終わってみればあっという間……最後まで楽しい水着イベントでしたね。
例年通りのfgoであればここから『ぐだぐだ』『ハロウィン』『クリスマス』と続々トンチキイベントが繰り広げられるわけですが……今年はどうなることやら。
今年も早いものでもう九月です。
今月は据え置きゲームで『サムライレムナント』が発売。
アプリでは『FFⅦ』の新作がリリースされるとか、結構楽しみにしてます。
久しぶりにfgo以外のゲームに熱中出来そうな予感が……するかもしれない。
『おおかみこどもの雨と雪』のクロスの中盤。
とりあえず、今回の話から原作の主要キャラが登場します。
一応、三話構成を目指して話を書いていきますので……次回で完結予定です。
雷獣。
そう呼ばれる以前。自分がなんと呼称されるような生物だったのかを、獣はほとんど覚えていない。
ただ確かなのは、自分にも間違いなく親や兄弟、仲間たちがいたであろうという事実だ。
何の変哲もない、ただ一匹の獣として。野を駆け回り、狩った獲物を仲間たちと分け合って生きていたという実感が確かにあった。
だが、そんな何でもない日々は唐突に終わりを迎える。
雷——天から降り注いでくる稲妻が、何の因果かただの獣に過ぎないその身を貫いたのである。
落雷の直撃を受けた瞬間、獣は『死』を実感した。
全身が焼けるように熱い。きっと自分はこのまま死ぬのだろうことを理解し——そこから、何としてでも生き延びようと力を振り絞る。
生物としての本能が『生きる』という方向性で、肉体を維持しようとしたのだ。
その生存本能が、獣の身体にどのような作用を施したかは定かではない。
だが結果として、獣は生き残った。
その身を貫いた雷と同化を果たすかのよう——雷獣へと、その身を生まれ変わらせたのである。
自分以外のものを、全て灰にして。
『…………なんで……どうして……』
雷獣になったと同時にある程度の知能を獲得した獣が周囲を見渡す。
そこには『仲間たちだったもの』が、黒焦げの残骸となって転がっていた。雷獣誕生の余波で発生した電撃が、周囲のものたちを全て感電死させてしまったのだ。
『——アアアアアアアアアアアアアアア!!』
雷獣の絶叫が、雷鳴のように響き渡る。
彼は自らの命が助かる代償として——親兄弟、共に苦楽を共にしてきた同胞たち。その全てを失ったのである。
その後、悲しみに暮れながらも雷獣は生き続けた。
いかに絶望にその身を焦がそうと、獣である雷獣に『自ら命を絶つ』などという選択肢はない。命ある限り生き続ける。
それは獣の遺伝子に、生まれながらに刻まれた本能である。
そして生きるためにと、雷獣が唯一求めたものが『電気』だ。
肉や水といった通常の食事を必要としなくなった代わりに、雷獣はその身に電気を蓄えなければならない体質となっていた。
だが、文明が発展した現代ならいざ知らず、雷獣が誕生した三百年前——江戸時代に発電所などの施設が存在しているわけもなく。
雷獣は自然発生する雷雲などから電気を得るため、各地を転々と駆け回るようになる。
その頃の雷獣は常に飢えていた。
食料である電気にありつける機会など、ほとんど運次第だ。腹を満たした状態でいられることの方が珍しく、空腹状態で理性を失ったまま暴れていることが大半だった。
そんな飢餓状態で暴れ回る雷獣の姿が、当時の人間たちの目にはさぞ恐ろしいものに映ったのだろう。
雷獣は凶暴な妖怪として、徳の高い僧に目を付けられ——その身を『雷岩』へと封じ込まれることとなる。
『よかった……』
人間の坊主にしてやられた、という屈辱は勿論あった。
だが同時に安堵もした。封印されている間は食事を必要とはしないらしく、飢えに苦しまれることなく、静かに眠り続けることが出来たのだから。
ところがその封印が解かれ、雷獣は再び自由の身となった——なってしまった。
安らぎは失われた。
雷獣はその日生きるための糧を得るため、食料である電気を求め——それが豊富な人間社会へと飛び込んでいく。
×
「う~ん……私的にこの色はないかな……あんまり似合ってないし……」
「ええ? 私はいいと思うけど……ほら! こっちのスカートと合わせるといい感じじゃない!?」
富山県富山市。
市内でも特に大きなショッピングモールで、中学生の女子グループが仲良さげに買い物を楽しんでいた。年頃の女の子らしく、可愛い洋服で自分たちを着飾っていく少女たち。ああでもない、こうでもないと、キャッキャッと賑やかな声を響かせていく。
「ねぇねぇ!? 雪ちゃんはどう思う?」
「私? ん……私としては、信乃ちゃんにはこっちの方が合ってると思うけど……」
そんな四、五人で集まっている女子グループの中、
