ゲゲゲの鬼太郎 クロスオーバー集   作:SAMUSAMU

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グランドオーダー、ついに配信された二部六章『妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ』をやってたもんで更新が遅れてしまいました。
前後編と聞いたときは正直「えっ?」と思ったけど、後編の日時がしっかりと決まっていて安堵した。一ヶ月後が今から待ち遠しい……早く、続きを!!

さて、今回の『有頂天家族』とのクロスオーバーは今回で完結です。
色々とやりたいことを詰め込んだので、結構乱雑になってるかもしれません。
ゆっくりと読み進めて、どうか有頂天家族の世界観を楽しんでください。

ちなみに、ここまであえて言わずにいましたが、今回のテーマは『家族』です。
有頂天家族という作品自体も、そこに焦点を当てている感じですので。


有頂天家族 其の③

 それは——鬼太郎たちが京都へと訪れることになる、その数週間前の出来事である。

 

 その日、地獄は未曾有の危機に瀕していた。

 地獄の四将・玉藻の前が引き起こした地獄の乗っ取り。閻魔大王は取り込まれ、獄卒たちの半分以上が彼女の精神支配の影響を受けてしまう。もはや正常な地獄の運営など不可能な状況だ。

 

 そんな状況なのだから——地獄を逃げ出そうとする『脱獄者』が出ることは必然であった。

 

「——はぁはぁ……! も、もうすぐだ……もうすぐ現世に出られますぜ……なあ、夷川さん」

「——く、くそっ!! 何故俺が貴様なんかと!!」

 

 その脱走者の中に、一人と一匹の『生者』がいた。彼らはバランスが崩れて境界線が曖昧となった現世と地獄の狭間へと向かって走っている。

 

 幻術師天満屋と、夷川早雲という人間に化けた狸である。

 

 彼らは地獄絵から地獄へと引きずり込まれた去年の年の瀬から、ずっと地獄の屋台でラーメン屋を営んでいた。

 天満屋の作るラーメンは鬼たちからすこぶる評判が良く、何を隠そうそのラーメンを作らせるため、鬼は天満屋を地獄へと連れ戻したのだ。その巻き添えを食う形となった早雲も、天満屋を憎々しいと思っていながらその店を手伝うしかないでいた。

 

 だがここへ来て、地獄を抜け出す最大のチャンスがやって来たのだ。

 この機を逃せばもう地獄から抜け出すことはできないと、彼らは必死に駆け抜けていく。

 

「おい、そこ!? 何を逃げ出そうとしとんじゃぁあああ!!」

「コラァあああ!! 大人しく戻らんかぁ!!」

 

 ところがあと少しというところで、辛うじて機能していた獄卒の警備が彼らを呼び止める。地獄の鬼が脱獄者を出すまいと、混乱の最中にありながらも目を光らせていたのだ。

 

「くそぅっ! あと一歩なんだ……あと一歩でっ……!?」

 

 早雲は焦りながらも、最後まで足掻こうとした。この追跡を振り切れれば逃げられると希望すらも抱いていた。

 

「なっ、なにぃいい!?」

 

 しかしあと一歩というところで、早雲は転倒する。

 

 天満屋が——早雲を鬼たちのいる方へ突き飛ばしたためだ。

 

「悪く思わんで下さいよ、夷川さん。あんたには……ここで囮になってもらいますぜ?」

「て、天満屋っ! き、貴様ぁあああ!!」

 

 天満屋の土壇場での裏切りに激昂する早雲だが、元より二人の間に信頼関係などない。

 

「あんただって、あわよくば俺を出し抜く算段だったでしょう?」

「ぐ、ぐぐぐぐぅううう!!」

 

 天満屋が吐き捨てるように、いざとなれば早雲も天満屋を切り捨てるつもりでいた。悪党同士、どのタイミングで裏切るかは完全に早い者勝ちだ。

 早雲は——天満屋にまんまとしてやられたのだ。

 

「捕まえた! もう逃げられんぞ、おんどれぇえ!」

 

 鬼たちは早雲に追いつき、彼を取り押さえる。

 鬼たちに捕まったショックで彼は化けの皮が剥がれ、ただの狸へと戻ってしまう。

 

「なんやぁ、こいつ? 狸か?」

「狸でも構わへん、如飛虫堕処(にょひちゅうだしょ)に放り込んだれ! おい、あの人間も取り押さえんかい!!」

 

 鬼たちは早雲が狸であったことを驚きつつも、天満屋の方にも追手を差し向ける。しかし、かなり距離が離されていたこともあり、今からでは追いつけない。

 

 天満屋はまんまと鬼の手から逃れることに成功したのだ——。

 早雲を囮にした時間稼ぎで——。

 

「おのれぇええええ!! おのれ、天満屋っ!!」

 

 早雲は天満屋への怒りにその身を震わす。けれど、彼が憎いのは天満屋だけではない。

 

 

 ——おのれぇ!! 元はといえば……全て兄貴の……下鴨家の奴らのせいだ!

 

 ——狸どもが……俺をこんな惨めな目に!!

 

 ——許さんぞ、許さんぞぉおお!!

 

 

 彼は偉大な実兄である下鴨総一郎を。

 その息子たちである矢三郎たちを。

 自分をこのような目に遭わせた狸たち、人間たち。その全てを憎んでいた。

 

 それは完全な逆恨みである。しかしだからこそ——彼の心をどうしようもなく掻き乱すのだ。

 

 

 ——俺は狸どもに鉄槌を!! 人間どもに天誅を!!

 

 ——それを果たすまでは……死んでも死に切れん!!

 

 

 鬼たちに取り押さえられながらも、早雲は全てのものへの復讐を誓う。

 その怒りが、その憎しみが——。

 

 

 彼の元に——『悪霊』を呼び寄せることになった。

 

 

「なっ、なんじゃああああ、こいつは!?」

「ヒィっ!? く、来んな……こっち来んなや!!」

 

 その『悪霊』の強大さに地獄の鬼たちでさえも恐れ慄いた。その妖気のデカさ、禍々しさに成す術もなく彼らは蹴散らされていく。

 

「なっ、なんだ? なにが起きてやがる!?」

 

 鬼たちが吹き飛ばされていくその光景を天満屋は遠くから目撃していた。

 だが彼は恐怖を覚え、すぐにでもその場から離脱していく。

 

 

 

 

「——だ、誰だ……お、お前は、いったい?」

 

 鬼たちが全て倒れ伏し、目撃者である天満屋もいなくなった。

 悪霊と早雲の二匹だけとなったその場所で、悪霊は困惑する早雲へと語り掛ける。

 

『……ふむ、いいだろう。お前に決めたぞ。そこの狸、わしの依代となれ……』

「よ、依代……だと?」

 

 その悪霊曰く。悪霊は魂だけの存在であり、地上では肉体がなければ自由に行動が出来ないという。自分のためにも生者である早雲に、その肉体を明け渡せと要求してきた。

 

「ふ、ふざけるなっ!! 誰がそんな要求を呑むと思って——」

 

 悪霊の提案に当然ながら早雲は憤慨する。どうして自分がこんな得体の知れないものに体を預けなければならないのかと。しかし——

 

『ほう……いいのか? 恨みを晴らしたい相手がいるのだろう? わしの妖力を持ってすれば……それを叶えることも容易いのだぞ?』

「——!?」

 

