さて、虚構推理編の続きです。
今回は説明パートが多いので、色々とややこしいと思いますが暫しお付き合いください。
岩永琴子がゲゲゲの鬼太郎に出会ったのは彼女が十一歳のとき。
小学五年生の身でありながらも右眼と左足を奪われ、妖たちから『知恵の神』と敬われるようになって暫く経ってからのことである。
何故彼女が選ばれたのか? それは彼女自身にも未だに分からない。
だが、岩永は人ならざるものたちに山奥まで連れてこられ『どうか我らの知恵の神になってくださいまし』と懇願された。
知恵の神——それは知能が低く、力や知恵が乏しい妖怪たちが頼るべき存在。自分たちのために争いを仲裁し、便宜を図ってくれる存在である。
幼かった岩永は彼らの頼みにあまり深く考えず『はい、なりましょう』と答えてしまった。
その返事に妖たちは大層喜び、早速少女を知恵の神とすべく——彼女の右眼をくり抜き、左足を切断した。
それは妖たちにとって大事な儀式であり、ただの人間でしかなかった少女を『神』へと昇華させるために必要な手段であった。
それにより、岩永琴子は一眼一足の知恵の神の資格を得て、妖たちの相談役と慕われるようになったのである。
岩永のそのような状態に、当然ながら彼女の両親や友人、警察関係者などは戦慄した。十一歳の少女が片目を、片足を奪われ戻ってきたのだ。慌てふためくなと言う方が無理な話だろう。
しかしながらも、岩永自身はそこまで悲観的になることはなかった。
多少は不便な体にされたが、それと引き換えに彼女は妖怪を見たり、触れたりといった霊感に目覚めることが出来た。失くした体の代わりに、妖たちが彼女の身の回りの世話をするようにもなった。
子供ながらに『悪くない交換条件だ』などと、わりと気楽に考えていた。
しかし、そんな彼女の状態に一人の事件関係者が不気味な気配を察知し、妖怪ポストに手紙を入れる。
怪異の相談事を解決してくれるという——ゲゲゲの鬼太郎に助けを求めたのである。
『——君が……岩永琴子かい?』
手紙を受け取った鬼太郎が岩永琴子に会いに行ったとき、彼女はまだ病院のベッドにいた。
そのときの彼女にはまだ義眼や義足がなく、慣れない体に一人では満足に動くこともできない状態であった。そのため、彼女の身の回りの世話を小さな二匹の白黒の狛犬たちが焼いていた。
他の人間には見えない彼らだが、鬼太郎には一発でバレてしまう。
『お前たちが、この子をこんな目に合わせた犯人か?』
鬼太郎は狛犬たちをとっ捕まえ、事の真相を問いただす。
『あちゃ~、見つかってしまいましたか……』
これに慌てたのが岩永の方だった。
彼女は今回の出来事を『よく覚えていない』と、大人たちには全て黙っているつもりだった。言ってもどうせ信じてくれないだろう、悲惨な目にあって頭がおかしくなったと変に同情されるだけだと、子供なりの知能で理解していた。
だが鬼太郎にそんな嘘が通じる筈もなく、岩永はやむを得ず、自分の身に起こったことを包み隠さず彼に話したのである。
『ふ~む、知恵の神への信仰か。わしらには縁のない考え方じゃが……』
話を聞き、鬼太郎の父である目玉おやじが考え込む。
知恵の神と妖たちは彼女を敬っているようだが、全ての妖怪がその信仰を信じているわけではない。少なくとも、鬼太郎たちの周囲では縁遠い考え方であり、彼らは岩永に『そんな頼みを引き受ける必要はない』と妖たちから距離を取るよう説得した。
『はい。ですが、なってしまったものは仕方ありません』
ところがその忠告を受け入れず、岩永は妖たちの知恵の神になることを続ける。岩永としては既に眼と足を奪われているため、今更辞めろと言われても引っ込みがつかないのである。
何より——彼女自身がそれを望まなかった。
彼女は妖怪が見えるようになった、怪異に触れられるようになった新しい世界観に興奮し——その先を見てみたいと思ってしまったのだ。
妖たちと共に歩く、その先の『未来』を——。
『つきましては……若輩者のわたしに色々と教えてもらいたいのですが』
その上で、岩永は鬼太郎に自分を師事してくれるように願い出ていた。
この時点で、彼女は妖怪の世界についてまだ素人だ。怪異たちと関わる上での心構えや、やってはいけないような決まり事など。知恵の神という立場にふさわしい教養を学ぶ必要があった。
『いや……それは……けど、キミは——』
そのお願いを断り、尚も岩永に手を引くよう根気よく説得を続ける鬼太郎。
だが岩永琴子の決意は固く、最終的に鬼太郎はやむを得ず彼女を指導することとなったのである。
「——つまるところ、鬼太郎さんは私の師匠とも呼べるような相手でもあります」
「そ、そうなんだ……」
病院の畑怨霊の騒ぎから抜け出し、岩永たちは近くの喫茶店に立ち寄っていた。鬼太郎とまなが隣り合わせに座り、その向かい側に岩永と九郎の二人が対面する形だ。
