ゲゲゲの鬼太郎 クロスオーバー集   作:SAMUSAMU

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有頂天家族のクロスオーバーの中盤です。
これまでの経験上、一つのクロスオーバーは三話で纏めた方がいいと考えながら話を書いています。
そのため、今回は中途半端なところで切らないよう、結構な文字数になってしまいました。
また、有頂天家族側からかなりの登場人物たちが出てきます。
初見の人でも分かるよう、ざっくりとした解説を交えながら文章を考えていますが、それでも分からない場合は軽く公式サイトなどを閲覧しながら読むことをお勧めします。

それでは、続きをゆっくりとお読みください。


有頂天家族 其の②

「鬼太郎さん、こちらです。どうぞこちらへ!」

「ええ……今行きます」

 

 京都の狸たちから『狸苛め』に関する調査依頼を受けた鬼太郎、目玉おやじと猫娘が京都で一晩を過ごしたその翌日。彼らは狸たちの案内で京都——ではなく、兵庫県『有馬温泉』へと来ていた。

 

 有馬の湯は言わずと知れた有名温泉地。京都からでも高速バスで日帰り旅行が組まれるなど、とても身近な観光地だ。しかし鬼太郎は温泉に浸かりに来たわけでも、買い食いをするために温泉街を歩いているわけでもない。

 

 この有馬の地の奥、今は閉鎖されたとある保養所に——寿老人が滞在していると。

 彼に今回の事件の事の真相を問い詰めるべく、そこへ向かっていた。

 

「金曜倶楽部の寿老人……彼が、今回の騒動の黒幕なのでしょうか、父さん?」

「うむ……分からん。分からんが……油断するでないぞ、鬼太郎よ」

 

 少なくとも、狸たちの代表である下鴨矢一郎はそう考えているらしい。

 

 昨日の——依頼された際の話を鬼太郎は思い返す。

 

 

 

 

「——寿老人……ですか?」

 

 矢一郎の口から出た名前に鬼太郎は目をパチクリさせる。『寿老人』といえばかの『七福神』の神々、その一柱である。長寿と福徳の神様でもある彼が狸苛めに関係しているなど、あまりにも突拍子がない話だった。

 

「はい……勿論、本物ではありません。寿老人と呼ばれている……金曜倶楽部(きんようくらぶ)の人間です」

「金曜倶楽部?」

 

 だがその寿老人というのはあくまでも呼び名である。

 その人物が所属する組織——『金曜倶楽部』に関して、矢一郎は苦々しい口調で語っていく。

 

 金曜倶楽部とは——京都に大正時代から存在するとされる秘密結社である。

 まあ、秘密結社といっても世界征服などを企んでいるわけではない。月一回皆で集まって楽しく、愉快に宴会を催すという、それが基本的な活動内容。

 メンバーは全部で七人と決まっており、それぞれが七福神の名を冠しているとのことだが。

 

「ですが彼らには年の瀬、狸鍋を喰うという蛮習があるのです!」

「た、狸鍋……ですか?」

「ええ、そうです。…………鬼太郎さんは、狸鍋を食したことがありますか?」

「はっ……? い、いえ、ないです!! ない…………筈です」

 

 矢一郎の問い掛けに慌てて首を振る鬼太郎。実際、彼は狸を鍋にしたことはないし、たとえあったとしてもここで「はい!」とは頷きづらい。それだけ、狸たちにとってこれは死活問題。

 年に一回は訪れるその定期的悪夢に、毎年彼らは誰かを犠牲にしなければならないのだから。

 

「かく言う私の父も……彼ら金曜倶楽部によって鉄鍋の底へと落ちました……」

「——っ!?」

 

 しかも矢一郎の父親・下鴨総一郎という狸も金曜倶楽部の手によって鍋の具材にされたという。

 まさに彼ら京都の狸にとって、彼らは天敵と呼べる存在だ。

 

「ですが我々とて、座して喰われるのを待つばかりではありません! 彼ら金曜倶楽部の邪悪な企てを……私たちは幾度となく阻止して来ました!」

 

 しかし矢一郎たちは去年と一昨年。金曜倶楽部の忘年会を二度に渡ってご破算にし、仲間が狸鍋になることを防いできた。これは近年稀に見る快挙であり、金曜倶楽部にとっても初めての体験であろう。

 

 だからこそ——その長である寿老人の逆鱗に触れてもおかしくない事態であった。

 

「この寿老人というのが得体の知れない老人でして。何やら怪しげな妖術を使うとか……彼であれば、今の狸苛めなる不可解な現象を起こすことができても不思議ではありません」

「なるほど……」

「時期的にも、そろそろ鍋の具材として狸の確保に乗り出す頃合いでしょう。そのために私たち狸側の勢力を弱めようと、今回のような企てを閃いたのではないかと我々は考えています」

 

 復讐という動機があり、それを行うだけの力を秘めている。

 現状、寿老人という男こそ——今回の事件、最大の容疑者であると狸たちなりに考える。

 

「ですが寿老人に近寄り、迂闊にもその正体を晒そうものなら、たちまち鍋の具材として捕らえられてしまうでしょう……」

 

 だが調査のために近寄ろうにも、もしも正体がバレてしまっては狸鍋にされてしまうと。

 誰も、好き好んで寿老人の側に近寄ろうなどとは思わない。

 

「こういった危険な案件、いつもであれば矢三郎という私の弟に頼むのですが……あいつは寿老人の怒りを特に買っているでしょうから……」

 

 矢一郎の弟、矢三郎。

 恐れ知らずの彼であれば寿老人の周りを嗅ぎ回ることができるかも知れないが、かの御大を怒らせているのは他でもない彼だ。

 もしも正体がバレて捕まったりでもしたら——そう考えると、さすがにそんな危険な任務を頼む気にはならない。

 

「そこで……ボクの出番、そういうわけですね?」

 

 後は矢一郎が語らずとも、鬼太郎には察しがついた。

 つまり狸たちは自分たちにできないその寿老人への調査をゲゲゲの鬼太郎にお願いしたい、そういうことなのだろう。

 

「はい。大変恐縮ですが……お願いできないでしょうか?」

 

 危険な依頼かもしれない。だが鬼太郎であれば鍋にされるということもないだろう。

 狸たちが直接調べるよりも、遥かに安全ではある。

 

「分かりました。その依頼……お引き受けします」

 

 鬼太郎としても特に断る理由はない。彼はこの頼みを引き受けることにし——

 

 

 実際に、寿老人が滞在中だという——有馬温泉の保養所へと足を踏み入れることになった。

 

 

 

×

 

 

 

「感じるか? 猫娘……」

「ええ……なんか、不思議な空気ね……」

 

 鬼太郎と猫娘は注意深く保養所——大きな建物の中を進んでいく。

 

 ここは寿老人が買収した建物で、中は旅館のような構造になっている。既に宿泊施設としては機能しておらず、他に客なども見かけられない。一応、大規模な清掃工事が行われた後はあり、ある程度片付けられてはいるが、使われていない場所は埃などが溜まっている。

 ここに今は寿老人が滞在しているという話だが、人の気配は感じられない。今のところは——。

 

