自分、そこまでマリオのファンといえるような立場ではないのですが……なるほど、これはファン向けだと納得の出来る楽しい作品でしたね!
映画というより、一つのアトラクションを楽しんでいるみたいで面白かった!!
難しくない王道なストーリー。これでいいんだよねと、今の映画業界に訴えかけているようであった……。
今回のクロスオーバー『ルリドラゴン』です。
唐突に連載されるや、一気にネット内を席巻した作品。しかし作者様の都合により、現在は休載中。
連載が開始されて……もうすぐ一年が経ちます。そろそろ続きを読みたいな……と思いながら、とりあえず鬼太郎とのクロスを考えて書いてみました。
基本、連載版の設定などを主軸にしていますが、今作は読み切り版の内容なども含めて話を進めていくつもりです。
また原作の雰囲気を損なわないため、今回もバトルシーンなどはないです。
どうか、ルリドラゴンの優しい世界観を楽しんでってください。
「う~ん、結構買い込んじゃったかな? けど……足りなくなるよりは良いよね!!」
「買い過ぎだってば! もうこれ以上持てないよ~!!」
その日、調布市の中学校に通う女子中学生たちが、巨大なショッピングモールでの買い物を楽しんでいた。
彼女たちが買い込んでいたのは主に『デザート作りに必要な材料』である。女子の一人、石橋綾の実家が経営している喫茶店『モモ』で出すことになる新作スイーツ。その試作に必要な材料の買い出しだ。
綾の友人である桃山雅などは、次から次へと追加される買い出しの量にちょっぴり情けない悲鳴を上げつつあった。
「そうですね。どれだけ作るつもりなのかは分かりませんが……いくらなんでも太ってしまいます」
「う、うん……流石に私たちだけじゃ、食べきれないよ……」
他の女子、辰神姫香と犬山まなも両手いっぱいの荷物を抱えたまま、若干引き気味に顔を引き攣らせる。
今日はこの後、それらの材料でさっそくスイーツを試作し、それを試食するという流れになっていた。
甘いお菓子をたくさん食べれるのは嬉しいのだが、食べ過ぎればその分、女の子として大事なものを失ってしまうというのが悩ましい。
「もう~、しょうがないな……ははは!!」
もっとも、そんな慌ただしい買い物も、太っちゃうかもしれない試食会も。こうして友達と遊んでいられる全ての時間が、犬山まなにとってかけがえのないものだ。
『今年』に入ってから妖怪がなんだのと色々な事件に遭遇したり、受験生として遊んでばかりもいられない中、友達と一緒にいられる数少ない機会を大切にしていきたいと思っている。
「それじゃ……そろそろ、モモの方に戻ろっか?」
そうして、時間は有限だとばかりに。そろそろ買い出しを終えなければと、まなは皆に声を掛けてショッピングモールを出て行こうとする。
ところが、買い物を終えようと出口へと向かっていく最中——。
「——おっと!?」
「——わっ!?」
ちょうど曲がり角付近に差し掛かったときだ。前の方から歩いてくる女子高生グループ——その内の一人と、犬山まなが正面からぶつかってしまったのだ。
荷物を抱えていたこともあり、まなはバランスを崩してその場に尻餅をつくこととなってしまう。
「ちょっ!? まな大丈夫!?」
「痛てて……あっ! ご、ごめんなさい! お怪我はありませんでしたか!?」
よろけるまなに雅が慌てて駆け寄ってくる。
しかし、まなは自分よりも相手の——自分と同じように尻餅をついてしまった相手方の女子高生の心配をしていた。
「あいたた……いえいえ、こっちこそ! 怪我はなかった!?」
相手の方も、ぶつかってしまったことに対して妙な因縁を付けてくることもなく、純粋にまなの心配をしてくれている。
「手を……」
「ああ、ありがとう……」
まなはほっと息を吐きながら、相手よりも先に立ち上がって手を差し出す。相手もその行為に特に疑問を持つようなことはなく、お礼を言いながらその手を取ろうとした。
だが、犬山まなとその女子高生の手と手が触れ合おうとした刹那——二人の間に青白い閃光が迸り、互いの手が弾かれてしまう。
「——!?」
「——っ!?」
これに両方が目を丸くして驚き、互いに手を引っ込める。
「な、なに……? なんか、バチっときた!!」
「今のは……まさか!?」
女子高生の方は何が起きたか理解しておらず、静電気にでも遭遇したリアクションで自身の手を見つめる。
しかし、犬山まなには何かしらの心当たりがあるのか。自身の懐、首からぶら下げていたお守りを手に取り——それが微かに光を帯びていることを確認する。
そのお守りは、まなが父親から肌身離さず持ち歩くように言われているものだ。
最初はそれに何の意味があるのかと不思議に思っていたが、ここ数ヶ月の間で、まなはそれが何なのか察するようになった。
どうやら、このお守りには——『妖怪を跳ね除ける力』があるようなのだ。これまで何度か人ならざる怪異に襲われた際も、お守りはまなを守るように光を放って妖怪を退けてくれた。
そのお守りがこの瞬間にも反応を示していると事実、つまり——。
——じゃあ……この人も!?