そこで岩永は鬼太郎との出会いのきっかけ、自分が知恵の神と呼ばれるようになった経緯を犬山まなに簡潔に説明していた。
まなは岩永が怪異たちに誘拐され、右眼と左足を奪われた事実を淡々と話す彼女にちょっぴり引いていた。もしも自分が小学生の時にそんな目に遭っていたら、ひょっとしたら妖怪など大っ嫌いになっていたかもしれない。
にもかかわらず、それでも怪異との繋がりを絶たない岩永に感心するやら呆れるやら。
「君には……色々と苦労させられた思い出しかないよ……」
鬼太郎もどこか疲れたようなため息を吐いている。
彼は岩永に自分たち妖怪との関わり方をレクチャーしつつも、彼女に普通の生活に戻るよう何度も説得を続けていたという。だが、岩永は最後まで首を縦に振らず、数ヶ月後には『知恵の神』として、一人で事件を解決するにまで至っていた。
その後、鬼太郎と岩永は住んでいた場所も少し距離もあってか、互いの交流は自然と廃れていき——今日、改めて再開することとなった。
「ざっと八年ぶりくらいでしょうか? 改めてお久しぶりですね」
「ああ……そうだな」
久しぶりの再会に鬼太郎と岩永の二人は今一度言葉を交わすが、特にそれ以上思い出話に発展することはない。 話を脱線し過ぎないというのもあるが、それ以上に鬼太郎は岩永の隣に座る青年——桜川九郎に目がいっている。
「……彼は……君の……恋人なのかい?」
朴念仁な鬼太郎にしては珍しく聡い質問なのは、本当に聞きたいのがそんなことではないからだろう。
岩永もそのことを察してか、自分の彼氏である桜川九郎という人間の正体を嬉々として語っていく。
「はい、その通りです。九郎先輩は私の彼氏で——『人魚』と『件』の混ざり物でもあります!」
混ざり物といっても、桜川九郎という青年は生物学上は通常の人間の範囲だ。父も母も人間だし、彼の先祖にも妖と混じったという者はいない。
彼が妖と混ざったのは後天的な要素。彼が十一歳のとき、人魚の肉と件の肉を一緒に食べた影響によるものだった。
彼の家系『桜川家』は代々、『妖の肉を喰らうことで人間にその妖の力を宿らせる』という、悪魔めいた実験を繰り返してきた血族だった。その実験で桜川家が特に欲しがった力は予言獣——件の力である。
件と書いて『くだん』と読むその妖怪は、言ってみれば『未来を予言する』妖怪である。牛の体に人の顔を持つとされるその妖怪は未来を予言することで——生き絶え、死ぬとされる。死の間際に告げられるその予言は100%当たり、絶対に覆ることはない。
過去、桜川家の当主はその未来を予言する力を欲した。未来を予言すれば今以上の富や力を得ることができるだろうと、件の肉を手に入れるたび、家の者にそれを食わせて件の能力を手に入れようとした。
実験は概ね成功した。何人かの人間は未来を予言し——そして生き絶えた。
未来を予言したところで死んでしまっては意味はない。桜川家の人間は次に『予言したら死ぬ』という課題をクリアするために、人魚の肉を一緒に食わせることを思いついた。
『人魚の肉を食えば不老不死になれる』というのは、日本ではそれなりに有名な伝説である。つまり桜川家は——件と人魚の肉を食うことで『予言して死に、生き返る』『予言して死に、生き返る』ということを繰り返すことのできる『怪物』を自らの手で作り出そうとしたのだ。
当然ながら、そんな思いつきが簡単に実現するわけがない。二匹の化け物を食らい、無事でいられる適合者などそう都合よく存在しなかった。実験は何十年と続き、発案者である当主が亡くなったことで一度は中止される。
だが、その実験は現代にて再開され——そして実現してしまった。
その実験を成功させた人物こそ、桜川九郎の祖母であり、その適合者こそ桜川九郎だったのだ。
「な、なんとおぞましい……傲慢な実験じゃ!」
岩永の口から説明された九郎という青年の境遇に、目玉おやじは恐れ慄く。
妖怪の肉を食らい、数多くの犠牲者を出してまで未来を予言する力を欲した人間の欲深さに彼は戦慄していた。
「そうだ、実に傲慢なことだ。そんな傲慢で愚かな思い上がり……思い通りに行くわけがなかった」
目玉おやじの発言を、他でもない九郎自身が肯定していた。幼い彼は知らず知らずのうちに人魚と件の肉を食らわされており、望まずしてこの力を手に入れたため、桜川家が傲慢であることを否定しなかった。
そうまでして手に入れた力も、結果的にそこまで万能でなかったことで祖母の試みも失敗であったと愚痴を溢す。
「人魚と件の肉を同時に食したためか、ぼくに宿った力はどちらとも中途半端なもので終わったよ」
九郎が言うに、彼の身に発現した力はどちらとも完全なものではなかったという。
人魚を食らいながらも、不死ではあるが不老ではない。
