ゲゲゲの鬼太郎 クロスオーバー集   作:SAMUSAMU

20 / 150
今回の犬夜叉のクロスに限らず、前回の『デュラララ!!』と共通したクロスにおける注意点。

原作において、犬夜叉という物語の現代は1990年代が舞台とされています。
しかし、こちらのクロスでは鬼太郎6期の時間軸に話を合わしているため、ヒロインであるかごめが暮らす現代を2019年くらいに設定しています。
そのため、会話の流れにその時代に流行ったものや、本来なら原作に登場しないようなスマホなどが登場します。
読む際に混乱しないよう、どうか気を付けて下さい、


犬夜叉 其の②

「——う~ん! やっと終わったあ!!」

 

 日暮かごめ、15歳。最後の学力テストを終えたという達成感を胸にガチガチに固まった体を伸ばして凝りをほぐす。ここ最近、戦国時代を走り回っていることが多い彼女からすると、机でじっと答案用紙と向かい合っている姿勢はかなり堪えるものだった。

 

 ——さてと……テストも終わったし、また四魂の欠片を集めにいかないとね……。

 

 学生としてやらねばならないことを一段落させ、かごめはあちらに戻ってやらねばならないことを思い浮かべる。

 戦国時代で彼女は犬夜叉を始めとする仲間たちと共に旅をしている。その目的は宿敵たる奈落を倒すことでもあるが、一番の目的は『四魂の玉』の欠片を集めることだ。

 なにせ、四魂の玉がバラバラに散ってしまった原因はかごめの不注意にあるのだから。彼女としてはその責任を取らねばならない。

 

 ——四魂の欠片を集め終えたら……わたし、もうあっちに行く必要もなくなっちゃうのかな?

 

 しかし、その目的を果たせばかごめがあちらの時代に行くべき理由がなくなる。そうなれば必然的にも戦国時代の人々と——犬夜叉とも別れを告げなければならなくなるだろう。

 かごめはそのことを考えるたび、切なくなるような気持ちに胸を締め付けられる。

 

 ——犬夜叉……この間のこと、引きずってなければいいけど。

 

 特にかごめにとって犬夜叉との別れは耐えがたいものがある。

 彼のことを考え——彼女はこの間の出来事で犬夜叉が傷ついていないかを心配する。

 

 先日、かごめたちはとある農村を妖の群れからは守った。だが、村人の口からはお礼でもはなく、罵声の言葉が送られた。半妖という稀有な存在である犬夜叉を差別する、心ない誹謗中傷だった。

 

 別に、犬夜叉たちはお礼が欲しくて村人たちを助けたわけではない。

 しかし、感謝されないだけならまだしも、あのような批判を受けるのは筋違いと、思わず村人に怒鳴りたくなってしまった。

 ましてや、それが『大切な男の子』を傷つける言葉なら尚更である。

 

 ——半妖って……そこまで嫌がられるものなの? そんなに……疎まれなきゃいけない存在なの?

 

 現代人であるかごめからすれば半妖と妖怪がどう違うのか、その境界線がいまいち理解できない。

 

 何故、あそこまで村人たちが犬夜叉を忌避するのか?

 何故、犬夜叉の腹違いの実の兄・殺生丸が彼を『汚れた血』と呼び、忌み嫌うのか?

 

 かごめからすれば、本当に理解できないことばかりだ。

 

 ——犬夜叉……。

 

 理解できないからこそ、彼女は半妖である犬夜叉の苦しみを真の意味で共感することができない。

 そんな不甲斐ない自分に、かごめはひたすら自己嫌悪に陥る。

 

「かごめ!! なーに、暗い顔してんのよ!?」

「せっかくテストが終わったんだから! もっと、良い顔しなよ!」

「そうですよ!」

 

 すると、落ち込む彼女にクラスメイトの由加、絵理、あゆみの三人が元気に声を掛けてくる。同級生の中でも特に仲の良い友人で、彼女たちは学校を休みがちなかごめをいつも心配してくれる。

 

「うん……そうだよね」

 

 彼女たちに心配をかけまいと、何とか無難な笑顔を向けるかごめ。だが、由加たちはそんな彼女の強がりなどお見通しなのか。いつもいつも、かごめの悩みの本質をついてくる。

 

「どうせあれでしょ? また例の彼氏のことで悩んでるんでしょ?」

「——えっ?」

 

 例の彼氏——犬夜叉のことである。

 学校の皆には当然、犬夜叉が半妖であることも、戦国時代で旅をしていることも秘密にしている。

 しかし、どういうわけか。この三人はかごめの口から語られる犬夜叉のことを『不良でハーフな二股な彼氏』と認識でいる。

 色々と誤解はあるが、あながち間違いでもないため、かごめはそれを強く否定することができない。

 

 ——それにしても……なんで、いつもいつも分かっちゃうんだろう?