 悪霊は早雲の憎悪の心を見抜き、自分にはその手助けをする力があると彼を唆す。その甘言に早雲の心は揺れ動いていく。

 

『なに……そう警戒するな。お前にとっても悪い取引ではなかろう?』

 

 

 

 

 

 

 

『——同じ狸同士……仲良くやろうではないか……くっくっく』

 

 

 

×

 

 

 

「…………鬼太郎、さっきの弁天っていう人の話、どう思う?」

 

 有馬温泉。寿老人の保養所から外へ出た鬼太郎たち。猫娘は鬼太郎に、金曜倶楽部の弁天が語っていた話の真偽をどう思ったか問い掛ける。

 

 地獄絵から出てきた弁天が語った内容。それは先日の地獄の騒動——玉藻の前が地獄を乗っ取り、あの世とこの世の理をメチャクチャにしようとした際、その混乱に乗じて地獄は何人かの『脱獄者』を出してしまったということだ。

 

 そして、その脱獄者の中に本件の『狸苛め』の犯人の候補とも言える人物。

 天満屋という幻術師。夷川早雲という狸がいると、鬼たちが噂をしていたというのだ。

 

 彼らであればあるいは狸への復讐を企み、今回の事件を引き起こしてもおかしはないと。少なくとも弁天は面白そうに語っていた。

 

「う~ん、どうだろう?」

 

 しかし鬼太郎は頭を悩ませる。

 彼は天満屋とも、夷川早雲とも面識がない。彼らが本当に狸苛めを行うような人物かどうか彼では判断がつかないのだ。

 

「そうじゃのう……とりあえず、京都に戻って矢一郎くんに報告しよう……ん?」

 

 目玉おやじにもだ。だからこそ、彼らはすぐにでも京都へと戻り、この話を矢一郎と相談する必要があった。

 

「はぁはぁ……き、鬼太郎さん! 鬼太郎さん!!」

 

 するとそこへ、鬼太郎たちをここまで案内してくれた狸が姿を現す。彼は人間に化ける心の余裕もなく、かなりテンパった様子で鬼太郎の元へと駆け寄って来た。

 

「た、大変です! 大変なんです!!」

「どうかしたんですか?」

 

 只事ではない様子に鬼太郎は何があったのか問い掛ける。その狸は激しく息を切らせながら——逼迫した現状を伝えてきた。

 

「ぎょ、玉瀾が……玉瀾が!! 狸苛めの被害にっ!!」

「——っ!!」

「そ、それで……それに怒った矢一郎が——」

 

 

 

 

 

『——がぁああああ!! 許さんぞ、人間どもぉおおお!!』

 

 京都・紫雲山頂法寺(しうんざんちょうほうじ)。通称『六角堂』の境内で一匹の『虎』が怒り狂っていた。

 その虎は『一休さんが殿様に退治を依頼される』ほど、屏風の絵に描かれているような立派な虎であった。

 

 しかしその正体は狸——下鴨矢一郎である。

 

 彼は普段は冷静であろうと務め、むやみやたらに変化はしない。

 だが、その怒りが頂点に達したとき、二メートルの巨大な虎へと変貌を遂げて暴れまわる悪癖があった。

 

 それ故に、彼は『鴨虎』という通り名で恐れられている。

 

 

 

「落ち着け、矢一郎!!」

「矢一郎くん、やめてくれ! 怒りを収めてくれ!!」

 

 矢一郎を宥めるため、彼を慕う狸たちが集まっていた。何とかして彼の怒りを鎮めようと皆で説得を試みる。

 

『これが落ち着いていられるかあああ!! 玉瀾がっ! 玉瀾が奴らにっ!! 許しておけるものかぁあああああ!!」

 

 しかし矢一郎は止まらない。大事な奥さんが人間たちに、狸苛めのせいで怪我をしたというのだ。命に別状がなかったらしいが、それで彼の怒りが収まるわけもない。

 

『許さん、許さんぞ!! どいつもこいつも、ペチャンコにしてやる!!』

「おい!! もっと硬く扉を閉じろ!! 絶対に矢一郎くんを外に出すな!!」

 

 矢一郎が人間たちに危害を加えないよう、狸たちは彼をこの六角堂の境内に閉じ込めていた。寺の門を固く閉ざし、虎の体当たりにも耐えられるよう、数十匹がかりで押さえ込む。

 だがそろそろ限界が見え始めている。矢一郎の理性も、寺の門も。既に崩壊寸前でいつ解き放たれてもおかしくない状況であった。

 

「矢一郎さん!?」

「おおっ! 鬼太郎さん!」

 

 そこへ急遽呼び戻された鬼太郎たちが到着する。鬼太郎と猫娘が矢一郎の眼前に立ち塞がり、彼の暴走を止めようとしたことで狸たちの表情が明るくなる。

 

『どけっ、ゲゲゲの鬼太郎!! 俺の邪魔をするなら、貴様から噛んでやるぞ!!』

 

 しかし、鬼太郎の登場にも矢一郎は怯まない。

 もはや問答無用、誰が相手であろうともお構いなしに殺気立っていた。

 

「鬼太郎!! とりあえず止めるしかないわよ!!」

「わかってる……けど!?」

 

 猫娘は爪を伸ばし臨戦態勢に入る。勿論、殺すわけにもいかないので手加減はする。

 鬼太郎も。力尽くでも矢一郎を止めなければと腹を括っていく。

 

 だが——

 

 

「——おいおい、穏やかじゃないな、兄貴。そうカッカするなって……」

 

 

 何とものんびりとした口調で、その青年狸が姿を現す。

 

「や、矢三郎!」

「矢三郎さん……?」

 

 矢一郎の実弟、下鴨矢三郎。

 緊迫した状況にも関わらずのらりくらりと、掴みどころのない空気を纏って参上し、彼は怒り狂う兄の前に堂々と立ち塞がる。

 

 

 

 

『——っ!! 矢三郎……』

 

 実の弟の登場に矢一郎も一旦は正気を取り戻す。だがすぐにでも憤慨し直し、煮えくり返るはらわたを虎の遠吠えごと吐き出していた。

 

『矢三郎……俺が間違っていた! 合戦だ!! 今すぐ人間どもに……目にものを見せてくれる!!』

 

 穏健派の矢一郎であったが、玉瀾が傷付けられたことですっかり過激派へと転身してしまった。弟に自身のこれまでの対応が甘かったことを認め、今すぐにでも人間相手に戦争を仕掛けようと街中への突撃を敢行しようとする。

 過激派の筆頭である矢三郎であれば、それに便乗するかもしれない。鬼太郎たちは二人のやりとりを気が気でない思いで見守る。

 

「……だから落ち着けって、兄貴。そう簡単に合戦だなんて、口にするもんじゃないぜ?」

 

 意外にも矢三郎は冷静だった。怒り狂う兄に対し、落ち着くよう静かに語りかけていく。

 

『落ち着け? 落ち着けだと!? お前……自分は好き勝手するくせに、俺にはそれを止めろと言うのか!?』

 

 矢三郎の言動に、矢一郎は普段の彼の素行を引き合いに出して激昂した。

 人間に誰よりもちょっかいを掛けていたのはお前ではないかと、痛いところを突いて矢三郎の言い分を黙らせようとする。

 

 

「——そうだ!!」

『——っ!?」

 

 

 しかし、矢三郎は全く揺らがなかった。

 矢一郎の怒声にも、彼は真正面に向き合って見せる。

 