未来を予言するという件の力も、死ぬことで『起こりうる未来を自分の望むものに決定する』という、予言とは少し違うものであった。
「そ、そうなんですか……だから食べられた腕が元に戻ったんですね」
九郎の話で、まなは彼の腕が畑怨霊に喰われても元に戻った理由を理解する。
岩永の語った実験とやらのおぞましさに彼女も冷や汗をかいていたが、理由を理解することで多少ではあるが九郎に対する恐怖心のようなものが和らいだ気もする。
人間というものは目の前で起こった事象に理由を付けたがり、その理由が理解できるものであれば安堵感を抱く。
少なくとも、まなは九郎の腕が元に戻った理由に納得したため、彼と対面していても冷静なままでいられた。しかし——
「鬼太郎? さっきからどうしたの? 怖い顔で九郎さんのこと見てるけど……」
まなとは対照的に、鬼太郎は未だに九郎に油断ならない視線を向けている。額に僅かな汗——鬼太郎にしては珍しい、恐怖心のようなものを押し殺しているような表情だ。
「……まな、キミには何も感じないのか? あの九郎という青年を見ていて……」
「? 別に普通の人だと思うよ。ちょっとイケメンかもしれないけど……」
鬼太郎の疑問に今一度、桜川九郎という青年を見つめるまな。まなの目に彼は普通の好青年に見えた。先ほど命を助けてもらったこともあり、イケメンと若干好意的にすら見て取れる。
そんなまなに「ダメですよ! 九郎先輩は私の彼氏です!」と牽制を入れながら、岩永は鬼太郎が怯える理由を説明してくれる。
「仕方ありませんよ。私たち人間から見ればイケメンですが、妖怪たちの目に先輩の姿は酷くおぞましいものに見えるそうです」
岩永曰く、妖怪からすると九郎という存在はとても恐ろしいものに映るらしい。人魚と件を食べた影響か、人と魚と牛が混ざったうにゃうにゃした何か。魚臭くて獣臭い、近づくのも憚れるような存在感を常に醸し出しているそうだ。
おまけに先ほどの畑怨霊の死に様。九郎の肉を口にすれば、それだけで妖怪にとっては害になり得る。
「私たち人間からすればエイリアンやプレデターが目の前にいるようなものです。いかに鬼太郎さんといえども、そう簡単に恐怖心を消し去ることはできないでしょう」
「え、エイリアン……」
某有名映画に登場する怪物に例えられ、九郎はちょっぴり涙目でうなだれている。
右腕を喰いちぎられても平然としていた彼が初めて垣間見せた人間らしい感情に、鬼太郎も少し安堵したのか。
「その、済まない……」
「いや、気にするな……もう慣れた」
鬼太郎は九郎を化け物として見ていたことを素直に謝罪。
九郎も仕方がないことだと、悟ったような表情で目を閉じる。
×
「さて……自己紹介を済ましたところで、そろそろ本題に入らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
「——っ!」
自分たちが何者なのか明かした岩永は、先ほども話題にした『名無し』の一件。自分たちがここへ来た用件について話を戻す。名無しという言葉が出たことで、鬼太郎とまなが息を呑む。
「岩永琴子よ。お前さんは名無しについてどこまで知っておるんじゃ?」
少し緊張気味な二人に代わり、目玉おやじが話のきっかけとして岩永に尋ねる。まずは予備知識として、名無しについて互いに知っている情報をすり合わせなければ纏まる話も纏まらない。
岩永は僅かに思案した後、少しずつ自身の知り得る限りの情報を開示していく。
「そうですね……『名無し』そう呼ばれる正体不明な怪異の存在は化け物たちの間でも、私たち『人間側』にもひっそりと知られてはいました」
「……人間側?」
岩永の言葉に鬼太郎が疑問符を浮かべる。
名無しという存在が妖怪たちの間で知られていたことは、無論鬼太郎たちも分かっていた。かの者はこれまでも多くの事件の裏で暗躍し、たんたん坊たちを復活させたり、百々爺を利用して鬼太郎を陥れようとした。
しかし——その正体は不明。
姿を見たことはあっても、名前は無い——だからこそ『名無し』と呼ぶしかなかったのである。
だからこそ、そんな正体不明な存在に人間側にも気付いていた者がいたことに鬼太郎たちは地味に驚く。
「ええ、私は『知恵の神』として怪異たちと関わってきましたが、それ以外にも妖怪と関わりを持った立場の人間というものが全国各地に存在します。歴史あるものを挙げるのであれば『安倍家』や『鬼道衆』、神社の巫女やフリーランスの拝み屋……彼らの中にも名無しの存在に勘付いていたものはいます」
昔ほどではないにせよ、そういった超常な力で妖怪を討伐したり、妖怪と人間との間を取り持つ役割を帯びた人間がいるとのこと。
だが、そんな彼らの力を持ってしても、名無しを討伐することはおろか、その存在を明確に捉えることもできなかったそうだ。