 

 かごめは何故、由加たちがその犬夜叉のことで自分が悩んでいると見破るのか、その直感にいつも驚かされる。

 もっとも、これに関しては『かごめの顔に分かりやすく書いてある』としか言いようがない。ここ最近の彼女の悩みは全て犬夜叉に関連した出来事ばかり。由加たちでなくても、ある程度の予想はついてしまうものだ。

 

「……ねぇ、かごめ。せっかくテストも終わったんだし、これからみんなで買い物にでも行かない!?」

「えっ! か、買い物!?」

 

 気落ちするかごめを心配してか、由香が遊びに行かないかと提案してきた。確かにテストの影響で午後の授業はまるまる休みだ。テスト終わりに遊びに行こうと誘われても何ら不自然はない。

 

「ありがとう。けど、わたし……」

 

 だが、かごめはその誘いをやんわりと断ろうとした。

 今日は早く家に帰り、明日再び戦国時代に旅立つための準備をする予定でいた。

 それに——今は戦国からこっちに犬夜叉が来ている。

 家で大人しくしているように言い聞かせはしたが、彼が本当に大人しくしているか、それはそれで不安がある。

 自分が側にいてやらないとという義務感から、由加の誘いを断ろうとした。だが——

 

「あ~あ、ダメか……。やっぱり女の友情より、男を取るのね。なんか寂しい……」

「い、いや! そういうわけじゃ……」

 

 まるで先手を打つかのように、由加はそのようなことを呟く。すると、それに悪ノリするかのように絵理とあゆみの二人も揃って悲しそうな顔を作る。

 

「所詮女同士の関係なんてその程度、男をきっかけに壊れていくのよ。しくしく……」

「悲しいわ、かごめちゃん。しくしく……」

 

 わざとらしく、クラス中に聞こえるような声でしくしくと泣き真似する友人たち。

 周囲から何事かと好奇の視線が向けられ、かごめはいたたまれない気持ちに思わず叫んでしまった。

 

「ああ~、もう、分かった! 分かったから!! 付き合う、付き合えば良いんでしょ!?」

 

 仕方なさそうに叫ぶかごめだが、一応いつもと同じ時間には帰宅できるだろうと冷静な判断も出来ていた。

 それに、なんだかんだで由加たちには色々と相談に乗ってもらったりと、普段から世話になっているの。

 今日くらい、彼女たちに付き合おうとかごめは意を決した。

 

「さすが、かごめ!! 話が分かる!!」

 

 かごめから了解の言質を取るや、先ほどの嘘泣きを瞬時に止め、笑顔で微笑む由加たち。

 現金な彼女たちの態度に呆れつつも、かごめは久しぶりに友達と街へ繰り出せることを心から楽しみにするのであった。

 

 

 

×

 

 

 

「う~む、なかなか見つからんのう」

「そうですね、父さん」

 

 鬼太郎と目玉おやじが、ゲゲゲハウスで親子二人っきり。アミという少女が捜してくれと頼んできた『犬耳の青年』——犬夜叉が一向に見つからないことに、彼らは頭を悩ませる。

 もっとも、鬼太郎たちは犬夜叉の名前さえ知らず、その容姿もクレヨンで描かれた似顔絵だけが頼りだ。

 ましてや、相手は戦国時代からタイムスリップしてきた身の上。普段は現代にいない彼を捜し当てるのは、いかに鬼太郎たちとて困難を極めるだろう。

 

「とりあえず……一反木綿がそろそろ里帰りから戻ってくる筈ですから、帰ってきたら彼にも頼んでみます」

 

 しかし、当然ながら鬼太郎はそんなことを知る由もない。当面の対策として人手を増やすという方法でしか捜索手段を広げることしかできない自身の不甲斐なさに肩を落としながら、彼は目玉おやじに近況を報告する。

 

「そうじゃな……ところで——」

 

 息子の報告に同意するように頷く目玉おやじ。ふと、彼は周囲に誰もいないことを気にしながら、鬼太郎に別件についても尋ねていた。

 

「鬼太郎よ、例の……『大逆の四将』についてはどうなっている?」

「……そっちの方も並行して皆にお願いしていますが、まだ手掛かりがありません……」

 

 それはアミの依頼とは別に、以前から仲間たちと共に追っている『大逆の四将』という鬼太郎たち自身の問題についてである。

 

 

 大逆の四将——それは歴史上において『この世とあの世の理を破壊する』ほどの大罪を犯した極悪妖怪たちのことである。

 単純な強さではなく、その能力で人間界に多大な被害をもたらした妖怪たちのことを指す。

 その罪の重さ故に、地獄の深淵にてその魂を封じられていた彼らだが——それが数ヶ月前。何者かの手引きにより、脱獄したのである。

 

 鬼太郎は閻魔大王との取引により、その大逆の四将の魂を全て回収しなければならない。

 もしもその約束を違えれば、鬼太郎がその四将の代わりに牢に繋がれ、せっかく蘇ることができた猫娘も再び地獄へと送り返されてしまう。

 

 

「うむ、あと二体。どうにかしてあやつらの魂を回収しなければ……」

 

 既に鬼太郎たちは四将のうち、黒坊主と伊吹丸。二体の妖怪の魂を回収済みだ。

 あと半分——残りの四将の魂を見つけ出し、早急に閻魔大王に引き渡さなければならない。

 

「残る四将は玉藻の前……それと鵺の魂も『あの人間』から取り戻さなければならんぞ」

 

 残る四将は彼らの中でも特に厄介な大妖怪・玉藻の前こと九尾の狐である。

 加えて、もう一体の鵺は既に討伐済みだが、その魂はとある人間の手に握られている。『彼』からもその魂を取り戻さなければならない現状に、目玉おやじは頭を抱える。

 