「確かに俺は人間に悪戯しまくった、連中にやり返してきたさ! 正直言って……ちょっと楽しかった!」

 

 全く悪びれることのない阿呆な告白。しかし、それでも矢三郎は矢一郎を阻止せんと言の葉を紡いでいく。

 

「けど、俺と違って兄貴は偽右衛門なんだ! 京都狸界の代表なんだ……周りを、よく見てみなよ」

『……!』

 

 弟に促され、ようやく矢一郎は周囲に意識を向ける余裕が生まれる。そうして周りを見てみれば——大勢の狸たちが不安そうな表情で矢一郎を見上げている。

 

「見ろよ、兄貴がそんな風にピリピリしてるから……皆にまで不安が広がっちまってる……」

『……っ!!』

 

 その視線と弟の言葉に矢一郎は嫌でも痛感させられる。自分がもう狸界の代表・偽右衛門なのだと。

 自分の迂闊な言動、行動一つで洛中の狸たちの命運を決めるのだと。

 

「俺がいくら阿呆なことをやっても、皆どうせ『矢三郎ならしょうがない』で片付けてくれる……けど兄貴はそうじゃないだろ?」

『…………』

「偽右衛門なんざ只のお飾りかもしれないけどさ……だからこそ、兄貴はどっしりと構えてなきゃいけないんだよ」

 

 元から阿呆として知られている矢三郎なら、どんな無茶をしても呆れられるだけで特に何ということもない。だが皆の代表である矢一郎が阿呆なことをすれば、それだけ狸界全体に不安が広がる。

 その立場の違いを、矢三郎は明確に理解していたのだ。

 

「なに、心配いらないさ! 玉瀾を傷つけた連中には、俺が後日必ずお礼参りに行ってやるとも!! 狸に手を出せばどうなるか、目にもの見せてやるんだ!」

 

 矢三郎は立場上勝手が出来ない兄に代わり、人間たちへの仕返しをちゃっかりと宣言する。

 それこそが『弟』としての自分の役割だと言わんばかりに、実に堂々と——。

 

『……調子の良いこと言って……どうせお前自身が暴れたいだけだろうに……』

「おや、バレたか!」

 

 もっとも、それは矢三郎の好き勝手したいという個人的願望が混ざっていた。それを見抜き、矢一郎は弟へ冷静なツッコミを入れる。

 

 どうやら、だいぶ頭の方も冷えてきたようである。

 そうして落ち着きを取り戻した矢一郎に——矢三郎は伝えるべき『本題』を語っていく。

 

「それに……そうやって兄貴までムキになって冷静さを失ったら……それこそ、黒幕の思う壺だろうぜ?」

『なに!? 黒幕だと……!?』

「——!!」

 

 矢三郎の発言に矢一郎だけでなく、鬼太郎たちも目を見張った。彼らも寿老人のところへと赴き、それらしい人物の情報を持ち帰っていた。

 

 奇しくも、矢三郎の知り得た情報も鬼太郎たちと同じものだった。

 そして矢三郎は——実際にその人物が『狸苛め』を扇動していてもおかしくない男だと、確信を持って叫んでいた。

 

 

「——あいつが……早雲が地獄から戻ってきたんだよ! 今もこの京都の何処かに潜伏している筈だ。手分けして捜そうぜ!」

 

 

 

×

 

 

 

「——まったく……これだから人間も狸も愚かだと言うのだ……」

 

 既に時刻は丑三つ時。夷川早雲はそのとき、とある七階建てのビルの屋上にいた。

 

 彼の目の前に広がっているのは廃墟である。そこには本来であれば彼の別邸が建てられていた。美しい庭には青々とした木々が茂っていた。

 しかし、豪華な別荘も綺麗に整えられた庭も、全て残らず燃え尽きて灰しか残っていない。去年の騒動、それによって全てが失われたのだ。

 だが早雲にとって、失われたのは豪邸だけではない。

 

 去年、この場所では偽右衛門の狸選挙が行われていた。早雲はその場へと潜り込み、あわよくばその地位を掠め取ろうと様々な謀略を張り巡らしてきた。その用意周到な策略に、何もかも上手くいっていた——筈なのだ。

 

 だが、彼の企みはあと一歩のところで失敗する。

 親不孝者な長男の帰還、立会人である天狗の追及、天満屋の裏切り。あらゆる要素が重なって彼の陰謀を台無しにしたのだ。

 あまつさえ、彼はここで地獄絵の中へと引きずり込まれ、地獄へと落ちる羽目になった。

 

 そう、この場所は過去に早雲が全てを失った場所だと言っても過言ではない。

 彼はその忌まわしき地で、改めて全てのものへの復讐を誓う。

 

「今の俺には力がある。もう偽右衛門の地位も、狸界も……俺には不要なもの……」

『——そうだ、夷川早雲よ。貴様の無念、思う存分に晴らすがよい!』

 

 地獄で出会った『悪霊』も彼の憎悪を理解し、力を貸してくれている。この悪霊の力を以ってすれば、愚かな人間たちの憎しみを掻き立て、彼らに狸苛めなる悪行をさせるなど造作もないことだ。

 いずれはより過激に、より激しく狸と人間たちを争わせ、京都中を大混乱に陥れる計画。

 

 早雲はこの『京都』という街そのものに復讐を果たすつもりでいた。

 

 

 もっとも——その企みもここまでだ。

 

 

「——見つけたぞ!! 夷川早雲!!」

「っ!?」

 

 早雲のいる屋上へ、人間に化けた狸たちが雪崩れ込んでくる。彼らは一様に不審者撃退用の防犯グッズ・さすまたを構え、早雲を取り囲むように展開していた。

 その指揮を取っているのは——偽右衛門である下鴨矢一郎である。

 

「早雲、こんなところに隠れていたとは……」

「矢一郎……貴様、どうして俺の存在をっ!?」

 

 早雲は矢一郎が自分という存在を当然のように認識していたことに驚いている。地獄にいる筈の自分が現世にいることを、もっと驚いてもいい筈なのに。

 

「天満屋から聞いたよ、叔父上。あんた……ほんとに呆れるほどに逞しい人だ……」

 

 彼のその疑問に答えたのは——矢一郎の傍に立つ矢三郎であった。

 

「矢三郎っ! お前は……どこまで俺の邪魔をすれば!!」

 

 早雲は矢三郎の憎たらしい顔を見て憤慨する。

 彼にとって下鴨家、特に矢三郎の存在は目の上のたんこぶだ。いったい何度、彼のせいで計略を邪魔されたことかと、憎しみの籠った眼光を甥っ子である彼へと向ける。

 

「早雲! 貴様の悪事もここまでだ、もう逃げられんぞ!」

「捕まえろっ!」

 

 矢一郎はまず、早雲を確保しようと狸たちに号令を掛けた。彼がどのような手段で狸苛めを行なっていたかなど、聞き出さなければならないことが山のようにあるのだ。

 狸たちもこの時ばかりは真剣に、早雲を無力化すべく彼に向かって殺到していく。

 

「——ふん! 小賢しいわ!!」

『——かあぁぁ!!』

 

 だが、その程度で今の早雲を捕らえることはできない。彼には心強い『悪霊』が憑いていた。その悪霊が放つ衝撃波のようなもので、殺到する毛玉たちが全て吹き飛ばされていく。

 

