バカボン王子   作:r28

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ローレシア城

ローレシアでバカボンを出迎えたのは一人の少年だった。

 

「ローレシア城へようこそ」

 

城とはいうものの、ただの八百屋にしか見えない。

余談だが、サマルトリア城もバカボンの家である。

 

「子分の……じゃなかった、ローレシア第一王子ア太郎が一の家来、デコッ八と申しやす」

 

王子の家来役がいまいちはまらない子分である。

 

「ア太郎王子はここに戻ってきてないの?」

 

「へい、それがつい先ほど帰っては来たんですがね、旦那はまだ来られてないと言うやいなやすぐに出かけちまって」

 

「ありがとう、それじゃぼくもリリザに向かおう」

 

順序は変わったが、大筋でゲームと同じ展開になっていることにバカボンは安心した。

順調にいけばリリザの宿屋でローレシア王子と合流できるだろう。

 

それからRPGのお約束として、ここでも本官さんと共にローレシアで情報収集を行い、その際にたまたま皮の盾を見つけたので購入した。

 

 

 

[本官さん] 警察官 Lv19

武器:ピストル

鎧:活動服

盾:なし

兜:制帽

アイテム:手錠

 

所持金 7200円

 

[バカボン] サマルトリア王子 Lv4

武器:棍棒

鎧:布の服(バカボンの普段着)

盾:皮の盾

兜:なし

アイテム:レバニラ炒め

 

本官さんにはローレシアまでの警護を依頼したバカボンだったが、リリザに行くならサマルトリアへの帰りついでということで引き続き行動を共にすることになった。

 

町にはいったことで魔王軍の追撃が切れたのか、ほとんどエンカウントが起きなくなっていた。

しかもローレシア周辺なので出現するのはスライムなどしかいない。

もはや本官さんはただの話し相手となっていた。

 

 

「ここがリリザか」

 

「本官は職務のためサマルトリアに戻らねばなりません」

 

「そうだった、さびしくなるな」

 

「王子、ここからは厳しい戦いになります。どうかくれぐれもお気をつけて」

 

「うん。本当にありがとう。パパにもたくましくなったぼくの姿を伝えておいてよ」

 

冗談交じりに自信をのぞかせるバカボンだが、本官さんと別れて一人になると急に不安を覚えはじめた。

 

(世界がすっかりドラクエっぽくなっちゃって、しかも知らない街でただ一人。なんだか急に心細くなったなあ。本官さんは警官だけあって聞き込みは得意だし、せめてア太郎王子と合流してから別れたほうがよかったかも)

 

なんだかんだ言いながらもバカボンは一人こまめに情報収集を行い、ア太郎が宿泊しているという宿屋にたどり着いたのである。

 

「……ホテル前ホテル……?」

 

本来は「駅前ホテル」という名のホテルなのだが、本来駅があったはずの場所がホテルに書き換えられたため「ホテル前ホテル」という奇妙な名の建物になったのである。

 

(あっ自動ドア!冒険をはじめてからこんな立派な建物に入るのははじめてだなあ)

 

ローレシアやサマルトリアは昔ながらの住宅地で自動ドアなんてしゃれたものはないのだ。

 

「いてっ!」

 

何気なくホテルに入ろうとすると、玄関のドアに頭をぶつけた。

 

「ああそうか、電気が使えないから自動ドアじゃないんだね」

 

見た目こそ自動ドアだが、実は開き戸になっており、よく見れば「自動ドア」と書かれている部分が取っ手になっていた。

 

「やれやれ、ひどい目にあった」

 

ロビーに商人がいたので話しかける。

 

「やや、その大きなコブは!あなたはうっかりものですね」

 

そう話す商人も頭に巨大なコブを作っていた。

 

「よけいなおせわ!って君もぶつけてるじゃないか」

 

「えっ、本当かい?」

 

なんで自分のコブは気付かないのだろうか、とバカボンは二重の頭痛に悩まされる。

 

