インフィニット・ストラトス。その名にタイラーと一夏は唖然とその場に立ち尽くしていた。それが全てを引き起こした災厄だと飲み込むまでには時間は用いなかった。高高度核爆発の光景が目の前で何度もループ再生されている。そのたびにタイラーは自らの思考回路を疑った。脳が信じるなと、これは嘘だと喚き散らしている。それでもこの光景はCGのような作り物ではなく、実際に起こってしまった事である事がタイラーの胸を一層鬱屈とさせた。
「天と地の狭間には我々の常識では思いもよらないことがある。まさにその言葉通りになったわけだな。人は常識に囚われすぎたあまり、その枠の外にある事を非現実だと糾弾し続けた。いつの世も、常識は非常識に覆されるのだ」
シェイクスピアの一節を口ずさんで白衣の男は立ち上がり、右手のドアを開ける。刹那、フローラ迷彩を着込んだ4人兵士がAK-12を手に雪崩れ込んだ。照準は無論タイラーに向けられている。
”クソッ!”
だがそこでタイラーは体を捻らせて相手の射線を回避しホルスターのグロック22を抜き放ち一閃。9ミリの弾丸が音速で相手の脇腹のプレートを引きちぎった。相手の人体に損傷は与えていない。
”それでいい”
音速で放たれた9ミリの衝撃から立ち直る間もなく膝蹴りを彼の腹へと叩きこんだ。衝撃で再び体を回転させて2人目へと肉薄する。AK-12のマズルフラッシュが迸り5.45の高速弾が宙を駆けた。
幸いな事に弾丸はタイラーのすぐ横を損傷を与えること無く去っていく。即座に彼のAKを掴み、それを軸として背負い投げの要領で投げ飛ばした。4人目が銃を展開する前にマチェットを腰より抜き放ち白銀に光る刃を相手の頸動脈へと付きつける。
「俺達はわざわざあなた方と戦いに来たわけじゃない。頼むからその物騒なマチェットをしまってくれ」
「交渉の格好には見えんなロシア人」
向こうの戦意が無い事を確認すると、タイラーは視線を彼へと向けたままマチェットを首元から離した。
「お前らアホか!?殺す気マンマンやったやないか!」
もう一人のロシア人は無様に倒れ込みながら負け惜しみの言葉を漏らした。
「無力化だ」
「いい加減にしてくれミスター。それとセルゲイ、お前も少しは気を使え馬鹿者」
分隊長と思わしきロシア人はため息をついて自分のAKをテーブルへ置いた。タイラーも一息ついてその場に置いてあった椅子へもたれかかる。見るからにスラブ系の顔立ち、豊かな口髭を蓄え、歳は30代後半の自分よりは多少年上といったところか。歳相応の貫録が彼の全身よりはっきりと感じ取れる。
「ミスター・タイラー。君を護るために彼らを寄越したんだ。GRUに助けを求めてな」
「私の?」
「実を言えば、今現在ウクライナにて新型兵器が投入されたとの情報があってな。内戦の真っただ中に飛び込む事になるかもしれない。彼らと共にこの狂った世界を止めて頂きたい。こんな物言いで済まないが…これ私にできる贖罪なのだ」
「ならば、やる事は一つだけです。アレを破壊して、真実を白日の元へ晒す。それが我々の任務というわけですね」
一通り話したところでタイラーは一夏へと視線を向ける。迷いは無い。ならば実行するのみだ。タイラーは身を翻し、運命へと歩き出した。
感想を一言くれると幸いです