「……大丈夫です、父さん」

 

 すると、先行きが見えない心配をする父親に、鬼太郎がはっきりと断言するように決意を口にする。

 

「玉藻の前を見つけ出して……彼からも必ず鵺の魂を取り戻します」

 

 必ず玉藻の前を、そして『あの人間』からも絶対に鵺の魂を回収してみせると。

 鬼太郎にしては険のある、どこか強い口調で目玉おやじに己の意思を頑に貫いていた。

 

 

 

×

 

 

 

「ほら、かごめ!! これが最近流行のタピオカだよ!」

「あんたってば、こういうトレンドに疎いんだから……ちゃんとチェックしておかないと、時代に取り残されちゃうわよ?」

 

 街に遊びに出た、かごめと由加たち。

 由加たちはかごめに最近のトレンドドリンク・タピオカを勧めていた。女子中学生らしく賑やかに会話に華を咲かせながら、かごめは友人に奢ってもらったタピオカを珍しげに見つめる。

 

「へぇ……最近はこういうのが流行ってるね。全然知らなかったわ……」

 

 かごめは戦国と現代を行き来しているため、女子中学生にしてはこういった流行を知らないでいる。とりあえず由加に促されるまま、タピオカを口にしてみる。

 

 ——……なんだか不思議な食べ物。犬夜叉に飲ませたらどんな反応するだろう?

 

 その不思議な食感に首を傾げながらも、かごめはついつい犬夜叉について考えてしまう。彼がこのタピオカを口にしたらどんな感想を抱くだろうかと、脳裏に思い浮かべる。

 その後も彼女たちは『インスタ映え』やら、『フォトグレイ』やらと、今どきの女子らしい遊びを満喫。しかし、その度にかごめは「犬夜叉ならこれは……」やら、「犬夜叉ならここで……」とか考えてしまう。

 既にかごめの生活に犬夜叉は欠かすことのできない存在になっているが、その思考に本人は無自覚だった。

 それでも、かごめは由加たちと束の間の楽しい時間を過ごしていく。

 

「皆、今日は誘ってくれてありがとう!」

 

 一通り遊び終え、かごめはそろそろ家に帰ろうかと思い立つ。

 色々と楽しませてもらったが、やはり犬夜叉のことが心配になる。彼が家で大人しく待っているなら、自分も早く帰ってあげなければと、やはりそのように考えてしまう。

 

「え~! もうちょっと付き合いなさいよ、かごめ!!」

「やっぱり、男が大事なのね!!」

 

 帰ろうとするかごめを、またもからかいながら引き止めようとする由加たちではあるが、そこに無理やり連れて行こうという意思はない。

 彼女たちも、かごめがどれだけ犬夜叉——例の不良の彼のことを大事にしているか察しているのだろう。

 

「ははは……ごめんね。この埋め合わせは、また今度するから!」

 

 かごめはどこまでも明るく自分の心配をしてくれる友人たちにありがたい思いを抱きながら別れを告げようと手を振る。

 ちょうど、目の前の信号が点滅していたため、慌てて横断歩道を渡ろうと駆け出す。

 

 

 だがそのとき——かごめは奇妙な感覚に襲われる。

 

 

「…………」

 

 前方から、スラリと背の高い女性が歩いてくる。

 フレアのミニスカートに、スラッと美脚をのぞかせたハイヒール。整った顔立ちに長い髪を赤いリボンでシニオンにまとめている。色香漂うチョーカーやアンクレットといったアイテムも見事に着こなした、まるでモデルのようにスタイリッシュな女性だった。

 同性であるかごめですら思わず魅せられ振り返った。その瞬間——

 

 ——えっ? 妖気……?

 

 かごめは感じ取った。その女性から漂う妖の気配に——

 戦国時代で幾度となく感じ取ってきた、人ならざるものの気配だ。それを現代の街中——しかも、あんなオシャレな女性から感じ取ってしまい、驚きから横断歩道で立ち止まる。

 

「どうしたのよ、かごめ? ……あの女の人がどうかした?」

「綺麗な人よね……モデルみたい!!」

「ほんと、なんか憧れちゃうな……」」

 

 由加たちが不自然に立ち止まったかごめに駆け寄る。彼女たちはすれ違った女性にかごめが見惚れたと思ったのか、そのまま立ち去っていく女性の後ろ姿を見つめながら、由加たちもその女性のモデルのようなスタイルにうっとりと目を輝かせる。

 

「……ううん、何でもない。それじゃ、みんな……また明日ね!」

 

 友人たちがそんな誤解をしている中でかごめは暫し悩むも、すぐにその女性を追いかける。

 

「ちょっと! かごめ!?」

 

 自宅の方とは逆方向に走り出したかごめを、由加たちが困惑して呼び止める。

 それにも構わず、かごめは曲がり角の向こうへと消えていった妖怪の女性を捜していく。

 

 

 

 

「妖気はこっちから……いた!!」

 

 思いの外、女性が早足だったため一旦は見失うかごめだったが、先ほどの妖気を頼りになんとか彼女を見つけ出す。彼女は誰かと待ち合わせでもしているのか、スマホの画面を操作しながら静かにそこで佇んでいた。