「とある拝み屋のお爺さんが言っていました。あれを成仏させるには『その宿命を帯びた人間でなくてならない』と。私はその意味についてずっと考えていたのですが……」
そこまで淀みなく語りながら、岩永は真っ直ぐまなを見つめる。
「貴方が……その宿命を帯びた人間だったんですね。犬山まなさん」
「…………」
犬山まなは戸惑わない。既に彼女自身——自分と名無しの宿命について知ってしまったからだ。
「今回の騒動が名無しの仕業であり、それが収束するや、かの者の存在がこの世から消滅したことは確認済みです」
鬼太郎とまなが名無しを倒して皆の危機を救った、という大まかな情報は岩永の耳にも届いている。
「ですが名無しが何者でどのようにして成仏したのか? 詳しい詳細を知るものは当事者である貴方たちだけです」
だが名無しという怪異がどのようにして消滅にまで至ったのか、詳しいことは誰にも伝わっていない。
「もし、差し支えがないようでしたら教えていただきたい。名無しが何者で、何故長い間暗躍していた彼が今になってこのような事態を引き起こすことになったのか? 全ての情報を正確に把握した上で——今後の対応を決めさせてもらいますので」
「……? 今後の対応?」
岩永の言葉にまたも鬼太郎はクエスチョンを浮かべる。
名無しは既に消滅した。いったいその名無しの話を聞いて、何を決めようというのか。それが鬼太郎にはイマイチ分からなかった。
「……わかりました。全てお話しします」
そんな中、まなは岩永の疑問に答えることにした。
「わたしも、あの子が何を望んで、何を欲していたのか。出来るだけ多くの人に知ってもらいたいから……」
犬山まなが『あの子』と名無しを呼んだように、彼にも彼なりの事情が存在していた。
ただの憎むべき敵ではない、恐れるべき正体不明の怪物でもない。
その事実を一人でも多くの人に知ってもらいたい。
犬山まなは『名無し』と呼ばれていた彼の全てを岩永琴子に語っていく。
かつて、人間と妖怪が今よりも近しい時代。人間の女性・ふくと妖怪である鬼の青年の二人が出会う。
彼らはそうなることが運命であるかのように惹かれ合い、愛し合うようになった。やがて二人は交じり合い、ふくはその男性との子供・半妖の赤ちゃんを身篭ることとなった。
ふくはたとえ半妖でもその子を慈しみ、出産することを誓って鬼の青年と暮らすことにした。
だが、それを許さぬと。愛し合う二人を責める者たちが現れた。
ふくと青年の両親——その一族の者たちである。
人間側のふくの父親も、妖怪側である青年の父親も。どちらの勢力も『人と妖が混じり合うのは汚らわしい』と彼女たちを追い立てて——殺してしまった。
お腹に赤ちゃんを身篭ったまま殺され、打ち捨てられるふくの死体。
その死体の内側から——『名無し』と呼ばれるようになる『闇』が産声を上げたのだ。
「……なるほど、名無しの正体は半妖の『水子』だったのですね」
「水子?」
そこまでまなが話したところで、岩永は名無しの正体についてようやく知ることになる。聞き慣れぬ単語にまなが一旦話を止めた。
「水子とは死んだ赤ん坊の霊のことじゃ。生後間もなく、あるいは胎児のまま死んだ赤ん坊は水子になって母親や周囲の人間に取り憑くと言われておる」
目玉おやじが水子について説明する。
彼の言葉通り、水子とは出産されることなく死んでしまった胎児の幽霊だ。医療技術が発展した現代ではそうでもないが、昔は赤ん坊が産まれてもすぐに死んでしまうことが珍しいことではなかった。
現代では中絶手術などで赤ん坊が水子となってしまうことが間々ある。悲しいことで——決して珍しい事例ではない。
「しかし、水子の霊がそこまでの脅威になるとは……失礼、お話を続けてください」
岩永はただの水子がそこまでの闇に成長した事実に純粋に驚く。
だがすぐに気を取り直し、まなに話の続きを促す。
水子となった名無しは器も持たず、母親の愛情も知らず、人々の悪意と呪詛を糧にすくすくと成長を続けていった。
誕生してすぐに供養をすればそこまで肥大化することもなかっただろう。だが、その存在を放置され続け、ついに名無しは通常の手段では討伐不可能な怪異にまで昇り詰める。
全てを憎む彼は——この世の全てを虚無へと誘うため、自身の『器』となるべき存在を待ち続け、そして見つけた。
犬山まな。自身の母であるふくに瓜二つの少女を——。
それが名無しがまなに目を付けた理由だ。彼女はふくの遠い遠い子孫であり、名無しの器となるべき資格を持っていた。名無しはその後一年をかけ、まなに少しづつ五行の力を植え付けていく。
そしてついに——まなの肉体を器に名無しはこの世に顕現する。巨大な赤ん坊の怪物となり、全てを虚無に引きずり込もうとしたのである。