「な、なにぃいい!?」

「うわわあああっ! な、何事か!?」

 

 訳が分からずに混乱する狸たち。何匹かは驚きのあまり、化けの皮が剥がれてしまっていく。

 

「な、なにが起きている!? いったい?」 

「……っ!?」

 

 さすがにこのような事態は想定外だったのか、矢一郎も矢三郎も呆気に取られて立ち尽くす。

 

「ふっ……バレてしまったからにはしょうがない。こうなれば、貴様らをこの手で葬り去るまでよ!!」

 

 開き直った早雲がふてぶてしい顔つきでその殺意を下鴨家の二人へと向ける。狸苛めなど回りくどかった、こうなれば直接連中を亡き者にしてやろうと。

 悪霊の力を借り受け、忌々しい下鴨兄弟へと力を解き放つ。

 

 

「——霊毛ちゃんちゃんこ!!」

 

 

 しかし、それを阻止せんと立ち塞がる——ゲゲゲの鬼太郎。先祖の霊毛で編まれたちゃんちゃんこを広げ、悪霊の殺意が込められた攻撃を受け止めた。

 

「き、鬼太郎さん!」

「下がっていてください、矢一郎さん!」

 

 鬼太郎は急ぎ矢一郎たちを下がらせる。傍にはすぐに猫娘が駆けつけてくれ、二人で悪霊の取り憑いた早雲と対峙していく。

 

 

『——っ!! ほう……ゲゲゲの鬼太郎。まさか……貴様が狸どもに手を貸していたとはな……』

 

 

 そのときだ。鬼太郎の登場に『悪霊』が反応を見せる。その悪霊は黒くて禍々しい表情を空中に浮かび上がらせ、鬼太郎に怨嗟の声を紡いでいく。

 

『久しぶりだな。こんなところで貴様の顔をもう一度拝むことになるとは……くっくっく!』

「!! この妖気……まさか、お前はっ……!?」

 

 鬼太郎の妖怪アンテナも、その悪霊の妖気の波長に反応を見せる。

 鬼太郎はその悪霊の正体がなんなのかを理解し、どうして夷川早雲に取り憑いているのか問い質していた。

 

 

「——何故、お前がこんなところに……隠神刑部狸(いぬがみぎょうぶだぬき)っ!!」

 

 

 

 

 

 

 隠神刑部狸——かつてこの国の政権を乗っ取った、八百八狸軍団の頭領。

 凶暴な狸の眷属たち、妖怪獣なる怪物を使役して鬼太郎たち、日本政府を苦しめた大妖怪である。

 

 鬼太郎やまなの活躍により退治された彼は——本来であれば肉体を失い、魂となって地上を彷徨っている筈だった。

 

 しかし、彼は恨みを晴らそうと妖怪獣に取り憑き、その魂を無理に酷使してでも復讐する道を選んだ。

 妖怪は不死身の存在とはいえ、魂を直接握りつぶされたり、掻き消されたり——著しく魂を疲弊させてしまえば肉体を取り戻すことも出来なくなる。

 刑部狸の魂は深刻なダメージを受けることとなり、地獄の辺境へと流され、彼は怨念だけの存在となり燻っていたのだ。

 

 そして、その地獄の野辺で彼は出逢った。自分と同じ狸として、多くのものを憎んでいたと夷川早雲に。

 早雲は自身の肉体を貸し、刑部狸はその妖力を早雲へと貸し与えた。

 

 

 こうして二匹の狸が結託し、狸苛めなる今回の騒動を引き起こしたのである。

 

 

『——早雲よ、もはや遠慮する必要はない! 我が妖力、存分に振るって本懐を成し遂げるがいい!!』

「ははっ!! さあ……覚悟するがいい!」

 

 憎き鬼太郎を前にして、刑部狸もついにその力を解放することに躊躇いがなくなった。

 早雲の肉体を中心に、とてつもない妖力が溢れ出してくる。これは刑部狸と早雲の怨念、その二つが重なり合わさったことで生まれた相乗効果だ。

 二人の憎しみが——思いの外親和性を生み、彼らに凄まじいまでの力を与えていた。

 

「くっ……これはっ!?」

「ま、まるで台風じゃ! これでは迂闊に近づくこともできん!?」

 

 さすがの鬼太郎も踏ん張って耐えるのがやっとだ。目玉おやじが言うようにまさにそれは台風、早雲を中心に憎悪の嵐が吹き荒んでいる。

 

「お、おのれ、早雲……! そこまで堕ちたか!!」

 

 矢一郎は歯を食いしばりながら、早雲に怒りを吐き捨てた。

 自分たちへの復讐のためとはいえ、刑部狸のような狸にとっても傍迷惑な存在と手を組むなど。恥を知れとばかりに叫ぶ。

 

「黙れっ!! たとえ鬼でも悪魔でも構うものか!!」

 

 今更、その程度で早雲の憎しみは揺るがない。彼は、自身を取り巻く全てのものへの憎悪を口にする。

 

「俺にはもう、この道しか残されておらんのだ! 狸も人間も、全て……全て俺の手で消し去ってくれるわ!!」

 

 もはや完全に『悪鬼』と成り果てようとしていた夷川早雲——。

 

 

 

「——ほう……その全てとやらの中に俺たちも入ってんのかい、親父?」

「……っ!」

 

 

 

 だがその早雲に対し、とても落ち着いた声音で語りかける者がいた。

 その人物たちを前に、さすがの早雲も動きを止める。

 

「まったく、地獄から帰って来たと聞いて来てみれば……また随分とタチの悪いもんに取り憑かれてやがるな……」

 

 その男は『僧』だった。

 手には握り飯を持ち、緊迫した空気の中でそれを呑気にムシャムシャと喰っている。とても行儀の悪い、僧の姿に化けた狸である。

 

「貴様、呉一郎……」

 

 その男を前に、早雲は呻くような声を上げる。

 目の前にいるその男は夷川呉一郎(くれいちろう)という。彼は夷川家の長男——早雲の実の子供である。

 

 しかし、二人の親子仲は冷え切っており、今更彼が出向いたところで早雲を説得など出来はしない。

 呉一郎の他にも、金閣(きんかく)銀閣(ぎんかく)という双子の次男、三男もいるが、彼らも阿呆であるため早雲を止めることなど出来はしない。

 

 だがもう一人。もう一人の子供を前にし、夷川早雲も息を呑む。

 呉一郎と共に姿を見せた『実の娘』に対し、彼は動揺を隠せないでいた。

 

 

 

「か、海星……っ!!」

「…………」

 

 

 

×

 

 

 

 夷川家は『偽電気ブラン』という酒の製造から販売までを手掛けるやり手の商家である。当主である早雲が地獄へ堕ちていた間、その家の采配を振るっていたのは長男の夷川呉一郎……ではなかった。

 

 夷川の実権を実質的に握っていたのは末の娘——夷川海星(かいせい)である。

 

 彼女は幼い女の子でありながらも、こと商売に関しては誰よりもやり手である。仕切り屋気質ということもあり、あまり役に立たない金閣銀閣のケツを叩き、その横では似非坊主である呉一郎が日々お経を唱え、飯をカッ喰らうばかり。

 兄たちが役に立たない状況の中、誰よりも必死に夷川家存続のために逞しく頑張っている。

 

 早雲も、海星には特別期待を懸けていたところがあった。

 そして今も昔も、男親というやつは実の娘に弱いところがある。母親似というのであれば尚のこと。

 