雪と呼ばれた彼女は、長い黒髪に紺色のワンピースがよく似合う女子だ。彼女は友達の問い掛けに、少し自信なさげだが正直に自身の好みを答えていく。
「雪……アンタはもうちょっとセンス磨いた方がいいわ」
「うん、これだけはないわ……ない!」
「え、ええ!?」
すると雪が選んだ服がお気に召さなかったのか、他の女子たちが彼女の服装選びに物申していく。
まさかのダメ出しに雪の顔に動揺が浮かぶ。自分の美的感覚が『普通の人間』とは違うのかと、ちょっとドキッと身構えてしまう。
「まあ……これはこれでありっちゃありか?」
「ええ~、そうかな!? まあ……言うほどおかしくはないか?」
しかしその心配は杞憂だったようで、数人の女子は雪のセンスを一部肯定してくれる。とりあえず、何かを致命的に間違えたわけではなかったことに雪は「ほっ……」と胸を撫で下ろす。
だが、そのように安堵するのも束の間——。
「あっ! ねぇ、雪ちゃん。あそこにいるのって……」
「え……あっ!?」
ふと、信乃という少女が目線をよそに向け、雪にこそっと声を掛ける。雪も振り向いたその視線の先には、一人の男の子がいた。
「…………」
女子グループの子たちと同年代の男子中学生だ。
身だしなみに気を配るつもりはないのか、ぼさぼさ髪に仏頂面を浮かべながら、男物のシャツなどを適当に手に取って見ている。
「草ちゃん……」
そんな男子の姿に雪が「草ちゃん」と、彼の呼び名を口にする。雪の呟きが聞こえたのか、他の女子たちも揃って彼の方へと目を向けていく。
「あれ……草平くん?」
「珍しい、今日は一人なんだ……」
普段から女子とも普通にお喋りをするし、男子たちの輪の中でも説教的にリーダーシップを取っているような子だ。
年頃になって妙に斜に構えるような男子が増える多感な時期においても、彼は元気ながらも比較的落ち着いて大人な対応も取れると、女子たちからも密かに人気を集めている。
そんな彼が、今はたった一人でショッピングモールを回っている。その姿が少し奇異なものに映ったのか、女子たちも声を掛けることが出来ないでいた。
「あ……いっちゃった……」
草平は特に何かを買うでも、女子たちの視線に気づくこともなく、その場から立ち去ってしまう。
「草ちゃん……」
一人で歩いていく彼の後ろ姿を見つめながら、雪は苦しさを堪えるように呟く。
「そういえば、雪って……草平くんと……」
「ああ! いわゆる……ラブってやつね!!」
その呟きに他の女子たちがにわかに騒ぎ出す。
雪と草平、普段からも感じていた二人の関係。この男女の間にただならぬ何かがあるのではないかと、揶揄い交じりに黄色い声を上げている。
「ち、違うから!! そういうんじゃないから!?」
これに雪は動揺で顔を赤く染めながらも、否定の声を上げる。
確かに雪は草平と仲が良いが、決して付き合っているというわけではない。勿論、好感は抱いているだろうが、それが『友達』に対する好きなのか、『異性』に対しての好きなのか。
その違いを、雪という女の子は未だに理解出来ていない。
ただ、雪には草平のことを放っておけない——明確な理由があるのも事実だ。
「いいよ、行ってあげなよ……雪」
「信乃ちゃん……」
その事情を知る信乃が優しく雪の肩を叩いた。信乃も草平とはそれなりの付き合いであり、彼の『家庭事情』についてもそれとなく噂話など耳にしていた。
今の草平には誰かが声を掛けてやる必要があるかもと、その役目を雪に任せる。
「う、うん!! ありがとう、信乃ちゃん!!」
親友に後押しされたこともあり、雪は友人たちと一旦別れて草平の後を追いかけることにした。
「はぁはぁ……待ってよ、草ちゃん!!」
「雪……?」
雪はショッピングモールの外で草平に追いついた。息を切らせながらも必死にこちらへと駆け寄ってくる雪に、草平は怪訝そうな顔つきになってしまう。
「お前な……その草ちゃんっての、そろそろやめろよ。俺ら、もう中二だぞ?」
ふと、草平は自身の呼び名について言及する。
小学生の頃から雪は草平のことを『草ちゃん』と呼んでいるが、それが今の彼にはくすぐったく感じられるのだろう。
そろそろ呼び名を改めて欲しいという、何とも微笑ましい要求だ。
「え……? でも草ちゃんは草ちゃんだし……今更やめろって言われても……なんて呼べばいいか?」
もっとも、そんな思春期の男の子らしい注文に雪が困った顔になってしまう。
雪にとって草平は草ちゃんだ。他の呼び方など考えたこともなかったし、特に改める必要性も感じていないのだろう。
「はぁ……じゃあ勝手にしろ……」
「うん! 勝手にする……ふふふ!」
雪の返答に草平は呆れたように溜息を吐くが、そこに嫌悪感などはなく。
雪も草平がいつも通りの呼び名を受け入れてくれたことに笑みを浮かべ、二人はそのまま並んで帰り道を歩いていく。
