行き先?ウクライナに決まってるじゃないですか、やだー。
鉄騎の進軍
ウクライナ キエフ市
車を進めるたびに人間の狂気がまざまざと眼に映った。あちこちで武装蜂起した市民とは言い難い獣のような生物が吠え声をあげて大通りを跋扈している。その獣をハンティングする狙撃兵がビルの屋上でSV-96スナイパーライフルを構えていた。またひとつ、マズルフラッシュが屋上から迸る。その刹那、地面を擦れる様な兆弾音と共に奇声をあげてAKを乱射していた男の頭が弾け飛ぶ。その屍を乗り越えてまた一人が前へと躍り出る。それも狙撃兵は何の感情も無く頭部に致命傷を与えて仕留めていった。
「ウクライナは見ての通り最悪の状況だ。一般車が通れるだけでも、ある意味奇跡的かもな」
運転を担当しているロシア人、セルゲイは鼻歌を歌いながら焦土と化した道のりを軽やかなドライビングテクニックで進んでいく。今はこのロシア人たちの協力の下内戦状態のウクライナへと突入し、インフィニット・ストラトスに関する情報を収集する事が一番の任務である。だが、外は完全に暴徒の巣窟、迷彩服など着ていようものならたちまち叩き殺されることは間違いない。なのでここでは私服にて尚且つ特殊部隊と悟られてはならない事が何よりも大切だ。
「なかなかお似合いだな。アメリカ人」
「ロシアのファッションセンスがいいだけだ。僕は何もしていないさ」
「謙遜するな。ありのままでいい」
そんな談笑をする二人、車の外では依然として暴徒と治安部隊との攻防戦が繰り広げられている。タイラーはそれを一瞥して再びロシア人へと視線を戻した。
「核攻撃の後、ウクライナは変ったよ。これまで世界の抑止力たるロシアの同盟下にありながら、地球規模即時報復攻撃システムを防げなかった。おかげ様でロシアの信用はダダ下がり、東欧各国はロシアから離れようと目論んでいた。それがEUにとっては思う壺だった訳だ。経済的に中枢をEUに握られ不景気の煽りを受けて、ただでさえ核攻撃の爪痕が残っているというのに死人に鞭を打つかのように欧州各国は利権の為にウクライナを蝕んだ。その結果がこれだ」
ロシア人は焦土と化した光景を憐憫の情で見つめていた。街には射殺された死体で溢れ、暴徒はそれでも治安部隊へ向けてAKを発砲する。治安部隊も負けじとPKM軽機関銃を斉射し、7.62mm弾の嵐で暴徒を物言わぬ骸へと変えていった。RPGでビルの区画が吹き飛ばされて人の四肢が千切れ飛ぶ。迫撃砲の着弾で地面が掘り返されて血みどろになった暴徒のなれの果てが必死に助けてくれと叫び続ける。
タイラーにとっては見慣れた光景だった。何時ものように人が死ぬ。それが今回は意志の弱い一般人が泣き叫んで死んで行くだけの事だ。
「ん?くそっ!RPG!!正面屋上!」
その時だった。ビルの一角から黒い筒のようなモノをこちらへ向けた覆面姿の男が立っていた。タイラーの全身に電撃が走り、気が付けばロシア人からハンドルを奪い、必死に射線上から逃れようと急カーブを切った。しかし、RPGは白煙を吹き上げ車のバンパー部分を吹き飛ばした。幸いな事に車の燃料には引火せず、エンジンがスタックするという形で何とか生き延びる事が出来た。
「クソ、車は捨てていくしかないな。ここからは徒歩で行くぞ!ついて来い!」
ドアを開けた先に待つのは殺伐とした戦場。ジョン・タイラーは再び戦火へと身を投じるのであった
ウクライナの情勢が若干変化してます。もしかしたら第三次大戦になるかもしれません。
それとクリミア駐留のロシア軍の装備が結構近代化されているのに驚きました。
それではまた