「それがあの姿というわけですね。遠目から拝見させてもらいましたが、確かに凄まじい怨念でした」
「あのときから近くにいたのか、岩永琴子?」
名無しの最終形態・巨大な赤ん坊の姿に岩永が言及したことで、鬼太郎は彼女があの場にいたのかと尋ねる。
すると、岩永は自身のスマホを操作しながらその質問に答えていた。
「はい。実は例の映像……犬山さんが五行の力を発現させる動画を拝見しました。あの動画の真偽を確かめるためにも、犬山さんに会おうと調布市に向かっていたんです」
「——っ!?」
そう言いながら彼女がスマホの画面に表示したのは、とある動画。名無しの策略によって世に流通した『まなが猫娘を消し去ってしまう』その瞬間を映した映像である。
「この動画の存在はネットを中心に人々の間で物議を醸しています。ですが、それは人と妖の間を取り持つ『知恵の神』の立場上、決して見過ごして良い内容ではありません」
だからこそ、岩永はまなに会おうと調布市に急いだ。
たまたま東京を訪れていたため、すぐに駆けつけることこそ出来たものの、名無しの顕現までは阻止できず、遠くから見守っていることしか出来なかったと彼女は語る。
「……この話はあとでしましょう。続きをお願いします、犬山さん」
「は、はい」
どうやら、岩永の用件は他にもありそうだということが彼女の言葉からも理解できる。
しかし、とりあえずは名無しの事の顛末が先だと、戸惑いながらもまなは最後まで語っていく。
名無しに取り込まれたまな。そして、それを救うために鬼太郎は名無しの『内部』へと飛び込んでいった。
名無しの内部で再開したまなと鬼太郎。紆余曲折ありながらも、二人は『名無しを止めよう』という意思を固める。
すると、そんな彼らの意思に応えるように——名無しの記憶が二人の中に流れ込んでくる。
それにより、まなは名無しの両親のこと、彼が名を付けられずにこの世に産まれたこと。
彼が——全てのものを憎んでいることを知った。
全ての真実を知った上で、まなは名無しの本体——黒い真っ黒な塊と接触する。
『うぅー、ふーっ! ふーっ!』
こじんまりとした塊であるそれは、怯えた小動物のようにまなたちを威嚇する。
そんな、駄々をこねる赤ちゃんのような名無しを——まなは優しく抱きしめた。
『——生まれてきてくれて、ありがとう……』
誕生を祝福する言葉を送るとともに、まなは名無しの彼に『名前』を付けてやった。
それがまな——『真名』という名前を授かった、自身の宿命だと知ったからだ。
『キャハッ!』
この世に生まれて初めて、憎しみ以外の感情を知った名無し。
彼は——祝福される喜びを知りながら、両親の霊に見守られ成仏していった。
「——以上が……わたしが知り得る彼の事の顛末です」
全ての真実を語り終えたまな。話し終えた余韻に浸るかのように静かに目を瞑る。
その静寂に一同は身を委ね、やがて思い出したように岩永が呟く。
「……あの拝み屋の老人の言っていたことの意味がよく分かりました」
岩永が会ったという老人の拝み屋の「名無しを成仏させられるのはその宿命を帯びた人間でなくてはならない」という言葉。
全ては、犬山まながこの世に生を受けたところから始まっていたのだ。
「その宿命を背負っていたのが犬山さん、貴方だった。
「はい。この
残念ながら、まなが生まれて暫くして亡くなったそうだが、その曽祖母には全てが分かっていたのだろう。
いつか——その日がやってくることが。
「なるほど……わかりました。ならば名無しに関しては、これ以上心配する必要もないということですね」
名無しが本当の意味で成仏できたと確信し、岩永は心配事を一つ片付けることができてホッとする。
もう二度と暗躍することはないだろう名無しという脅威がなくなったことを確認した上で——彼女は次の問題へと移行する。
「ならば目下の課題は……この動画をどうにかすることでしょうね」
そこで再び取り上げられるのが例の動画だ。まなが五行の力で猫娘を魂ごと消し去ってしまう動画。
「……っ!」
「…………」
その動画を前にして、まなと鬼太郎の表情が強張る。
二人からしてみれば、大切な人が死んでいる場面を延々と見せつけられているようなものだ。目を逸らしたくなる気持ちも分かるが、それでも現状を理解してもらうため、岩永はその映像を止めない。
「先ほども言いましたが、この動画はネットを中心に熱を帯びた議論が展開されています。マスコミがテレビや新聞、週刊誌で報道したこともあってか、未だにその熱が冷め止む気配がありません」
「…………」
岩永の言葉にまなの表情が今にも泣き出しそうになる。
彼女は母親が病院に運び込まれた直後、そのマスコミの強引な取材に追われかけた。「あの映像は本物か!?」「母方の血筋によるものか!?」と、無責任なまでに好き勝手なことを報道の自由の元、マスメディアは叫んでいた。