 全てを憎んで捨てた筈の早雲にとって、海星の存在はまさに——最後の良心。

 

 

 

 

「……任せたぞ、海星。何とか早雲を説得してやれ……」

 

 そんな父と娘の再会を見守る矢三郎。海星を見つめる彼は——何故か化けの皮が剥がれ、ただの狸に戻っている。

 これは矢三郎にとって海星が「天下一、可愛い狸!」だからだ。彼女の前では矢三郎は腰が抜け、変化の力を保っていられないのである。

 変化自慢の彼にとって化けの皮が剥がれるのは屈辱的なことだが、それでも彼はその光景から目を離さなかった。

 

 親子の涙の再会、それを黙って見届ける所存でいた……いたのだが。

 

 

「——このっ!! 馬鹿親父!!!」

「ちょっ!?」

 

 

 矢三郎の期待とは裏腹に、海星の第一声は実の父親に対しての罵声であった。彼女は腹の底から怒りをぶつけるように夷川早雲へと詰め寄っていく。

 

「ほんっとにっ!! あんたってしょうもない狸だわ!! 散々みんなに迷惑掛けて!!」

「か、海星……ま、待ってくれ、わ、わしは……わしは……!」

 

 これには早雲もたじろいでいた。

 今の彼は刑部狸のおかげで、鬼太郎ですらも退ける妖力を発揮できるが、それを実の娘に向けられるまでは堕ちていない。娘の罵詈雑言を前に、彼は成す術もなく立ち尽くす。

 

「ほんとに何なの!? 死んだと思ったら生きてて! 生きてると思ったら地獄に流されてて! そんで地獄から戻って来たら来たで、変な悪霊が取り憑いてるわ!! ほんとうに……救いようのない阿呆だわ!!」

「お、おい、海星? もうちょっと言い方ってもんが……」

 

 海星のあまりの言いように兄として呉一郎が口を挟もうとした。だがそんな兄貴を「うっさい! 生臭坊主は黙ってろ!!」と、一喝で黙らせてしまう。

 

 海星という狸はとにかく口が悪いことでも有名だ。許嫁である矢三郎に対しても、実の兄貴たちに対しても彼女は徹底徹尾、呆れるほどの口の悪さを貫いていた。

 それは実の父親が相手であろうとも例外ではない。いや寧ろ、父親だからこそ許せないことがある。

 

 今宵海星は——溜まりに溜まった不満の全てを、早雲に面と向かってぶち撒けていく。

 

「総一郎伯父さんを鍋に放り込むとか、狸の風上にも置けない奴よ!! そんでそれがバレていたたまれなくなって姿を眩ましたと思ったら……戻って来て死んだふり? わたしたちが、どんな気分であんたの葬式やったと思ってんのよ! 葬式代だって馬鹿になんないんだからね!」

「う……そ、それは……」

「そんで呉一郎兄さんに化けて、みんなを丸め込んで偽右衛門に成ろうとして……そこまで地位や権力にしがみついていたいのかよ、狸のくせに!? 偽右衛門なんてもんにそこまでする価値があるわけないだろ、阿呆か!!」

「が~ん……」

 

 ついでとばかりにディスられた偽右衛門という地位に矢一郎がショックを受ける。彼だってそれなりに苦労してその地位に就任したのだが、そんなことお構いなしに海星の悪口は続いていく。

 

「阿呆」「馬鹿」「木偶の坊」「ビール腹」「目つき悪い」「毛が臭い」などなど。言いたい放題の海星に下鴨一家も、鬼太郎たちですらも唖然としていた。

 

 いったいこの悪口の終着点は何処へ向かうのかと、誰もが危ぶみ始めた頃だ。

 不意に——海星の言葉のトーンに変化が生じる。

 

「本当に……あんたはしょうもない狸だよ。どうしようもない……駄目な狸親父だよ……」

 

 それは悪口だが、明らかに先ほどまでとは毛色が違う。それはどこか項垂れるような、力弱い——涙声であった。

 

「けどさ……どんなに馬鹿でも、どんなに阿呆でも……あんたはわたしの、わたしたちの親父なんだよ……」

「!!」

「だから……生きていてくれて……嬉しいよ、父上……」

 

 どんなに悪虐非道な男であろうとも、早雲は海星の、夷川家の父なのだ。その事実には呆れるしかないが、それでも海星は『嬉しい』という感情を堪えきれずに早雲の胸に飛びつく。

 

「……親父、もう十分だろ?」

 

 そこへ呉一郎も声を掛ける。彼は坊主らしい、悟ったようで悟っていない口調で説法する。

 

「あんたが憎んでやまなかった総一郎さんは、あんたがこの世から払い落とした……これ以上、何が望みなんだい?」

「お、俺は……俺が望んだのは……」

「俺たちは狸だ。そんな執念深い憎しみまで、人間に似せる必要もないだろう」

 

 早雲の憎しみの大半は今は亡き総一郎へと注がれていた。その総一郎への憎しみを、早雲は彼を罠に嵌めて晴らした筈だ。

 

 これ以上は余計な憎しみなのではないのか?

 これ以上何を望むというのか? 呉一郎の言葉に早雲の中に迷いが生じ始める。

 

 

『——何を呆けておる!! 早雲!!』

 

 

 だがそんな甘っちょろい迷いを、隠神刑部狸が一喝する。

 

『貴様は誓った筈だ! 全てのものに復讐すると!! 今更何を躊躇う必要があるというのだ!!』

「う、それは……たしかにそうだが……し、しかし……」

 

 だがそれでも早雲は動けない。娘にまでは非常に徹しきれない彼の態度に、いよいよ刑部狸は業を煮やす。

 

『——おのれぇえええ! 邪魔をするでないわ、小娘!!』

「っ……!」

 

 その苛立ちから、彼は早雲の体を無理矢理にでも動かし、海星を直接手に掛けさせようとする。

 この娘さえいなければ、全てが元通りになるという企みだ。

 

 

「——やめろっ!?」

 

 

 しかし、それが返って逆効果であった。海星にまで危害を加えようとしたところで、同調していた二人の憎しみにズレが生じてしまう。

 早雲と刑部狸、この二人の憎悪は重なりあってこそ強大だったのだ。そのバランスを崩したら最後、もはやそこに全てを畏怖させるほどの迫力などありはしなかった。

 

「今だ! リモコン下駄!!」

「ぐぇっ!?」

 

 その隙を突いて鬼太郎がリモコン下駄を放つ。脳波によって誘導される下駄は早雲の顎先へとクリーンヒットし、彼の気を失わせる。

 

「——父上!!」

「——親父!!」

 

 倒れようとする早雲の体を、彼の子供たちが支えていく。

 

 

 それは様々な形で仲違いした親子が、確かに『家族』としてが一つになった瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

『——ぐぬぬっ! 愚か者めがぁあああ! 最後の最後で情にほだされおって……!』

 

 早雲という寄る辺をなくし、刑部狸は忌々しげに怨念を撒き散らす。今や依代となる肉体がまともに機能しなくなり、彼は現世にて孤立する。

 

「もう諦めろ、隠神刑部狸よ!! もはやお前に打つ手はあるまい!!」

 

 そんな刑部狸へ目玉おやじが降伏を促していた。今の彼は自身の魂を維持するだけで精一杯だと、それを見抜いた上での忠告だ。

 