 

「あ、あの……」

 

 意を決して彼女に声を掛けるかごめ。

 

「ん? ……何? 私に何か用?」

 

 かごめのような中学生にいきなり声を掛けられ、女性は少し驚いたのだろう、チラリと視線を向ける。しかし、すぐに目線を操作するスマホへと戻し、声だけでかごめと応対する。

 その仕草だけ見ると、本当にただの現代人にしか見えなかったが、かごめは恐る恐る核心をつく問いかけを投げる。

 

「不躾でこんなこと聞くのは失礼かと思いますが……あなた、妖怪ですよね?」

「……!」

 

 そのときになって、ようやく女性はスマホを操作する手を止める。

 かごめの顔をまじまじと見つめ、何かしらの言葉を返そうと口を開き掛ける。

 

「——猫姉さん!!」

 

 だが、それを遮るタイミングで元気な女の子がこちらへと駆け寄って来た。かごめより、少し背の低い女の子。同じ中学生くらいだろうか、妖怪の女性を猫姉さんと呼び、親しげな笑顔を浮かべていた。

 

「遅かったじゃない、まな……」

「…………」

 

 その女の子をまなと呼ぶ『猫姉さん』。彼女はまなを背に庇うようにして立ち、自分のことを妖怪と見抜いたかごめに警戒の目を向ける。

 かごめの方も声を掛けたはいいが、どうすべきかは考えておらず、やや緊張した面持ちで立ち尽くす。

 

「? どうしたんですか、猫姉さん。その人……知り合いですか?」

「いえ、知り合いじゃないわ。けど……」

 

 静かに対峙し合うかごめと猫姉さん。その光景を首を傾げながらまなが見つめている。

 そのまま、互いに出方を窺うこと数秒——

 

 

「あの……時間も勿体ないですし……とりあえず、そこの喫茶店でお茶でもしませんか?」

 

 

 二人の間を取り持つかのように、まなが彼女たちをティータイムへと誘っていた。

 

 

 

 

「——たく、かごめの野郎……いつまで待たせる気だよ!」

 

 ちょうどその頃、日暮かごめの実家で彼女の帰りを待っていた犬夜叉のイライラが最高潮に達する。

 朝の段階ではかごめの帰りを『待つ』と決めた彼だが、途中で我慢ができなくなり、気がつけば家を飛び出していた。

 かごめの言いつけ一部守り、帽子で犬耳こそ隠してはいるものの、それ以外は普段どおりの格好で街中を歩き回る。

 

「へっ! どこに逃げても、無駄だぜ! お前の匂いならすぐに追えんだよ!!」

 

 犬夜叉はかごめの居場所を探るため、道端に四つん這いになりながら犬のように鼻を鳴らす。犬よりもさらに数倍の嗅覚を持つ犬夜叉の鼻を持ってすれば、道路上に残されたかごめの匂いを辿ることは容易だ。

 

「待ってろよ、かごめ!! 今そっちにいくからな!!」

 

 彼女の匂いを見つけたのだろう。

 周囲の視線も、脇目も振らず。犬夜叉は建物の上を跳び回りながら、急ぎかごめの元へと駆け出していた。

 

 

×

 

 

 

「——それにしても驚きました……」

 

 犬夜叉が自分を捜して街中へと繰り出しているとも知らず、かごめは先ほど出くわした女性たち。妖怪・猫娘と調布市の中学二年生・犬山まなの二人と近場の喫茶店へと移動していた。

 腰を落ち着けたところで、かごめは改めて妖怪である猫娘の正体について聞かされる。

 

「猫娘さん、あのゲゲゲの鬼太郎の仲間だったんですね」

 

 ゲゲゲの鬼太郎のことは、かごめも知ってはいた。

 かごめの祖父は実家の日暮神社の宮司であり、軽い結界を貼れる程度には神職者として信心深い。また色々と物知りで、いちいち物の由来や伝承などを語りたがる年寄りくさい人なのだが、その話の中にゲゲゲの鬼太郎のことも含まれていた。

 祖父曰く、下駄の音と共にやってきては妖怪と人間との間に起きたトラブルを解決してくれるという、変わり者の妖怪とのこと。

 妖怪の存在など、犬夜叉と出会う前までは本気で信じていなかったかごめは、その話を眉唾物程度に聞き流していた。だが、彼と共に戦国時代を旅するようになってからは『見えないもの』である彼ら妖怪のことを信じるようになった。

 近しい存在として、七宝や雲母などにも親しみを持てるようになった。

 

「そっか! かごめさんも、妖怪と仲良しなんですね!!」

 

 かごめに妖怪の知り合いがいると聞かされるや、まなは嬉しそうに表情を輝かせる。

 彼女は鬼太郎や猫娘と友達で、人間と妖怪がもっと仲良くなれば良いなという思いを日々抱いているとのこと。

 

「ははは……まあ、仲が良いばかりじゃないんだけど」

 

 だが、そんなまなの純粋な思いにかごめは苦笑いする。

 妖怪との出会いの主な舞台が戦国時代であるかごめ。時代が時代なだけあって、平然と人を喰らったり、殺したりするタイプの血生臭い妖怪の方が圧倒的に多い。

 まなのように、純粋に人と妖怪との共存を信じられるほど、夢のある考えは抱けない。

 半妖である犬夜叉への差別的な扱いを目撃した後では、尚のことだ。

 