「こっちじゃ、鬼太郎……こっちじゃ」

 

 すると、何かに気づいたのか目玉おやじが道筋を鬼太郎たちに指示していく。

 彼が指し示したのは『宴会場』と書かれた場所。そこの部屋の扉が半開きしており——僅かだが明かりが洩れている。

 

「鬼太郎……」

「ああ……」

 

 互いに声を掛け合い、より警戒心を保ちながらその部屋の前まで進んでいく鬼太郎と猫娘。

 鬼太郎は半開きだったその扉から、部屋の中をそっと覗き込もうとし——。

 

 

 

「——何用かな?」

 

 

 

「——っ!?」

「——っ!!!」

 

 瞬間、気配の感じられなかった背後。何者かが自分たちに声を掛けて来た。

 鬼太郎と猫娘は慌ててその場から飛び退き、後ろを振り返る。

 

「いやはや、こんなところまで客人とは珍しい。それも……人ならざる妖の客人とはな」

「! 貴方が……寿老人ですか?」

 

 そこに立っていたのは——長い長い髭を蓄えた、どこか仙人を思わせる老人であった。聞くところによると既に大還暦(百二十歳)を迎えた老体という話だが、そんな年齢など微塵も感じさせない堂々とした立ち姿である。

 七福神である寿老人はもっと福々しい顔をしているだろうが、こちらの寿老人は恐ろしく冷たい眼差しを鬼太郎たちへ、彼らの存在を値踏みするかのようにその視線を向けてくる。

 一瞥して鬼太郎たちを妖怪だと見抜く眼力といい、やはり只者ではないようだ。

 

「ふむ、その風貌……もしやお主、ゲゲゲの鬼太郎では?」

「ボクのことを……知っているんですか?」

 

 寿老人は僅かに思案するや鬼太郎の名を口にした。自分のことを知られていることに鬼太郎はますます警戒心を強めるが、寿老人にこれといって驚きはない。

 

「お主はこの業界では有名人だからのう……して? ゲゲゲの鬼太郎殿がこのわしに何用かな? 人に恨みを抱かれるような覚えは……生憎と山のようにある。はて、どのような御用件か?」

 

 人助けをしている鬼太郎が自分を尋ねてくるような理由に、寿老人は心当たりがあるらしい。

 それだけ——人に恨まれるようなことを色々として来たのだろう。それでいながらも、彼は平然と問い掛ける。

 

「京都の狸たちが、人間たちに虐げられているという話ですが……」

 

 そんな寿老人の態度に鬼太郎は不信感を募らせていく。だが今は依頼された案件を解決するのが先決と。寿老人に対しそれとなく狸苛めの件を尋ねていた。

 

「なんだ……何事かと思えば。これはまたつまらぬ用件だ」

 

 しかし鬼太郎の用事を察するや否や、寿老人は興味を失くしたかのようにそっぽを向く。そして呆れるような、どこか退屈そうなため息を吐く。

 

「大方、狸どもにでも泣き縋られてわしの身辺を嗅ぎまわりにでも来たのだろうが……疑われるのも不快故、はっきりと言わせてもらおう」

 

 彼なりに狸たちが何を考えているのかを先読みし、鬼太郎が抱いている疑念について明確な答えを返していく。

 

「京都市内で起きている狸苛めとやらに関してわしは一切無関係だ。お主の期待に添えるような答えを、わしは持ち合わせてはおらん」

「……ですが、貴方は狸の皆さんに何か恨みがあるのではないのでしょうか?」

 

 だが、寿老人の答えを鬼太郎は鵜呑みにはしなかった。何か隠していることがあるのではないかと、未だにこの老人への警戒を緩めない。

 猫娘も、目玉おやじも同意見なのか。何も言わず、油断なく寿老人の様子を窺う。

 

「ふん……なるほど。確かにわしにも憤りはある。狸どもに忘年会を台無しにされ、大事な『電車』や貴重な蒐集品の数々が粉々に吹っ飛ばされてしまった。腹立たしいことこの上ない」

 

 憤怒を押し殺すような言動で、寿老人は狸への怒りを口にした。

 それだけの怒気があるのであれば、確かに自分には動機があるのだろうと鬼太郎の言い分を認める。しかし——

 

「だが、所詮は狸のやることよ。連中への復讐にそのような策謀を張り巡らせるほど、わしも暇ではない」

 

 怒りがあることを認めつつも、その程度のことで狸たちに構うほど暇ではないとはっきりと断言する。

 

「いざとなれば狸など、力尽くで鍋に放り込めばいいだけのことよ。わざわざ、そのような回りくどいことをする必要もないわ」

「……どう思います、父さん?」

「……うむ、嘘をついているようには感じられんが……」

 

 寿老人の言い分に鬼太郎は父親の意見を求める。

 全くもって不遜な態度ではあるが、そこには嘘を吐いているような後ろめたさを微塵も感じられない。言葉通り、この老人であれば力尽くで狸たちを従わせることもできるのではないかと。そう思わせるだけの不気味な説得力が感じられた。

 ここまで来るとさすがに鬼太郎も思い直す。

 

 狸苛めを扇動しているのは——寿老人ではないと。

 

「さて、用件はそれだけかな? それではお引き取り願おう。わしも色々と忙しい身の上でな」

 

 それ以上鬼太郎たちに話すことなどないのか。寿老人はとっとと帰るように告げてくる。

 

「鬼太郎……」

「……仕方ない。一度、矢一郎さんのところに戻ろう」

 

 猫娘は寿老人の態度に不満そうに鬼太郎へと目配せする。だが鬼太郎としても、これ以上彼を追求することはできなかった。

 今は大人しく京都へと戻り、矢一郎に報告をしなければと、その場を後にしようとする。

 

「……っ?」

「ん? こ、この……匂いは!?」

 

 ふと、その直後だ。

 生暖かい風とともに、鬼太郎と猫娘の鼻腔を——どうにも特徴的な匂いが刺激する。

 

 その匂いは半開きされた扉、宴会場から香ってきた。

 その匂いの——どことなく嗅ぎ覚えのある感覚に、鬼太郎は部屋の扉を勢いよく開け放つ。

 

 宴会場というだけあって、その部屋はかなり広々としていた。

 その広い広い部屋の中央にポツンと屏風が置かれている。風は——その屏風から吹いているようだ。

 

「こ、これは……地獄絵か?」

 

 その屏風に描かれていた絵に、目玉おやじがその目玉をまん丸にする。

 

 

 そこには『地獄』が描かれていた。

 

 黒々とした岩場、炎と血で真っ赤に染まる大地。

 哀れな亡者たちが泣き叫ぶ姿に、それを追い回す鬼たちの恐ろしい形相。

 

 まさに地獄絵図。その光景は目にするだけで、人を本能的に恐れさせる迫力がある。

 だが——鬼太郎たちを戦慄させたのは、その絵から香ってくる『匂い』だ。

 

 

「この匂い……まさか、地獄の!?」

 

 その地獄絵からは『本物』の地獄の匂いがした。幾度となく地獄を訪れたことのある鬼太郎が、その匂いを嗅ぎ間違えるなどあり得ぬこと。

 

