学戦都市アスタリスク~語り部の魔術師~   作:リコルト

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語り部の魔術師の実力

 

「くっ!!」

 

 剣同士の接触し、金属音と共に弾けあう。それと同時にシオンはアーネストから距離を取るために後退をし続けていた。

 

 本来のシオンなら、つばぜり合いを制して、懐に入り、その間合いで速攻を決める戦法も取り入れただろう。

 

 だが、今回の相手はトップクラスの剣の使い手。それも危惧すべき点ではあるが、シオンにとって最も危惧すべきなのはアーネストが持つ白濾の魔剣であった。

 

(白濾の魔剣の恐るべき効果は物体をすり抜け、任意の対象のみを切ることが可能な点。彼の攻撃を数秒でもガードなんかしたら、すり抜けられておしまいだ。回避しか出来ないってかなり辛いな)

 

 そう思いつつ、アーネストの剣撃を回避したり、剣で流したりとひたすら彼の攻撃に受け身になっているシオンにアーネストは話しかける。

 

「良い分析力だね。僕と白濾の魔剣(この子)との戦いとして最も模範的な戦いだ。でも、受け身になっているだけじゃ勝利は掴めないよ」

 

「それは自分がよく分かっていますよ。だから、僕も出し惜しみはしません!」

 

 そう言って、シオンはアーネストから一気に距離を取り、魔術師の能力を発動する。

 

灰かぶり姫の硝子槍(サンドリヨン・プリズランス)!」

 

 シオンが持つ水色の栞が輝きを見せると、シオンの背後に氷のように透き通り、鋭く尖った無数のガラスの槍が現れる。

 

「貫けぇ!!」

 

 そして、シオンの言葉によりガラスの槍が雨のようにアーネストに降り注いだ。

 

「サンドリヨン……なるほど、シンデレラの力というわけか。だけど、これぐらいでやられる程、序列一位は甘くはないよ!!」

 

 シオンの能力を確認する練習試合とはいえ、アーネストも一人の戦いを好む人としてわざと負けるわけにはいかないと決めていた。アーネストはガラスの槍により衣服を傷つけられたりはしたが、白濾の魔剣で殆ど振り払い、素早い動きでシオンの元へと剣を突き向ける。

 

髪長姫の巨塔(ラプンツェル・フルビルディング)!!」

 

 アーネストがシオンの元に迫る間際、シオンの手にある黄色の栞により、アーネストとシオンの間に10m近い巨大なレンガ造りの塔が現れる。

 魔術師の能力で作り上げた物だとはいえ、これほど大きな物を顕現させたシオンにギャラリーの人達は驚き、アーネストはすごく興奮していた。

 

「驚いた!!こんな物も作り出せるとは!!けれど、盾の代わりに作ったと言うなら、僕達には効果が無いっていうことを忘れてないかな!」

 

「いえ、忘れてませんよ。僕もこの塔は防御の為に使っていますが、アーネストさんにはこうやって使うんです!」

 

 そう言って、シオンは栞に星辰力を込め、さらに黄色に輝かせる。

 

 すると、10mもある大きな塔が鈍い音と共に少しずつ崩落し、上から無数の大小の瓦礫としてアーネストに降り注いだ。

 

「これはっ!くっ!?」

 

 塔の近くにいたアーネストさんは回避する余裕もなく、巨大な塔の崩落に巻き込まれてしまう。

 巨大な塔の崩落により、スタジアムに砂塵が巻き起こり、詳しい状況も分からない中、シオンは煙の中から最後の一手に決めかかった。

 

紅き子を襲う狼の一撃(レッドウルフ・ストライク)!」

 

 剣型煌式武装の刃が紅色に染まり、業火を纏った一撃がアーネストの胸元にある校章を捉える。

 

 

 

 

『チャリンッ!!』

 

 

 

 

 その瞬間、金属音にも近い金属音と何かがカランと地面に落ちる音がスタジアムに響き渡る。

 事の結末を見るために、ギャラリーで見ていたレティシア達はスタジアムに降りてくる。

 

 そこで彼女達が見たものは…………

 

 

「残念、引き分けのようだね」

 

 

「ええ、そうですね」

 

 

 砂塵と土砂によって白い制服が汚れているものの、シオンの胸に白濾の魔剣を突き付けているアーネストと紅色にも染まった剣型煌式武装をアーネストの胸に突き付けるシオンの姿だった。

 二人の校章はお互いの胸には無く、二人の近くに割れた状態で落ちていて、その状況が先程の試合が引き分けであったことを裏付けていた。

 

「ふぅ、勝ったと思ったんですけどね」

 

「いやいや、序列一位に引き分けるだけでも十分すごいからね。また君とは戦いたいものだよ。今度は()()の君とね」

 

「ふふっ、そういうアーネストさんだって。白濾の魔剣の代償で思うように剣士としての()()を出せていなかったじゃないですか」

 

 そう言って笑いながら、二人はその場で疲れたように座り込む。その様子を見てレティシア達は彼ら二人に飲み物やタオルを持ってこようと控え室に駆け出し始める。

 再び二人きりになったスタジアムで、アーネストはシオンに話しかける。

 

「これで生徒会とガラードワースの生徒達は君の実力を認めただろう。改めて歓迎するよ。語り部の魔術師、いや本宮シオン君。君のこれからの為にこの学園を存分に利用すると良い」

 

「はい、よろしくお願いします。アーネストさん」

 

 そう言って、二人は握手を交わしたのだった。

 

 

 





ライブラリー報告書

・語り部の魔術師の能力
 
 語り部の魔術師の能力は物語に関わる物であれば、具現化し、その特殊な能力を自身や武器に付与できる子供の夢のような能力である。
 しかし、能力を使うにはその物語への詳しい意欲的な知識と媒介となる物が必要である。
 現在シオンが使える物語はグリム童話のみで、彼が持つ栞はカーリーが西洋で見つけた「グリム童話の原典」というグリム兄弟の遺物を基に製作された物である。
 今、ライブラリーの数名の精鋭達が極秘任務で他の物語に関係する遺物を世界各地で捜索中である。

               
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