「……猫娘さん。一つ……聞いても良いでしょうか?」

「何かしら……」

 

 ふと、犬夜叉のことを思い出し、かごめは猫娘に話を振る。

 まなとは違い、未だにかごめへの警戒心が完全に解けていない猫娘。やや険のある態度で応じるも、それに構わずかごめは彼女に尋ねていた。

 

「猫娘さんは……半妖について、どんな考えを持っていますか?」

 

 半妖。戦国時代では半端者として、人間からも妖怪からも忌み嫌われていた。

 現代において、人間は妖怪の存在を信じない者の方が増えたため、半妖に関して特にこれといった嫌悪も好意も抱いていないと思われる。

 しかし、妖怪たちは? 五百年経った今も、半妖を疎ましいものと扱っているのだろうか?

 そのことが気になってしまい、かごめは現代の妖怪である猫娘に半妖について問い掛けていた。

 

「……半妖、ですって?」

「っ……!」

 

 すると、かごめの口から半妖の単語を聞くや、猫娘は露骨に嫌そうな顔をする。

 その反応にかごめは「やはり今も半妖は嫌われる存在なのかと……」と、悲観に暮れる。

 

「ああ、勘違いしないで。別に半妖の存在自体を否定するつもりはないの」

 

 すると、かごめのがっかりした表情に気づき、慌てて訂正を入れる猫娘。

 

「ただ……私の知り合いにも半妖がいるんだけど……そいつがまた、どうしようもないやつなのよ。いつもいつも鬼太郎に迷惑ばっかかけて!!」

「ああ、ねずみ男さんですか……」

 

 どうやら、猫娘は半妖という存在そのものにではなく、知り合いの半妖個人に対していい感情を持っていないようだ。猫娘の言葉を否定できないのか、妖怪に好意を持っているまなですら、なんとも言えぬ顔色で視線を泳がす。

 

「あ、そ、そうなんですか……」

 

 二人の反応に何となく事情を察し、かごめはそれ以上の深追いを止めた。コーヒーを口に含み、とりあえず一呼吸入れる。

 

「そ、それより……かごめさん! かごめさんの話、もっと聞かせてくださいよ!」

 

 少し重苦しくなった空気を払拭しようとしてか、まなは明るい声でかごめにもっと詳しく話を聞きたいと願い出た。普段、こういった話を友達とはしないのだろう、同好の士を見つけた喜びに目を輝かせている。

 

「……ええ、良いわよ」

 

 そんなまなのことを微笑ましく見つめながら、かごめも同意する。

 かごめも、普段は友達に言えないような妖怪の話を出来て嬉しい気持ちがあった。

 戦国時代へのタイムスリップという、ファンタジーな内容こそ話せないが。彼女は妖怪のこと、旅のこと、仲間のこと、犬夜叉のこと——。

 

 時間を忘れ、立場を忘れ——ただの女の子として、猫娘やまなとの女子トークに華を咲かせていく。

 

 

 

 

「——スンスン……見つけぜ、かごめ!!」

 

 日暮かごめの匂いを追い、とうとう犬夜叉はその視界に彼女の存在を捉える。犬夜叉のいるビルの上からは、喫茶店の中で誰かと楽しそうに話しているかごめの姿がよく見える。

 

「くそっ! あいつ!! 俺のことほっといて何を楽しそうに話してやがる!!」

 

 犬夜叉は、そんな見知らぬ誰かと楽しそうにお喋りしているかごめがひどく気に入らなかった。

 犬夜叉とかごめは確かな絆で結ばれた者同士だが、それでも仲良く話すより喧嘩する方が多い。喧嘩するほど仲が良いとも言うが、犬夜叉だって怒っている彼女といるよりは、笑顔の彼女と一緒にいたい。

 そんな彼女が、別の誰かの手によって笑顔にさせられている。

 その事実に——犬夜叉は激しく嫉妬心を抱く。

 

「おい、かごめ!! てめぇ、こんなところで何遊んでやが——」

 

 子供じみた独占欲から、とっとと彼女を連れて戦国時代に戻ろうと、急ぎかごめの元へと駆け寄ろうとする。

 

「——お前さん。こんなところで何しとうとね?」

「……?」

 

 寸前、そんな犬夜叉を呼び止める、妙に訛りがかった声に足を止める。

 彼がその場で振り返ると——空中にふわふわと白い反物が浮いていた。

 

「……なんだぁ? このぼろい布切れ?」

 

 見たままの本音を思わず呟く犬夜叉。すると、ぼろい布切れが怒ったように声を上げる。

 

「誰がぼろいとね!? それと、ただの布切れじゃなかとよ!!」

「うおっ!? 喋りやがった!!」

 

 妙な言葉遣いだが、確かに人語を介する布切れに驚く犬夜叉。そんな彼に対し、布切れは問い詰めるような口調で話しかけていた。

 

「お前さん……妖怪やろ? 怪しいやつばい! この一反木綿の目の黒いうちは、可愛い女子に悪さなんか絶対に許さんばい!!」

 

 

 

×

 

 

 