「ほう……さすがはゲゲゲの鬼太郎。よくぞお気づきになられた!」

 

 自分の敷地内で勝手をする鬼太郎たちだが、寿老人は寛大な心でそれを許した。それどころか嬉しそうに、どこか自慢するように、その地獄絵を鬼太郎たちに見せびらかして声を弾ませる。

 

 

「——左様、この地獄絵は正真正銘『地獄』へと繋がる扉。この寿老人秘蔵の品の一つである」

 

 

 

×

 

 

 

 地獄への出入り口を鬼太郎たちはいくつか知っていた。

 黄泉比良坂や、妖怪バス、幽霊列車など。自分たちが地獄へと赴く際の、もしくは人間を地獄へと送るための交通手段。

 

 だが——『これ』は鬼太郎たちも知らない。

 このような地獄絵が、地獄へと通じる扉を人間が個人的に所有するなど、妖怪である鬼太郎からすれば捨て置けない事態である。

 

「さすがは地獄へと通じる地獄絵よ。電車と共に吹っ飛んでしまったと思ったが、まるで無傷。これにはさすがのわしも驚いたものよ!」

 

 この地獄絵。実は狸たちとの騒動の折、自慢の『電車』ごと吹っ飛んでしまったかと思われていた。だがこの絵はただの絵ではないようで、決して燃やすことも粉々にすることもできない。そういう不思議な力が、この屏風の地獄絵には備わっているそうだ。

 それを誇るように語る寿老人。だが、鬼太郎は危機感を持って彼に告げる。

 

「寿老人……地獄へと通じる地獄絵など、人間が所有していいものとは思えません。この絵、手放すつもりはありませんか?」

 

 人間が生きたまま地獄へ行ったり来たりできるようになるのは問題だ。この場に地獄の住人がいれば恐らく同じような提案をしていただろうと、鬼太郎が彼らに代わって寿老人にその地獄絵を手放すように願い出た。

 もっとも、そんな提案を受け入れる寿老人ではないだろう。

 

「この絵を手放すつもりはない」

 

 案の定、彼は鬼太郎の提案を突っぱねる。有無を言わせぬ口調、交渉の余地すらない力強い発言であった。

 

「これはわしの蒐集品の中でも相当貴重な代物だ。これを所有するにあたり、色々と苦労もしておる……見よ」

 

 寿老人は地獄絵のとある部分、絵の右上を指差した。

 

「何この絵……仏様? 何か……狸みたいな顔してるわね……」

 

 そこに描かれている仏様らしき絵柄に、猫娘が気が抜けたようにコメントする。

 その仏様は明らかに後から描き足されたものであり、随分のほほんとした狸のような仏様であった。慈愛に満ちた絵のタッチ、その手からは蜘蛛の糸を垂らしているようである。

 

「さる絵師に依頼し、描き入れて頂いた仏様だ。この仏様のおかげでこの絵を安心して眺めることができよう。ありがたや、ありがたや……」

 

 寿老人でさえも、この絵は恐ろしい物品なのだろう。その仏様でもいなければ安心してその絵を眺めることもできないのだという。

 そこまでしてでもこの絵を所有していたいというのか。人間のコレクター魂に感心するや、呆れるやで鬼太郎はため息を吐く。

 

「ですが…………!?」

 

 それでも、何とかしてその絵を確保しなければ不味いのではと。鬼太郎は尚も食い下がる。

 だがそのときだった。地獄絵の屏風が一人でに動き出したことで鬼太郎たちが目を見張る。

 

 

 地獄からの生暖かい風が吹くと同時に——次の瞬間、何者かが地獄へと繋がるその絵から姿を現した。

 

 

「——あら、可愛いお客様ですこと」

「——っ!?」

 

 

 その人物は——なんとも美しい『天女』であった。

 闇夜のようなドレスを纏い、髪は少し短めでボーイッシュに揃えている。朴念仁な鬼太郎でさえ、思わず息を呑むほどの美女だ。

 だが、それで頬を朱色に染めるなどという可愛らしい反応にはならない。

 その女性の持つ美貌はまさに背筋が凍るほど。見たものをゾクリとさせる無慈悲な女神。まるで骨まで黄金で出来ているような神々しさすら感じさせる。

 

「どちら様かしら……見たところ、人ではないようですが?」

 

 鬼太郎を見下ろす視線にも、どこか冷酷さが宿っている。

 地獄絵から出てきたということもあり、咄嗟に答えを返すことができない鬼太郎たち。そんな彼らに変わり、何事もなかったように寿老人がその美女に声を掛けた。

 

「これはこれは……弁天さん。彼はゲゲゲの鬼太郎だよ。弁天さんも噂くらい聞いたことがあるであろう?」

「ああ、あの有名な?」

「どうやら狸どもに頼み込まれたらしくてな。わしの身辺を嗅ぎまわりに来たらしい」

「あらあら、それはまたご苦労なことね」

 

 ゲゲゲの鬼太郎の名を聞いても、特に関心を示した様子がない美女——弁天(べんてん)

 

「!! 貴方が……金曜倶楽部の弁天ですか……」

 

 しかし鬼太郎たちの方は彼女の名を聞き、どこか納得したように頷く。

 

 弁天の名を冠する金曜倶楽部のメンバー。既に矢一郎たちから聞き及んでいる。

 彼女も寿老人と並ぶ——あるいはそれ以上に危険な相手であると。

 

 

 金曜倶楽部は基本、ただの人間たちの集まりだ。

 そのメンバーも殆どが一般人であり、狸を喰うこと以外、これといって警戒するような相手ではない。

 

 だが、そのメンバーのうち二人だけ。明らかにただの人間の範囲を逸脱した力を秘めているという。

 その内の一人が『寿老人』。そして、もう一人がこの『弁天』である。

 

 七福神の中でも紅一点の弁天。その正体は——天狗から神通力を学んだ人間だ。

 彼女は師匠である如意ヶ嶽(にょいがたけ)薬師坊(やくしぼう)という天狗から様々な秘術を授かり、ついにはその師匠すらも超え、京都中に『天狗』としてその名を轟かせた。

 今や本物の天狗たちですら彼女には一目置くようになり、傅くようになった者までいる。

 人間として狸を喰らいながらも、天狗としての神通力を行使し、妖怪たちですらも容赦なく薙ぎ倒していく。

 

 天下無双の女天狗。彼女こそ——狸たちの真の天敵、金曜倶楽部の弁天である。

 

 

「——ところで、寿老人」

 

 その弁天だが、彼女は狸の話題にも鬼太郎という少年にも特に触れては来なかった。代わりに何が面白いのか。その口元に冷たい微笑を浮かべて寿老人へと話しかける。

 

「久しぶりに鬼たちと相撲を取ってきましたが……例のあの『二人』地獄から逃げ出したそうですわよ?」

 

 弁天はこの地獄絵から地獄へと赴き、鬼たちと相撲を取っているとのこと。彼女としては軽い運動らしい。それだけでも、この女性の恐るべき実力の片鱗が感じ取れるが——。

 

「なんと!? あやつらも中々にしぶといではないか! ……だが、この地獄絵が使われた形跡はなかったと思うが?」

 