それはその女子高生が『妖怪』であることを意味していたのだ。まなは怯えた感情をその相手へと向けながら、距離を取ろうと一歩後退る。
「…………ん?」
その際、まなは初めて相手方の顔を注視する。
その女子高生は、普通に可愛らしい容姿をしていたが、特別人目を惹く魅力があるというわけでもなかった。
割とどこにでもいる普通の女の子、一般的な女子高生といった印象だ。
ただ一点、額に『ツノ』が生えていることを除けば——。
「え……ツノ?」
「ツノ……ツノだよね……」
「ツノだ……」
まなの友人たちにも普通に見えているのか、ツノを生やした女子高生という一見すると意味不明な存在に暫しその場にて固まる。
「……あ、あの……あんまりジロジロ見ないでくれるかな? 流石にちょっと恥ずかしいから……」
「え……? あ、ごめんなさい!」
その視線に気付いたのか、女子高生はツノを手で隠しながら少し恥ずかしそうに呟く。
その態度があまりにも普通の女の子、普通に恥ずかしがっているだけということもあり、まなは恐怖よりも何だか申し訳なさが込み上げてしまう。
「なになに、どうしたの?」
「驚かせちゃってごめんね、キミたち!」
一方で、ツノを生やした彼女の友人たち。
彼女たちにもそのツノが見えているのだろうが、別段驚くような素振りもない。その態度から「もしかしたら、ただのファッションなのでは?」と思ってしまうほどだ。
「ルリちゃん、大丈夫? 怪我はなかった?」
実際、女子高生グループの一人にはツインテールの髪を二色で派手に染めている子もいた。
そんな髪型の子もいるくらいなのだから、アクセサリー代わりに額にツノを付けていてもおかしくないのではと。そんな考えがまなの脳裏に過ぎる。
「うん、大丈夫だけど……あっ、やばっ!」
「……?」
だがふいに、そのツノの生えた子・ルリの動きがピクリと止まる。
彼女に怪我がないかを気遣っていたツインテールの子が、その反応に首を傾げていると——。
「——出そう、これ出るわ」
「えっ……?」
唐突にそんなことを言い出す。
出る? 出るとはいったい何のことだろうと、まなはその発言の意味が理解出来ずにいる。
「出るの!? ルリちゃん出ちゃうの!?」
「大丈夫!! 外まで我慢できる!?」
だが、ルリの友人たちはそれが何を意味するのかを察し、俄かに騒ぎ出した。
彼女たちの慌てた様子に、まなたち以外の通行人からも「なんだなんだ?」といった感じの視線が集まってくる。
「ちょっと! もう少し声抑えてよ……」
ルリは周囲の反応に、やはり恥ずかしそうに顔を隠し始める。
「すいません!! ちょっと、道を開けてもらっていいですか!?」
「ごめんなさい! すぐに済むと思いますんで!!」
ところが彼女たちはさらに大きな声を上げ、その場を仕切り始めた。通行人に声を掛け、人々がルリの周りに集まってこないようにと誘導を始めたのだ。
「ほらキミたちも……ちょっと待っててね」
「え、え……えっ?」
ツインテールの少女もまなたちに声を掛け、その場から動かないようにお願いしてくる。いきなりのことで訳が分からず、困惑しながらもその指示に従っていく人々。
「人なし! 遮蔽物なし!!」
「オッケー、ルリちゃん!! 景気良くやっちゃって!!」
そうして周りに人がいない、物がないことを確認しながら、女子高生たちはルリを広々としたスペースへと誘導していく。
「ありがとう……そ、それじゃ……」
ルリは友人たちの行動に羞恥に顔を赤くしながらも、感謝を述べた。
そして鼻をムズムズとさせながら、誰もいなくなったスペースへと慎重に移動していく。
その仕草を見れば、彼女が今から『クシャミ』をしようとしていることが予想される。たかがクシャミのために、どうしてそこまで騒ぐ必要があるのかと周囲の人々が訝しがる。
「……?」
まなもその行為に何の意味があるのかと不思議がる。いったい、これから何が起きようというのだろう。