 一反木綿が犬夜叉の存在に目を止めたのは、単なる偶然であった。

 鹿児島から東京へと、里帰りを終えて戻ってきた一反木綿。彼は仲間への土産を風呂敷に包み、長旅終えた達成感にウキウキしながら東京の空を浮遊していた。

 

「ああ、やっぱり東京の空はゴミゴミしていかんとね。それに引きかえ、九州の空はやっぱ清々しかったとね~」

 

 久々の東京の空を辛口評価しつつ、さっそく故郷の空を懐かしむ一反木綿。

 しかし、いつまでも思い出に浸っているわけにはいかない。とりあえず仲間に帰還したことを告げ、土産物を渡そうとゲゲゲの森の方角へと飛んでいく。

 

「ん? なんね、あれは?」

 

 その道中だ。空の上から一反木綿は、建物から建物へと何者かが飛び移る光景を目の当たりにする。

 いったいどこの誰かと近づいてみたところ、帽子を被った長い銀髪に赤い着物という、見るからに怪しい不審者であったことで、一反木綿はその青年に声を掛けていた。

 

『——なんだぁ? このぼろい布切れは?』

 

 開口一番、失礼にも自分のことを『ボロい』と評する青年・犬夜叉に一反木綿はカチンと憤慨する。

 そして、怒りながら犬夜叉のことを注意深く観察し、一反木綿は彼が人間ではない、妖の類であることを見抜く。

 

「ほんと……見れば見るほど怪しいやつかね。こんなところで何をやっとると!?」

 

 犬夜叉といくつか言葉を交え、一反木綿は彼の行動を怪しむ。

 白昼堂々、ビルの上から何を覗き込んでいたのかと、彼が先ほどまで見下ろしていた喫茶店の方へ一反木綿も視線を向ける。

 

「ん? ありゃ~! まなちゃんと猫娘じゃなかと!? 久しぶりったいね~!!」

 

 そこにいたのはゲゲゲの森の仲間である猫娘と、人間の友達である犬山まなだった。女の子が大好きな一反木綿はさっそく彼女たちの元へ移動しようとする。

 

「おいこら! 待てよ、布切れ!」

「痛っ! ちょ、ちょっと引っ張らんといてぇな~」

 

 しかし、飛んで行こうとする一反木綿を鷲掴みにし、犬夜叉はその行動を阻害する。一反木綿は自分の行動を邪魔する犬夜叉に文句を口にするが、逆に犬夜叉の方が一反木綿へと詰め寄ってくる。

 

「布切れ! お前、かごめと一緒にいる女たちと知り合いか? いったいなんなんだ、あいつらは!? かごめとはどういう関係だ?」

「……かごめ?」

 

 聞き慣れぬ女性の名前に、一反木綿は今一度まなたちの方へと視線を向ける。

 知り合いである彼女たちに混じって、知らない女の子が楽しそうにお喋りしているのが見えた。かごめとはあの少女のことだろう。

 

「おほぉ~、可愛い子ばいね! かごめちゃん言うんか! 素敵な名前たい、お近づきになりたかね!!」

 

 可愛い女の子であれば誰とでも仲良くなりたいと、割と節操のないことを口にする一反木綿。

 そんな色ボケふんどしの言葉に、当然のように犬夜叉は突っかかっていく。

 

「てめぇ、布切れ!! かごめに馴れ馴れしくすんじゃねぇぞ!!」

「うん? お前さん、もしや……」

 

 嫉妬深い犬夜叉の言葉に、一反木綿はまじまじと彼の顔を覗き込む。

 暫し考え込むこと数秒。いかなる思考過程を経てか、彼はとある結論に辿り着き、糾弾するように犬夜叉に向かって声を荒げていた。

 

 

「あっ! 分かったばい!! あんた……あのかごめって子の『ストーカー』ばいね!!」

 

 

 ストーカーの定義。特定の相手を付け回し、つきまといや待ち伏せなどの行為を繰り返す人。執拗に追いかけ回す人。

 ちなみにこの現代において、一人で街へ出かけるかごめに対し、犬夜叉がたびたび行った行為は——。

 

 ①かごめのことが心配だと学校まで追いかけ、押しかけてくる。

 ②放っておくと危なっかしいと、常に彼女の側を離れようとしない。

 ③彼女の匂いを嗅ぎまわり、その居場所を探り当てる。

 

 ……一反木綿の発想も、あながち的外れとは言えない。

 かごめの方に好意がなければ、警察に突き出されても文句は言えまい。

 

「す、すとーかー? なんだそりゃ!? 俺はただかごめのことを守ってやってるだけだ!」

 

 ストーカーという単語を知らない犬夜叉はその言葉の意味を正確には理解できないが、相手の責めるような言葉のニュアンスから、それが良からぬ意味であることを何となく悟る。

 慌てて否定し、自分はただかごめを守っているだけだと主張するが、それが返って逆効果だった。

 

「あ~、はいはい。ストーカーは皆そう言うとよ!」

 

 一反木綿の経験上、それはストーカーがよく陥る思考回路の一つである。

 以前、犬山まなの学校の七不思議に『二階男子トイレのヨースケくん』という妖怪が出没した。彼は『三階女子トイレの花子さん』に好意を抱き、その行き過ぎた思いからストーカーへと変貌。