「ああっ、頭痛に悩んでる場合じゃなかった。早く用事をすまさないと」

 

「これも何かの縁、良かったらおれにも手伝わせてくれないか」

 

「そうかい、助かるよ。今ア太郎って人を探してるんだ」

 

「ア太郎ねえ、ア太郎……はて、どこかで聞いたことがあるぞ」

 

「本当かい。多分このホテルにいると思うんだけど」

 

「ああ、まかせておくれよバカボン王子」

 

「えっ、なんでぼくの名前を?」

 

商人はニヤッっと笑うとフードをとった。

なんと、商人の正体はローレシアの王子だった。

 

「あっ、ア太郎!なんだ、いるなら早く言ってよ」

 

「あはは、悪い悪い」

 

バカボンはこれまでの経緯を適当に話した。

 

「それじゃおれといっしょに旅をしてくれるのかい」

 

「もちろんさ。これからよろしくね」

 

サマルトリアの王子バカボンとローレシアの王子ア太郎はこうして打倒ハーゴンを目指し共に戦う仲間となったのである。

 

「まずア太郎に皮の盾を買っておこう」

 

「あれっ、いいのかい。きみの装備を整えなくて」

 

皮の盾は9000円。パーティーの所持金は9600円なのでほぼ全財産を放出することになる。

意外と思い切りのいいバカボンである。

 

「ぼくは一通り装備がそろっているし。本来武器で戦うタイプじゃないからね。遠慮しないで使ってよ」

 

「そうか、それならありがたく使わせてもらうよ」

 

 

 

[ア太郎] ローレシア王子 Lv4

武器:銅の剣

鎧:布の服

盾:皮の盾

兜:なし

アイテム:大根 人参

 

[バカボン] サマルトリア王子 Lv5

武器:棍棒

鎧:布の服(バカボンの普段着)

盾:皮の盾

兜:なし

アイテム:レバニラ炒め

 

所持金 600円

 

 

 

バカボン達はリリザを出てローラの門に向かった。

 

「さっそく来やがったな!」

 

ア太郎が突然現れたやまねずみとドラキーに突っ込んで行った。

1歩遅れてバカボンが戦闘態勢に入るが、すでにア太郎は劣勢に立たされていた。

ドラキー

 

戦いが済んだ頃には、両者ともHPが半分に削られていた。

 

「あいたた……」

 

「バカボン早く来てくれ!」

 

なんと、バカボンが考えている間にバブルスライムの群れがア太郎を包み込んでいた。

 

「わあごめん今いくよう!」

 

どうにか

 

「わあっ、ホイミホイミ!」

 

窮地を脱するが、本官さんのサポートに慣れ切ったバカボンはレベルの割にまだ上手な戦い方ができていない。

 

ア太郎の提言によりホテル前ホテルに戻って反省会を開いた。

 

「いろいろあるけどとりあえず……おまえホイミの無駄遣い多くない?MP持たないよ」

 

忌憚なく苦言を述べるア太郎。

 

「だって怖いんだもん。ゲームなら死んでも平気だけど、実際に死んだら……あれ、どうなるんだろう?」

 

「……」

 

現実とゲームは違う。ゲームなら死んだら教会で生き返らせてもらえるし全滅したら所持金を減らされるけど帰還できる。

だけど現実は……果たして復活できるのだろうか?

 

「それじゃどうでもいい奴をパーティに入れてためしてみよう」

 

「そんなのだめだよ!」

 

だいたいパパのせいで人権感覚に乏しいバカボンも、あえて死者を出すのは気が進まない様子だ。

 

「そうしたら正解がわかるのはおれたちのどっちかが死んだときか」

 

「それは嫌だなあ。とにかく死んでも死なないことがわかるまで絶対死なないようにしよう!」

 

「死んでも死なないって……まあ仮に生き返れるとしても死ぬような目にはあいたくないし、まずはいのちをだいじにしないとな」

 

「そうだね」

 

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