「草ちゃんは……今年の夏休みはどうするの?」
同じ目的地へと向かいながら、雪は草平に何気なく問いを投げ掛ける。
二人は同じ中学校の、同じ学生寮で暮らしている。当然、女子寮と男子寮という違いはあるが、同じ敷地内にある建物なので必然的に帰り道は同じだ。
今日は休日ということで雪は友達と買い物に出掛けていたが、草平は一人で特に当てもなく街をぶらついていたらしい。
そんな彼が——今年の夏休みをどうするか、それが雪には気になっていた。
「別に……寮で適当に過ごすさ……」
草平は特に何でもないことのように、長い休み時間の過ごし方を口にしていく。
「……実家には帰らないの?」
そんな寂しい答えに、雪がさらに踏み込んだ問いをする。
夏休みになれば当然、寮暮らしの生徒たちが実家に帰省する。雪も休み期間には母親が待っている家に帰るつもりでいた。
草平にだって帰る家がある筈なのだが——。
「家に帰ったところで居場所なんかねぇし……おふくろも、弟の世話で忙しいだろうしな……」
彼は自分の家には居場所がないと、ほとんど感情らしいものを表に出さずに呟く。親という、子供からすれば当たり前のように頼りにするだろう保護者という存在。
その親というものに、草平は何の期待も抱いていないのか。達観した物言いで淡々と事実のみを語っていく。
「…………」
雪は草平の家庭事情を知るが故に、彼の言葉に口を噤むしかなかった。
藤井草平は少し前で母子家庭、母親と二人っきりで暮らしていた。唯一の身内ということで母親も一人息子である草平をとても大事にしていた。それは間違いない。
ところが、母親は草平が中学校に上がる頃に再婚した。結婚前から既にその男との子供まで身籠っていたらしく、今は生まれたばかりのその子の世話に没頭している。
そして、その子や再婚相手のことを気にかけるあまり、草平に対する興味や関心を失ってしまったらしい。所謂、育児放棄というやつだ。
「…………」
雪や信乃といった友人たちにとっても、それは周知の事実である。
噂話などで知ってしまったその話が本当だと、草平本人から初めて聞かされたとき、雪はこの世にそんなことがあるのかと耳を疑ったほどだ。
雪も草平と同じく母子家庭で育った。父親の記憶がない彼女にとって、母親は自分や『弟』をたった一人で育ててくれた誰よりも大好きで大切な人だ。
そんな母親という存在に『関心を向けられない』。そんな草平の立場を雪は自分のことのように苦しみ、苦悶の表情を浮かべている。
「そんな顔するなって! 俺は別に気にしちゃいないよ……」
だが、そんな辛そうな表情の雪を逆に草平が慰めていく。
「あの家にいるよか、寮で暮らしてる方が気楽だし……何より楽しいんだ!!」
実家から追い出されるように中学校で寮暮らしをすることになった草平だが、その方が楽だと強がりではない笑みを浮かべる。
実際、学校での彼は家庭の事情など感じさせないほどに陽気で活き活きとしていた。
「高校に上がったら、すぐにでも家を出て……学費も自分で稼いでく……」
さらには、今の段階で実家を出ていくことを前向きに考えている。
母親が草平のことを気にも留めていないように、草平も母親に対して過度な期待を持ってはいない。親子としては寂しい関係かもしれないが、それでも草平は堂々と顔を上げる。
「——早く大人になる。自分一人でも生きていけるようになるんだ」
未だ少年らしいあどけなさの残る顔ではあるが、その眼差しは既に未来へと向けられていた。
「やっぱり、草ちゃんは強いね……」
そんな逞しい男の子の横顔に、雪の胸の奥からも込み上げてくるものがあった。
雪も母親の勧めで寮生活をするようになったが、それでも母が恋しくなるときがある。それは子供としては当たり前のこと、まだまだ未成年なのだからそれが普通の感情だ。
けれど、そんな子供の甘えなど置き去りに、草平はすっかり大人の顔付きになっている。小学校の頃からずっと一緒だった男の子の成長ぶりに嬉しいやら、寂しいやら。
「あのね、草ちゃん……私……!」
そんな彼に、置いて行かれたくないという思いが湧き立ってしまったのか。
ひょっとしたら、彼と共に歩む未来なんてものを想像したのか。雪は顔をほんのり朱色に染めながら、草平へと声を掛ける。
『——アアアアアアアアアアアア!!』
「——!?」「——!?」
だが、そんな少年少女の未来を閉ざそうとする厄災が——雷鳴のような絶叫と共に街中へと降り立った。
×
『——腹が減った……』
山から降りてきた雷獣は人目を忍ぶことも、周囲への被害などまるで鑑みることなく街中を闊歩していく。
『腹が……減ったよ!!』