 弁天の話に驚きながらも愉快そうに声を弾ませる寿老人。彼は疑問を口にしながら、地獄絵を不思議そうに眺めている。

 

「なんでも、先日の騒ぎで地獄と現世が一時的に繋がってしまったらしくて……その混乱に乗じて逃げ出したらしいですわよ」

「——っ!?」

 

 金曜倶楽部の二人だけで話し込んでいるようだったが——さすがにその会話内容に鬼太郎も黙ってはいられなかった。

 

 地獄と現世が繋がってしまったという騒動。

 それは鬼太郎たちが直接関わった、『例の事件』かもしれないと。

 

「すいません!! その話……もっと詳しく聞かせて下さい!!」

 

 狸苛めの件も、地獄絵の件も一時忘れ。

 鬼太郎は弁天の口にした——『地獄から逃げ出した二人の脱獄者』について詳しい話を聞き出していく。

 

 

 

×

 

 

 

「……はぁ~……鬼太郎たち、大丈夫かな?」

 

 鬼太郎たちが狸苛めの調査をしていた頃、犬山まなは京都の地でため息を吐いていた。

 人間が狸を苛めていた光景を目の当たりにし、そういった行為が今も京都中で行われていると聞き、その表情を曇らせている。

 まなは「自分にもこの事態を解決できる手伝いが出来ないか?」と申し出たのだが——

 

「まなっ? 何ぼーっとしてんの? はやく来ないと追いてっちゃうわよ!?」

「あっ、う、うん……今行く!」

 

 残念ながら、犬山まなは修学旅行の真っ只中。旅行といえども学校の行事、自由行動の時間があるといっても、さすがに一人でウロチョロするような勝手は許されていない。

 今の自分では鬼太郎たちの手助けはできない。そんなもどかしい気持ちを抱えつつ、まなは次なる目的地。

 

 

下鴨(しもがも)神社』へと訪れていた。

 

 

 賀茂御祖(かもみおや)神社——通称・下鴨神社。京都の寺社の中でも特に古い建物に分類され、『古都京都の文化財』として、ユネスコ世界遺産にも登録されている。

 

 巨大で美しい朱色の楼門が印象的。

 参道を囲むよう、周囲には原生林『(ただす)の森』が東京ドーム三個分もの面積で広がっている。

 京都市街地の中にありながらも豊かな自然が満喫できると、地元の人にも観光客にも心休まる場所として親しまれている。

 

 まなたちの学校は現在、その下鴨神社の境内を自由に散策していた。

 楼門を潜り社でお参りする生徒もいれば、糺の森の澄んだ自然を大いに体験している生徒もいる。中には歩くのに疲れ、茶屋で名物であるみたらし団子を食している生徒などもいた。

 それぞれが思い思いに、この地の魅力を満喫している。

 

「はぁ~……やっぱり気になっちゃうな……」

 

 そんな中においても、犬山まなは修学旅行に集中できていない。やはり狸苛めの件が気になってしまい、心ここに在らずといった感じ、一人何をするでもなくぼーっと参道に立っている。

 

「——おや? こんなところで何をしてるんだい、お嬢さん」

 

 すると、そんなまなに気軽に声を掛けてくる者がいた。

 学校の生徒でも先生でもない。その人物は昨日まなと顔を合わせた青年——毛深い本性を持つ一匹の狸である。

 

「あっ! え、ええっと……矢三郎、さんでしたっけ?」

「その通り、下鴨矢三郎である」

 

 今は人間の姿をしているが、それは紛れもなく下鴨矢三郎。

 昨日と同じ大学生といった風貌に化け、なんの違和感もなく人間たちの中に紛れ込んでいる。

 

「——あら、矢三郎。その子はいったいどこのどなた様かしら?」

 

 彼の隣には一人の女性が立っていた。

 割烹着を着た主婦といった感じの、一見すると若くて美人な妙齢な女性。

 

「おう、母上」

「えっ? お、お母さん!?」

 

 その女性を矢三郎が「母上」と呼んだことでまなを地味に驚かせる。矢一郎や矢三郎の母親というにしては随分と若い。もっとも、彼女も狸ならその若い容貌も頷けることだ。

 

「母上、昨日話しましたでしょう。矢四郎を助けようとしてくれた。東京から来た学生さんですよ」

「! あらあらそうなの!? それはとっても素敵なお嬢さんだわ!」

 

 矢三郎は母親である彼女に、軽くまなのことを紹介する。矢四郎の件は既に彼女の耳にも届いていたのか。とても嬉しそうな笑みを浮かべ、彼女はまなに深々とお辞儀する。

 

「矢四郎がお世話になりました。母としてあなたには感謝しかないわ。ありがとう」

「い、いえ……結局、わたしは何もできませんでしたから」

 

 母親の感謝の言葉にまなは表情を曇らせた。実際はまなが助けたというより、矢三郎が狸苛めをしていた人間を追っ払ったといえよう。まなは矢四郎を保護しようとしたが、完全に余計なお節介だったのではと、寧ろ申し訳なく思っていた。

 

「いえいえ、お気持ちだけでとっても嬉しいわ! ……人間があなたや淀川さんみたいに狸にも優しい人ばっかりだったら良かったんだけどね」

「…………」

 

 それでも、お礼はしっかりと述べる母狸。しかし狸苛めという辛辣な事件が頻発しているせいか、その顔には憂いを滲ませている。

 人間であるまなとしても、複雑な心境だ。これといって解決の手立てもなく、まなもしんみりとした表情で落ち込んでいた。

 

「あっ! いたいた、ちょっとまな!」

「雅? どうかしたの?」

 

 するとそんな場の空気を乱すよう、まなの親友である雅が慌てた様子で駆けつけてくる。彼女は見知らぬ矢三郎たちにチラリと視線を向けるも、すぐにまなの方へと向き直る。

 

「大変、大変なのよ! なんていうか……男子たちの様子が……とにかく、一緒に来て!」

「えっ? あ、ちょ、ちょっと!?」

 

 雅自身どう説明すべきかよく分かっていないのか。とにかく来てくれと、困惑するまなの手を引っ張っていく。

 

「なんだか、不穏そうね。矢三郎、あなたも様子を見に行ってらっしゃい」

「えっ? 俺がかい、母上?」

 

 彼女たちのやりとりに、矢三郎の母が息子にまなたちと一緒に行ってあげるように口を出す。

 

「他に誰がいるの? 昨日はお嬢さんを怖がらせてしまったのでしょう? その罪滅ぼしでもしてきなさいな」

「むむっ、それを言われると……分かったよ、俺にドンと任せとけ!」

 

 母親の言いつけに応じ、矢三郎もまなたちの後に続いていくこととなった。

 

 

 

 

「——寄ってらっしゃい! 見てらっしゃい!! 掘り出し物の骨董品だよ!! ここでしか買えない貴重な代物だ!! お土産にどうだい!?」

 

 参道の脇道。初詣などで屋台が出店されるその場所で、男は声を張り上げていた。

 男はブルーシートを敷いてその辺り一体を占拠。壺やら皿などの骨董品を並べ、通行人たち相手に商売を行なっている。

 