「は……ふぁ……っ」
そうした周囲の反応を気に掛けつつ、ルリは耐えきれなくなったのか「はっくしょん!!」と盛大にクシャミを放った。
次の瞬間、彼女の口から真っ赤に燃え上がるようなものが「ボォオオ!!」と吹き出される。
そう、ルリと呼ばれたその少女は口から——『火』を吐き出したのである。
「きゃっ!? え、え……火? 火吹いた!?」
「熱っ!? 火の粉かかった!!」
「え……火? …………火っ!?」
間近でその光景を見ていた人々から軽く悲鳴が上がる。女子高生がいきなり火を吹いたのだから、当然と言えば当然のリアクションだろう。
「すみません、お騒がせしました!!」
「ご協力ありがとうございます~!!」
だが、ルリを取り巻く女子高生たちは全く驚いていない。
道を開けてくれたことや、時間を取らせたことへの感謝や謝罪に頭を下げつつ、何事もなかったようにその場を立ち去っていく。
「お、おお……?」
「ま、まあ……妖怪もいるんだし……火を吹く女子高生くらい、いてもおかしくない……のか?」
彼女たちの態度があまりにも平然としていたためか、『そういうものか』と人々も徐々に落ち着きを取り戻していく。
「お疲れ、ルリちゃん! 今日もいっぱい出たね!!」
「大丈夫だった? 溢れちゃったりしてない?」
「へ、変な言い方すんな!! 誤解されちゃうでしょうが!!」
立ち去る間際も、女子高生たちは和気藹々とお喋りに興じていた。
先ほどルリが吹いた火についての感想などを、当たり前のように言い合っていたのであった。
「…………なんだったんだろう?」
「…………さあ?」
そんな彼女たちの何でもない在り様に毒気を抜かれ、まなはすっかり脱力してしまった。
あのルリと呼ばれていた少女が何者なのか。その疑問を解消することも忘れ、友人たちと共に呆然とその背中を見送っていく。
×
「ええっと……このお店でしょうか? 今回の依頼人がいるのは……」
「うむ、そのようじゃが……」
ある日、ゲゲゲの鬼太郎は目玉おやじと共にとある喫茶店を訪れていた。
妖怪ポストから届いた依頼の手紙。依頼主の呼びかけに応える形で、鬼太郎が喫茶店を訪れるというのは割とよくあるパターンだ。
「ええっと、手紙の送り主は……」
その喫茶店は大勢の人で賑わっていた。学校帰りの中高生や大学生。仕事中なのだろうノートパソコンやタブレットに向かって静かに作業をしているビジネスマンやOLなど。
全体的に若年層が多い傾向が見られるちょっとオシャレな喫茶店だ。そんな店内を見渡し、鬼太郎は今回の依頼主の姿を探していく。
「あっ! おーい!! こっちこっち!!」
「きみ、鬼太郎くんだよね?」
「本当に来てくれた……鬼太郎だ! 生鬼太郎だ!!」
すると鬼太郎の存在に依頼主の方が先に気付く。テーブルに座っていた三人の女の子が、明るく手を振りながら彼の元へと駆け寄ってきたのだ。
「あなたたちが手紙をくれた……」
鬼太郎は彼女たち——今回の依頼主である女子高生と向かい合っていく。
「私、神代って言うの! よろしくね鬼太郎くん!!」
「宮下です! ねぇねぇ、写真撮ってもいい?」
「あたしは三倉! わざわざ来てくれてありがとね!!」
彼女たちは、ツインテールを二色に染めている派手な子が
明るい雰囲気を纏った陽気な子たちだ。多少髪型が派手な子もいるが、特にこれといっておかしいところもない。
どこにでもいる、普通の女の子たちである。
「初めまして、ゲゲゲの鬼太郎です」
「鬼太郎の父親の目玉おやじじゃ。それで……今回はどういった要件かのう?」
互いに自己紹介を終えて鬼太郎がテーブルに着席するや、さっそく目玉おやじが話を切り出していく。
手紙には『友達が困っている』とあったが、彼女たちの内の誰かが妖怪に困らされているということだろうか。
「ああ! 目玉おやじさんだ!!」
「ほんとだ……ほんとに目玉が喋ってる!!」
「やだうそ~! 可愛い~!!」