目的地である発電所——そこに溜め込まれた電気の匂いを辿りながら進んでいく雷獣だったが、彼の空腹は限界ギリギリにまで達していた。
だからこそ少しでも腹を満たそうと、雷獣は手近な建物へと近づいていき、そこから電気を吸い上げていく。
雷獣からすれば摘み食いのようなものであったが、『その建物』にいた人間たちにとってはたまったものではない。
「——て、停電!?」
「——ちょっとちょっと!? いったい全体、何がどうなってるのよ!?」
その建物——『ショッピングセンター』に入っていた店員や客たちが急な停電に悲鳴を上げる。建物内部にいる彼らでは外で何が起きているか理解が出来ず、パニックに陥っていることだろう。
そこで買い物を楽しんでいた、雪の友人たちもその中に含まれている。
「おいおい……あれって、今騒ぎになってる!!」
「信乃ちゃんたちが……!!」
雷獣の出現に草平が目を丸くする。この地域の人間たちにとって、雷獣の脅威はニュースでも報じられていた事実だが、まさか自分が巻き込まれる当事者になるとは夢にも思っていなかっただろう。
雪も、友人たちが買い物を楽しんでいるショッピングモールへと襲い掛かる怪物の存在に、その顔を朱色から真っ青へと変化させていく。
このままでは信乃たちが危ない。
しかし、咄嗟には行動を起こすことが出来ず、足を止めてしまう少年少女。
「——いたぞ、こっちだ!!」
「——キミたち、下がりなさい!!」
するとそんな子供たちへの避難を呼び掛けながら、数十人の大人たちが現場へと駆けつけて来る。バタバタと慌ただしくも理路整然と行動する人間たち——その正体は富山県警である。
既に雷獣が県内各地に相当な被害を出していることから、いつでも迅速に出動できるよう準備を進めていたのだろう。あっという間に集まって来た、パトカーなどの警察車両が雷獣の周囲に展開。
防護盾を構えた機動隊がズラリと並び、雷獣に対して一斉にライフル銃の銃口を向けていく。
「——撃ち方構え!! 目標……前方の巨大生物!!」
皮肉にも『妖怪による不等な行為の防止等に関する法律』——妖対法のおかげか。澱みなく雷獣への攻撃態勢へと移行する機動隊員たち。
「——撃て!!」
指揮官の号令と共に何丁もの銃口から鉛玉が、雷獣に向かって躊躇なく放たれる。
『——クカアアア!!』
だがその銃撃に対抗するよう、雷獣が吠えた。
獣の叫びに呼応し、その身体に纏われていた電撃が銃弾を迎撃していく。機動隊が放った弾丸は一発も雷獣の身体に着弾することなく、その全てが消し炭へと変わり果ててしまう。
「なっ……! ひ、怯むな! 撃て撃て!!」
その僅か一瞬の攻防で、人間たちは目の前の怪物が自分たちの手に余る存在であることを直感的に悟っただろう。
それでも負けじと、機動隊は雷獣への攻撃を立て続けに敢行していくが——。
『邪魔を……スルナァアアアアアアア!!』
食事の邪魔をされたことに激怒した雷獣が、さらに強烈な怒りと共に稲妻を迸らせた。全方位に放たれる電撃が、機動隊やショッピングモールといった建物へと襲い掛かる。
「ぐああああああ!?」
「きゃあああああ!?」
警察官たちの呻き声や、一般人たちの悲鳴が木霊する。もはや外敵かどうかなど関係なく、雷獣の雷撃は周囲一帯のものを無差別に破壊していく。
その雷撃の被害者の中には——当然のように雪や草平も含まれている。
「きゃあ!?」
「雪っ!!」
電撃は避難途中だった二人にも容赦なく襲い掛かる。迫り来る雷の直撃から雪を庇おうと草平が身体を前に出すが、その程度では盾にもならない。
無情にも、迸る電撃は落雷の如く少年少女の身を貫こうとし——。
「——霊毛ちゃんちゃんこ!!」
刹那、上空から何者かが舞い降りて来る。
その『少年』は自身のちゃんちゃんこを広げ、雷獣の電撃から二人を守った。ちゃんちゃんこによって弾かれた電撃は空中で霧散、何とかことなきを得る。
「えっ……だ、誰? き、キミは……!?」
そうして助けられたことに礼を述べる余裕もなく、混乱する雪がその少年に何者かと問いを投げ掛けていた。
「——ゲゲゲの鬼太郎だ」
「——雷獣!!」
「——もう止めるんじゃ……それ以上は!」
ゲゲゲの鬼太郎と目玉おやじは、その現場に到着するや雷獣に制止を呼び掛ける。
山の妖怪たちに頼まれて雷獣を止めにやって来た彼らだが、まさかこのような形で暴れ回る当人と接敵するとは思ってもいなかった。
妖怪たちどころか、人間たちとも真っ向から対立する雷獣という怪物に、まずは矛を収めるように叫ぶ。
『なんだ……誰だ、お前は……』
鬼太郎の呼び掛けに対し、雷獣は彼が誰かも分からずに疑問を投げ掛ける。
しかし、鬼太郎が只者でないことは悟ったのだろう。警戒心を剥き出しに、全身の電気をより一層激しく帯電させた。