誰よりもまな自身が、その力に困惑していたというのに。
五行の力が消滅した今でも、まなはマスコミからの取材に追われることがある。街を歩けば通行人が「超能力少女だ!」と無遠慮に指差してくる。
猫娘を手にかけたことで気を病んでいるのに、さらに容赦なく周囲の環境がまなの精神を疲弊させていた。
「この動画についてこれ以上、議論を白熱させることは懸命とは言えません」
一方の岩永も、別の意味でこの動画の存在が注目される危険性を訴える。
「これは人間の戦意を高揚させ、妖怪の恐怖心を煽るものです。このまま放置すれば、一度は沈静化した人と妖の対立をぶり返すきっかけになるかもしれません」
あのとき。最終形態の名無しの顕現により、人も妖も関係なく全てが虚無に飲み込まれかけた。
だが皮肉にも、それによって一度は衝突しかけた人間と妖怪の対立が回避される。名無しという脅威を前に、人も妖も関係なく手を取り合って皆が力を合わせたのである。
人間が妖怪を助け、妖怪が人間を助けて避難を促す。
それは美しい物語ではあるだろう。だが、危機さえ去ってしまえば——もうそれは過去のものとなる。
「一度噴き出した炎というものは中々消えたりはしません。燻る不安や不満がまた火を吹く前に、私はこの事態に対処したいと考えています」
「対処って……いったい、どうするっていうんだ?」
岩永の意見に鬼太郎が疑問を口にする。
こういったネット関係に疎い鬼太郎は、この動画に関しては完全にお手上げ状態だ。スマホもないため、ネット掲示板の議論というやつにも参加する権利を持ち合わせていない。岩永の言う『対処』の具体的な方法など考えもつかない。
それは目玉おやじも、現代っ子であるまなですら同じようだ。皆が揃って不安そうな表情で岩永の『解決策』とやらに耳を傾ける。
「はい、結論から先に言わせてもらいます。私はこの動画の存在を『完全なでっち上げ』であることを提言するつもりです」
「——!?」
でっち上げという言葉のニュアンスに目を丸くする一同。
彼らの反応を楽しむように笑みを浮かべる岩永。隣の席では九郎が呆れるようにため息を吐いている。
「つきましては……犬山さん」
「は、はい!?」
今一度話を振られ、まなが緊張気味に返事をする。
そんな彼女に岩永は静かに問い掛ける。
「そのために必要なのは正確な情報です。あの動画が撮られた経緯、貴方があの時間、何故あの場所にいたのか? 貴方の母親が何故傷を負わなければならなかったのか? 一つでも多くの正確な情報が必要なのです」
「???」
動画を『偽物』とでっち上げるのに、どうして『真実』ともいうべき正確な情報が必要になるのか?
そのことがイマイチ把握しきれないまなたちだが、それにも構わず岩永は求める。
「犬山さん……思い出すのも辛いと思いますが、教えていただきたい。この世界の秩序を保つためにも——」
×
「岩永……」
「何ですか、九郎先輩?」
まなからひととおりの話を聞き終えた岩永と九郎。鬼太郎たちとも一旦別れ、彼らは仮住まいであるホテルへと向かっていた。道すがら、九郎は岩永にこの一件をどのように解決するか問い掛けていた。
「犬山まなの話を聞いて、でっち上げる物語の構成は出来上がったか?」
彼が気にしていたのは今回の事件を解決するための手順だ。あの動画が偽物であることを皆に納得させるほどに魅力的な物語——『合理的な虚構』が仕上がったのか、最後の確認を取る。
彼氏である九郎の質問に、岩永は笑みを浮かべる。
「ええ、犬山さんのおかげで何とか形に成りそうです。あとはこの物語を多くの人たちに認知させ——」
「ボクが『件』の力で、その物語が『信じられる未来』を掴み取ってくる。それでいいんだろ?」
わざわざ岩永が全てを説明する必要もなく、九郎は自身がすべき役割を理解する。
岩永がやろうとしていること。それは——『犬山まなが猫娘を消し去る動画』。それを偽物と認めさせるほどに魅力的な物語をネットで語り、それを真実と信じ込ませて事態を沈静化しようという企みだ。
それにより、人々の意識を別のベクトルへと向けさせ、ひいては『犬山まなの力そのものが偽物』であることを証明しようとしている。
真実と分かっていながら、嘘を付いて多くの人を騙す。
人によっては欺瞞と岩永のことを責めるだろうが、この騒動を収めるためにもやるしかない。
人と妖が衝突する未来を防ぎ秩序を守るためにも。『とある人間』の企みを阻止するためにも——。
「ええ、六花さんが動き出す前に片を付けます。あの人が犬山さんの力に目をつける前に……」
「……ああ、そうだな」
それは岩永たち自身の問題。桜川六花との対立にも関係していた。
九郎には従姉に桜川
