グリムノーツももう最終章……
出た頃からやってましたが、時間の流れってあっという間ですね……。
「なるほど、エリオット・フォースター君ね」
そう言って作った夕飯を自分の部屋でノエルと一緒に食べながら、彼女から今回の決闘の経緯を聞きつつ、対戦相手の彼のデータを眺めていた。
ちなみに、今夜の夕食は昨日食べたハンバーグの残りを使ったミートソースパスタである。ノエルから聞かなくてはいけない事もあったし、今日は仕込みが必要のないメニューにしてみた。
「序列は十二位、ノエルとは同じ学年か。……あー、噂のフォースター家の嫡男ね」
「はい……私とエリオットお兄ちゃんとは幼なじみだったんですけど、昔はあんな感じじゃなかったんです。でも、最近になってシオン兄さんの話をするとさっきみたいに機嫌が悪くなって、ああいった感じに……」
ノエルも彼について随分と心配している様子だった。まぁ、幼なじみという仲で彼を誰よりも知っているノエルからして見たら心配するのは当たり前だよね。
それにしてもなぜお兄ちゃん呼び?僕は年上だから分かるけど、彼はまだノエルと同い年だよね?まさか、言わせてるパターン?いや、それは無いか。というより無いと思いたい。フォースター家の嫡男にそんな性癖があったら、アウトだよ。
「でも……まさか決闘を申し込むとは。ガラードワースでは決闘は禁止なのに、よくアーネストさんも許したものだよね」
本来、ガラードワースでは原則的に決闘は禁止している。それはガラードワースの厳格な校風を守るためだが、EPを創設した一族の嫡男がそれを破るのは皮肉にしか見えない。
生徒会長で、決闘を許可する権限を有するアーネストさんにこの決闘について確認をしてみると、一応の形で容認したらしい。後から聞いてみると、最初はアーネストさんも決闘を反対していたが、エリオット君が決闘を申し込むことを諦めきれず、ここは僕の実力を実際に感じて落ち着いて貰った方が良いと思って容認したようだ。
一応、僕にも断る権利があり、別に断っても良かったかもしれないが、後からネチネチと言われるのは非常に面倒臭い。アーネストさんが言うように実力を示すのが一番良い解決策だろう。
「…元々エリオットお兄ちゃんは悩んでいたんです。ガラードワースに来る前から」
「悩んでいた?」
そのまま訊ね返すと、ノエルは話を続ける。
「エリオットお兄ちゃんの家系はEPの創設者の一族の家系なのはシオン兄さんも知っていますよね?」
「ああ、もちろん。彼がノエルと同じように入学した時は噂にもなっていたよね。『フォースター家の期待の新入生』と。まさか、そのプレッシャーが彼を精神的に追い詰めてしまったと?」
「はい……昔からそういう危なっかしい面が前からありました。みんなの期待に応えなきゃという思いが人一倍強かったんだと思います。でも、今回私達と同じ代に入ってきたある生徒によってその実力を悪いように比較されてしまった」
「それが僕で、彼より序列が高い僕は人知れず精神的に追い詰めてしまい、ついに彼は堪えられなくなって、僕に決闘を申し込んだわけか」
エリオット君が僕に決闘を挑んだ理由はこれで分かった。一言でまとめる事が出来るならば、僕への私怨と片付けられるが、彼の心情を察するとそう簡単な話ではないだろう。
「あ、あの別にシオン兄さんが悪いとか思ってませんよ。もしこれで転校したら……泣きます……」
「いや、泣かないで。転校する気もないから」
そんな泣きそうな顔をこちらに向けないでくれ。話の流れからノエルが僕を悪人扱いしてないのは十分に理解しているから。
一番危ないのはこんな夜遅くに僕の部屋でノエルが泣いているという状況だから。レティシアさんやアーネストさんに説教されるのは勘弁だし、学校でノエルを泣かしたと誤解された噂を流されたら、社会的に詰みだから。
ひとまず、エリオット君の事は戦ってから考えることにしよう。決闘前に彼のストレスの原因である僕が彼の悩みを解決しようと行くだけで、彼との溝は深く大きくなってしまうだろうし。
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ー決闘日当日ー
「
決闘日当日、エリオット君の申し込みに応じるべく指定された練習場へと足を運んでいた。
公式序列戦とは違い、特例で認められた決闘であるため、ギャラリーは一切おらず、いるのは見届け人として来ているノエルとアーネストさんだけである。フォースター家の息子が禁じられている決闘を申し込んだ事を他の生徒に見せないように配慮したのだろう。
「エリオット君。君も確か一人の剣士だよね。ここは公平に僕も剣一本で勝負するかい?」
「いえ、結構です。そんな言い方をするとまるで貴方が手を抜いていると感じてしまうので。僕は貴方の本気の実力が見たいんです。会長と引き分け、ノエルが慕うほど認めたその実力を」
その言葉と共にエリオット君は鞘からクレイモア型の剣型煌式武装を引き抜く。彼は僕の実力の全てを知ろうとしている。剣士同士の正々堂々とした戦いを捨てる程、彼の決心は非常に固いようだ。
「分かった……怪我しても知らないからね」
エリオット君の決意を確認して、僕は多様式型煌式武装『メルヒェン・イマジンズ』を剣型から片手剣型と片手銃型の二つの煌式武装へと分解し、形を変える。
これが僕が最も得意とする戦闘スタイルだ。
近距離から中距離までに対応したバランス特化のスタイル。自分の戦い方は相手の出方を分析して戦う戦い方だから、このスタイルが一番落ち着くし、最も得意とするものなのだ。
『二人とも準備は良いね?』
ギャラリー席からのアーネストさんの言葉に僕とエリオット君はコクリと静かに頷く。
さてと、本気を出して欲しいと言った彼に応えて、能力も出し惜しみは無しで行こうか。
『Start Of The Duel!!』