「雷獣よ……山の奥地で大人しく過ごすことは出来ぬのか? お前が身体から絶えず垂れ流しておるその電気のせいで、妖怪も動物たちも困っておるのじゃぞ?」
雷獣の敵意が増大する中においても、目玉おやじは冷静に相手の説得を試みていた。
雷獣に山の奥地にでも引っ込んでもらえるのならば、下手に争う理由もない。もしも他に行く宛がないというのであれば、ゲゲゲの森で面倒を見ることも視野に入れる。
とりあえず今は雷獣を大人しくさせ、これ以上の被害が出ない方向で話を持っていこうとする。
ところが——。
『大人しくしろ……? 大人しくしろだって!? それが出来るなら、最初から苦労はしてないんだよ!!』
穏便にことを進めようとする目玉おやじのその気遣いが、逆に雷獣の怒りに触れてしまう。
『この空腹が……この飢えが……!! ボクの苦しみが……お前たちなんかに分かるもんか!!』
電気を食わなければいけない特異体質となった雷獣。体内に溜め込む電気が途切れたときに襲ってくるこの『飢餓感』などは、きっと鬼太郎たちのような妖怪でも共感は出来ないだろう。
人間だって飲まず食わずでは生きていけないように、雷獣も電気がなくては生きていけない。それどころか、まともに正気を保っていることすら難しくなるのだ。
それを大人しくしていろと、我慢しろなどと。そんな戯言——到底許せるわけがない。
『——ああ……! アアアアアアア!!』
怒りと共に空腹が限界値に達したのか。辛うじて保っていた理性さえ遠のいていき、雷獣は暴れ狂う一匹のケダモノと化していく。
「くっ……やるしか……ないのか!!」
その瞳から理性が失われるのを感じ取り、鬼太郎が臨戦態勢で身構える。
結局は戦うしかないのかと。息が詰まるような思いを抱きながらも、雷獣の暴走を食い止めるべく鬼太郎は技を繰り出していく。
「髪の毛針!! リモコン下駄!!」
高速で撃ち出される毛針や、砲弾の如き勢いで放たれるリモコン下駄。そのどちらも、まともに食らえば相当なダメージを与えられる強力な攻撃だ。
『クアアアアアア!!』
だが、雷獣の纏う強烈な電撃が髪の毛針を打ち消し、リモコン下駄を容易く弾き返してしまう。機動隊の銃撃と同じだ。どんな攻撃でも、雷獣の肉体に命中しなければ何の意味もない。
生半可な攻撃は全て、雷獣の電撃によって無力化されてしまうということだ。
「……っ! これならどうだ……指鉄砲!!」
自身の先制攻撃が尽く迎撃されながらも、鬼太郎はさらに強力な指鉄砲を雷獣に向かって撃ち放った。
鬼太郎が全霊を込めて放つ妖気弾だ。いかに雷獣の雷が強力でも、それらを押し除けてその身体にダメージを与えることができただろう。
『——!!』
「なっ!? き、消え……いや、移動したのか!?」
だが次の瞬間、雷獣は鬼太郎の指鉄砲を俊敏な動きで回避した。その図体からは想像も出来ないほどの速さ、まるで稲妻のような速度で鬼太郎の後方へと移動したのである。
これには鬼太郎も思わず消えたと、そう錯覚するほどの高速移動であった。
『アア、アアアアアアア!!』
雷獣はそのままの速度を維持し、鬼太郎から逃げるように駆け抜けていく。
その移動先に——警察車両がバリケードを形成していようと、お構いなしに突っ込んでくる。
「ひぃっ!? 退避!! 退避!!」
迅雷の如き勢いで突撃してくる雷獣に対して素早く退避命令が出され、警察官たちは命からがら退避していく。
しかし、雷獣の体当たりをまともに食らったパトカーが数台ほど空中を舞い、破片や車体そのものが雨のように降り注いでくる。
「——!!」
そのとき、草平や雪の頭上からも一台のパトカーが落下しようとしていた。子どもたちの危機に、警察官たちなどは自身の身を守ることが精一杯で誰も気付くことが出来ないでいる。
「あっ……」
それにもしも気付いたところで、これは『手遅れ』だと誰もが思うだろう。
見上げれば、すぐそこまで自分たちを押し潰さんと迫ってきている車体。草平の口からも呆けるような声が漏れる。
もはや恐怖を感じる間もなく、その命は呆気なく終わりを迎えようとしていた。
——……死ぬ?
そんな絶体絶命の最中、スローモーションで進む思考の内側で、雪という少女が死という現実に向き合っていく。
——死んじゃう……このままだと、私が……草ちゃんが死んじゃう?
日々を普通に生きていて、死というものを身近に感じる瞬間などあまりないだろう。だがそれでも、終わりの時は唐突に、そして誰にでも平等にやって来るもの。
——……ダメ!! そんなのは……絶対ダメ!!
だが、雪の中の本能——『獣の生存本能』が、その死を良しとせずに昂り始める。
——死なせない!! 何があっても……守って見せる!!