九郎は自身の体と能力に折り合いを付けている。不死であること、未来を決定してしまえること。それらを前向きに受け入れて生きていくことを決めた。
だが六花は違う。彼女は自身の体と能力を受け入れることができず、元の普通の人間に戻るためにありとあらゆる手段を模索している。
そのための手段として、彼女は過去の事件で『想像力の怪物』を生み出した。
想像力の怪物とは——人の想像や妄想が幾重にも重なり合うことで誕生する化け物である。
人々の噂や願い、こんな怪物を『見た』『聞いた』という人々のイメージが形となり、本当はいない筈なのに存在するようになってしまう怪異。岩永の考察では『口裂け女』や『人面犬』がこれに該当するとか。
現代、特にネットという媒体はこの想像力の怪物を生み出しやすい環境になっている。
今、一時的にとはいえ、ネット住人の目は『犬山まな』という存在に焦点を当てている。この状況を利用し、六花が『件』の能力——『未来決定』の力で、犬山まなを想像力の怪物に仕立て上げようとしているかもしれない。
岩永たちはそれを危惧していた。
「犬山さんのあの力……六花さんの望む『想像力の怪物』の土台として申し分ありません」
六花が最終的に望む想像力の怪物の理想系は——『自身の体を普通に戻せる能力』を持った神様のような存在だ。
例えば、犬山まなの『妖怪を消し去る力』。あれを『妖怪部分だけを消し去る力』と書き換えるだけで、ひょっとしたら六花の望むような存在を生み出せてしまうかもしれない。
今のまなは五行の力を既に失っている状態だが、そんなものは関係ない。多くの人が彼女に『力がある』と願えば、それは本当のものとして実現させてしまう。
それこそが——想像力の怪物だ。
「幸いなことに、今回の事件の裏側に六花さんがいる気配はありませんでした」
過去に『
いかに六花とはいえ、ここから犬山まなを想像力の怪物に仕立てるには相当な時間を必要とするだろう。
そこに——岩永たちの付け入る隙がある。
「今夜、仕掛けます」
「大丈夫か?」
「ええ、ここ数日で大枠のエピソードをまとめました。あとはそこに犬山さんから教えていただいた事実をいくつか加えるだけですから」
名無しの騒動が収まって今日に至るまで、岩永はずっと『例の動画が偽物である』という虚構を説明するための物語を練り上げてきた。
今夜、それを投下することでこの騒動に決着を付ける。
それが多くの人々に信じられれば六花の企み、人と妖の無用な対立も事前に防ぐことができる。
それに、何より——
「何より犬山さん……まなさんにこれ以上、重みを背負わせるわけにはいきませんからね」
神妙な顔つきで呟く岩永琴子。
今回の名無しの騒動、最初から最後まで岩永たちは役立たずだった。本来であれば自分たちのような『人と妖の秩序を保つ』側の人間がこのような騒ぎになる前にどうにかしなければならなかった。
それを『名無しを成仏させられる宿命を持つ者はまな一人』と全てを彼女に背負わせ、今もまなは苦しんでいる。
「もうすぐ私も二十歳ですからね。大人として、まなさんのお尻を拭って上げなければなりません」
「岩永……もう少し言葉を選んでくれ……」
岩永の言葉遣いに呆れる九郎だが、その通りでもあると同意する。
子供に全てを任せるようではいけない。大人として、犬山まなの負担を少しでも軽くするため出来ることはしなければならない。
それが犬山まなよりも先に、怪異たちと関わるようになった『先輩』としての矜持なのだ。
×
「父さん、岩永琴子はいったい何を考えているんでしょう?」
「う~む、あの子は昔からよく分からんところがあるからのう」
午後九寺半ごろ。すっかり暗くなったゲゲゲの森のゲゲゲハウスで鬼太郎と目玉おやじが頭を悩ませる。
久しぶりに遭遇した岩永琴子。彼女は「例の動画が偽物であることをでっち上げる」といい、必要なことだと、まなからあれこれと事情聴取的なものを行っていた。
岩永の質問に一つ一つ丁寧に答えていくまな。彼女の話を聞き終えた岩永は暫し考え込むや。
『——いける』
と、猛禽類の眼光を思わせるように瞳を見開く。
いったい、岩永にはどのような解決策が見えていたのか。鬼太郎たちには彼女の考えが読めない。
「岩永琴子……相変わらず分からない子だ」
彼女は昔からそうだったと、鬼太郎は岩永に師事していた頃のことを思い出す。
岩永はどこかお嬢様然としているのに、ここぞというところで妙な鋭さと大胆さを見せることがある。鬼太郎はその精神性を危ういものと感じ、何度も『知恵の神など辞めるべき』と説得したが、一向に聞き入れられずに彼女とは疎遠になった。
岩永琴子と怪異との繋がりを絶てなかった。それは、今でも鬼太郎の後悔の一つとして心の片隅に残っている。
「——鬼太郎!! 大変じゃぞ!!」
