学戦都市アスタリスク~語り部の魔術師~   作:リコルト

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オンライン授業の準備で忙しいよ~!!


高等部1年編
客人は兄妹


 

 入学式が終わり、各学園には新たな新入生が加わった事で、どの学園もこの時期は活気に溢れていた。僕とノエルに序列を譲ってくれた大学部の先輩を含めた方達は入学式前の卒業式にガラードワースを去ってしまったものの、新入生の歓迎はそれを埋める以上の活気だった。

 

 

 新入生が入りたてのシーズンということもあり、ガラードワースが所有する建物の各地では部活やサークルの勧誘が日常茶飯事。僕を含めた生徒会の面子は部活やサークルから回ってくる確認書類に忙殺され、しかも一日一日書類が増えていくので、困ったものである。

 

 

 ただそんな多忙な日が続く中、先の事を見据えた数名の剣士達が黙々と練習場で鍛練する様子もガラードワースの一つの風物詩でもあった。

 

 

…………………………

 

 

…………………………………………

 

 

………………………………………………………

 

 

「はっ!せやっ!」

 

 

「ふっ!そこっ!!」

 

 

「くっ!?」

 

 

 練習場に響き渡る剣同士が何度もぶつかり合う金属音。素早い剣撃を制し、エリオット・フォースターの顔に煌式武装を突きつけるのは晴れて高等部1年へと進級した本宮シオンである。

 

 

「……僕の負けですね」

 

 

「いや、前回よりは剣の筋も良くなってるよ。それに僕の攻撃に追い付いてこれている。練習を始めた頃より大分強くなってきてるんじゃないかな」

 

 エリオット君の顔に突きつけた煌式武装を腰へとしまい、反省会を練習場の真ん中で行う。先程の剣気と剣気の凄まじいぶつかり合いが嘘みたいなおしゃべり感覚の反省会だ。

 

 

 

 中等部から高等部へと無事進学し、高校生になった僕は新たに高等部になった生徒として恥じないような学園生活を継続している。

 

 入学してきた頃は貴族生まれの一部の生徒達に嫌がらせをされるような出来事が多少あったが、今はそんなことない。むしろ、上級生や同級生からは積極的に話しかけられるし、新たに入ってきた新入生を含めた下級生からは尊敬や憧れに近い気持ちで慕われている。現に今戦ってたエリオット君も最初は色々あったけど、今では何かと慕ってくれている。改めてこの学園に来て良かったなと思う。

 

 

 えっ?今、生徒会は忙しくないのかって?

 

 

 そりゃ、もちろん忙しい。僕とエリオット君は生徒会のメンバーだからこうして日課だった練習時間も削られてるし、エリオット君と実力の確認の意味を込めてやった今の試合も一週間ぶり近くだからね?それに僕の場合は自分のを含めて他の生徒会の分の仕事も請け負っている。

 

 理由は実にシンプル。今年の星武祭ー鳳凰星武祭に生徒会のメンバーが参加するからだ。

 

 二人チームによる参加が要求される鳳凰星武祭に誰と誰が参加するのかというと、序列11位のドロテオさん、そして今さっき試合をして目の前にいる序列12位のエリオット君だ。

 

 ガラードワースの生徒には鳳凰星武祭や王竜星武祭を狙うような生徒はあまりいない。それは獅鷲星武祭で優勝するチーム・ランスロットが物語っている。ガラードワースの大抵の生徒は獅鷲星武祭を狙っているのだ。

 

 ガラードワースの中で鳳凰星武祭と王竜星武祭を狙う生徒の傾向として、チームではなく個人戦が向いている生徒、夢の肩書きであるグランドスラムを本気で目指している生徒、そして卒業前最後の星武祭に参加したい生徒が主である。

 

 実はドロテオさんは今年でガラードワースを卒業してしまう生徒会のメンバーなのだ。今までに獅鷲星武祭に2回出場し、卒業前最後の星武祭である鳳凰星武祭が彼にとって最後の出場である。