そう決意した瞬間、彼女の身体に異変が起こる。
それは、まさに一瞬の出来事であった。
雪という少女がその場に四つん這いになったと思えば——その身体がふわっとした体毛によって覆われていく。
ピンと尖った耳、長く伸びていく鼻先。
口の端が裂けたように広がっていき、そこから牙が垣間見えた。
雪という人間だった少女が、瞬きの間に一匹の獣と化す。
その姿は——まさに『おおかみ』だ。
既に絶滅したとされる、一匹の二ホンオオカミがその姿を晒していった。
「雪、おまっ……!!」
「草ちゃん! 口閉じて!!」
雪がおおかみへと変貌を遂げたことに草平は何かを叫ぼうとしたが、それよりも先に雪が彼の襟元をくわえ込む。
その小さな体からは想像も出来ないほどの力で草平の身体を引っ張り、俊敏な速さで駆け出していく。
「うわっと!?」
「っ!!」
刹那、二人がさっきまでいた場所に落下して来るパトカー。
ほんの一瞬でも遅れていたら、二人揃って下敷きになっていただろう。雪と草平は間一髪のところでその命を長らえた。
「雪……ありがとう、助かったよ」
「うん……」
危機を回避するや、草平は雪に助けられたと彼女に礼を言う。彼は雪がおおかみになったことに関してはあまり驚いておらず、雪もすぐにその姿を人間のものへと戻していく。
彼女がおおかみになっていた時間は本当に僅かであり、他の人間たちにも見られていなかった。皆、雷獣の方に注意が向いていたため、誰も雪の変化になど目を向けていなかった。
たった一人を除いて——。
「——今のは……キミはいったい!?」
「——!!」
そう、なんとも間が悪いことに、彼に——ゲゲゲの鬼太郎に、おおかみになる瞬間を目撃されてしまっていた。
雪がただの人間でないこと、彼女が『おおかみこども』であることが彼にバレてしまったのであった。
×
富山市内でも、大きな総合病院。
日も暮れ、既に通常の診察時間が終わっている筈の病院内だが、その受付や外来フロアは大勢の人たちでごった返していた。
「——急いで!! すぐに手術を!!」
「——軽傷の方をこちらへ!! 落ち着いて……順番を守ってください!!」
「——うぅう……痛い! 痛いよ!!」
忙しそうに動き回る病院スタッフに、大小様々な怪我を負って押し寄せてくる負傷者たち。これら全て——雷獣の暴挙に巻き込まれた人々である。
あの後、雷獣は発電所まで一直線に駆け抜けていき、ありったけの電気を吸い上げていった。腹を満たしたことで一旦は落ち着いたのか、今は山の方へと立ち去っている。
だがその道中、街中を駆け抜けていった雷獣が自然放出している電撃により、大勢の人間たちが傷を負うことになってしまったのだ。さらには発電所が襲われたことで多くの世帯で停電が起き、至る所で二次被害が起きている。
この病院とて、自家発電装置が機能していなければ患者を受け入れることすらままならなかっただろう。
まさに雷獣は歩く災害そのものだ。
雷獣自身にその気があろうとなかろうと、奴はそこに存在するだけで周囲のものを傷付けていくのだ。
「いてて……」
「草ちゃん、大丈夫?」
そうした中、雪と草平も怪我人としてこの病院まで運ばれていた。
「かすり傷だってこの程度……お前の方こそ……足、大丈夫なのか?」
「うん……軽く捻ったくらいだから……」
と言っても、二人は比較的軽傷で済んでいたため、簡単な手当を受けた上で今は待合室で待機している。
このまま自力で帰ってもいいのだが、未成年なので一応は保護者が迎えに来なければならないとのことだ。学校側に連絡を取ったこともあり、先生の誰かが迎えに来ると思い、二人は大人しく待っていた。
「——雪!!」
だが二人の予想とは裏腹に、子供たちを迎えに来たのは教師ではなかった。
雪の名を叫びながら駆け寄ってきた彼女は、その顔にどこか幼さを残しながらもその瞳にしっかりとした『芯』を宿した大人の女性。
彼女はその顔に心からの安堵を浮かべつつ、小さな雪の身体を力一杯に抱きしめた。
「お、お母さん!? ど、どうしてここに……」
その女性——実の母親に一目も憚らずに抱きしめられ、雪が恥ずかしさと戸惑いから目を見開く。
「花さん……どうしてここに?」
草平も、雪の母親——花と面識があるのか。彼女がこんなところにいることに驚いていた。
花は県内でも田舎の、それもかなり山の方の一軒家で暮らしている筈だ。実の子供のためとはいえ、こんな市内の病院まで、わざわざ迎えに来てくれるとは思ってもいなかった。
「学校側から連絡があってね。偶々近くにいたし……いても立ってもいられなかったから……怪我は大丈夫?」
「うん……大丈夫、ちゃんと診てもらったし……」
「そう……草平くんも、平気?」
「あっ、はい……俺も大丈夫です……わざわざありがとうございます」
だが花は雪のことは勿論、草平にも気遣いの言葉を掛けた。
大人として子供の心配をするのは当たり前のことかもしれないが、母親と疎遠となっている草平にはその気遣いが嬉しく、思わず口元に笑みなんて浮かべてしまう。
「ただ……」
「ただ……どうかしたの?」