と、彼女に関して考えていたところへ、またも砂かけババアが鬼太郎の元へ転がり込んでくる。
昼間とは違い、その懐に一台のノートパソコンを抱え込んでいた。
「どうした、砂かけババア? ぱそこん……がどうかしたのか?」
そのノートパソコンを卓の上で広げながら何かしらの操作をする彼女に、鬼太郎は少し困った顔をする。パソコンうんねんは聞かれても自分では答えようがない。出来れば他の人に聞いてもらいたいと思ったが——
「これを見てくれ!!」
有無を言わさず、砂かけババアはパソコンの画面を見るように言ってきた。
言われるまま、画面に目を凝らす鬼太郎。
そこには幾つもの書き込みがなされていた。その内容というのが——
〈だからさー、やっぱこの犬山まなって子の力は本物だと思うんだよね〉
〈こいつのひい婆さんが拝み屋だったんだろ? 血筋的にも説明つくじゃん!〉
〈いや、でも超能力少女って……ワード古臭くない?〉
〈どっちかっていうと霊能力だろ?〉
〈このガキを隔離しろ!! こんなビーム砲、人間に撃たれたら大惨事だぞ!!〉
「なっ、なんじゃこれは!?」
目玉おやじが瞳を見開く。そこに書かれていたコメントは全て犬山まなに関すること。
ネット上に拡散された『例の動画』を中心に、彼女の力の真偽を面白おかしく議論し合う、未責任な発言に溢れた掲示板への書き込みだ。
ただ単純に能力の真偽を問うコメントもあるが、中にはまな自身を攻撃するようなコメントまである。
「こいつは数日前から立ち上げられた〈犬山まなの能力について語る〉まとめサイトの書き込みじゃ。名無しの件が片付いても一向に衰える気配を見せん」
砂かけババアが言うには、例の動画が流れてからこういったコメントがネット上に溢れていたという。
〈こいつの実家、結構歴史ある家らしいよ?〉
〈実家って、境港の? 妖怪騒ぎが噂になってたけど〉
〈いやそっちじゃない。沢田家っていう地元でも有名な地主だとか〉
〈まなちゃん!! もっと妖怪をぶっ殺して俺たちを救ってくれ!!〉
今もその熱気は収まる様相を見せず、鬼太郎たちの見ている目の前で次から次へと無責任なコメントが書き連ねられていく。
「っ! こいつらっ!!」
鬼太郎が珍しく感情的に拳を握り、怒りを露わにする。
スマホも持たない鬼太郎には、正直ネットによる誹謗中傷というやつがどういったものか理解しきれていなかった。しかしまなが、大切な友人が顔も分からないような不特定多数の人間に一方的に罵られている光景は、見ていて胸糞の悪くなるものだ。
まなだって苦しんでいるのに、どうしてこんなことをするのだろうとたまらず叫ぶ。
「砂かけババア!! どうにか出来ないのか!? ボクにやれることなら何でもする!!」
「……難しいところじゃろう」
鬼太郎の叫びに、砂かけババアが「う~ん」と唸りながら彼に現実を突きつける。
「わしがハッキングすれば一時的にだが閉鎖に追い込むことはできる。じゃが……閉鎖されたところで他のサイトに移ったり、また新しくサイトが立ち上がるだけ……いたちごっこじゃ」
「くっ!」
少しでもネットを知るものなら、砂かけババアのハッキング発言に「できんの!?」とツッコミを入れていただろう。だが、そっち方面に疎い鬼太郎は彼女の言葉にただただ悔しそうに歯を食いしばる。
自分には何も出来ない。
まなの助けになれないことを鬼太郎は心底悔しがる。
「——ん? なんじゃ、このコメントは?」
そのとき。ふいに砂かけババアの意識が一つのコメントに向けられる。
犬山まなに関する無責任な考察や罵詈雑言、個人情報の流出などが無秩序に書き連ねられていく中で、何故かそのコメントから目が離せない。
まるで——『そうなる未来を決定されているかのように』多くの人々がその文章に注目することとなる。
〈この動画は偽物であり、その裏には大きな陰謀の影が蠢いている〉
〈ここに——その陰謀の危険性について警鐘を鳴らすこととする〉
人物紹介
桜川六花
九郎の親戚にして、九郎と同じ『人魚』と『件』の肉を食らってその能力を身に着けた女性。
一応、虚構推理シリーズの黒幕と呼ぶべき人物ですが、アニメや小説一巻以外の話に目を通していないので、彼女というキャラクターがどういったものかイマイチ把握しきれません。
あくまで話題だけ。ひょっとしたら裏で暗躍しているかも程度に考えておいてください。
鋼人七瀬
一巻のボス。人々の妄想や想像から誕生した想像力の怪物。
今回の事件の攻略の仕方も、この鋼人七瀬攻略を参考にして考案させてもらいました。
現時点でいくつかの布石を打っていますが、果たしてこの『推理』が読者に受け入れられるかどうか……それが今から心配です。
次回で虚構推理とのクロスオーバーを完結させる予定です。
その後は……そろそろ夏だし、季節ものに挑戦してみようかと思ってます。