 

 なかなか鳳凰星武祭に参加したがらないガラードワースでペアを探すのは非常に困難なのだが、そこでペアになろうと手を挙げたのがエリオット君だ。

 

 何でも他学園の生徒と公式で戦える場で自分の実力を試してみたいとか。それに彼の親からもフォースター家の嫡男の優れた実力を世間に見せたいという星武祭への参加要請があったらしい。確かに中学1年で冒頭の十二人入りは異例の実力だからね。

 

 こうして無事にペアが決まったのだが、鳳凰星武祭は星武祭の中でも開催時期が最も早く夏に始まってしまうのだ。そのため、星武祭が始まるまですでに半年を切っている状況である。なので、二人には少しでも星武祭に集中して貰おうと残りの生徒会の面子で二人分の仕事も分担しているのだ。

 

 

「ふ、二人共、お疲れ様です!」

 

 

「うん、ありがとう。ノエル」

 

 

「い、いえ、ど、どういたしまして……」

 

 

 反省会が良い具合に区切りがついた所で、ノエルが練習場に僕とエリオット君の分の飲料水とタオルを持ってきてくれた。

 

 ノエルからタオルと飲料水を受け取り、お礼を言うとノエルは素顔を前髪で隠しながら恥ずかしいそうにする。だが、ノエルが恥ずかしいそうにするのは何故だろうか?

 

 一緒に生活していて数ヶ月が経過するんだが、未だにこんな感じだ。元から気が弱いような女の子らしい性格ではあったが、僕の場合だとそれがとにかく目立つ。特に二人きりの時とか。

 

 

(………いい加減気付いてあげなよ、シオンさん。ノエルの気持ちなんて幼なじみの僕じゃなくても分かるよ。というか、生徒会の皆はシオンさん以外全員知ってるんだけど)

 

 

 ノエルの好意に未だに気付かない朴念仁をエリオットはドリンクを飲みながらジト目で静かに睨んでいたが、この視線と気持ちは今のシオンに決して届く事はなかった。

 

 

「そ、そうだ!シオン兄さん!実は生徒会長からの伝言で、今すぐに第一応接室に来て欲しいそうです!何でもシオンさんに会いたい人がいるとか……」

 

 

「会いたい人?」

 

 

 一体誰の事だろうか?学園紹介のための取材陣や僕の特集を組みたいという記者の対応はすでに終わって、ここ数日の訪問は無い筈だ。スケジュール管理に厳しい生徒会が漏らすはずも無いしね。

 

 

「分かった。すぐに行くよ」

 

 

「じゃあ、シオンさん。また後で会いましょう。僕はここでもう少し練習をしますので」

 

 

 僕はここで練習を続けるエリオット君を残して、ノエルと共に練習場を後にした。

 

 

ーー客人か。本当に誰なんだろう? 

 

 

……………………

 

 

………………………………

 

 

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 素性が不明な突然の訪問者の事を考えながら僕は第一応接室へと辿り着いた。辿り着いた僕は客人を待たせないようにと、そのままドアノブに手をかけて中に入ろうとする。

 

 

「失礼しま「わー!シオン君だー!」のぁっ!?」

 

 

 ドアを開けて中に入ると、カーキ色の髪色をした女性が僕に抱きつくように飛び出してきた。

 

「本物のシオン君だー!久しぶりー!!前より大きくなっちゃってー!元気にしてたー?」

 

「シ、シエラさん!?い、一応、元気にしてましたけど……少し離れてくれませんっ!」

 

「い・や・だー!!!」

 

 そう言って駄々をこねるように、シエラと呼ばれた彼女はさらに力強くシオンに抱きつく。彼女の主張力が激しい胸まわりがシオンの身体に密着している状態だった。

 

「は、はわわわわ…シオン兄さんが知らない女性と抱きついてる//////」

 