ところが、草平はすぐに顔色を曇らせてしまう。その視線がチラリと——先ほどから、ずっと雪や草平たちの様子を監視するように伺っている『少年』へと向けられていく。
「——貴方がこの少女の母親ですか?」
「キミは……?」
少年は花に疑問を投げ掛け、花も彼が何者かを問い掛ける。
「初めまして、ゲゲゲの鬼太郎です……」
「…………」「…………」
少年——妖怪であるゲゲゲの鬼太郎は、花を真正面に見据えながら挨拶をする。そんな何でもない会話にも、雪や草平といった子供たちが緊張で身を固めてしまっている。
「そう身構えんでも……何も取って食おうというわけではないんじゃ」
「あら!?」
するとそんな子供たちの緊張を気に掛けつつ、鬼太郎の頭からひょっこりと目玉おやじが顔を出す。
人ならざる小さな目玉おやじの存在に、花は口元に手を当てて驚きを露わにするが、そこまで大仰なリアクションではなかった。
大人としての余裕か、あるいは『そうしたもの』に慣れているのか。
「そっちの女の子、雪ちゃんと言ったか……その子、普通の人間ではあるまい?」
例の女の子——おおかみに変化した少女の正体について触れながら、目玉おやじは相手の反応を伺う。
「雪……?」
「ごめんなさい……お母さん」
目玉おやじの言葉に花が雪の方を振り返った。
正体がバレてしまったことを責めているわけではない優しい口調だったが、雪は怒られた子供のように萎縮してしまっている。
「雪は悪くないんです、花さん!! こいつ、俺を助けようとして……それで!!」
それに対し、草平が雪を庇って弁明の言葉を絞り出していく。雪の正体がバレてしまったのは自分のせいだと、彼女が花に怒られないようにと必死だ。
「ううん、責めているわけじゃないの。雪がそうしなければならないと思ったのなら……きっとそれが正しいことだから。心配しないで……ねっ?」
「お母さん……」
だが花は草平に心配はいらないと笑顔を向け、雪にも落ち着くように言い聞かせる。自身の子供のことをよほど信頼しているのだろう。
「……分かりました。この子のこと、全てお話しします……」
その上で、花は鬼太郎や目玉おやじと向き合っていく。雪の正体を知られてしまったようだが、どうやら相手の方もただの人間ではないようだ。
ならば話しても大丈夫かもしれないと、鬼太郎たちのことを信用して口を開き掛ける。
「ただ少し込み入った話になると思いますので……ここではちょっと……」
ただ病院で話すのは不味いと、とりあえず場所を移すことを提案していく。
「——既にお察しの通りだと思いますが……雪は普通の人間ではありません」
「——っ!!」
車の運転中、雪の事情について花が徐に口を開く。
現在、一行は自動車で花や雪の家へと向かっていた。運転席には花が。隣の助手席には雪が。後部座席にはゲゲゲの鬼太郎と目玉おやじが座っている。
ちなみに、車内に草平の姿がないのは彼だけ先に学校の寮に送り届けてきたからだ。彼も雪がおおかみであることを知る数少ない人間だが、詳細を全て把握しているわけではない。
雪も、まだ草平に全てを知られる心の準備が出来ていないということで、今回は遠慮してもらった。その雪自身も、草平と一緒に学生寮に戻ってもよかったのだが、これは自分のことだと母親と鬼太郎の話に同席すると言って聞かないでいる。
こうして、ゆっくり腰を据えて話が出来る場所として自宅へと向かっているわけだが、簡単な経緯だけでもと花は言葉を紡ぎ始めていく。
「私はただの人間ですけど……この子の父親……彼がおおかみだったんです」
花の話によれば、花自身は普通の人間だが、彼女の夫である男性がおおかみ——即ち妖怪に類するものだったらしい。
らしいと言うのは、詳しいことは花にもよく分からないからだという。しかし、花は彼がおおかみであることを知って尚、彼と一緒になると決心したのだ。
誰かを好きになるということに理屈も理由も、種族の垣根すらも意味はないと言うことだろう。
「……そのお相手の男性は……今はどこに……?」
そういった男女の恋愛に関し、未だにはっきりと分からないでいる鬼太郎。とりあえず、その相手の男性が今どこにいるかを尋ねた。
話の流れからして当然と言えば当然の質問だろうが、その問いに花は僅かに表情を曇らせていく。
「ずっと昔に事故で……彼が亡くなってからは……私が一人でこの子たちを育ててきました」
「それは……すみません……」
「いえ、大丈夫ですよ」
既に亡くなっているという事実に、デリカシーのない質問をしてしまった鬼太郎が頭を下げた。だが花は気にしないでいいと、笑みを浮かべてくれる。
「…………この子たち、ということは他にも兄弟がおるのかな?」
ふと、目玉おやじは花の言葉から、雪以外にもおおかみこどもがいることを推察する。雪一人であれば、『この子たち』などという表現は使わないだろう。
「ええ……雨という男の子が一人。色々あって……家を出ていってしまいましたが……」
「…………」
雨——というのがその男の子の名前らしい。
家を出ていってしまったというその子のことを語る花の表情は、死んだ夫のことを語るとき以上に少し暗めだ。助手席に座る雪の表情も明らかに強張っている。