 まなは——遠目からその商売を行なっている男を見た瞬間に脱力する。

 

「ねずみ男さん……京都に来てまで何やってるんだろう……」

 

 そう、そこにいたのはボロいローブの一張羅・半妖のねずみ男である。

 昨日は鬼太郎たちと一緒ではなかったため、依頼で来ているわけではないだろう。

 おそらくは偶然。この京都の地で金儲けをしようと、骨董品と称してガラクタ品を適当に売り捌いている。

 

 そんな商売が真っ当である筈もなく、あんな怪しい品物がまともに売れるわけもない。しかし——

 

「……見てくれよ、こんなに良い壺が……とってもお得なんだ……」

「すっごい……最高の思い出だ……ありがとう……」

「ちょ、ちょっと!? どうしちゃったのよ、蒼馬たち!?」

 

 まなは目を見張る。

 彼女の同級生である蒼馬を始めとした男子たち、彼らの手には壺やら皿が握られている。彼らはあんなに胡散臭いねずみ男から、修学旅行用の資産、小遣いの全てをはたいて骨董品を購入してしまったらしい。

 いくら男子たちが馬鹿でもそんなこと、普段の彼らなら絶対にしない。

 目もどこかうつろで、言動もおかしい。男子たちの様子は明らかに異常であった。

 

「ありゃま。これは……『幻術』に掛かってるね」

「げ、げんじゅつ?」

 

 男子たちの異変に、まなに付いてきた矢三郎が指摘する。

 幻術、即ち幻を見せられている。その幻術のせいで、男子たちはそのガラクタがとても価値のある品だと思い込まされ、買わなければならないという衝動に駆られているとのことだ。

 

「け、けど……ねずみ男さんにそんな力なかったと思うけど……」

 

 しかしまなの知る限り、ねずみ男という半妖にそのような幻術なるものを行使できるスキルはなかった筈。そんな便利なものを彼が持っていればもっといろんな悪事を行い、鬼太郎たちをさらに困らせていただろう。

 

「ふ~ん……となると、やっぱりあの人がこの騒ぎの元凶だろうね。はぁ~……」

 

 まなからその話を聞き、矢三郎は視線をねずみ男からその隣——もう一人の男へと向け、ため息を吐く。

 

 

 

 

「ふっふっふ……」

 

 その男は、ねずみ男の隣に静かに立っていた。

 そしておもむろに手に真っ赤な提灯を持ち、それをゆらゆらと揺らしていく。

 

 その提灯には——『天満屋(てんまや)』の三文字が燦然と輝いている。

 

 そうして、何度かその提灯を揺らしている間にも店先にいた見物客に変化が生じる。それまでは誰もねずみ男を信用せず、怪しげな骨董品になど手も触れていなかった。

 だが、次の瞬間にも客たちは血相を変え、我先にと隣の客と奪い合うように骨董品を買い求めていくのだ。

 

「へっへっへ!!」

「ふっふっふ!!」

 

 ねずみ男は骨董品を売り捌きながら、提灯を揺らしていた男へ「グッ!」と親指を立てる。男の方もねずみ男へウインクをし、互いの健闘を称え合う。

 

 二人がグルであることはそれで明白だ。

 

「何やってるんですか。ねずみ男さん!!」

「ん……? って、まなちゃん!? なんだってこんなところに!?」

 

 そこでとうとう犬山まながねずみ男に声を掛ける。ガラクタを幻術で売りつけるという、インチキ紛いな商法に苦言を呈するためだ。

 まさかの京都での犬山まなとの遭遇に、当然ながらねずみ男も驚く。

 

「——こんなところで何をやってるんだい……天満屋さん」

 

 そして矢三郎の方も、提灯を持っていた男へと声を掛ける。

 

 胡散臭さではねずみ男に負けず劣らずな中年男性。

 みっちりとした見せかけの体躯に、鯉のようにまん丸な目玉。ニカっと歯を剥き出しにして不敵に笑うその男——天満屋とやらが、矢三郎に嬉しそうな笑顔を向けていた。

 

 

「——よおっ! 矢三郎くん!! また会えて嬉しいよ!!」

 

 

 

×

 

 

 

 幻術師天満屋。幻術を使い、狸すら化かす恐れ知らずの人間である。

 彼はもともと寿老人の手下であり、金曜倶楽部で下働きのようなことをしていた過去がある。だが本来であれば自尊心が強く、自由を愛する男だ。誰かの指図を受けることを嫌い、自分のやりたいことをやりたいようにやり、我が道を突き進んでいく。

 そんな彼が、どこで出会ったかは知らないがねずみ男と手を組み、あろうことか商売を始めてしまった。

 それがまともな商売である筈もなく、相変わらず幻術を悪用し、随分と荒稼ぎしているようである。

 

 

 

「……というか、天満屋さん。あんた、また地獄から逃げだして来たね……」

 

 天満屋の全く変わらない様子に呆れつつ、矢三郎は驚いていた。

 

 この天満屋という男。寿老人が秘蔵する地獄絵を潜り、二度に渡って地獄へと堕ちているのだ。

 一度目は寿老人を怒らせた罰として、二度目は地獄の鬼が自ら天満屋を迎えに来た。

 

 一度迷い込んだら最後、まともな手段では抜けられないのが『地獄』というもの。にも関わらず、この男は二回も地獄へと堕ち、そして二回とも自力で這い上がってきた。しぶとさという点においてならば、ねずみ男にさえも引けを取らないだろう。

 

「勿論だとも! 地獄に堕とされた程度でくたばる天満屋じゃないとも! 前にも言っただろ? 俺様がくたばる時、それは世界が終わる時だと!!」

 

 自信満々に言い切る男の笑顔に、矢三郎は肩を竦める。確かにこの男であれば、そう簡単に死にはしないだろうという不思議な説得力がある。矢三郎はこの天満屋という侮りがたし怪人に、もはや苦笑いするしかなかった。

 しかしふと、矢三郎は彼に尋ねる。

 

「天満屋さん。一応聞くけど、ここ最近京都で起こっている狸苛め……犯人はあんたじゃなかろうね?」

「えっ!?」

 

 矢三郎と天満屋の会話を横で聞いていたまなが驚いた声を上げる。鬼太郎たちが今も調べている事件の犯人。それがこの天満屋かもしれないと矢三郎は指摘しているのだ。

 もっとも、矢三郎としてはそこまで天満屋のことを疑っているわけではない。確かに彼の幻術を用いれば人間に狸を苛めるように暗示をかけることもできるかもしれない。

 とはいえ、そのような無駄な時間を浪費する男でもないと。ある意味で矢三郎はこの天満屋という男を信用していた。

 

「……俺様が? 狸を苛める……? ふ、ふっふっふ!」

 

 やはりと言うべきか。天満屋はキョトンと目を丸くし、可笑しそうに笑い声を上げる。

 

「生憎だが、俺様にそんな一銭の特にもならんようなことをする暇はないさ」

「そうだよね……さすがの天満屋さんでも。けど、寿老人の命令ってことも……」

 