『ふん! 諦めろだと……笑止っ!!』

 

 しかし刑部狸に降伏の二文字はない。

 八百八匹の眷属がいなくとも、妖怪獣がおらずとも、早雲という依代がなくなっても。

 

 彼にはまだ『最後の手段』が残されている。

 その切り札を行使するためにも、彼は滾りに滾った憎しみを燃やし——『そいつ』を京都へと呼び寄せた。

 

 

『侮るな、ゲゲゲの鬼太郎!! わしが使役できるのが……妖怪獣だけだと思うてか!?』

 

 

 

 

 

『——出でよ!! 大なまず!!』

 

 

 

×

 

 

 

 京都で狸苛めなる騒ぎが起きていたからといっても、それはあくまで狸の揉め事。人間社会にこれといって大した被害を出すこともなく、大半の人間は狸苛めが行われていた事実すら知らずにいた。

 

 しかし、そんな人間たちといえども、その『地震』を前には慌てふためくしかなかった。

 

「な、なんだ!? じ、地震か?」

「で、デカイぞ!! 皆、何かに掴まれ!!」

 

 突如巻き起こった大地震。その揺れ具合に人々は恐怖に顔を歪め、早くその揺れが収まってくれと祈りを捧げる。だが揺れが収まる気配は薄く、さらに震動は加速していく。

 

 そして——その揺れを引き起こす元凶。地底よりコンクリートの地面を突き破って『それ』は出現した。

 

 

「な、なんじゃぁ!? ありゃぁああ!?」

 

 

 誰かが見上げるようにして素っ頓狂な悲鳴を上げる。

 それはビルよりも巨大な怪物。その無駄にでかい図体を揺れ動かし、どこか惚けた、さりとて凶悪な面を人間たちの眼前へと晒す。

 

 

 それは——巨大な『なまず』であった。

 

 

 (なまず)——ナマズ目ナマズ科に属する硬骨魚類。

 日本では古くより、なまずは地震を引き起こす元凶であるとされており、江戸時代の錦絵には『鯰絵』なるものがよく題材として描かれてきた。

 今では地震をなまずの仕業だと信じる日本人などいないだろうが——今起きている地震は、まさにこの『大なまず』の仕業である。

 

 

『——ぐはっはっはははっ! 見たか、ゲゲゲの鬼太郎!!』

 

 

 その大なまずを呼び寄せた、隠神刑部狸の笑い声が京都中に木霊する。

 

 

『前回は復活したばかりということもあり、呼び出すことが叶わなかったが……こやつもわしの切り札よ!!』

 

 

 この大なまずも、隠神刑部狸の使役する妖怪だった。

 妖怪獣に勝るとも劣らぬ戦力であり、その大なまずに自らの怨念を憑依させ、刑部狸は街を破壊すべく暴れ始めていく。

 

 

 

 

「な、なんとっ!! まだこのようなものを隠し持っておったのか!?」

 

 巨大な大なまずの登場に目玉おやじは驚愕する。

 妖怪獣だけでも驚きなのに、さらにこんな怪物までも使役できるとは。隠神刑部狸の底知れぬ妖力をそこに垣間見た。

 

「猫娘っ!! 皆を避難させてくれ!!」

「え、ええ……でも、鬼太郎は!?」

 

 巨大な大なまずの登場に誰もが呆気に取られる中、鬼太郎はいち早く狸たち全員の避難を猫娘に託す。

 猫娘も即座に鬼太郎の期待に応えて頷くが、彼がどうするかを不安がっていた。

 

「——ボクは……あいつを食い止める!」

 

 当然ながら鬼太郎に逃げるという選択肢はない。たとえ相手がどれだけ強大であろうと、立ち向かうのみである。

 

 

 

 

『————————!!』

 

 巨大な大なまずは街中を動き回るだけで周囲に甚大な被害を与えていく。地震を起こし、近づくもの全てをその巨体で薙ぎ払う。

 おまけに口からは熱線を吐き、目からは破壊光線を照射する。そんな化け物がいきなり京都のど真ん中に出現したのだから、さすがに人間側もすぐには対応できない。

 

「髪の毛針!! リモコン下駄!!」

 

 今現在、大なまずに対応できる戦力はゲゲゲの鬼太郎しかいなかった。さすがにこの巨大な怪獣を前に狸たちでは荷が重く、この街を拠点にしているであろう陰陽師なども即座には動けない。

 鬼太郎はビルの上から、何とか大なまずの進撃を食い止めようとあらゆる手段で攻撃を仕掛けていく。

 

 

『——ぐはっはっはっは!! 無駄、無駄!!』

 

 

 しかし大なまずに生半可な攻撃は通じない。体を覆っている粘液が、鬼太郎の攻撃をすべて弾き返してしまっているのだ。

 大なまずに憑依した隠神刑部狸の高笑いが辺り一帯に響いていく。

 

「くっ! これならどうだ……体内電気!!」

 

 鬼太郎は零距離に密着して体内電気を直に流すが——これも大した効き目にはなっていなかった。

 

 この大なまず、単純な戦闘力ならば妖怪獣に匹敵するものがあった。妖怪獣を倒したことのある鬼太郎であれば勝機はあり得るかも知れないが、残念ながら彼が前回の戦いであれを倒せたのは『要石』の力を犬山まなに注いでもらったからだ。

 

 要石の力を借りられない現状、鬼太郎は素の力で大なまずを打ち負かさなければならない。

 それは——あまりにも無謀な挑戦だった。

 

「こいつ……! どうすれば倒せるんだ!?」

 

 大なまずの驚異的なタフさ、生命力を前に勝ち筋を失いかける鬼太郎。それでも、彼は心挫けることなく攻撃を続けていくが。

 

 

『くっくっく! これまでだな、ゲゲゲの鬼太郎!!』

 

 

 既に勝ちを確信してか、刑部狸はさらに大きな高笑いを上げる。

 

 

『この場で貴様を始末し……手始めにこの街を支配してくれる! そしてもう一度……この国の政権を我が手中に収めるのだ!!』

 

 

 今度こそ鬼太郎の打倒を成就し、その後に自らの野望をも果たすと豪語する。

 大なまずの力であればそれも可能だと、刑部狸はそれを心底から確信していた。

 

 

 

 しかし、隠神刑部狸は忘れている。

 ここが——『京』の都であることを。

 

 人や妖が、この尊い地を巡って幾度も争ってきた。この京都はまさに日本の『動乱』の中心地。

 その特異性を理解し、未だにその尊さを重んじている者たちがいる。

 陰陽師、拝み屋といった人間側の勢力は勿論だが——人間『以外』の存在も、この地には多く潜んでいる特別な場所だ。

 

 

 そういった『連中』が——狸如きの勝手を許すわけがないのである。

 

 

 

「——ほう、この国の政権とは……これはまた大きく出たものだ」

 

 東の空。

 大なまずの頭上に白い背広の紳士が浮遊していた。その紳士は冷めた目つきで大なまずを頭上から見下し、やれやれとため息を吐く。

 

「まあ、誰がこの国の政権を担おうと、私の知ったことではないが……そちらの進路上には私の邸宅があるのだよ。済まないが、暴れるなら他所でやってくれないかね?」

 

 彼は大なまずの進路上にある、自身の邸宅を壊されまいと仕方なく重い腰を上げてやってきた。

 彼にとって大なまずは自身の安眠を妨害する、まことに無粋な存在。

 