 シオンの後に続いて中に入ろうとしたノエルは最も近い場所でこの現状を見せられ、顔を赤くしながら誰よりも動揺している。応接室の入り口付近はすでにカオスと化していた。

 

 

「シエラ。気持ちは分かるけど、一旦落ち着いてシオンを離してくれるかな?」

 

 

 応接室の奥のソファーからシエラと呼ばれた彼女を止める声が応接室に響き渡る。まるで優しい男性の先生みたいな声がした方へ応接室入り口で戯れていた3人が振り向くと、そこには声の主である黒髪の眼鏡をした男性とヤレヤレといった様子で戯れている様子を傍観していたアーネストとレティシアが机を挟んで座っていた。

 

「フ、フラーレル先輩!」

 

「え~、フラーレル兄様が言うなら仕方ないな~」

 

 玩具を買ってくれなかった子供のように残念がる彼女はシオンを解放する。

 

 

 

「やぁ、久しぶりだね。シオン」

 

 

 

………………………………

 

 

……………………………………………

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

「改めて自己紹介をしようか。私の名前はフラーレル・マクラレン。そして、そこにいる彼女が私の妹であるシエラ・マクラレンです。兄妹共々以後お見知りおきを」

 

 

 ガラードワースに自然に溶け込むような上品な姿勢で黒髪の青年、フラーレル・マクラレンが優雅に自己紹介をする。その姿勢は彼と初対面であるアーネストやレティシアやノエルも好印象だった。

 

 

「まさか、ノエルが言っていた客人がフラーレルさん達だったなんて。ガラードワースに来るなら連絡でもしてくれれば良かったのに」

 

「悪いね。シエラがシオンを驚かせたいと言うことを聞かなくて……」

 

「えっへん!!」

 

「「いや、褒めてない(ません)から」」

 

 ライブラリー所属の先輩後輩同士の久しぶりの再会ということで、フラーレルさん達と長々と話しているとノエルが僕に訊ねる。

 

「あ、あの、シオン兄さん。シオン兄さんとフラーレルさん達とはライブラリーではどういったご関係なんですか?」

 

「ああ、ノエルは知らないんだっけ。二人は僕の先輩であり、先生なんだよ」

 

「先生、ですか?」

 

「うん、僕に星脈世代としての戦い方や幼い頃から勉強を教えてくれてね。今でも本拠地にあるライブラリーの教育機関で先生をやってるんだ」

 

「へぇー、そうだったんですか」

 

 確か僕がガラードワースに行く少し前に長期任務でライブラリーの本拠地を離れてしまったけど、それまではライブラリーの本拠地でひたすら保護した子供達に勉強を教えていた筈だ。比較的温厚な性格で孤児からの人気も高く、カーリーさんもすごく信頼している。

 

「そうだ、ウラヌスさんも帰ってるんですか?」

 

 思い出したように僕はこの場には出席していない彼ら兄妹の()()()について訊ねる。

 

「ああ、ウラヌスも一度ライブラリーに帰って来てるよ。ただ、カーリー様の命令で今はライブラリーで待機している。実際、この場もカーリー様が来る筈だったのだが、急用が出来たようでね。その代理としてアスタリスクに用がある私とシエラがシオンの元に赴いたわけだ」

 

 成る程、そういうことだったのか。普段ならカーリーさんが親の参観日みたいに来ると思っていたが、カーリーさんもカーリーさんで忙しいらしい。今度、時間が空いたら本拠地に帰省するのもありかもしれない。

 

「あっ、そう言えば二人は僕に用があって来たんですよね?用っていうのは?」

 

「実はカーリー様がシオンに遅めの入学祝いだと渡してきてね。これだよ」

 

 フラーレル先輩はポケットから小さめの鉄製の箱を取り出し、箱を見せるように開いた。

 

 箱を開けると、中から姿を見せたのは二束に別れた栞の束。その栞は僕が能力を使うために使用しているものと同じであった。

 

「これって…………」

 

 

「ああ、シオンの新しい栞さ」

 

 

 

 

 

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