しかし、彼女たちからは特に緊迫感などが伝わってこない。
さらには目玉おやじの存在に驚きつつ、何故だかしきりに彼を撫でたり、可愛いと連呼したり。キャピキャピと騒いでいるせいで一向に話が進まない。
「これ、よさんか! それよりも依頼の話を……!」
これに目玉おやじ彼女たちの手を払いのけながら、早く話を進めるように叱りつける。
「あっ! ちょっと待っててくださいね……もう少しで来ると思いますから!」
すると女の子の一人・ツインテールの神代が笑顔のままで携帯電話のメールをチェックしていた。どうやら、手紙にあった『困っている友達』とやらがまだ到着していないらしい。
その子が来るまで話を進められないということなのか、それまでの間に目玉おやじや鬼太郎を巻き込んでしっかり記念撮影をしていく。
「はい! チーズ!!」
「鬼太郎くん、ちょっと笑顔が固いね……ほら! もっと笑って笑って!!」
「え……? は、はい……」
勢いに流されるまま、鬼太郎は成す術もなく女子高生たちによって弄られていく。今日は猫娘が不在なため、彼女たちのような子らを強く制止してくれる人がいない。
「こ、これが女子高生の、JKの力……ごくり!」
遠慮なしにグイグイと詰め寄ってくる彼女たちのコミュ力に、目玉おやじは人知れず戦慄していく。
そうこうしている間に、ようやく待ち人がやって来る。
「あっ! きたきた……って、なんか揉めてない?」
「あたしちょっと呼んでくるよ!」
喫茶店の入り口付近に姿を現したのは——二人の女子高生。
友達の到着に神代が表情を明るくするのだが、その子たちがなかなか店の中に入って来ない。どうやら店に『入る』『入らない』で揉めているらしい。彼女らを呼びに三倉が席を立った。
「——ユカちゃん……ルリちゃんどうしたの?」
「——いや、それが……鬼太郎くんに会いたくないって……駄々こねちゃって……」
三倉が声を掛けると女の子の片方・ユカと呼ばれた子が困ったように、もう片方・ルリと呼ばれている子の手を引っ張ろうとしていた。
だがそれに抵抗しようと、ルリという子がその場に座り込んだまま動かないのだ。
鬼太郎が聞き耳を立てると——。
「——ひぃい、いやだ~! 鬼太郎に退治される~!!」
ルリという少女は鬼太郎に危害を加えられることを恐れ、涙目になりながらジタバタしているようだ。
「……?」
別に人間に怖がられること自体はよくあることだ。そのくらいでショックを受ける鬼太郎ではないのだが、『退治される』というのはどういうことだろう。
鬼太郎が直接的に人間を害することなど殆どないし、そもそも人間相手に退治という表現は適切でない気がする。
「心配ないって! ルリちゃん、何も悪いことしてないんだから!!」
「そうだよ! せっかく来てもらったんだから、せめて挨拶しなきゃ!!」
そうやってルリが怯えていると、三倉やユカが落ち着くようにと声を掛けた。鬼太郎に害意はないのだから怖がる必要はないと、ルリを説得しながら彼の元までやって来る。
「待たせちゃってごめんね! 私、ユカって言います!!」
まずはユカという少女が鬼太郎に頭を下げた。
ふわっとしたショートヘアの女子。彼女にも他の人間たちと違った奇抜さのようなものはない。ごくごく一般的な女の子である。
「ほらっ! ルリも挨拶しなってば!! 失礼でしょ!」
「うぅ……あ、青木ルリです……こ、こんにちは……」
そのユカという子の身体に隠れ、未だ鬼太郎に顔を見せようとしない女の子——
友達に促されることでようやく覚悟を決めたのか、ゆっくりとその素顔を鬼太郎の前へと晒していく。
「…………ツノ?」
その際、鬼太郎は彼女の額に生えていた『ツノ』へと真っ先に目がいった。
刃物のように鋭い二本のツノだ。よくよく見れば、それ以外にも瞳孔が大きく縦長に開いていたり、少しだけ牙が尖っていたりと。人間らしからぬ特徴が所々に垣間見れる。
「うむ……鬼太郎よ」
「はい、父さん……微弱ですが、妖気も感じられます」