 矢三郎でもそうは思った。だが寿老人の命令であれば、あるいはそれくらいの謀はするかもしれないとも考える。しかし、そんな疑いすらもケロリとした表情で受け流す。

 

「残念だったな。俺様の地獄からの復活を御大はまだ知らない筈だ。俺様は……あの地獄絵から抜け出したわけじゃないんだからな」

「へっ? 地獄絵の蜘蛛の糸から這い上がって来たわけじゃないのかい? なら、いったいどうやって……」

 

 一回目の地獄からの脱獄の際、天満屋は地獄絵の蜘蛛の糸を利用して現世へと帰還した。しかし、二回目の逃走ルートは別口のようだ。矢三郎はどうやって彼が地獄から逃げ出したのだろうかと、そんなことを呑気に考える。

 

 

 だが次の瞬間——

 

 

「……ちょっと待ってくれよ。天満屋さんが現世に戻ってきたということは……まさか!?」

 

 ふいに、矢三郎の表情に深刻なものが宿る。彼は——思い出したのだ。

 前回、鬼によって天満屋が地獄へと堕ちた時。彼と共に地獄へと引き摺り込まれたものが『もう一匹』いたことに。

 

 天満屋が地獄から抜け出したというのであれば、『彼』だって地獄から這い上がってきてもおかしくはない。

 その可能性に行き着き——矢三郎は今回の事件の『黒幕』の輪郭をぼんやりとだが捉える。

 

「天満屋さん……どうやら詳しい話を聞かなきゃならんみたいだ」

 

 矢三郎は天満屋相手に身構える。この油断ならない怪人から物事を聞き出すというのも、なかなかに骨が折れる作業だろう。

 案の定、天満屋もタダで教えようとはしてくれない。

 

「……お前さんが何を聞きたいのか、なんとなく想像はつくぜ。しかしハイそうですかと教えるようじゃ、天満屋の名が廃るってもんだ」

 

 天満屋はそこで思案に耽る。

 そして、何かよからぬことを企んでいるであろう笑顔を浮かべ——矢三郎に提案する。

 

「なあ、矢三郎くん……俺様たちと組まないか?」

「はぁっ? 組むって……俺にもそんな怪しげな商売の手伝いをしろって言うのかい?」

 

 矢三郎は天満屋とねずみ男を交互に見比べて眉を顰めた。自分にも彼らのような詐欺紛いなメンバーの一員になれなどと、正直冗談ではないと思った。

 だが、天満屋は至って真剣な様子で勧誘を続ける。

 

「ねずみ男くんの商才と、この俺様の幻術。そして……お前さんの変化の術が合わされば怖いものなしよ。キミの正体が毛深ろうとも構わん! 過去のことは全て水に流し、共に一旗揚げようじゃないか! 大きな夢を見て、俺様と面白い人生を送ろうぜ!」

「いやいや……悪いけど、俺にはそんなつもりは……」

 

 熱く語る天満屋。それに対し、矢三郎は冷ややかに答えようとする。

 だが矢三郎が明確な返答を口にする前に——天満屋は口元をいやらしく歪める。

 

 

「——それに俺様と組めば、人間への復讐だってやりたい放題だぜ?」

「——っ!」

 

 

 天満屋の言葉に矢三郎はピクリと反応を示す。

 

「狸苛めとは酷いもんだよな……全く人間ってのは身勝手な生き物さ。まっ、人間である俺様の言えた義理じゃないが……」

 

 天満屋は既に矢三郎の正体が狸であると察しているのだろう。それをはっきりと明言することを避けながらも、彼の種族的立場を考慮した提案を口にしていく。

 

「人間がお前さんたちにしたことを考えれば、キミがちょっとばかりの悪戯をしたって罰は当たらんさ! 俺様の幻術を用いれば、人間への復讐もやりやすくなるってもんだ……どうだい? 俺様と一緒に——」

「ちょ、ちょっと待ってください!!」

 

 しかし、話が不穏な方向へと傾いてきたところ、側にいたまなが我慢できずに声を張り上げる。

 

「復讐だなんて、そんな物騒なこと……! 第一、全ての人間が狸さんを苛めてるわけじゃ!!」

 

 彼女は復讐などやらせまいと。天満屋の矢三郎への勧誘そのものを遮る。

 人間が狸苛めで彼らを虐待しているのは確かかもしれないが、それでもそんな人間ばかりではないと真っ直ぐな正論を口にしていく。

 

「お嬢ちゃん。大人の話に子供が口を挟むもんじゃない。でないと——」

 

 だが、そんなまなの発言を全く意にも介さない天満屋。

 ニヤニヤとニヤつきながらも、次の瞬間——

 

 

「——怪我をするだけじゃ済まないぜ?」

 

 

 剣呑な雰囲気を纏いながらも彼は懐から——明らかにヤバめの代物を取り出し、それをまなに向かって突きつける。天満屋が構えたのは見事な装飾が施された筒状の物体——つまりは『銃』であった。

 

「っ!?」

「お、おい、天満屋!! さすがにそれは不味いって!?」

「ひぃっ!? じゅ、銃!?」「うわあああああ!?」

 

 突如向けられた凶器に息を呑むまな。ねずみ男ですら、慌てふためいて天満屋を宥めようとする。

 周囲の人々も、男が手にした明らかに御法度であるその凶器を前にし、悲鳴を上げながら逃げ出していく。

 

 だが、天満屋は騒然となる周囲のことなど一切気にせず、その銃口をそのまま矢三郎の方へと構え直す。

 

「……独逸(ドイツ)製空気銃。まだあんたが持ってたんだね、天満屋さん……」

 

 矢三郎は比較的冷静であった。天満屋がその銃を所持していることを知っていたためだ。

 しかし、余裕はない。銃口を向けられ、彼は迂闊に動くことができない状態へと追い込まれる。

 

「さあ……返事を聞こうか、矢三郎くん?」

 

 その銃で脅しながら天満屋は矢三郎へと答えを迫る。

 自分と手を組むか否か。返答次第によっては——ズドンと鉛玉が撃ち込まれることだろう。

 

 そんな、命の危機を前にし——矢三郎ははっきりと答えていた。

 

 

「——天満屋さん、悪いけど……あんたの提案は聞き入れられないよ」

「…………」

 

 

 天満屋は黙ったまま。矢三郎はさらに己の主張を口にしていく。

 

「確かに今の人間たちの行いは目に余る。調子に乗った阿呆どもには痛い目に遭ってもらわないといけないと思うんだ」

 

 だからこそ、過激派筆頭の狸として矢三郎は人間たちを化かし、彼らにキツイお灸を据えてきた。これは攻撃でも、宣戦布告でもない。お前たちへの逆襲だとばかりに。

 

「けど、私だってところ構わず、誰これ構わず脅しまわって悦に入るような見境なしじゃないさ」

 

 しかし矢三郎だって分別は弁えている。

 化かすべき人間とそうでない人間。どこまでやっていいか、やるべきか。その区別を自分自身で付けているつもりだし、やり過ぎたと思えば素直に反省だってする。

 たとえ『阿呆』であろうとも、それが最低限——自分自身で付けなければならないケジメだ。

 