 

 

「——あらあら、狸の分際で……随分と身の程知らずなことですわね」

 

 西の空。

 夜空のように漆黒なドレスを纏った女性が浮遊していた。その女は氷のように冷たい笑みを浮かべ、大なまずを使役する刑部狸の怨念を直接見下す。

 彼女にとって、その狸の発言はあまりにも不愉快。鍋にして喰ってやりたいほどに鬱陶しい戯言だった。

 

「せっかくの優雅な散歩が台無しだわ……どうしてくれるのかしら?」

 

 自身の機嫌を害されたと、理不尽にも突っかかっていく気まぐれな天女。

 

 

 

『な、なんだと!? き、貴様ら……もしや、天狗か!?』

 

 突然空から姿を現した二人の乱入者に、狸である隠神刑部狸の怨念は戦慄する。

 たとえどんな大妖怪であろうとも、狸にとって『天狗』というやつは特別な意味合いが込められている。

 

 狸は天狗から様々なことを学ぶのが通例であり、天狗は狸を苛めるもの。

 形を成した天災たちの降臨に、刑部狸は言葉を失う。

 

 

 

「に、二代目……弁天様……」

 

 地上にて。そんな二人の天狗に気付き、大なまずから仲間たちを避難誘導していた下鴨矢三郎が膝を突く。

 慌てふためく狸たち全員の耳に届くよう、大声にて彼らの降臨を宣言する。

 

 

 

「——二代目如意ヶ嶽薬師坊様!! 並びに、弁天様のご降臨である!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 二代目如意ケ嶽薬師坊。

 金曜倶楽部の弁天。

 

 何の因果か二人はまったく同じタイミングで大なまずの眼前へと降臨した。どちらも天狗として、この京都に人知れず君臨する『魔性』そのものである。

 

 だが、この二人はかなり険悪な関係であり、どのような窮地であろうとも協力などしない。

 だからこそ、二代目も弁天も。大なまずを相手に——互いの存在を無視するかのように自由気ままに、勝手気ままに天罰を下していく。

 

「あっはっはっは!! 立派なお髭ですこと!!」

 

 弁天は大なまずの巨大な髭を結び、それを弄ぶように引っ張っている。無邪気な笑顔で飛翔するその姿はまるで玩具で遊ぶ幼子のよう。

 

 

『——痛っ! いたたたたっ!? ひ、髭を引っ張るな!?』

 

 

 大なまずと一体化している隠神刑部狸が、悲痛な叫び声を上げているのもお構いなしだ。

 

「ふん……」

 

 そんな弁天の横でつまらなそうに鼻を鳴らす二代目。彼はそこらへんの電柱を無造作に引っこ抜き——それを大なまずの体にぶっ刺した。

 二代目の天狗風と共に放たれた電柱は、粘液で守られている筈の大なまずの肉を易々と貫く。苦悶の表情と悲鳴を上げる大なまずだが、さらにそこへ二代目は『火』を放つ。

 神通力の炎が大なまずを体内から燃やし、こんがりと蒲焼風味に仕立て上げてしまう。

 

 

『ぎゃああああああ!!、あ、熱い……熱いぃ!?』

「むっ、随分と焦げ臭い……ひどい悪臭だ……」

 

 

 なまずの焼けた臭いに二代目は顔を顰め、白いハンカチで鼻を覆う。

 自分で焼いておきながら、大なまずに対して汚物でも見るような視線を送っていく。

 

「あらあら、熱いのかしら?」

 

 大なまずが熱さでのたうち回るその姿に、弁天はほくそ笑んだ。

 氷のように美しく残忍な、まるで雪女が人間の男を凍死させる際に見せる嘲笑のように。

 

「——今冷やして上げますからね?」

 

 愉快そうな口調で、今度は弁天が大なまずを『冷気』で覆っていく。

 

 

『なっ!? い、いかん!? からだが……こ、凍って——』

 

 

 凍結する肉体に焦りを口にする刑部狸だが、一歩遅かった。

 神通力の氷は瞬く間に大なまずの全身を氷結させ、その巨体が身動き一つとれずに封じられていく。

 

 

 

「い、今じゃ!! チャンスじゃぞ、鬼太郎!!」

 

 二人の天狗の理不尽な介入に唖然としていた鬼太郎たちだが、ここがチャンスだと目玉おやじは叫ぶ。

 全身がガチガチに凍って動けないでいる大なまず。今ならばトドメを刺すことも容易であると。

 

「わ、分かりました、父さん! …………指鉄砲!!」

 

 僅かに躊躇しながらも、鬼太郎は最後の一撃——指鉄砲を最大火力で発射する。

 鬼太郎の妖気弾が氷の彫像となった大なまずを粉々に砕き、その肉体を完全に消滅させていく。

 

 

 

『——お、おのれぇ、鬼太郎っ!! おのれぇえ天狗!! おのれ……おのれぇえええええええええ!!』

 

 

 

 当然、大なまずと一体化していた隠神刑部狸も道連れだ。

 最後の最後まで取っていた切り札まで失い、再び地獄の底へと真っ逆さまに堕ちていく狸の魂。 

 

「随分と汚い氷細工だ……」

「あらそうかしら? ちょっと綺麗だと思いません?」

 

 しかし、そんな怨嗟などまるで他人事のように、二人の天狗は砕け散って降り注ぐダイヤモンドダストにそれぞれ感想を抱く。

 

 

 

 そしてもう用は済んだとばかりに、別々の方角へと飛び去っていった。

 

 

 

×

 

 

 

 昨夜の騒動から一晩明けた、翌日の日中。

 鬼太郎と目玉おやじに猫娘。ついでにねずみ男が下鴨神社の楼門の入り口に立っていた。

 

「——鬼太郎さん。この度は……本当に、ご迷惑をお掛けしました!」

 

 鬼太郎たちに頭を下げるのは、京都狸界の代表・下鴨矢一郎。

 洛中の狸たちを代表し、わざわざ京都まで駆けつけてくれた一行に、今回の事件に対する感謝と謝罪の言葉を述べる。

 

「いえ、ボクは別に……あまりお役に立てていたとは思えませんし……」

 

 だが礼を述べられている鬼太郎は若干戸惑っていた。今回の事件、正直自分がいなくても何とかなっていた部分があったのではと、そこをちょっとばかり気にしている。

 

「そんなことないさ! 二代目と弁天様だけに任せてたら……もうちょっとばかし被害が広がってたかもしれんからな」

 

 そんな鬼太郎をフォローする形で矢三郎が口を出す。

 彼は二代目と弁天の気まぐれさをしっかりと理解しているからこそ、最後の最後で鬼太郎がキッチリ大なまずにトドメを刺してくれたことを感謝する。

 あの二人だけであれば——もしかしたら最後まで、あの怪物の相手に責任を持たなかったかもしれない。

 

 狸にとって天狗とは恐ろしい妖怪であり、また気まぐれな天災でもあるのだから。

 

「それにしても、玉瀾さんの怪我が大したことなくて本当に良かったわ」

「済みません……本当に心配を掛けてしまったようで!」

 

 男たちが話している横で、猫娘と玉瀾もにこやかに言葉を交わす。

 狸苛めの被害に遭ったとされた玉瀾だが、実際のところ、怪我の方は大したことない。一晩ゆっくり休み、しっかり回復した姿を見せて皆を安堵させる。

 