さらに外見的な特徴だけではない。目玉おやじの問いに答えるよう、鬼太郎の妖怪アンテナにも反応があった。ほんの僅かではあるが、そのルリという少女から妖気が感じ取れると。
それはつまり——彼女が妖怪に類するものであることの証明に他ならない。
「キミ……青木さんはもしかして、妖怪なんですか?」
ルリが鬼太郎相手に怯えていた理由。彼女の身体的な特徴などを吟味し、鬼太郎は単刀直入に青木ルリが妖怪なのかと問いを投げ掛けていた。
「いや……私は父親がドラゴンなだけで……母親が人間だから……異種族のハーフ。この場合、半妖ってやつになるのかな?」
だが、ルリは彼の問いに曖昧な答えを返す。
鬼太郎の「妖怪か?」という予想は間違いではないが、正解でもない。ルリは自分が半妖——人間とドラゴンのハーフであることを緊張しながら明かしたのだ。
「ドラゴン? ドラゴン……竜……龍のことか!? キミは……龍の血を引いておるのか!?」
これに目玉おやじが少し遅れて反応を示した。
ドラゴン——即ち、『龍』の血族であるという少女を前に衝撃を隠し切れない様子だった。
ドラゴン。
世界的にも相当な知名度を誇る、巨大な爬虫類の怪物だ。西洋でいうところのドラゴンは蜥蜴の身体に蝙蝠の翼、鋭い鉤爪や牙を持った生物として描かれることが多い。彼らは基本的に邪悪な怪物、神の敵、退治されるべき悪魔として記されている。
絶対的な悪の象徴、財宝を守る欲深な番人。いずれにせよ、それが強大なモンスターであることは間違いないだろう。
一方で、これが東洋でいうところの『龍』になると話が変わってくる。
東洋の龍もドラゴンと同じく巨大な力を持った幻獣だが、その有り様は『倒すべき敵』というより『信仰すべき霊獣・神獣』という側面が強くある。蛇のように長いその姿を、古代中国では皇帝のシンボルとして丁重に扱ってきた。
さらにその姿が大陸から日本へと伝来するや、元からあった自然崇拝と結びつくことで龍は『神様』としても崇められるようになったのだ。
ドラゴン、竜、龍。
似たような意味合いでありながらも呼び方や使われる文字などで、神にも悪魔にもなり得る。何とも不思議な生物である。
「へぇ~……そうだったんだ。じゃあ、ルリちゃんは神様の子なんだね!!」
「神様~、どうかあたしたちの願いを叶えてください~!」
といった目玉おやじのためになる豆知識を拝聴するや、ルリの友人たちは彼女を崇め始める。もっとも、本気で崇拝しているというよりはちょっとおふざけが入っている感じだ。
「ちょっ! やめてよ、神様とか……そんなん柄じゃないし……」
そんな友達からのからかい混じりの賛美に、困ったようにルリは頬を掻く。彼女には自分が神様であるという自覚も、妖怪であるという自覚もないのだろう。
実際、青木ルリが自分を龍の子供であると自覚するようになったのは——割と最近の話であった。
ルリはある日の朝、目覚めると自分の額にツノが生えていたことに気付く。
夜寝ている間に生えてきたのか、どうしてそんなものがいきなり生えてきたのだろうと、何気なく母親に尋ねる。
『——まあ、あんた半分人間じゃないしな』
すると、あまりにもさらっと衝撃の事実を告げられたとのこと。最初は何の冗談かと思ったが、割とマジな話らしい。
ルリは母親である人間と、龍である父親との間に生まれた半妖。それはずっと父親のことを何も知らなかった、母親と二人だけで暮らしてきたルリにとって、かなりぶっ飛んだ内容だった。
「それは……なんというか……」
ルリからその話を聞かされ、鬼太郎がなんとも言えない表情で固まる。
何の前触れもなくツノが生えてきて、自分が人間でないことを母親から告げられる。そのときの彼女の気持ちを察すれば、流石に同情せざるを得ない急展開だ。
「まあ……それはいいんだよ、それは……」
「あっ、いいんですか?」
しかし、ルリは自分が半分龍であるという事実をあっさりと飲み込んでいた。