 そのとき、彼が主張した言葉が「花子を見守っていたんだ~っ!」である。

 犬夜叉とかごめの関係を知らない一反木綿からすれば、彼の「守ってやってる!」という主張と何ら大差なく聞こえてしまう。

 

「とにかく! ストーカー行為は犯罪ばい! 即刻止めんと……鬼太郎しゃんに報告してきつくお仕置きしてもらうとよ!!」

 

 ここで一反木綿が鬼太郎の名前を出したのは一種の警告でもあった。

 日本妖怪で鬼太郎の名を知らぬ者はおらず、彼の活躍に畏れを成す妖怪も少なくない。鬼太郎の名前を出せば、無用な揉め事を避けられることも結構多い。

 今回も、鬼太郎の名前に渋々相手が大人しく立ち去るかと一反木綿は考えた。

 

「あん? きたろう……? 誰だそりゃ?」

「……鬼太郎しゃんを知らんと? もう~、あんたどこの田舎者ばい!?」

 

 しかし、犬夜叉は鬼太郎のことをそもそも知らないらしく、相手の無知さに一反木綿は呆れかえる。

 もっとも、犬夜叉は戦国時代からタイムスリップしてきたため、鬼太郎の活躍を知らなくとも無理はない。

 

「よかと? 鬼太郎しゃんはとっても強いとよ!? お前さんみたいな田舎者のストーカーなんか、けちょんけちょんに——!!」

 

 仕方なく、一反木綿は鬼太郎の強さを伝えようと身振り手振りを交えて解説する。

 それによって、相手が大人しく立ち去ることを期待しながら。

 

 ところが——

 

 

「——おい、妖怪ども。そんなところで何をしてやがる?」

「っ!?」

 

 

 隣のビルから浴びせられたその声に、一反木綿のお喋りが止まる。

 犬夜叉と一反木綿を一緒くたにして『妖怪ども』と呼ぶ男の声。

 

 その男の言葉は妖怪に対する偏見、怒り。そして——並々ならぬ敵意に満ちていた。

 

 

 

 

「あん? なんだてめぇは……?」

 

 妙な布切れに絡まれていたところに、さらに見知らぬ青年が乱入してきたことで犬夜叉の腹の虫の居所がさらに悪くなる。いつも以上に険悪な態度で、チンピラのように眼を飛ばして相手を威嚇する。

 だが、犬夜叉のそこいらの不良が震え上がるような迫力に満ちた眼光にも動じず、青年は位置的にも、精神的にも上から目線で犬夜叉たちを見下してくる。

 

「お前は……鬼太郎の仲間の一反木綿だったな……」

 

 青年はまず、犬夜叉の隣で狼狽する布切れに視線を向ける。青年に睨まれ、一反木綿と名指しされた妖怪は「あ、い、いや……その……」と何故か怯えたように後ずさる。

 次に、青年は一反木綿から犬夜叉へと視線を移動させる。

 その瞬間、相手は何かに気づいたように鼻をひくつかせ、不愉快そうに眉を顰めた。

 

「その匂い。お前……半妖だな?」

「!! だったらどうだってんだ! あん!?」

 

 相手はどういう理屈か、自分の気配を半妖と一瞬で嗅ぎ分けたようだ。犬夜叉はつい先日、助けた村人たちから半妖を理由に激しい罵声を浴びせられたこともあり、喧嘩腰に相手に怒鳴り返す。

 

「てめぇも半妖は許せねぇだの、汚らわしいだのとほざく手合いか? ああん!?」

 

 犬夜叉はうんざりしていた。

 どいつもこいつも、口を開けば半妖半妖と。自分のことばかりかそれに関わる周囲のもの全てをまとめて貶してくる。

 犬夜叉を産み、育ててくれた母親・十六夜を汚らわしいと罵り、一緒にいるかごめたちを物好きと嫌悪する連中ばかりだ。

 青年もそういった連中の類かと、怒りを隠そうともせず吐き捨てる。

 

「……いや、関係ないな」

 

 しかし意外にも、青年は犬夜叉が半妖であることをまったく気にしない。

 

「半妖も妖怪と同じだ。等しく平等に……俺たち人間の敵だ!」

「——っ!!」

 

 さらに眼光を鋭くさせて宣言する青年に、犬夜叉は瞬時に理解する。

 そう、関係ないのだ。目の前この青年にとって——半妖も妖怪も同じ。どちらも排斥すべき対象だということを、敵意に満ちたその目が雄弁に物語っていた。

 

「へっ、そうかよ!」

 

 そこにきて、青年の視線に油断ならないものを感じた犬夜叉。

 彼は警戒するように、懐に差していた鉄砕牙の柄を握りしめる。

 

「……! その刀……妖刀か?」

 

 そこで青年は犬夜叉が妖刀を所持していると気づき、警戒心を露わにする。

 

「何故、お前のような半妖がそんな妖刀を持ってやがる。その刀で何をするつもりだった?」

「けっ! うるせえよ、てめぇには関係ねぇだろ!!」

 

 青年の詰問に突っぱねた返答を返す犬夜叉。それにより、二人の間に流れる空気がますます剣呑なものになっていく。

 隣で見ている一反木綿が「あわわ……」とさらにオタオタしだす。

 