「…………」
先ほどの失言もあってか、鬼太郎はその息子さんについてあまり込み入った事情を聞けないでいる。
花の方から、その息子さんに付いて話してくれるのを待つしかなかった。
「さっ、着きましたよ。ここが私たちの家です」
そうして話している間にも、一行は花たちの実家へと辿り着く。そこは市内からかなり離れた田舎の方の、さらに山の近くにポツンと建てられた一軒家であった。
「大きいですね……」
第一印象、鬼太郎はその家の大きさに思わずそのまんまの感想を溢していた。
それは家というより、屋敷と呼んでいいほどに大きな古民家であった。一家族どころか、三世帯くらいの大家族が住めそうな広さだ。
建物自体もかなり古く所々に痛みこそあるが、きちんとリフォームがされているため住む分には何ら支障はなさそうだ。
庭や離れにある畑も綺麗に整えられており、十分に自給自足の生活を成り立たせることが出来ている様子である。
そんな立派で大きな家に、今は花が一人で暮らしているというから鬼太郎も驚きである。
「とりあえず中に上がってください。話の続きはそれから……?」
そんな、自慢の我が家に花は鬼太郎を招き入れようとする。だがふと、その足が庭先で止まった。
「お母さん……!?」
「どうかしましたか……っ!?」
花のリアクションに雪が首を傾げ、鬼太郎が訝しがるも——すぐにその理由を理解する。
「————」
何かいる。
既に完全に日が沈んでいて周囲は真っ暗。灯りも付いていなかったためによく見えないが、家の庭先に何者かの気配があったのだ。
「……野生動物? いや、でも……」
この辺りは山が近いこともあり、猿やら猪やら、熊などがいつ出没してもおかしくはない。
しかし、この家はおおかみこどもたちの匂いが今も染み付いているため、野生動物たちは全く近寄ろうとしない筈と。それを分かっているからこそ花は困惑していた。
いったい何者が、その暗闇の向こうで息を潜めているのだろうと。恐る恐る、警戒しながらその気配の元まで近づいていく一同。
すると暗闇の中から——瀕死の体で一匹の獣が顔を出した。
「——はぁはぁ……」
瀕死の状態で息を切らしているそれは、一匹の手負いの『ニホンオオカミ』であった。火傷や擦り傷など、その全身に見るからに痛々しい怪我を負っている。
そんなおおかみの傷だらけの姿を目にした瞬間、『その子』の名前を叫びながら花が弾かれたように飛び出していた。
「——雨!?」
「——あ、あめ……!?」
母親より一歩遅れながらも、雪もそのおおかみへと駆け寄っていく。
二人が駆け寄りその身体に寄り添うや、おおかみは張り詰めていた気が抜けるように、ぐったりと気を失ってしまう。
「い、急いで手当を……雪、手伝って!!」
「う、うん!!」
かなりの重傷、その子の容体に慌てながらも、すぐに手当を施そうと花は雪に声を掛ける。雪は動揺しながらも、おおかみの手当てに全力を尽くすべく、家の中を慌ただしく駆け回っていく。
「もしかして……」
「花さん……その子が雨くんですかな?」
そんな二人の必死な姿に、鬼太郎や目玉おやじが手伝おうとする意志を見せながらも問いを投げ掛けていた。
「ええ……この子が雨です」
鬼太郎たちの疑問におおかみの身体を抱き抱えながら、花はあるがままの事実を伝えていく。
「——人間として生きる道を選んだ雪とは逆に……おおかみとして山で生きることを選んだ……私の息子です」
人物紹介
花
原作の主人公。おおかみこどもたちの母親。
ものすごくバイタリティーに溢れた女性。
夫である彼を亡くした後も、たった一人で子供たちを育て続けた。
彼
花の夫である『狼男』の男性。名前は公式でも明かされていません。
鬼太郎世界ではとりあえず妖怪、あるいは半妖として描写していきます。
彼の突然過ぎる死……それでも、めげずに子供たちを育てる花が本当に強い。
雪
花と彼との間に生まれた、おおかみこどもの長女。
元々は野生児のような性格でしたが、途中から大人しめの性格へとクラスチェンジ。
『人間』として生きていくことを決め、この作中では現在は中学二年生とさせていただきました。
雨
前半にも登場したニホンオオカミ。おおかみこどもの長男で雪の弟。
元々は大人しめの性格でしたが、山で狐の先生から様々なことを学び野生に目覚めていく。
『おおかみ』として生きていくことを決め、山で先生の後を継ぐべく奮闘中。
藤井草平
雪と同学年の男の子。
いきなり初対面の女の子に獣臭いとか言っちゃう割と失礼な子だが、雪の正体を知ってしまいながらも、それを黙っていられる気遣いを見せられる。
彼の母親は……昔はヒステリックになるほど心配しておきながら、今では新しい男と……その男との間に生まれた子供に夢中と……もうなんか色々とダメだ。
信乃
雪の小学校に入学してからの親友。
中学校も同じらしく、今も仲良しであることが手紙の内容からも伺える。
前書きにも記したように、次回で完結予定。
次回からは……鬼太郎の世界観を『夏』に移行させていきたいと思っています。