自分が人間でなかったというのは確かにショックだったが、あまりに現実離れしていたせいか一周回って『そんなもんか』と開き直ることにしたという。
幸い、学校のクラスメイトたちも突然ツノを生やしたルリ相手に割と好意的——というより、どこか面白がっていた。学校側も、母親が事前に事情を説明していたらしく、担任の先生なども割と緩い空気で受け入れてくれた。
勿論、中にはルリのことを怖がって敬遠する生徒もいるが、今のところは表立って差別されるようなことは起きていない。
問題は——龍の子供としてその性質を受け継いだことで発生する、ルリ自身の『体質』についてである。
「このツノもそうなんだけどさ……私、龍の体質もしっかりと受け継いじゃってるみたいなんだよね……」
「体質ですか……具体的にはどのような?」
ルリが困った困ったといった感じで愚痴を溢す。
どうやら今回鬼太郎が呼ばれたのも、その体質とやらが関係しているらしい。重要な話になるだろうと、そこからの話に真剣に耳を傾けていく。
龍の体質その① ツノ
これは見た目から分かるよう、『ツノ』が生えてしまうということだ。このツノは彼女自身の意思で出したり引っ込めたりすることが出来ず、常に出しっぱなしの状態で日々を過ごしていかなければならない。
当然、他の人間たちから奇異な視線を向けられることがあり、こうしている今も喫茶店内の客からチラチラと視線を感じる。
あと普通に物騒。人が刺し殺せそうなほどに鋭く尖っているため、単純に危ないということもある。
龍の体質その② 火を吐く
ドラゴンでいうところの『ブレス』とでもいうのか、ルリは口から火を吐くことが出来る。一番最初、クシャミと共に吐き出されたその炎はルリの手にしていた教科書を消し炭にし、前の席に座っていた男子の後頭部をちょっぴり焼いた。
突然のことでルリ自身の身体もびっくりしてしまったのか、炎の熱で喉を火傷してしまい、大量に出血するなど結構な重傷を負ってしまう。
その後、火の吐き方については練習したおかげで何とかコントロール出来るようになった。喉の方も、人間から龍のものへと適合したのか。怪我もすぐに治癒し、火傷するようなこともなくなった。
ツノと火を吐く。
とりあえず、この二つの体質に関してはある程度は自力で解決出来たし、何とかなっているとのことだ。
龍の体質その③ 放電
それこそ目下のところルリを悩ませている、新たに目覚めた龍の特性とのことだ。
「放電……? そんなことまで出来るんですか?」
鬼太郎はルリが火を吐き、電撃まで身に纏えることに率直に驚いていた。多彩な能力を持った鬼太郎の言えたことではないが、そこまで多岐に渡る能力を持つもの、純粋な妖怪でも珍しいだろう。
流石は『龍』の血を引くものだと感心するところなのか。この調子だと他にも様々な体質を引き継いでいそうだ。
だが、今のところ発現したのは以上の三つであり、その放電体質をコントロールするのが当面の目標とのことだ。
「この間なんか、いきなり教室で発現しちゃってさ……あのときは大変だったよ!」
ルリの放電体質が初めて発言したのは——梅雨の日、学校で授業を受けていた真っ只中だという。
いきなり身体から電撃を発し、周囲のクラスメイトたちをビリビリっと痺れさせてしまったのだ。
「ほんとにね~、びっくりしたよ!!」
「吉岡なんて、頭アフロになっちゃってたし! ほんとにああなるんだね……コントみたいだった!!」
宮下や神代といった面々も笑いながら語る。
幸い電圧そのものがそこまで高くなく、深刻な被害にはならなかったようだ。放電による一番の被害者は、きっと前の座席にいた男子の
「火を吐くときみたいな感じでコントロール出来るようになりたいんだけど……これがなかなか上手くいかなくてさ~」
そうして発現してしまった放電体質に対し、ルリはさっそく練習してその能力を制御しようとした。
「あれっきり、出そうと思っても出なくてどうすればいいか分かんないんだよ……」