「だから……天満屋さんの誘いを受けるわけにはいかないよ」

「……そうかい。そいつは残念だよ」

 

 自身の誘いを袖にされた天満屋は、表面上は無表情。しかし内心では屈辱でも感じているのか。

 殺気だった目を鋭く細め、空気銃の引き金に力を込める。

 

 そして、矢三郎へと狙いを定めていき——

 

 

「——おやおや、これはどうしたものか?」

 

 

 まさに、銃口から鉛玉が放たれようとしていたときだった。

 

 その殺伐とした場に——『英国紳士』が舞い降りる。

 

 

 

×

 

 

 

 その紳士は空からやってきた。

 白い背広、白いワイシャツ、白い靴、白いシルクハット。雪のように白い肌と全身を徹底的に白に固めたコーディネート。手にはステッキまで持っている、時代錯誤なまでの英国紳士振り。水も滴るイイ男である。

 

「えっ? だ、誰?」

「へっ!?」

「な、なんだ! お前は!?」

 

 天空より静かに地面へと着地したその紳士にまなやねずみ男、天満屋でさえも呆気に取られていた。その紳士がいったい何者なのか、彼らには検討もつかない。 

 

「これは! お久しぶりでございます、二代目」

 

 誰もが唖然となる中、矢三郎だけは瞬時にその男の降臨に膝を折った。

 二代目と、男のことを恭しい仕草でそう呼び、彼もその呼びかけに応える。

 

「やあ、矢三郎くん。久しぶりだね。元気そうで何よりだ」

「二代目こそお元気そうで……それにしても如何なされました? わざわざこのようなところにまで?」

「なに、たまたま近くを通りかかったものでね。何やら聞き捨てならない言葉が聞こえてきたのだ。銃がどうとか……」

「それはそれは……さすが『天狗』の地獄耳でありますな、はっはっは!」

 

 それは不思議な会話であった。

 矢三郎が一方的にへりくだっているようでありながらも、彼は面白そうに終始笑顔を浮かべている。二代目と呼ばれた男も、矢三郎が謙遜した態度を取るのを当然とばかりに受け入れながらも、爽やかな微笑を浮かべている。

 きっちりと上下関係を築きつつも、どこか気心の知れた友人のように二人とも楽しげだ。

 

「私は天狗ではないよ」

 

 だが、天狗という言葉を口にする際、男は常に無表情であった。

 まるでその存在を嫌悪するかのように冷ややかなものをその視線に宿し——それをそのまま天満屋へと向ける。

 

「な、なんだぁ! やろうってのか! ああん!?」

 

 二代目の冷酷な眼光に天満屋は蛇に睨まれた蛙の如くビクッと身を震わせる。

 だが、すぐにでも気を持ち直し、手にした銃を二代目へと突きつけ、威嚇するように吠える。

 

 もっとも、その程度で取り乱すような輩は紳士ではない。

 

「……そこのキミ、その独逸製空気銃を私に返してくれないかね? それは私の落とし物なのだよ」

 

 二代目の目的は、天満屋の持っていた『銃』であった。 

 彼は頼むような口調で天満屋に銃の返却を願うが、実質的にそれは『命令』だ。拒否など許さない。そんな得体の知れない圧力のようなものが彼の言葉や視線、その佇まいから発せられている。

 

「ふ、ふざけるな! 返せと言われてそう簡単に返せるものか!!」

 

 天満屋としては、その銃にかなり愛着があるのか。本来の持ち主の正当な要求に一切応じることもなく。

 次の瞬間——二代目を退けるべく、天満屋は空気銃の引き金を躊躇うことなく引いてしまう。

 

「やれやれ……」

 

 空気圧を利用して放たれる鉛の弾丸。火薬などを用いる通常の銃弾に比べれば威力も弾速も劣るが、それでも狸を射殺できるくらいの威力があった。

 しかし、紳士は一切取り乱すこともなく、発射された鉛玉を文字通り『摘まんだ』。高速で飛んできた弾丸を、まるで宝石でも扱うような優しい手つきで掴んでしまったのだ。

 ただの人間では不可能な芸当。超常の力を誇る天狗だからこそ成せる技であろう。

 

「なっ、ななあ!!?」

 

 頼みの綱である空気銃をあっさりあしらわれ、天満屋は唖然としていた。

 すると、そこへ矢三郎がすかさず叫ぶ。

 

「無礼者!! この方をどなたと心得るか!?」

 

 彼は天満屋の無礼を叱責し、まるで先の副将軍でも紹介するように芝居掛かった口調で二代目という男の素性を明かした。

 

 

「——この方こそ、二代目如意ヶ嶽薬師坊様! いずれは如意ヶ嶽一円を取り仕切ることになるであろう、偉大なる天狗様にあらせられるぞ!!」

 

 

 矢三郎にとっても師匠である如意ヶ嶽薬師坊。この男は——その息子であり、跡目を継ぐ立場にある天狗であった。その実力はそんじょそこらの天狗たちとは一線を画しており、あの弁天ですらも彼には敵わない。

 矢三郎が知る限り、天狗の中でもっとも力の強い。途方もない神通力を修めた秀才天狗なのだ。

 

「矢三郎くん。そのような紹介の仕方はやめてくれ」

 

 しかし、矢三郎の褒め称えるような紹介に二代目は照れるでもなく、より一層不愉快そうに吐き捨てた。

 

「私は天狗にはならないし、あの老いぼれの尻拭いをするつもりもない。如意ヶ嶽の管理など、鞍馬の愚か者どもに任せておけばいい」

 

 天狗は自らの縄張りを守護してこその天狗だが、二代目にそのつもりはなく。彼は尽きることのない財力を持って、京都市内に邸宅を構えて静謐に暮らしている。

 さらに言えば、彼は父親である薬師坊とも折り合いが悪い。去年の騒動で多少は軟化したものの、まともに話し合う機会などなく、百年前の天狗合戦での親子喧嘩が未だに禍根を残している。

 跡継ぎなどと、そのように紹介されることは不本意なのだ。

 

「ですが、二代目は二代目であります。我々狸にとって、私にとっても貴方は尊敬すべき大天狗。如意ヶ嶽の偉大な二代目で御座いますゆえ。貴方様が二代目でなければ……私は貴方のことを何と呼べばいいのか分からなくなって困っちゃいます」

 

 それでも、矢三郎はペラペラと喋り尽くしながら二代目への敬意を表明し続ける。

 矢三郎の尽きることのない弁舌に、さすがの二代目もやれやれと肩をすくめた。

 

「て、天狗……ってことは妖怪?」

「おいおい、マジかよ……」

 

 そんな二人の会話や二代目の素性に、まなとねずみ男は言葉を失っている。

 二人は『如意ヶ嶽薬師坊』という称号がどれほどすごいかまではよく分かっていない。だが、妖怪としての彼の凄まじい力の程は先のやり取りで感じ取れてしまった。

 

「く、くそっぉおお!!」

 

 天満屋も、まともにやって勝てる相手ではないと理解したのか。踵を返し、空気銃を抱えたまま脱兎の如く逃げ出していく。

 

「…………」

 

