶店、レストラン、雑貨屋、ゲームセンター、さらには映画館やショッピングモールもある。学生の生活には決して困らない程充実している。

 

 自分が持っているデバイスで、電子案内図を見ても飲食店だけで100は軽く越えているし、雑貨屋はその2倍以上だ。さらには、路地裏や小道も多くあって、アスタリスク初めての人なら迷子は避けられないだろう。

 

 今更ノエルに案内をお願いするのも悪いし、他の生徒会の人達も入学式直前の打ち合わせで頼むのは迷惑だと思うからなぁ。やっぱりここは自分だけで散策して、目的の物を見つけたら、その店で買うことにしよう。

 

 

……………………

 

 

………………………………

 

 

……………………………………………

 

 

 

「………………………」

 

 

 どうしよう……誰かに尾けられている。

 

 確かに序列入りを果たしたから、知名度が上がって、話しかける人は何人か見かけたけど、今回は雰囲気がまるで違う。ただのファンだったら、こちらも声をかけやすいけど、気配の消し方が並の人じゃない。ライブラリーで消された気配に気付く訓練してきた僕じゃないと気付かないぐらいだ。

 

 レヴォルフとかの刺客だったら、不審な行動を見せ次第正当防衛をしかねないが、後ろを軽く見た限りただの帽子を被った女の子である。ここはもう少し接近させつつ、様子を見るべきかな。

 

 

 そう思いつつ、僕は歩幅を変えてゆっくり歩くように調節すると、後ろで尾行している女の子は徐々に距離を詰めてくる。

 

 

 

 そして……

 

 

 

(動いたっ!!)

 

 

 

 女の子は一気に距離を詰めて僕の背後間近に迫る。それと同時に僕は腰に携帯している煌式武装に手をかけて女の子に構えようとするが…………

 

 

「だーれだっ!!」

 

 

「ひゃいっ!?」

 

 

 えっ?なにが起こったの?

 

 

 急に接近した女の子によって目隠しをされ、同時に背中に当たる柔らかい感触で、思わず変な声が出てしまった。予想外過ぎて煌式武装を起動する気も出てこない。

 

 

 というより、僕の背中を襲う柔らかい感触ってまさか………結構大きいっすね、お嬢さん。

 

 

 いやいや、そうじゃない。何を確認しているんだ僕は。ひとまず、この状況を打開しないと。冷静になるんだ、本宮シオン。

 

 

……………

 

 

…………………………

 

 

 

 冷静になってみると、この人の声ってフランスで聞いたあの人の声に似ているんだよね。だとしたら、心の中で世界的アイドルにとんだセクハラ発言をしてしまったわけだけど。マジでごめんなさい。

 

 

「……もしかしてシルヴィアさん?」

 

 

「ピンポーン!!久しぶり、シオン君!」

 

 

 目隠しを外され、鮮明な景色と共に背後の女の子を初めてはっきりと直視すると、そこにはフランスで会った時とあまり変わらないような姿で変装しているシルヴィアさんの姿だった。

 

「驚かさないでくださいよ、シルヴィアさん」

 

「ごめんごめん。街を歩いていたら、偶然シオン君を見つけてね。ところで、シオン君は一人で何をしているの?」

 

「えっ……ああ、実は足りない生活必需品を買いに来たんです。それで、初めて中央区で買い物しに行こうと思ったら、なかなか広くて。散策でもしながら、手頃なものを買おうと思ってたんです」

 

「ふ~ん、なるほどね~」

 

(流石はペトラさん!先見の明が冴えてる!しかも、一人とか最高のタイミングじゃない!)

 

「ねぇ、シオン君。良かったら、私が一緒に案内してあげようか?」

 

「えっと……それは嬉しいんですけど、大丈夫なんですか?ほら、クインヴェールってアイドルが多いからスキャンダルとかって大変じゃないですか。僕と一緒だとシルヴィアさんやペトラさんに迷惑がかかると思うんですけど?」

 

「全然大丈夫!ペトラさんからも許可は貰っているし、シオン君はすでに序列上位者なんだから堂々としていれば良いんだから!」

 

(まさか、私の心配をしてくれるなんてね。ますます君の事が気に入っちゃったよ。いっそのこと変装を解いてシオン君と歩いている所をスキャンダルにして貰っても構わないんだけどな~)

 

「そうですか。なら、お言葉に甘えてシルヴィアさんにお願いしようかな」

 

「うん、よろしくねシオン君。あと、そのシルヴィアさんっていうのと敬語は今後は無し!年も同じなわけだし、気軽にシルヴィって呼んで欲しいな♪」

 

「えっ」

 

 えー、女性なら気軽に名前で呼べるけど、愛称ってかなりレベル高いなぁ。しかも、相手は世界的アイドル。学園の友達にもシルヴィアさんのファンがいるけど、この現状話したら一生恨まれかねん。

 

「いや、シルヴィアさ「シルヴィ」……シルヴィアさ「シ・ル・ヴィ!」………よろしく、シルヴィ」

 

「うんうん!よろしくシオン君!」

 

 

 二回チャレンジしたけど、駄目だったよ……

 

 

 

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