バカボン王子   作:r28

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出発なのだ

「おでかけれすか、レレレのレー」

 

家のすぐ隣で掃除しているのはレレレのおじさんである。

この人は常に掃除をしている。

 

「今からバカボンがローレシアの王子と冒険をするのだ」

 

「ハーゴン征伐の旅れすね。ではこれから勇者の泉に立ち寄られるので?」

 

「勇者の泉?」

 

「はい。戦いに旅立つ前に泉で身体を清めるのがローレシアの習わしとかで……」

 

妙に詳しいおじさんだった。

 

「バカボンはサマルトリアの王子だから行かなくてもいいのだ」

 

「そうだね。あれっ、でもぼくが行かないとローレシアの王子はどうなるんだろう」

 

いつまでもイベント進行できないのではないかと心配するバカボン。

ただ行かずにすむならそのほうがいいと思わないでもなかった。

まず遠回りになって面倒だし、ハジメに寄り道していると思われそうな気がしてならない。

 

「まっすぐローレシア城に行き待ち構えていれば、そのうち帰ってくるかもしれませんね」

 

おじさんの進言にバカボンはますます迷ってしまう。

 

「うーん、どうしよう。パパ、どうしたらいいと思う?」

 

「これはバカボンの旅なのだ。行先はバカボンが自分の責任において決断するのだ」

 

「それじゃローレシア城で待つことにするよ」

 

だが、ここでおじさんの余計な横やりが入る。

 

「そういえば勇者の泉は混浴で美容効果もあってピチピチギャルがよく通っているらしいですよ」

 

「なんだとー!」

 

この話をどこから聞きつけたのか、駆け込んできたのは目玉つながりの警官、通称本官さん。

 

「恐れながら、この本官めに勇者の泉までの護衛任務をお任せいただけませんでしょうか」

 

露骨過ぎる役得狙いの申し出を断固として断るパパ。

 

「バカボンは勇者の泉には行かないのだ。わしもタバコを買ったらすぐに帰るのだ」

 

「王様、そこをなんとか」

 

本官さんは王様にタバコを手渡した!

 

「バカボン、本官さんと共に勇者の泉に向かい、ローレシアの王子を待つのだ」

 

寸暇なく前言を反すのはもちろんパパである。

 

「えー……せっかく行かずにすむと思ったのに。というか王様がタバコで買収されないでよ」

 

「つべこべ言わずに行くのだ。王様命令なのだ」

 

「ぼくの旅なのに……」

 

「それではパパは帰るのだ」

 

(本当に見送りはついでだったんだ……)

 

「おっと、バカボンにお小遣いを渡しておくのだ」

 

「えっ、ぼくに?」

 

「旅は物入りなのだ。遠慮せず大事に使うといいのだ」

 

パパから渡された封筒には5000円が入っていた。

おそらくこれが50ゴールド相当ということだろう。

 

「棍棒も渡しておくのだ」

 

棍棒を受け取ったバカボンはさっそく装備する。

 

「これはおもちゃだよね」

 

「当たり前なのだ。本物の武器を持ち歩いていたらそこの本官さんに逮捕されるのだ!」

 

たとえ王様であっても法律は絶対なのだ!

 

パパと別れ本官さんをパーティーに加えたバカボンは、ひとまず町内を巡ることにした。

一見、普段通りの街並みのようだが、よく見ると電線や電信柱が巧妙に隠され、鉄道線路は道路に置き換わっていた。

他にもおもちゃ屋では武器と防具のおもちゃがずらりと並んでいた。ただしゲーム同様に今の所持金では有用な装備は買えないが……

 

(何もここまでしなくたって……)

 

困惑するバカボンだが、ともかく先に進むしかない、と心機一転した。

 

「ゲームなら薬草を買うところだね」

 

「それなら道具屋ですな」

 

本官さんに連れられディスカウントショップだったはずの道具屋に入るバカボン、さっそく品出しをしているおばさんに声をかける。

 

「ごめんくださーい、薬草はありますか?」

 

「ああ、レバニラ炒めだね」

 

「いや、薬草」

 

「だからレバニラ炒めだろ。はい、1000円ね」

 

どうやらドラクエ世界の薬草はここではレバニラ炒めに相当するらしい。

HP回復するのかなあ、と不安になるバカボンだが、レバニラ炒めは食べなれた料理なのであまり気にしないことにした。

 

「ひととおり、用事はすんだから勇者の泉に向かおう!」

 

 

 

サマルトリアを出て平原を歩き続けるバカボンと本官さん。

 

「王子、まっすぐ泉に向かわれるので?」

 

「そうだね、東に進めばたどり着くはず……わっ」

 

突然突き飛ばされたバカボン。うまく身体を反転させてケガには至らなかったが、危ないところである。

 

「お怪我はございませんか王子!やい、何者だ」

 

バカボンの前に立ちふさがる本官がその不届きものと対峙する。

いざとなれば、さすがに警官なのである。

 

「あれはスライムか。まだレベル1のぼくにはちょうどいい相手だね」

 

剣を取り直してスクッと立ち上がるバカボンだが、ほぼ同時に本官さんが一発でスライムを仕留めてしまった。

 

「わあっ、撃っちゃだめだよ!」

 

「王子、モンスターに情けは無用ですぞ」

 

「でも中の人が……あれ?」

 

撃たれたスライムは溶けて地面を湿らせていた。

 

「中に誰もいませんよ」

 

「本物の……スライム?」

 

なんとなく勝手にモンスターは着ぐるみだろうと思っていたバカボンだが、どうやらこれは本物を使っているようだ。

 

「もちろん、ファンタジー世界では街を出ればモンスターに遭遇するのは当然でございます」

 

(ファンタジー世界って言っちゃってるよ。というか、それならピストルで始末するのはどうかと思うけど)

 

と思ったバカボンだが、助けられた手前何も言えず、本官さんはその後もスライムやドラキー達を相手に元気に発砲を続けていた。

 

 

 

モンスター退治に励みながら歩き続けると、バカボン達は泉にたどり着いた。

 

「おお、ここが勇者の泉」

 

「違うと思うけどなあ」

 

バカボンのつぶやきは本官さんには届かない。

すっかりピンク色の妄想に憑りつかれた本官さんはノータイムで服を脱ぎ捨て泉に飛び込んだ。

 

「さあピチピチギャルはどこだ。出てこないとタイホするぞ!……ん?いてっ、イデデデギャピー!」

 

謎の激痛を感じ、悲鳴を上げて脱出する本官さん。

 

「本官さん!」

 

「勇者の泉は手強いですぞ……ガクッ」

 

「やっぱり、ここはただの毒の沼地だよ」

 

 

 

[本官さん] 警察官 Lv19

武器:ピストル

鎧:活動服

盾:なし

兜:制帽

アイテム:手錠

 

[バカボン] サマルトリア王子 Lv1

武器:棍棒

鎧:布の服(バカボンの普段着)

盾:なし

兜:なし

アイテム:レバニラ炒め

 

 

所持金 12800円

 

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