「いや~……まったく大変な事件でしたな~……それで、依頼料の方ですが……って、痛っ!」

「ねずみ男……アンタは帰ってからお仕置きよ!!」

 

 今回、たまたま自分の商売で京都へと来ていたねずみ男。事件解決に何も貢献していないにもかかわらず、図々しくも依頼料を下鴨家へ請求しようとする。

 しかし天満屋と手を組み、詐欺商法をしていたことが犬山まな経由で猫娘にバレた。いつものようにひっかき傷を貰い、ゲゲゲの森に帰還すればさらに厳しいお仕置きが彼を待っていることだろう。

 

「猫娘よ、まなちゃんはどうしておる?」

「まななら大丈夫。あと一日、京都旅行を楽しんで来るって!」

 

 ふと、目玉おやじがこの場にいない犬山まなの現状について猫娘に尋ねる。彼女は今も修学旅行中であり、事件解決の報せを受けて今は心置きなく旅行を楽しんでいるとのことだ。

 大なまずが京都市内を暴れまわったばかりだが、被害のなかった場所は今も平常通りに観光客を受け入れている。

 

 

 これもまた、京都という街の頑丈さだろう。

 この街ではこういった不思議なことがよく起きるのだという。

 

 さすがに昨日の騒ぎはかなりの大事ではあるが、それでも受け入れてくれるのが『京都』の懐の広さでもあった。

 

 

 

 

 

「……夷川早雲、でしたか? 彼は……今どうしてます?」

 

 そろそろ自分たちもこの街からお別れしようとしたところで、鬼太郎は今回の黒幕の一人・夷川早雲のその後について尋ねていた。隠神刑部狸に唆されてのこととはいえ、今回の事件の発端を引き起こしたのは間違いなく彼自身の意思だ。

 狸たちの間で、何かしらの判決が下ってもおかしくはない立ち場であろう。

 

「……早雲に関しては……呉一郎や海星、夷川家のものたちに一任することにしました……」

 

 しかし、鬼太郎の懸念とは裏腹に狸たちの間で早雲を罰するという決断は出ていない。身内である夷川家の子供たちに、彼の処遇を任せようという、かなり甘い判断で決着を付けていた。

 現在、早雲は家に引き籠っており、それを夷川家の子供たちが面倒を見ているという状況だ。

 いずれ復帰して何をするかは、彼ら親子の交流次第だろう。

 

「それでいいの? その早雲って男……貴方たちの父親の仇なんでしょ?」

 

 その決断に猫娘が眉を顰める。

 聞いた話では、早雲は矢一郎たちの父親を金曜倶楽部に引き渡す段取りをした狸だ。実質的に親の仇、そんな相手にそのような甘い措置でいいのかと疑問をぶつける。

 

「無論、私は叔父上を許すつもりはありません。たとえ奴が父の墓前で土下座をしようと……きっとこの胸の憤りは消えないでしょう」

「…………」

 

 矢一郎は、静かな声音で実の叔父への怒りを口にする。

 さすがに全てを許すなどと、簡単に口にすることはできない。矢三郎もそれに同意するように静かに頷いている。

 

「ですが……今になって奴の尻の毛を毟ったところで何にもなりませんから。今はただ……夷川家の子供たちを信じて彼らの決断を待ちますとも……」

「前向き……なんですね」

 

 矢一郎の答えを聞いて鬼太郎は笑みを浮かべる。

 迷いながらも親の仇に対してそういった判断ができる矢一郎、その判断に矢三郎や玉瀾も文句を言う素振りすらみせない。

 どことなくあっさりしている彼らの気持ちに、鬼太郎は感心してしまう。

 

「なに、狸だからな。それだけが取り柄みたいなもんだし!」

 

 もっともただ単純にお気楽なだけかもしれない。

 

「狸たるもの、常に面白く生きねばならない。恨みやら復讐にいつまでも執着していても気持ちが暗くなるばかりだ。何事も、ほどほどが一番なのさ」

 

 矢三郎が狸としての理念を語る。

 

 ちゃんと考えているのか、それとも何も考えていないのか。

 

 よく分からない、実にふわふわとした信念であった。

 

 

 

 

「それじゃあ、ボクたちはこれで……」

 

 そんな狸たちとも分かれを告げ、鬼太郎たちは歩き出していく。

 名残惜しいがそろそろさよならだと、京都の街に別れを告げていく。

 

「またいつでも遊びに来てください、鬼太郎さん!」

「そのときは、俺が色々と案内してやるよ!」

 

 歩き出した鬼太郎たちの背中に手を振る狸たち。色々あったが、最後はしっかりと笑顔で送り出してくれる。

 何だかんだで京都に来てよかったと、彼らに出会えてよかったと思えるさよならの仕方だ。

 

 

「父さん……次は依頼じゃなく、ちゃんとした京都見物に来てみたいですね」

 

 

 ものぐさな鬼太郎も、いつかはちゃんとした形で京都を旅行してみたいと。

 

 

 父に向かって年相応、実に少年らしい微笑みを浮かべていた。

 

 

 

 




人物紹介

 夷川海星
  夷川早雲の娘。矢三郎の婚約者。口は悪いけど可愛くて優しい狸。
  弁天様が人間側のヒロインなら、この子は狸側のヒロイン。
  矢三郎は彼女を視界に入れると途端に化けの皮が剝がれてしまう。
  あまりにも可愛すぎて。

 夷川呉一郎
  夷川家の長男。ずっと旅に出ていた京都を留守にしていた僧の狸。
  原作内に登場する彼はその大半が『死んだ振りをしていた早雲』つまり偽物。
  本物の出番は本当に最後の部分だけ。基本は飯ばっか喰っている似非坊主。

 金閣銀閣
  夷川家の次男と三男。本名は夷川呉二郎、呉三郎。
  人間時の彼らは憎たらしい小僧だが、狸の時は意外と可愛い。
  名前しか出てこないのは、単純に尺の都合。出番がなくて御免なさい!!

 隠神刑部狸
  今回の黒幕。地獄で早雲と結託し、彼に狸苛めを起こせるほどの妖気を授ける。
  彼の魂が地獄へと堕ちていたのは作中で説明したとおり『魂が疲弊』したため。
  六期の描写の中で『復活したばかりの妖怪が再び倒され、魂が霧散した』場面があったため、今回のような設定があるのではと考えました。

 大なまず
  隠神刑部狸が使役できるもう一匹の怪獣。
  原作だと出番がなかったため、今回このような形で登場させてみました。
  結構な戦闘力があった筈なのですが……二代目と弁天様の餌食になってしまった。
  実際、二人の天狗ならこれくらいできそうかなと、思ってのことです。




次回予告

「猫仙人の事件以来、どこか塞ぎ込みがちな猫娘。
 何とか元気を出してもらえるよう、まなにお願いしたのですが。
 そんな中、またも街中で猫の妖怪が暴れまわっているそうです。早く止めないと!
 ……えっ? 猫だけど……妖怪じゃない? 父さん、あの猫は……いったい!?

 次回——ゲゲゲの鬼太郎『史上最強のニャンコ参上!!』 見えない世界の扉が開く」
  

 次回は完全に趣味に走ります!
 参戦作品のタイトルも隠しますが……分かる人には分かる次回予告。
 一応、短く纏めるつもりなので、どうかお付き合い願いたい。
  
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