「……その刀をそっちに寄越しな。そうすればこの場を見逃してやらんでもないぞ、半妖」

 

 青年は犬夜叉に刀を引き渡すことを要求してくる。

 当然、そんな理不尽に大人しく従う犬夜叉ではない。

 

「はっ、馬鹿言ってんじゃねぇ! 誰が渡すかよ!! それに、こいつはオメェみてえな人間が扱えるような代物じゃねぇんだよ!!」

 

 犬夜叉の持つ妖刀・鉄砕牙。

 この刀は妖怪であった犬夜叉の父親が息子である彼のために残した守り刀である。一見するとみすぼらしい錆び刀だが、犬夜叉が鞘から抜き放つことで巨大な牙のような刀身へと変化する。

 強力な結界が張られており、純粋な妖怪は鉄砕牙を握ることができない。また人間が握っても妖力が伴わなければ錆びた刀のまま役に立たない。

 実質、半妖である犬夜叉専用の刀なのだ。ただの人間が手にしたところで宝の持ち腐れでしかない。

 

「……残念だったな」

 

 すると、青年は犬夜叉の反抗心に己の意思を固めたのか。

 

「俺はただの人間じゃない」

 

 パーカーの上着を脱ぎ捨て、タンクトップ姿の戦闘態勢に移行する。

 

「けっ、なんだ? やろうってのか?」

 

 相手の戦意に乗せられ、犬夜叉も身構える。

 だが、この時点で犬夜叉はそこまで目の前の青年のことを危険視していなかった。

 所詮はただの人間と、適当に相手をして追い払ってやろうと考えていた。だが——

 

「ふっ、後悔するなよ、半妖! 『鬼神招来』!!」

 

 青年がそう叫ぶや、彼の腕部分に文字が浮かび上がる。

 

『鬼』と一文字。

 

 次の瞬間——その文字通り、青年の両碗が人間のそれから鬼のそれへと姿を変える。

 

「なっ!?」

 

 これにはさすがの犬夜叉も驚愕する。

 先ほどまでは確かに人間だった腕が、突如妖怪の——まごうことなき本物の鬼神の腕へと変貌を遂げたのだ。

 ただの人間ではあり得ぬ芸当に唖然となる。

 

「くたばれ、半妖!!」

「ちっ!」

 

 口を開けたまま硬直する犬夜叉に対し、青年はその豪腕で殴りかかってくる。

 慌てて飛び退いて回避する犬夜叉。青年の繰り出した一撃は彼が先ほどまで立っていた床のコンクリを何の抵抗もなく抉り取る。 

 

「あ~れぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

 鬼神の腕が床を穿つ衝撃波に巻かれ、一反木綿がどこぞへと吹き飛ばされていく。

 犬夜叉は鉄砕牙を抜き放ち、眼前の青年に対し明確な敵意を込めて叫んでいた。

 

「てめぇ!! いったい何もんだ!?」

 

 犬夜叉の怒号に、青年は床にめり込む腕を引き抜きながらゆっくりと立ち上がる。

 半妖である犬夜叉に明確な敵意を、怒りを、憎しみを——あらゆる負の感情を込め、彼は自らの名を名乗る。

 

 

「——鬼道衆・石動零(いするぎれい)

 

 

 今はもう、己一人しかいない鬼道衆の一員としての誇りを胸に青年——石動零は宣言した。

 

 

 

「人間に害をなす妖怪は——俺が全て刈り取る!!」

 

 

 




登場人物
 犬夜叉側の登場人物
  犬夜叉
   原作の主人公。少年漫画の主人公らしく、直情的な性格。
   人間と妖怪との間に産まれた半妖として、二つの種族の間で揺れ動く宿命。
   そして、二人のヒロインとの間で気持ちが揺れ動く二股男。

  日暮かごめ
   原作のヒロイン。現代から戦国時代へタイムスリップしてきた中学三年生。
   巫女としての力に優れ、弓やその霊力で犬夜叉たちをサポートする。
   絶対にスカートの下を見せない鉄壁の防御力を誇る。

  由加、絵里、あゆみ
   現代における、かごめのクラスメイト。
   原作は知らんけど、アニメだと結構出番があるとのこと。

 名前だけ出てくる人たち。
   殺生丸
    犬夜叉の兄貴。昔は極悪非道な妖怪だったが、りんと出会って浄化された。

   じいちゃん
    かごめの祖父。名前不明。うんちくを語る解説じいちゃん。

   十六夜
    犬夜叉の母親。映画以外で見たことないです。

   犬夜叉の父
    そのまんま。闘牙王とかいう名前が噂されているが、公式ではないとのこと。

 鬼太郎側の登場人物
   石動零
    6期オリジナルのキャラ。取り込んだ妖怪の力を自在に扱える。
    この時点では妖怪絶対殺すマン。
    伊吹丸に手も足も出なかった後ということもあり、精神的にも余裕がない。
    そんな状態で犬夜叉と出会ってしまった。もう……血を見るしかない。

   一反木綿
    毎度おなじみ鬼太郎の空のお供。 
    6期では主に色ボケ要因としても活躍。  
    性格は分かりやすくて書きやすいんだけど、口調の方はまったく分からん。 
    こいつ……何弁で喋ってんだ?

 次回で完結予定。予定通り三話で収まりそう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。