しかし自分の意思で電撃を出そうとしても全く出ず、どうしていいか分からず八方塞がりだというのだ。
「? 出ないなら出ないで……それに越したことはないのでは?」
その話に鬼太郎が疑問を浮かべた。
放電が出来なくなったというのであれば、それで良かったのではと。無理をしてまで電撃を出せるようにならなくても、いいのではないとかと首を傾げる。
「いや……一度発現した以上、いつまた暴発するかも分からん。ある程度は、自分で制御できるようになった方が賢明じゃろう」
だが、目玉おやじはそうは思わなかったようだ。一度放電体質に目覚めた以上、またいつ電撃を発するようになるか分かったものではないと懸念を口にする。
事実、ルリの母親も『一度出た以上、確実に遺伝している』と、その能力を制御できるようになった方がいいと言っているらしい。
火を吐くときも何とか練習して、コントロール出来るようになったのだから、放電も自分の意思で出せるようになった方がいいというのが、ルリたちの方針ということだろう。
「なるほど……あの、それでどうしてボクが?」
そこまでの話を聞き、鬼太郎はルリが『自分の能力の制御に苦戦している』ということは理解できた。しかし肝心の自分が呼ばれた理由、ここにゲゲゲの鬼太郎がいる意味を察せないでいる。
「あっ! 鬼太郎くんに手紙を出そうってのは私の考えだよ!」
すると、ここで二色ツインテールの神代が手を挙げた。鬼太郎の力を借りようというのは彼女の発案らしい。
神代はスマホを操作しながら、何でもない口調で自身の考えを口にしていく。
「だって鬼太郎くん、電撃出せるんでしょ?」
「……?」
「ええっと……ほら、この動画!!」
そう言いながら彼女が差し出したスマホには、とある映像が映し出されていた。
『——体内電気!!』
『——お、おのれぇええ、鬼太郎!! ぐわあああああ!?』
その動画では、ゲゲゲの鬼太郎がとっても悪そうな妖怪相手に『体内電気』を食らわせていた瞬間がばっちり映っていたのだ。
一般の通行人が鬼太郎の戦いをたまたま目撃し、その映像をネットに流したということだろう。
「これは、いつの間に……」
「うむ……なかなかよく撮れておるのう」
自分の知らないところで、自身の映像が衆目に晒されることに鬼太郎は「やはり……ネットは恐ろしい」と現代社会のハイテクぶりに改めて戦慄。
対照的に、目玉おやじは息子の活躍を鮮明な映像で見られてほっこりしている。
「この動画見て、閃いたんだよね……そうだ! 鬼太郎くんに……指導して貰えばいいんじゃないかって!!」
その動画を見つけてきた神代曰く。
ゲゲゲの鬼太郎に、ルリの放電体質を『指導』してもらおうという考えに思い立ったとのことだ。
つまり——。
「鬼太郎くんの体内電気を……ルリちゃんに伝授して欲しいんだよ!!」
「…………え?」
それこそが今回鬼太郎が呼ばれた理由、彼への依頼内容ということになるのだろう。
人物紹介
青木ルリ
ルリドラゴンの主人公。
ある日ツノが生えて、自分が「なんか人間じゃないらしい」ことを雑に伝えられた悲しきヒロイン?
半龍であること以外は普通の女子高生。少し内気なところはあるが、慣れれば割とフランク。
本名は漢字で『瑠璃』らしいですが、作中では必ず『ルリ』と明記されるとのこと。
ユカ
ルリの親友ポジ。本名は萩原裕香。
ルリ自体が話し上手ではないらしく、彼女がいないと作中での会話がほとんど生まれなかったとのこと。
神代
陽キャな二色ツインテール女子。
その派手な髪色からルリに頭が悪いと思われていたらしいが、勉強はかなり出来る方。
面倒見が良く、気遣いが出来、笑顔が眩しい。控えめにいって天使か?
吉岡
クラスメイトの男子。
ルリに後頭部を焼かれたがそれを気にしないと、割と器が大きい。
宮下
ルリと写メを撮る子、ポニーテール。
三倉
一人称があたし。ルリの放電で髪がすっごいことになってた。