 それを見逃す二代目ではない。

 彼は被っていたシルクハットを脱ぎ、それを胸に当てながら一瞬だけ天に祈るかのような仕草をする。

 

 そして——逃げていく天満屋に、冷徹な表情でそのシルクハットを猛然と投げつけた。

 

「へっ? わぎゃあああ!?」

 

 いったい何の素材で出来ていたのか。シルクハットは天満屋に直撃こそしなかったものの、地面を割る勢いで衝突。衝撃の余波で天満屋の体は無様に転げまわり、その拍子に彼は独逸製空気銃を取り溢してしまう。

 

「し、しまっ!?」

「よっと!! ……二代目、どうぞお納めください」

 

 天満屋は慌てて空気銃を掴み直そうとしたが、それよりも早く矢三郎が拾い上げる。投擲したシルクハットを優雅に拾って埃を払っている二代目へと、彼はその空気銃を恭しく献上する。

 

「ようやく手元に戻ったか……だが」

 

 長年紛失していた空気銃が手元に戻ったことで、さすがの二代目も感慨に耽る。しかし、銃身に付いた汚れや細かい傷を目にするや、心底苛立ち気味に表情を歪ませていく。

 

「随分と手垢がついてしまったようだ。せっかくの芸術品を……さて、この不始末どうしてくれようか?」

「ひ、ひぇええええ!?」

 

 自慢の芸術品を台無しにされたことで、二代目は大変御立腹であった。

 その怒りは品を取り戻しただけでは収まることがなく、そのまま彼は天満屋を冷酷に見下し、何らかの罰を与えようとする。

 天狗の怒りに天満屋は成す術もなく、まるで乙女のような悲鳴を上げる。傍から見ていたまなやねずみ男も、そんな彼の怒気に震え上がった。

 誰にも、二代目の怒りを収めることなどできない——かのように思われた。

 

「——お待ち下さい、二代目!!」

 

 やはりと言うべきか。矢三郎にだけは、お怒りな二代目へと意見を押し通す度胸が備わっていた。

 

「わざわざ二代目のお手を煩わせる必要も御座いません! この男の処遇、どうかこの矢三郎に一任して頂きたい!」

「…………ふむ」

 

 矢三郎が割って入ったことで二代目も冷静さを取り戻したのか。先ほどまでの怒気を何とか霧散させ、彼は矢三郎へと申しつける。

 

「……いいとも。彼の処遇は矢三郎くん、キミに委ねよう」

「はっ! 有り難き幸せ!」

「では、諸君。私はこれで失敬する」

 

 後のことを全て矢三郎に任せ、二代目は直立不動のまま空へと飛翔する。

 

 そしてそのまま、特に振り返ることもなく何処ぞへと飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……行っちゃった……」

「……な、何だったんだ、あの野郎……」

 

 見えなくなっていく二代目を唖然と見送る犬山まな。

 ねずみ男も、何が何やらポカンとしている。

 

「くぅぅ~……チキショウ!!」

 

 一方で、天満屋は物凄く悔しがっていた。

 せっかくの空気銃を失うことになり、さらには自分が撃とうとした矢三郎に庇われる形で救われたのだ。

 

 天満屋のプライドは木っ端微塵に砕け散ったであろう。

 

「天満屋さん。これに懲りたら、迂闊に天狗様の持ち物には手を出さないことだよ」

 

 そんな天満屋へ、矢三郎は苦笑を浮かべながら彼の素行を注意していく。

 天狗を怒らせるとどうなるかは、その弟子的な立場である狸が一番よく理解している。天狗は狸を苛めるものであり、その存在は彼らにとって自然災害に等しいレベルなのだ。

 

 それに比べれば——今も人間たちの間で流行っている、狸苛めなど屁でもない。

 

「さて……天満屋さん。この際だから、きっちり喋ってもらおうか?」

「む、むぐぐぐぐ……」

 

 しかし屁でもないとはいえ、原因が分かっている苛めであれば、それを追求しない理由にはならない。

 矢三郎は天満屋へと、今回の狸苛めの件。

 

 

 その『黒幕』であろう人物の所在を問い詰めていくこととなる。

 

 

 

「あんたと一緒に地獄に堕ちた筈のあの男は……夷川(えびすがわ)早雲(そううん)は、今どこにいるんだい?」

 

 

 

 




人物紹介

 寿老人 
  金曜倶楽部の首魁。大還暦、百二十歳を迎えた恐るべき老人。
  彼が何者なのか、未だに有頂天家族の原作でも説明はされていません。
  果たして、彼は本当に人間なのか?
  
 弁天
  本名は鈴木聡美。天狗の力を身に着けた人間。
  矢三郎にとって親の仇であり、初恋の相手でもある。
  何を考えているのか分からない、終始ミステリアスな女性。
  原作の二巻の最後で髪の毛が燃えてしまったため、今作の彼女はショートヘアー。

 如意ヶ嶽薬師坊
  通称は赤玉先生。かつて絶大な力を秘めていた正真正銘の大天狗。
  弁天の師匠であり、当時高校生だった彼女を誘拐した。(お巡りさん、こいつです)
  作中では矢三郎の起こした『魔王杉の事件』で神通力を失っている。
  天狗としての力が発揮できなくとも、天狗として威張り散らす毎日。
  一期と二期とでだいぶ印象の変わるキャラ。
 
 下鴨家のお母さん
  矢三郎たちの母親。本名は桃仙。子供の頃のあだ名は『階段渡りの桃仙』。
  感情が昂った時の口癖は「くたばれ!」。
  ビリヤードを嗜んでおり、その際は宝塚風の黒王子へと化ける。
  その可愛すぎる割烹着姿からは、ママこそが真のヒロインと呼ばれてる。

 天満屋 
  幻術師天満屋。謎多き怪人で寿老人の手先。
  アニメだと肉襦袢という謎スーツを着ていることになっている。
  原作二巻の最後で地獄へと堕ちたが、今作の話を形作る上で必要と感じて復活。
  この男を、どうしてもねずみ男と組ませてみたかった。

二代目
  赤玉先生の息子。如意ヶ嶽薬師坊の二代目であり、作中の表記も常に二代目。
  天狗でありながらも、天狗という存在を毛嫌いしている。
  百年前、弁天と瓜二つな女性に振られた過去があり、それ故に弁天を憎んでいる。
  ちなみに彼も子供の頃、薬師坊に攫われてきた。(お巡りさん、やっぱあいつです)
 
 夷川早雲  
  下鴨家の天敵。夷川家の棟梁。
  血筋的には、矢三郎たちの叔父にあたる。
  偉大過ぎた実兄・総一郎に強い劣等感を抱き、彼を罠に嵌めて鍋へと送り込んだ。
  原作一巻では下鴨家を罠に嵌め、政敵である矢一郎を鍋にしようと画策。
  原作二巻では金曜倶楽部に入会し、狸たちに復讐しようと画策。
  紆余曲折あり、最終的には天満屋共々地獄へと引きずり込まれる。
  彼が地獄から脱獄したことで、今回の狸苛めが起きることになった。
  しかし……黒幕は彼一人ではありません。


 次回で完結予定。
  果たしてここからどのような展開になるか、どうぞ続きをお待ちください。
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